表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

416/580

レナパの訓練を伝授しちゃおう!

 

「冒険者ギルドからお手紙きたよ~。メェメェ」


 先日のことだろうな、とレナが思ったとおりだった。


「えーと、なになに。Aランク冒険者のレナパーティへ、新人教育クエストのお知らせ。冒険者ギルド管理の訓練場に来られたし。日時は2日後か3日後か4日後……こまかっ!」


「ここまで自由な依頼も珍しいですよねー。新人冒険者の皆さんがー、むしろ予定を合わせてくれるなんてー?」


「そうだねえ。ウチはボランティアみたいなものだし、新人さんの集まりやすい時間にしてもらおうか」


(金額を見てボランティアみたいだと仰ったのだと思いますが、それはAランククエストとしてはけっこうな高額なのですよ、レナ様)

(クスクス。モスラ、トイリアで依頼受けてるから……詳しいのねっ? えらいえらい)


「メッセージカードが入ってる……えええ冒険者ギルド訓練場の外観絵と地図! しかも手書きだし、ペチカさんが手作業してくれたのかなあ。あの人って器用だねえ」


(露骨にコビを売ってきていますね。リリー先輩)

(そうねっ。よっぽど、商業ギルド側にとられたくない……かなっ?)


「リリーちゃんとモスラからそよそよって音が聞こえてくるよ。蝶々の内緒話ってそんな感じになるんだ?」


「えへっ♡可愛い……でしょ。ほらモスラも」

「可愛くしてみました。いかがですか」


 ▽可愛い微笑みで レナはごまかされた。

 ▽レナの幸福度が上がった!

 ▽従魔が笑顔で 主人が幸せ それでいいじゃない。


 レナは、ルージュに返信を出すようにお願いした。

 主人の意向をただしく読みとったルージュが手紙を書き、遠距離を移動する手段として今回は「リリーが掌握した虫に届けてもらう」ことを選んだ。


 やってきたのは【ツバメ蝶】──その名の通りスマートな翅を持ち、すべるように空を飛んでいく。モスラが鱗粉を振りかけてあげることで大空の愛子の加護を得て、ずっと追い風に恵まれるだろう。


【ツバメ蝶】にくっついているリリーとモスラの魔力を感じとって、冒険者ギルドまで無事についたか主人としてチェックするところまでが、レナのレッスン。

 魔物使いとして従魔との繋がりを自覚すること、とルージュは課題を与えたのだった。


 レナたちはのんびりと過ごしているが、人数が多いため細々としたやるべきことは多い。日常の中にさりげなくレッスンを含むことによって、いつもの余裕は生まれているのだった。


 この余裕がつかの間とならないように、レナはちょこちょこと切磋琢磨している。


【ツバメ蝶】が大空を飛んでゆく。

 感覚を沿わせているレナも、右に左に、ユラユラと揺れた。


「あーー……! ああー、わかる、ちょっと揺れ続けてるような……頑張れっ……安定してきた、いいこ! よーしいい感じ…………」


『掴んだようですね。それではレッスンの負荷を上げます』


 ▽クレハと イズミが 入室した!


「「こ~ちょ~こ~ちょ~」」


「あーーっっっダメダメ!!フリだけでもダメ!集中できなくなりそう!ステイ!ちょ、もう~」


『平常心でいらして』


「スキル[従順]私が平常心になーれ。……効かないっ」


『体験した失敗は忘れませんわ。財産です』


 ▽ルージュはサディスティック側のようだ。


 ▽ツバメ蝶が 無事に冒険者ギルドについた。


 ▽レナは ふらりと疲れて倒れて ごきげんなスライムベッドに受け止めてもらった。





 ***





 レナパーティは3日後、訓練場を訪れた。

 この日連れてきたメンバーは、クーイズ・モスラ(人型)オズワルド・レグルス・ハマル(獣型)である。


 レナの服装は、以前海を超えた時につくってもらった軍服風ワンピース。


 紫クーイズとモスラは一般的なかけだし冒険者の服をきている。

 きらびやかな顔面と質素な服がアンバランスだと言えよう。


 オズワルドとレグルスは獣の毛並みの端を白炎色に染めていて、臨戦態勢。体内の古代の熱を放出しないように制御しているのが返って神々しいオーラをにじませている。


 ハマルは大きな 羊となっていて、明らかに捕食される側ではなく狩りを行う側の風格だ。体毛が黒くなっていることは、遠隔で[幻覚]を使うというリリーのレッスンにもなっている。



 ▽尋常じゃなく目立っている!

 ▽ここに来るまでの道はまるでパレードであった!

 ▽送迎で先頭を歩いていたペチカの顔が死んでいる。(目立たないことを好むため)


 訓練場の扉の向こうでは早くもかけだし冒険者が自主練をしているようだ。

 真面目で熱心なタイプが選ばれているとのこと。


 けれどそれにしては、言い争いをするような声も聞こえてきていた。


(チンピラっぽーい)


 訓練の熱が入りすぎたにしては、やけに語気が荒いようである。

 レグルスとオズワルドの獣耳がぴくぴくと動いて、レナの耳に声を入れないようにと、モスラとクーイズが片方ずつ耳を塞いだ。


「……(クッ、あいつら…)先に私が中に知らせに行ってまいります。少々お待ちを」


 ペチカが早歩きすると、レナがついていく。


「ペチカさん。そのまま突入しちゃいましょう?」

「──その方が格の違いを見せつけられるというわけですね。格上であるとアピールできたら魔人族はおとなしく言うことを聞くようになります。種族特有の矜持はそれぞれありますが、ギルド所属ですからルールに耳を傾けるくらいの常識はあるでしょう。それでは思いっきりどうぞ」

「ツーカーで気持ちいいですねえ」


 訓練場の観音開きの扉を、ペチカとレナが同時に開けた。


「おいっ……!………………」

「……………………」

「……………………」

「……………………っ!」

「わああ赤の祝福ばんざーい」


 一人赤の信者(舞台版)が混ざっていたようだが、それ以外のものは絶句してしまった。


 レナはどう見ても[猛獣使い]であった。

 おそろしく綺麗な毛並みを持つ魔物は明らかにレナ側に寄っていて、レナの三歩後ろに控えている。それに共にいる魔人族の綺麗なこと。美しさはそのまま強さの現れである。


 そしてまさか裏で動くことを好むペチカが直に乗りこんでくるとは。

 そこまで気を回されている相手だということ。以前ルールを破りペチカ(ドラゴン姿)にコテンパンにのされた新人の一部は、ガクガクと膝を震えさせ始めた。


(わあ。見るからに荒くれ魔人族だ〜)


 顔に引っかき傷の跡、もりもりの筋肉を見せつけるような露出の服、黒光りする鎧を自慢げに着込んでいたり、ボロボロさがワイルドだろぉと盗賊的な服だったり。自分が周りからどう思われているか気にかけて馴染む気がなければ、トラブルも起こりやすいというものだ。


 レナは訓練場の中をざっと見渡す。


(予定していた人数よりもけっこう多い。さては予約を快く思わない冒険者が、場所を譲れっていってきたってところかな。私が一番弱そうだからって睨みつけてきても、全然怖くないよ〜)


 魔人族系チンピラは、先日の青の団体によって履修済みである。


 レナの口角がクイッと上がった。


 ▽仕事を一気にこなせるぞ!


「わあ! みなさんもう集まってくれていたんですね。それでは私たちがこれから指導を行います」


「「「は!?」」」


「私は魔物使いレナ。従魔のトレーニングをする者。これしかしたことがないので、そしてクエストではそれを望まれていますので、みなさんには私の従魔の練習に追いついてもらいましょう──!」


 クエスト内容はこうだ。


 [Aランクパーティとして、新人〜中級冒険者を育成するべし。方法はパーティの訓練方針に沿うこと]


 面倒だからといって適当なことをやらせるのではなく、パーティで実施されている上達方法を教えること。

 パーティによって訓練法が違うため、新人〜中級冒険者はいくつかのパーティの研修を受けて合うものを見つけること。

 この交流によって冒険者ギルドの戦力の底上げを図るものとする。


 ここから、冒険者の力が上がると近隣の治安も守られ〜、などとさまざまな「物言い」がくっついてくるというわけだ。


 ペチカはしまったと思った。

 そして起きてしまったことは仕方ないと切り替え、しっかり動けよと冒険者たちにガンを飛ばした。

 ”リュウ”に睨まれた魔人族たちは飛び上がった。


 その飛び上がった体をさらうように、強い風が吹く。

 とっさに足を動かさなければ転んでしまうくらいだった。そのまま駆け足!


「モスラと同じ速度で走ってもらいます。ああ姿勢は正しく、足音を立てないように気をつけてくださいね。姿勢のイメージを体に反映したまま動いてなじませていくのがコツです。無意識にできるようになると隠密行動が可能になりますし、筋力が育ちますよ」


「「うわああああーーーーーー!!」」


「止まってしまわないように適度に獣が追いかけます。服の端を焦がすというリスクがあるので獣の毛に当たらないように。そして冒険者の獣人のみなさんは、同じく獣型になっては知ってみてください。うちの従魔たちは大将気質ですからひっぱられていつも以上に力が出せるようになるはずです。筋力が育ちますよ」


『『がおおーーーーン!?』』


「おおっと、脱落者が出ちゃったか……仕方ないなあ。じゃあクーイズと一緒に驚かし役をやってみましょうか? 走っているみんなの妨害をするんだけど、走っていく方向を見定めて先回りしなくちゃいけないし、変顔とか足払いとか芸も必要だからチャレンジしてみてね。これは発想力が鍛えられるのでスキルが生まれやすいです。レナパーティ調べだから本当だよ」


「「ベロベロバー〜!?(なにこれ!)」」


「ハーくんの真似は無理だと思うので、気にしないでいられるか精神面を鍛えましょうか。訓練場の真ん中におっきな羊が陣取っているだけでも気になっちゃうでしょう。でもよそ見してる暇はないから今やるべきことに集中しましょうね。

 ……疲れてきたみたいだからストップ。ハーくんの近くに行って。休憩10分。眠って……はい再開! ゴー!!」


 ▽レナパーティ式訓練法

 ▽[調教師]ルーカティアス考案の居眠りサイクルメニューです


 訓練場の真ん中に居座る羊のまわりを、ぐるぐる、ぐるぐると追いかけっこをする。

 字面だけならばなんておだやかなのだろうか。

 絵面はといえば、地獄絵図である。


 冒険者たちは全身から汗を出し、顔をゾンビのようにしながらも、足を高速回転させている。ありったけの顔の筋肉を動かして変顔をする。それで倒れていくのは仲間のみ(レナパは変顔に耐性がありすぎるのだ)


 元はといえば体力自慢でやる気にも満ちていた冒険者たちであった。

 今は、繰り返しの犠牲となった屍のようであった。



 しかししばらく繰り返すと、様子が変わってくる。

 冒険者たちの肌ツヤがつやつやとし始めて、ハイになっているのか走る速度も戻るのだ。しばらくすると疲れは見せ始めるものの、明らかに体力が向上してきている。外からは見えないものの、もしかしたらレベルアップしている者もいるかもしれなかった。走る・寝るだけで!


 質の良い眠りは筋肉の回復をうながす。


 先頭を走り続ける従魔はいつしか憧れ、群れの長として認め始める。すると群れへの帰属意識が働いて、おかしなくせが抜けて従魔の理想的な走りを真似し始める。


 動く・寝る・動く・寝る・のサイクルの中で濃密な1日を過ごしているかのように成長したのだ。



 走るという単純な動作を繰り返すことで、さっきまでとの違いが明確に感じられ、冒険者たちの表情は「いいかもしれない」と晴れやかに変わっていった。


(これを、いつも)


 ペチカは震えた。

 なんて原始的じゅんすい。なんて合理的ピカイチ


 見栄を張ってわざと難しい技を教えるでもない。


 レナパーティにこのクエストを持ってきてよかったと、ペチカは小さく拳を握った。



 夕方、約束の時間になったのでレナたちは訓練を止めた。

 さすがにこの頃になると精神力も使い果たして、冒険者たちは再びゾンビのように疲れ切っていたが。


「基礎訓練は大事なんですよ」

「「「ハイ……」」」


 素直に頷いてくれたならOKだ。

 大変上手に調教できました。赤の信者ちゃんなんて輝く目でレナを見ている。


 レナはモスラからバスケットを受け取ると、中のものを配り始めた。


「私たちが開発しているフードメニューです。体力回復効果が高いので、ぜひここで召し上がってください」


 チーズを挟んだパンと、スパイシーなブラウンスープ。

 まだ商品名は伝えていないものの、いわゆるチーズ・ナンとカレースープであった。

 まだ試作品だがいずれはスカーレットリゾートで売るものだ。


「うめえ! なんだこれ、どこの店で買えるんだ!?」

「体の奥からポカポカとしてきやがったぜ」

「くう〜、沁みるねえ〜」


 スパイシーな香りが訓練場一帯に広がり、せっかくなのでとレナが配って回った。


 ある冒険者は、パクられて先に売られたらどうすんだよ? と尋ねた。

 レナは、これは(スパイスの調合という)製法が難しいので再現できませんよ、と答えた。

 それにカレーはさまざまな味があるのでパクられても別の味を開発したらいいのだ。


「やられましたね。本当にうまく立ち回っていらした」

「ペチカさんのこともやっちゃいましたか? あらら。なんてね。これくらいはいいんでしょう?」

「はい。……冒険者が集まってしまったのもこちらの落ち度ですし」

「冒険者ギルドって大変そうですよね。誤ってくださったのでごねたりはしません。けれど落ち度をわりと渡されているのが冒険者ギルドさんなので……できるだけ安全をお願いしたいです」

「できるだけを増やします」

「ありがとうございます」


 レナとペチカは苦笑する。

 安全ではないから、安全にするためにある場所が冒険者ギルドだ。

 そこには困りごとのクエストが舞い込み、解決できる人物もいつだって危険な雰囲気がともなう。


 レナがこの世界で一番最初に尋ねた冒険者ギルドはその最たるものだった。

 だから、この組織にはいつだって少しだけ複雑な気持ちがあるのだ。


 レナは黒羊を抱きしめた。それからオズワルドとレグルスの毛並みを撫でて、モスラとクーイズの手を取り「よくできました」と心からの言葉を伝えた。

 レナの心がほぐされていき、ほっこりとした微笑みを浮かべられた。


(ゴクリ……)と誰かが生唾を飲み込む音がした。冒険者たちである。

 尊敬する長というものに、あのように毎度褒められるとしたら……なんて心地よさそうなんだろうか。


 ▽冒険者たちの新しい扉が開きかけている。

 ▽荒くれているよりも 受け止められる努力っていいものかも。

 ▽ようこそこちら側へ。



 ▽クエスト完了!

 ▽レナパーティは Aランクの義理を果たした!



 ▽Next! 夢特性の魔物騒動












読んでくださってありがとうございました!


まるく収まったようですね(*´ω`*)

レナパの個性的なところは教えづらかったので、基礎的に振ることにしたようです。


来週のレアクラはおやすみです。

次は2022年!


今年も一年ありがとうございました!

来年もたくさん書くのでいつでも読みに来て下さいね₍˄·͈༝·͈˄₎◞ ̑̑♪



それではハッピークリスマス!&良いお年を〜!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 今回も楽しく読ませて頂きました。 ……まぁ、レナちゃんは自身の[実力][権力][コネ]には無関心やしね? ……そして、何時もの(信者が増える)ヤツ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ