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ラズトルファのお手伝い

 


 ▽ラズトルファが お手伝いさんとしてやってきた!


 ▽赤の聖地に帰還した。


 レナがまずやったことは、ルージュとの通信だ。

 どうしたらいい?と相談しやすい相手がいると心強い。


「……というわけでラズトルファさんを連れてきたんだけど、お屋敷の方に連れていってもいい?」

『まだご遠慮下さいませ。今のうちに屋敷内の警備を強化しておきますので』


 ▽ルージュは 警備練習をする気が満々だ!

 ▽指導者は アリスである。


 というわけで── レナたちがやってきたのはスカーレットリゾート。

 こちらではすでにホテル群がででんと建っており、なんならお泊まりだってできる。

 もしもルージュたちの支度が遅れるようならば外泊してもいいし、お宿♡グループで働いてきたラズトルファに見てもらうのもいいかな、と思ったのだ。


 ▽せっかくなら感想を聞いてみよう!


 というわけで──


「スカーレットリゾート・オープン」


 レナが”指パッチン”! 失敗! けれどキラが音を鳴らしてくれたよ!


 結界が解けて、何もないようだった広い草原には、スカーレットリゾートが出現した。辺り一帯を[幻覚]で覆っていたのだ。リリーが効果付与をした宝石が外壁にいくつも埋め込まれて、この魔法を可能としている。


 質のいい宝石を惜しみなく使うこと、リリーの[幻覚]スキルの精度が極めて高いこと、設置場所にもこだわり魔法陣を描くようにして効果をまんべんなく行き渡らせている。


 これについて、レナはルーカに教えてもらっていた。


(ええと〜。魔法陣というのはヒト族が好んで使うテクニックのひとつ。お札、魔道具、魔剣、魔法陣、などヒト族は本来持っていない力であっても使えるんだよね。逆に魔人族は個々が強力なぶん、道具との相性が悪いことが多いし己の力を伸ばした方が手っ取りばやい。魔法陣という発想はミレージュエ大陸各国の秘術でもあるので、かんたんに口にしないほうが良し、と)


 ちらりとラズトルファを見ると、唖然としていて、ねほりはほり聞いてくるような雰囲気はなさそうだ。


(うん。こっちへの偵察って線はなさそうですよっと、警戒班のルージュやルーカさんに知らせよう〜)


 何事についても警戒が必要となるレア揃いのレナパーティ。

 このたびはオールフリーであるようだ。


 ぽっかり空いた口を閉じたラズトルファはやはり、それ以降も質問などしてくることはなかった。


「はい、これを」


 ▽レナは バスケットを渡した!


 ▽ズーズー・マシュたん・キラ分身体・ギルティアが入っている。


「……」

「落としたりしなければ、持っていてくれるだけで、あやしたりしなくてもいいですよ。みんな良い子ですからね。けれど外部と交流が広くないのがうちのパーティの弱みでもありますから、安心安全(でいてください)のラズトルファさんに持ってもらいたくて」


 従魔の精神的な経験値になってほしいということである。


 仕事内容に含まれるので、ラズトルファはおとなしく籠を抱えた。


 籠の中のギルティアが見上げるも、気付くことはない。すっかり姿が変わっているためまさかギルティアであるとは思いもしないのだろう。ギルティアにとってもそれでよかった、どのような言葉をかけていいものやらまだ気持ちが固まっていない。


(ギルティアはそわそわしてるみたいだけど、でも自分からあの籠に入ろうかなって、言ってくれてよかったなぁ)


 レナはニコニコと籠を眺めている。

 可愛いうちの子盛りだくさんなのだから当然にやける。

 そして後方にひよこの行列よろしくテクテクついてくるキサたちも当然可愛くて、にやける。


 ▽レナたちは 中央広場にやってきた。

 ▽リゾートマップを 指差して 質問した。


「ラズトルファさん、感想を聞かせてもらえますか?」


「規模がでけーんだよ!!」


「ありがとうございます。その調子でお願いします」


 レナがグッジョブサイン。

 新鮮な反応は助かる。リゾート関係者たちはここに頻繁に出入りするあまり、すでに新鮮さをなくしてしまっており、なんなら魔王国など地元に帰ったときに「こっちの規模が小さく感じる」などと首をかしげる常識反転事案も生まれていた。


 ラズトルファの反応を見て「叫びたくなるほどフレッシュ!」「おどろきの大規模リゾート!」「ワクワクが止まらないね!」などという広告が頭に浮かんだレナであった。


 ▽キラが メモをしました。

 ▽主人の思考トレースはお任せください。


 マイラとアグリスタが、チョココをむにむにと揉んでいる。ぽよん、とボディをちぎった。ひとくちサイズのそれをハンカチに包むと、おもむろにそれをラズトルファに差し出す。


「「チョコレートマシュマロ。リゾートのおみやげ品のひとつにするの」」


「…………」


 ▽平常心、平常心。

 ▽仕事って大変。

 ▽首元の淫魔の約束キスマークがひりつくぜ。


 ▽ラズトルファは チョコマシュマロを食べた。

 ▽淫魔のお宿♡で支度されるアメニティよりも美味しい。


 ▽チョココが胸をはり マシュたんもついでに胸をはった。


 もぐもぐとほどよい弾力のお菓子を噛み、差し出された水筒から紅茶をひとくち。

 ジーーと見上げていたズーズーにもひとつ、チョコマシュマロをくれてやり、ポーチから出したストローをさした水筒をズーズーの口元に持っていく。


 ▽レナからの 親近感が上がった。

 ▽世話ができる人は好ましい。


 小休憩をすることになったレナたち。まったりとした時間が流れていく。

「感想をもっとお聞きしても?」とレナが頼んだので、ラズトルファはまた口を開いた。


「リゾートってもんを作ると聞いてたけど、まさか、ここまでの大施設にするなんざ想像してなかったよ。……俺は"宿客"が口にする雑談を記録することもバイトのうちだった。ラナシュ情勢はそれなりに広く知っているつもりだけどな、この規模の施設なんざ聞いたことがない」


 考え事をするときに翼をぎゅっと縮こまらせるのは、ラズトルファの癖のようだ。シー、とマイラがジェスチャーして教えてくれたので、この状態のときには話しかけないで話の続きを待つのがよいらしい。


「……宿客は重要な話をするときは個室で、それ以外では徹底してエンターテイメントのことしか口にしない。しかしエントランスでラナシュ情勢を語ることでサキュバスへアピールする、好待遇になるからな。情報精度は信用できるんだよ。

 んーと、このような観光施設が多いのはミレージュエ大陸らしいが、遊び場としては大きめの公園というくらいで……広く整備された原っぱに劇団を呼ぶことが多いらしい。スカーレットリゾートはこれから先、話題になるだろうよ」


 リゾートを改めて眺めるラズトルファが、どこか遠い目をしているのは間違いではあるまい。


 ▽一日歩き回れるほど広い区画!


 ▽ジェットコースターやコーヒーカップなどの超大型遊具!


 ▽レストラン!屋台!のぼり旗はためくリゾートグルメ!


 ▽リゾートホテルにはコンセプト部屋もあるよ!(淫魔監修)


 ──などという娯楽全部盛りの企画など、ひょうきんものがふざけて語る夢物語のようなもの。


 ここにはふざけた施設がある。


 なぜ、とラズトルファは思う。


 レナパーティはどう見たって困窮などしていなさそうだ。稼ぎへの執着もなければ、名声が欲しいわけでもないらしい。ズーズーのことを助けたのだと自慢もせず、従魔にもしないらしい。


 チリリ、と首筋が痛むものの、好奇心によって一度だけラズトルファから質問をした。


「ここまで完成しているものをどうして公開していないんだ?」


 レナは答えを用意していたようで、するすると答えていく。


「企画として、魔王国武闘大会と合わせたいんですよねー。外部からのお客様がたくさん来るじゃないですか。だからスカーレットリゾートがちょうどよく機能すると思いまして」


「いきなり大量の新規客が来て、対応ができるはずがねェ」


「そこで、淫魔族のお姉様方やラズトルファさん、そのほか接客慣れしている方々に協力をいただく準備をしています」


「俺を頭数に入れるな」


「ここまで接していて頼りになりそうなので、ぜひ」


「即勧誘をするな」


「では、しばらくあとにしますね。お給料をはずむのでご検討をよろしくお願いします。やわらかい対応は接客エキスパートのみなさんに、警備の対応は魔王国武闘大会の出場者のみなさんにもお願いしようと思っています」


「……客寄せにするつもりだな……!?」


「そうでーす。プロレスショーも企画していますよ。武闘大会だけでは、負けたあとにも体力が有り余っていていろんなところで喧嘩騒ぎを起こす出場者がいるんですって。ウチで引き受けてあげられたら、それも控えられるかなって」


「なんでそこまでしてやるんだよ……? 損だ、それは。俺なら勘定から弾き出す。ここまでの施設なら宣伝しなくとも十分客がくるだろうに、リスク増やして警備雇う金を使ってまで、武闘大会なんかに配慮してやる必要があるのかよ?」


 ラズトルファは皮肉げに口角を上げながらも、落ち着かなさそうに尻尾を揺らした。

 過去一度、会ったことがある魔王ドグマを思い出せば、どうしても尻尾の付け根あたりがムズムズとするのだ。生き物として叩きつけられた圧倒的な序列と、自らが口にする皮肉との矛盾で、落ち着かなくなってしまうらしい。


 レナはあっけらかんとしている。


「できるから、やろうかなって。お金には余裕があるので、少々損が生まれてもいいですし」


「…………」


「ここまで言えるようになるまで、支えてもらっていましたから。魔王国の後ろ盾にも、淫魔のお宿♡グループのご好意にも。だから返していこうって」


「……」


「ご近所づきあい、ですかねぇ」


「何その表現」


 沈黙して複雑な感情を流そうとしていたラズトルファだが、つい、つっこんでしまった。


 二度目の約束破りによって、首元がヒリヒリとする。

 高等淫魔のように位の高いものどもは縛るのがお好きなのだ。


(義務だとか、義理だとか、その辺りのことを言うだろうと予想していたのにな)


 宿客がよく淫魔レディを口説くために使う言葉である。それには打算が込められていて、またこれからも助けてくれ、という"見返り"が透けて見えるときがあり、ラズトルファはこれが嫌いだった。


 けれど、ご近所づきあいなのだという。


 なんだそれは。


「……聞きます?」


「…………はあ、言いたきゃ、言えよ」


 レナはどうやら淫魔のキスマークの法則に気づいたようで、先に尋ねてくれたため、そうであれば聞いてもいいかとラズトルファは適当に頷いた。


 少しは興味もある。

 それを聞いておけばマイラやアグリスタたちの生活についてもわかりそうだから。


「私はね、ゆるいラナシュ生活がしたいんですよ。生活って、家をかまえて、ご近所づきあいじゃないですか。まわりにご挨拶をして、ここに住んでいきますって伝えて交流して。まわり全体が生活圏ですから、困っていることや問題があれば、解決されたらいいなあってやれる範囲で動くものです。それが、このたびのズーズーさんのお預かりや、リゾートの開業時期のことです」


 綺麗なものごとを聞かされたような気がした。

 ふざけた夢物語のような。


「従魔が穏やかに過ごせる土地で、居を構えることは私の目標でしたからね!」


 ぐっ!と拳を握りながらレナが締める。


 レナは日々一生懸命やってきたので、あまり振り返る機会はなかったものの、そういえばそれを目標に歩いてきたんだよなぁ、と心の中で振り返る。さまざまなことに流されながらいつのまにか目標が叶っていた、という体感でもあり、それは小さな従魔たちの世話をしながら毎日を大切にしてきた積み重ねがあってこそである。


 ▽後の世では「覇道」と語られる道のりである。


(……はあ。でかすぎる目標だろうが……)


 特殊に生まれてしまった魔物たちが穏やかに生きるなんてことは、どれだけ難しいことなのか、ラズトルファはいやになる程知っているため──はりつめていた肩の力がすっかり抜けてしまった。

 そんなものを目標にしていて、しかも叶えてしまっているなんて。


 夢物語、とマルクが語っていた理想を思い出す。


 距離をとって腰掛けたベンチの前、チョココがふと転がっていき、それを追いかけるアグリスタとマイラは安心しているように見える。どうしてなのか、籠の中から植物のような従魔が転がっていって仲間入りした。


 レナパーティと以前の仲間が、混ざっていっているようだ。


 ふとラズトルファが思い出したことがある。

 空の上の雲遊び、光の絵の具を垂らしていき生まれたマーブル模様のように、それぞれが色を活かしながらまとまった模様を成立させていた。そんな光景が思い出された。


 ふとコケて涙ぐむアグリスタも、すぐに手を差し伸べるマイラも、怪我を治してあげている植物のような魔物……ギルティアも、それぞれらしい面影がきちんと否定されずに残っている。


 あいつギルティアなのかよ、とラズトルファは膝を打った。トゲトゲしかった毒娘がえらく可愛らしくなったものだ。


 しばらくあとでからかってやろう、とニヤリとした。


 まとまっている従魔たちをラズトルファが指差す。今からかってやるのは未来への練習なのだ。


「アレ、アンタ”も”幸せだと感じるわけ?」


 ……レナはすぐに答えずに、なぜだかニッコリとしている。


 少しの沈黙。ラズトルファは自分の発言を思い返す。


(あれ。アンタは幸せだと感じるのかって、言っ、た、は、ず……。……ッ!)


 自然とするりとすべり出た言葉だったのだ。ハッとして口を押さえたものの、レナはとくにラズトルファを笑うわけではなく、ただただ喜びとともに胸をはった。


「その通りのようです」


 くもりのないのびのびとした返事であった。


 ラズトルファはため息をひとつついて、それにて納得とした。


 このあと元仲間たちのところに乱入してもみくちゃにしたしもみくちゃにされた。






 ──夜、スカーレットリゾートにある温泉・・プール。



「はい、ズーズーさんをお風呂に入れてきてもらいます! よろしくお願いしますね」


「納得してねえ!!」


 水着に着替えさせられたラズトルファが悲痛な返事をした。

 まだまだお姉様に任された爆弾であるズーズー(丁重に扱え)を、レナのサポートなしで風呂に入れることになるなんて。しかも頼りになってくれるからと揃えられた男子従魔のクセが強い。レナパーティはみんなクセが強いけど、もっともマシなのは主人なのに。


「お仕事のお時間です。よろしくお願いしまーす」


「かしこまりましたァーーーッッ!!」


 ヤケクソである。


 ▽ズーズーは 薔薇温泉プールを 堪能した。

 ▽今夜はよく眠れるはずである。




読んでくれてありがとうございました!



私事ですが小学生の春休みがおわり、書き物の時間がとれたことでおちついてレナパと「レアクラ」のストーリーのことを考えられたことが嬉しかったです。

これだ!!と前に思っていたパターンから、より理解が深まって、この方がいい〜!!とすこぅしイジる瞬間が大好きです♡

小説楽しい瞬間です(*´ω`*)



今週もお疲れ様でした。

よい週末を₍˄·͈༝·͈˄₎◞ ̑̑

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[気になる点] 可愛いうちの子盛りだくさんなのだから当然にやける。  そして後方にひよこの行列よろしくテクテクついてくるキサたちも当然可愛くて、にやける。 若気る【にやける】 男性が女性のようにな…
[一言] 更新有り難う御座います。 今回も楽しく読ませて頂きました。 アリスとルージュの混合物は、敵対者にとって劇物っぽいな!? (混ぜると更に危険!) ……まぁレナさんは単独で危険物ですが? …
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