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モスラレベリング1

今日はモスラを強化する予定だ。

レナ達は彼を迎えに、アリスのお屋敷へと足早に歩いていく。

道すがら、パトリシアの家にも寄って行く事にした。

彼女は荒らされた花壇や落書きされた扉をそのままにして、レナたちを心配してお宿♡に駆けつけたのである。

昨日も実家には帰っていないのだから、状態は当時のままだろう。

鉢などを軽く片付けておこうと考えていた。


家が見えてくる。

玄関先に2人の冒険者がいるのを確認したレナは、ひゅっと息を呑んで姿を隠す。

もしや、雇われた荒くれ者かと警戒したが…リリーが彼らをこっそり確認して、ゴルダロとジーンだったと告げた。

ほーーっと息を吐いて肩の力を抜いたレナを、リリーとハマルがよしよしと撫でていたのは昨夜の名残なごりなのだろう。



「おはようございます」


「…おっ!?

おお、レナじゃねえか。

なんだか久しぶりだなー!がはははははッ!」


「おはよー、レナちゃん。

ちょっ、従魔たちジト目はやめて…?

君たちのご主人のことよこしまな目で見てないからさ。信じてよー」


『『じとーーーっ』』


「こらこら。すみません…。お二人はこちらで何を?

…パトリシアちゃんの育ててたお花、こんなにされちゃって、残念でしたね…」



パトリシアが母親の育てていた花を大切にしていた事をよく知っている一同は、皆、悲しそうな表情をしている。

ゴルダロが毛の無い頭をガリガリと乱雑に掻いて、ため息をついた。



「そうさなぁ。

…犯人の事思いきりぶん殴ってやりてーよな!?ちくしょうッ!」


「どうどう、ゴルダロ。

それよりいっそ、一生植物を口にできない呪いをかけようよ。ビタミン欠乏症になればいい。

えーと、俺らはねー。

ルルーに言われてパトリシア家の掃除をしに来たんだよねぇ。

玄関先キレイにしとかないとさ、ご近所さんがドン引きしちゃうかもしれないし?」


「なるほど!そうでしたか」



ゴルダロとジーンの目的はレナ達と同じだったようだ。

玄関先に目を向けてみると、なるほど、散らかっていた鉢の破片は一箇所に集められ、踏みにじられた花々も花壇の隅にまとめて置かれている。

成人男性2人はそれぞれホウキを手にしていた。

悲惨な花の状態を見て強い怒りを感じていたレナだが、男性2人のアンバランスな清掃姿を見て少々気が紛れたらしく、クスクスと小さく笑う。



「魔法使いのお兄さんは、ホウキで空を飛んだりするんでしょうか?」


思わずこんな質問をしてしまった。


「うん?

ああ、出来るよ。俺は風属性の魔法使いだからねぇ。

"ホウキで空飛ぶ魔法使い"の童話、レナちゃんも知ってたんだ。

もしかして、俺と同じ東方の出身なのかなー」


「お兄さんが空を飛んでくれたら、カッコ良さ9割増しになると思いますよ!ステキーー!」


「ほんと?じゃあ、頑張っちゃうよー」



まさか出身地を聞かれるとは思っていなかったレナさんは冷や汗ダラダラである。

とっても不自然にごまかしたが、空気の読めるジーンは見逃してくれたようだ。

ゴルダロはそもそも違和感に気付いておらず、相変わらず豪快に笑っている。


ホウキで宙に浮いたジーンはさまざまな空中技を見せてくれて、主人と従魔達はいつの間にか本気で芸を楽しんでおり、気がつけば拍手までしていた。


シュタッ!と着地と同時にポーズを決めた魔法使いに「すごーい!」と皆で賞賛の言葉を贈る。


ひととおりはしゃいで場が落ち着いたところで、レナは"最近の冒険者ギルドの様子"について尋ねた。



「私たち、しばらく冒険者ギルドに行ってなかったんですけど。何か変わった依頼とか貼り出されてましたか?

ギルドの様子も変わりありませんか」



本当に聞きたかったのは"素行の悪い冒険者たち"についてなのだが、ルルーがどこまで2人に話しているか分からなかったので、少々遠回りな言い方になっている。

道端では誰が聞き耳を立てているか分からないので、アリス関連の事をここで長々と話すことはできないのだ。

ゴルダロとジーンは2人で目を合わせると、それぞれの見解を口にする。



「いーや?

貼り出された依頼の方は特に変わりねぇかなぁ。

いつもと大差無い感じだったぞー。

まあ、個人受注してる分のは分からんがな。

ギルドの中は…そういや、ちょっと静かになった気がする」


「いっつも飲んだくれてクダを巻いてた奴らを見かけなくなったからねぇ。

喧嘩してる奴らがいなくて静かだよ。

レナちゃん達がトイリアギルドに来るちょっと前までは、やかましい連中がちらほら2階の食堂に居座ってたんだけどねー。

段々見なくなったな。

飲み屋街や歓楽街には普通に顔を出してるらしいだけど、妙に羽振りがいいみたい。

前に奴らに絡まれてた冒険者が、絶対おかしい!ってグチってたよ。

ま、どうでもいい事だけど」


「おう!そうなのか?

お前さんは異常に耳がいいからなぁ。

内緒話だろうと何だろうと筒抜けだなぁ!がはははッ!」


「そんな人を地獄耳みたいに言わないでよ…?

風魔法で声を拾ってるだけだって。

情報収集って大事でしょ」


「まあな!

そこら辺はお前さんに任せてるぞ!」


「ほんと、任せきってるよね…」



コントしている男2人に曖昧な笑みを返しつつ、レナは聞いたばかりの情報を急いで頭の中で整理していた。


段々とギルドからいなくなったという、荒くれ者たち…。

アリスのお屋敷を見張っていた連中が彼らだと考えたら、完璧に辻褄つじつまが合う。

間違いないだろう。


依頼掲示板に悪事への加担依頼が堂々と貼られている筈もないので、秘密裏にどこかで息子から打診があったのかもしれない。


冒険者ギルドを通さずに依頼が持ちかけられる場合だってあるのだ。

冒険者ギルドはいわば受託の仲介業者であり、お互いの信頼や賃金支払いを保証するための第三者機関なのである。

依頼人・受注人が互いに納得さえしていれば、ギルド所属の冒険者がギルドを通さずに契約を交わしても問題はない。

その場合は、ギルドのランクアップクエストとしてのカウントはされないし、契約書が偽られたり、そもそも発行されない場合もあるが、そこは完全に両者の自己責任である。

依頼者側にしてみれば、まともな冒険者を雇えない事が多い。

ゆえに、ほとんどの者は多少の手数料がかかろうとも、冒険者ギルドを介して契約を交わすのだ。



荒くれ者について、とても重要な情報を手に入れる事ができたと言えよう。

ギルドに姿を現していないということは、彼らが拠点としている場所が別にあるとも考えられる。

またも、レナの幸運が仕事をしたのかもしれない。


少女が「ありがとうございます」と頭を下げると、お礼を言われた男たちは少し不思議そうにしていたが、「どういたしまして」とにこやかに返してくれた。

パトリシア家の掃除はもうほとんど終わっていたし、残りの玄関扉の清掃も彼らがしておいてくれるという。


あまり時間に余裕もなかったので、レナ達は2人に手を振って、再びアリスのお屋敷へと向かった。




***




お屋敷でモスラを迎えたレナ達は、アネース王国内の森林地帯へと向かっている。

いつもなら見通しのいい草原に行くのだが、巨大な蝶々を連れたまま国境門を越えると目立ってしまうし、リリーの幻覚で姿を消させても門番に[看破]される可能性もあったため、今回はこちらを選んだ。

検査の厳しくない国内でレベリングをするつもりだ。


現在レナと共にいるのはモスラ、リリー、ハマル。

リリーは索敵要員、ハマルはモスラの攻撃力補助要員である。

スライム達には、引き続きアリスの護衛としてお屋敷に残ってもらった。

昨夜も、不審者が門や壁を攻撃していたのだ…。

昼間に行動を起こす馬鹿者はさすがにいないと思いたいが、用心はしておかなければならない。

パトリシアが夜のうちにまたも武器花を創ったらしく、戦力は強化されている。

ある程度の相手なら、護衛が3名でも返り討ちにできるだろう。



森林地帯には魔物や獣、大型昆虫が生息しているらしい。

それらが人の住む街に侵入しないよう、森の周囲は壁で囲まれており、その上に結界も張られている。

アネース王国内にはこうした森林地帯がいくつか存在していた。

風と水の乙女シルフィーネの住処とされるご神木が森の中央にあり、その木が痛まないよう、周りに森を残しているのだ。

ご神木の周りは、更に強固な結界に囲まれているらしい。


森の入り口でギルドカードを提示して戦う力があることを証明し、スムーズに壁の内側へと入るレナ達。

森で狩りをするのは構わないが、あまり自然を荒らしてはいけないよと軽めの注意を受けた。



ある程度森の中に入り込んだ所で、モスラにかけていた[幻覚]をリリーが解く。

彼を見たレナは、どことなく遠い目をしている。



「…お屋敷で会った時よりも、また、大きくなった?」


『はい、レナ様。今はだいたい全長2Mほどかと』


「わ…。

成長 いちじるしいねー。

頼もしいけど、目立つし、早めにヒト化出来るようになっておきたいね?」


『頑張ります!』



ジャイアントの名に相応しく、モスラは順調に巨大化していた。

なんと、アリスのお屋敷で彼を迎えた時よりも更に数十cmは大きくなっていたのである。

レナの【レア・クラスチェンジ体質】の効果により、主人の側にいるほど成長が促進されるようだ。

それでは、彼のスキルの威力を測っていこう。



目の前の大木をモスラがじっと睨みつける。

幹の中央にはナイフでバツ印が付けられていた。

まずは[風斬]の攻撃力を確認し、それから、魔物と戦闘をしていこうとレナは考えている。

リリーが周囲を索敵して、訓練を始めてOKだと手でマルを作った。



『ーースキル[風斬]!』



モスラがスキル名を唱えると、バタフライの目前には小さな風の渦が現れる。

それは次第に鋭い半円形へと形を変えて行き、モスラの羽ばたきを合図に、バツ印へと向かって飛んでいった!



ーーーザシュッ!!



『『「おーっ!」』』

『…外しましたか。失礼しました』



一陣の風はバツ印からはほんのわずかに逸れて傷を付けていたが、深さ5cm程をえぐっている。

斬り傷の長さは10cmくらいだ。

モスラは的を外したことを気にしていたが、初めてのスキル使用でこの精度なら、訓練をしていけばすぐ正確に攻撃を当てられるようになるだろう。

攻撃力も、レベル1でなおかつ使用魔力3なら、申し分ない威力だと言える。



「…[風斬]って言うくらいだから、それこそ刀で斬るような"鋭い"風の攻撃も出来そうだね。

今の風の渦は、少し厚みがあったでしょう?

水平に薄ーくしてみて。

渦の方向も横向きにしてみよう。

出来るかな…もう一度、試してみてくれる?」


『分かりました!』



主人のアドバイスを受けたモスラは、再び[風斬]スキルを発動させた。

先ほどよりも風の渦の厚みが凝縮され、なにやらギュルギュルと異様な回転音が聞こえている。


モスラにはセンスがあるようだ。

渦はどんどんと回転数を上げていき、まるで風の回転ノコギリのようになっている。

魔力を多めに込めて、これで斬られたら…けっこうな致命傷になるだろう。



『スキル[風斬]!』


ーーーザンッ!!



お見事!

二度目の攻撃は、今度はバツ印のほぼ中央に当たっていた。

傷もより深く、横幅が大きくなっており、斬り口は実になめらか。

スッパリと斬れている。

これぞ、[風斬]スキルの真骨頂と言えるだろう。


『モスラすごーーい!』

『ナイスーーーっ』


先輩従魔たちが、やんややんやと後輩に喝采を贈っている。

主人もとても満足そうな表情だ。


「うん、よく出来ました…!

こんなに早く成功するなんて、本当にモスラ凄いねぇ。

イメージするのがとっても上手なんだね。

使い始めでこの威力か…。

連続攻撃したら、さらに威力は上がる、と。

いいね…!

次は、連続でスキルを使ってみる?」


『はい!仰せのままに』


モスラは少し照れている様子。


『…モスラ。

肩の力を、もっと抜いてみて…?

さっきは、翅の動きが、ちょっと固かったと思うの』


リリーが、蝶ならではのアドバイスを後輩に与えた。


『はいっ!』


「モスラは返事も凄くマジメだね。

なんだか、年上の人と話してるみたいだよー。

じゃあ、スキル連続使用の練習をしてから一旦休憩して、その後は、[吹き飛ばし]と[威圧]スキルを試してみようか?

余裕があれば、魔物とも戦う感じでいこう」


『はーい!回復はお任せあれーっ』


『頼りにしています。リリー先輩、ハマル先輩』


『『悪くない…!』』



モスラもたいがい世渡り上手なようである。

ハマルが甘え上手なら、モスラは持ち上げ上手というところか。



[風斬]スキルを連続で使用するモスラ。

二度目で1.5倍、三度目で初期の2倍の威力があることが分かった。

スキル使用時に同量の魔力を込めて大木に傷を付けていき、それぞれの傷の"横幅"を計ったのである。


消費魔力は二度目で2倍、三度目では初期の3倍必要だった。

コスパはそんなに良くない。

一度目のスキルを使用してから10秒以内にまた[風斬]スキルを使うと、連続使用とみなされるようだ。


時折ゴールデンベッドで皆でスヤスヤお昼寝しつつ、魔力の回復を待って、スキルの検証は続いていく。



[吹き飛ばし]スキルの威力は、吹き飛ばす対象がいた方が分かりやすいという事で、鎧ダンゴムシに使ってみることにした。

特大バタフライの翅のはばたきは凄まじい。

丸まったダンゴムシ達は凄い勢いで、レナ達から見えないほど遠くまで転がって行ってしまう。

慌てて追いかけていくと、木にぶつかってひっくり返っていたので、ボディをハマルが踏みつけて固定し、殻の間からリリーが体液を[吸血]することでトドメを刺した。

それを平然と指示するレナさん…。

たくましくなったものである。


▽レナは ダンゴムシの鎧×5を 手に入れた!

▽モスラのレベルが上がった!+1


まだ魔物になったばかりのバタフライは、攻撃の補助をするだけでもレベルが上がるベリーイージーモード状態らしい。



[威圧]スキルは、【鈍感】ギフトを持つハマルに対して試してもらった。


『おおー…。これは確かにー、怖いかもー?』


☆5ギフトを持つ彼が低レベルモンスターの[威圧]により取り乱す事は無かったが、どのような効果があるかは、確認することができた。

蝶々の"複眼"により、一度に数百~数千の瞳に睨まれているように感じた、と告げられる。

それは確かに恐ろしい…。

視線恐怖症の者でなくても卒倒してしまうかもしれない。

もう少しモスラのレベルが上がったら、野生のモンスターに対して使ってみよう。



検証をひととおり終えた一同はサンドイッチを口にして小腹を満たし、まだ日も高かったので、レベリングを始める事にした。



▽Next!野生のモンスターを倒して、モスラのレベルを上げよう!



読んでくださってありがとうございました!

長くなってますが、次回はモスラと魔物の戦闘シーンです〜(^^;;


遺伝子やらビタミン欠乏症やらは、研究者ギルドの変態とされる面々が趣味で解析しています

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