チョココ♪ バレンタインデー!★
ギルドカードのステータスとにらめっこしていたレナの肩に、軽い衝撃。
ちいさな手。
ふわんとチョコレートの匂い。
「バレンタインデーというものがあるのですよねっ」
チョココの話はいつも突然だ。
思い浮かんだら、すぐに口に出す。
くるりと前にやってきたチョココと、レナはぱちくりと目を合わせた。
「ん? チョココ……それって昨日の映画の?」
「はいっ」
「よく見てたねぇ。お菓子屋さんの子が、バレンタインデーにチョコはいかがですかーって宣伝してたの、画面の隅っこだったのに」
「バレンタインデーって何ですか?」
チョココは興味津々に、膝の上に乗っかってきて尋ねる。
こんなのでしたね! と魔物型になって、映画の世界で売られていたチョコレートケーキの形になってみせた。
スライムのように柔軟なチョコレートボディは、とろりとあたたかくて命が感じられる。
レナが生クリームをどぎまぎと眺めながら、チョココに話しかけた。
「好きな人にチョコレートを贈る日なんだよ。私がいた地域では、そんな感じ」
『じゃあ、わたしにとってのみんなですねっ!』
不意打ちの言葉にレナが目頭を熱くしていると、
▽チョコレートケーキが 弾けた!
「チョココーーッ!?」
『『『『はぁい』』』』
小さなチョコレートケーキのカケラが、ふわふわと動き出し、それぞれ喋り出した。
とってもちいさなチョコレートモンスター!
──レナの対応は早かった。
いち早く、チョコレートモンスターの核を持つひとかたまりを見つけて、手の中に保護した。
これが本体だ。
壊れたらちょーヤバイやつ。
ドッ、と冷や汗をかく。
「チョココ〜! 初めてのことを試すときには、いきなりじゃなくて、お姉ちゃんたちに相談しましょうねって言ってるでしょー!」
『脳みそ生クリームなので♪……んー、ごめんなさい? 心配させちゃいましたか〜?』
「うん、とても……だって四肢分散だよ?」
『できる! って思ったら、やりたくなっちゃって〜』
ガク、とレナが項垂れる。
ほかの従魔よりも、生まれたてのチョココははるかに自由で能天気だ。
注意されてしょんぼりしても、すぐわいわいと盛り上がってしまってもう笑顔。
王族性質ゆえなのか、甘いスウィーツモンスターの特徴なのか。
(早めにチョコレートクイーンに会って、スウィーツモンスターの性質を聞こうかな……)
チョココが作り出した「わたあめモム」がそのへんをフヨフヨ飛んで、通り過ぎていく。
これらのスウィーツモンスターにも共通した、種族だけが知る性質があるかもしれない。
『レナさま。わたし、みんなのことが好きですよっ』
『レナさま。みんなもわたしのことが好きだと思いますし? ビターな判断です』
『レナさまぁ。このおやしきをチョコレートの香りでいっぱいにするのは素晴らしいと思いませんか? ホワイトな判断です』
「……ん?」
よく見ると、小さなカケラになったチョコレートモンスターたちは、それぞれ色が違う。
スイート、ビター、ホワイト。
チョココが[テイストチェンジ]するときのカラーバリエーション。
「それぞれに性格が微妙に違うよね?」
『『『わたしは、わたしですよ』』』
『生クリームミックス!』
……話が成立するとは思わないほうがいい。
赤ちゃんなんてそんなものだ。
必要なのは根気と、保護者のお察し力である。
(きっとチョココの性格の、どこかの部分が際立って現れたのが、ビターやホワイトなんだよね。それとも、テイストチェンジっていう世界が与えた力に、性格がひっぱられてしまうのかな? 卵が先かニワトリが先か、うーーん……)
考察は、チョコレートクイーンに協力してもらおうと決めた。
のんびりしている暇はないのだ。
チョココたちが騒いでいる。
今にもどこかにいってしまいそう!
『わたしたちがやりたいから、今日をバレンタインデーにしましょう!』
『賛成』『賛成』『賛成』
「自己肯定感がすごい」
さすがのレナも、ここまで言い切られると感心してしまった。
(チョコレートを好きな人に配るのは、悪いことではないし……きっとみんな喜ぶはず。だって「好き」の気持ちが詰まっているから)
ふ、とレナは微笑んだ。
「いいよチョココ、今日をバレンタインデーにしましょうか! それから、せっかくだからチョコレートゲームをしよう?」
『ゲーム?』『楽しそう』『それすてき』『やるぅ!』
「それぞれの従魔が一番食べたいチョコレートスウィーツに、変身するゲーム!」
『おおー』『できそう』『食べられたい』『スウィーツミィ!』
「従魔や友達、それぞれに好みがあると思うんだ。誰がどんなお菓子を好きそうか、わっかるっかなー?」
『わかる!』『ちゃんとみてました』『おまかせですし?』『みんなをメロメロにしてあげますよ』
チョココは、みんながデザートを食べるところをいつもよく見ていた。
レナはそんなチョココの様子に気づいていた。
せっかくバレンタインデーをするなら、チョココが成長できる場になればいい、と思いついたのだ。
「こないだ、アグリスタに指のお菓子化あげてたよね」
『[お菓子な魔法]です!』
『できそうな気がしてますし、ちいさなわたしたちでも』
『丸ごと』
「ま、丸ごと……」
『本体はそちらにいますし? 問題ありません。多分。脳みそ生クリームですけど。いけそう』
『……あ〜、レナさま泣かないで。心配ですか? うふふ、いちばん先にルーカにいさまのところに行けばいいですよね』
ちいさなチョコレートモンスターたちにワラワラ集われて、よしよしと慰められている藤堂レナ17歳(女王様)
ルーカの判断を仰げるなら、と納得したようだ。
子離れ、がんばらなくてはいけない。
「……ルーカにいさま? 小さくなると、あなたたちの呼称の感覚が変わるのかなぁ?」
『こしょう』『へっぷし』『チョ、ココッ! きゅう〜』『くしゃみでチョコ生んじゃった』『レナさまはレナさま』
「あ、うん。はい……」
レナは少し悩んでから「ルーカさんには、ルーカくん、とかルーカさん、とかルカにゃん、がいいかも」とソッと伝えた。
考えすぎるくらいがちょうどいい。
ルーカの義妹関係のトラウマは、根深いだろうと心配をしたのだ。
『じゃあ、いってきまーす!』
『本体のことよろしくなのです、レナさま』
『すきすきだいすき、愛していますっ。うふふ』
『『『本日はバレンタインデー。スウィートミィ!』』』
▽チョココの戦いはこれからだ!!!!
「──いっちゃった」
「い、いっちゃいましたね……ひぃ……」
レナはそうっと隣を見る。
距離を一メートルほど離して、赤いフードの子がいる。アグリスタだ。
フードに顔を隠しながらも、レナとチョココをちらちら伺うようにみている。
「アグリスタ。チョココ、持っててあげてくれる?」
「あ、はい……」
素直に核のチョココを受け取ったアグリスタは、ほーっと肩の力を抜いた。
チョココがいれば騒がしいけど、いなくなると猛烈な不安に襲われるようだ。
レナの心配は尽きない。
(普段、なまじネガティブを感じなくなった弊害かもしれないね。ルーカさんも、いいことがあった後にものすごい悪運がきてネガティブ再発することあるし〜)
世界の仕組みと、従魔の心について、レナはたくさん考える。
大事なものだから、守りたい。
シンプルだ。
「あの……ごめんなさい」
「アグリスタ……何に対して謝ったのか、教えてもらってもいい?」
「……親切を怖がったり、ボクの態度が、多分良くなかったから……。ご主人様、悲しんでいるような気がして……ちち違ったらそれもごめんなさいっ」
レナは、撫でたくなる手を我慢した。
「アグリスタ。そうやって思いやってくれる気持ちがあること、ちゃんと伝わっているからね。大丈夫だよ。私、嫌な気持ちになってない」
ブワッと膨らんでいた尻尾が、しなやかに少しだけ揺れた。
「言葉や態度をガラッと変えることなんて、全部一度にできるわけがないしねぇ。私たち、ちゃんと待てるからね。アグリスタ、いつも努力してるの分かっているからね」
レナはそうっと胸に手を当ててみる。
従魔契約の絆はたしかにここにあると、ほのかな魔力の交わりが教えてくれる。
アグリスタの胸もあたたかくなり、ゾクゾクしながら胸に手を当ててみようとしたが、チョココを抱えているので無理だった。
チョココの本体は、精神を分けているためか、熟睡した状態。寝返りをすると、アグリスタの手からとろーりとこぼれ落ちそうになる。
アグリスタは慌てて溶けチョココを手のひらですくう。
レナがふと思いついた。
「ねぇ、アグリスタ。キッチンに付き合ってくれない?」
「え? それはもちろん、おともしますけど……」
チョココの思いつき体質は、実はレナにも似ているかもしれない。
育ての親なのだし。
ひっそり静かに歩きながら、アグリスタは揺れる三つ編みを見つめてそう思った。
▽チョココが 現れた!×3
『『『ルーカにいさま!』』』
▽早速いわれたことを忘れている!
▽ルーカは目を丸くして、カチンと固まった。
「……三人とも。どうしたの? 20センチくらいだね」
わいわい、きゃあきゃあ、三人よれば雑談が止まらない。
いつまでたっても本題は分からない。
なるべく仲間の思考は読まないようにしているルーカも、これにはお手上げだ。
「……頭の中ちょっと覗いてもいい?」
『キャー生クリームしか入っていませんが!』
『良ければ、視覚からもスウィートミィ、召しあがってどうぞ?』
『見た目と匂いと味まであなたのお楽しみになりましょう』
「はいはい」
▽ルーカは 受け流した。
▽過程を 確認した。
「あーなるほどね。うんうん。把握。……三人とも、思考はほかのチョココに共有されてるかな?」
『『『きっとなんとかなる』』』
「伝えたいって願えば、みんなで情報共有できるみたいだから、やってみようねー」
『『『はーい!』』』
「できるだろうな、って思ってここにまず三人だけできてくれたんだよね?」
『はやく愛をみんなに伝えたかったので!』
ルーカは目元を和らげた。
(純粋だな。それから惜しげもなく、相手に愛情を伝えられるのもいいところだと思う)
チョココは存在を否定されたことがないのだ、とふとルーカは思い至る。
全肯定、チョコだ! と可愛がられて守られて、食べられたいという生理的欲求も、日々叶えられている。
チョココは生まれながらに、恵まれた環境にいる。
(素晴らしいことだと思う……)
このまま純粋に育ってほしい、とルーカは甘いチョコレートの香りを嗅ぎながら、仲間の幸せを願った。
それも純粋な気持ちであるとは、自分のことゆえにルーカは気づけない。
「愛を伝えるために、チョコレートを贈りたい。そのために特別なお菓子になりたい。って、僕に相談しにきたんだよね?」
『『『はい!』』』
「小さな君たちのサイズに合わせた、小さなお菓子に、丸ごとなれるよ。そのかわり、本体とくっついていないから一度変身したらそれまで。二度と喋ることも動くこともできない」
チョココ三人は、目を輝かせた。
『じゃあ気をつけて、どんなお菓子になるか考えないと〜!』
『考えるのって苦手ですけれど、がんばりましょうか』
『スウィーツミィ♪ ああ食材魔物のロマン♪』
ぷはっ、とルーカが笑った。
「君たちの人生に……魔物生に? 幸あれ、だよ」
小さなチョココの頭を指先でそうっと撫でた。
とろりとしている。
人生における幸せが個人差であることを、考えさせられる話し合いだった。
『ありがとうございましたルーカにいさま!』
『とっておきのチョコレートスウィーツをあなたにも』
『すきすき大好き愛していますっ』
『『『スウィーツミィ! [お菓子な魔法]』』』
▽ぽふん!
▽チョコレートカステラと ホワイトチョコチップクッキーが 現れた!
ルーカは慌ててサンクチュアリを作り出し、皿のようにお菓子を保護する。
「なるほど、卵料理に……クッキーかぁ。これが僕の望むもの、って判断したんだね」
にいさま、という響きを思い出しながら、ルーカはクッキーをつまむ。
噛み締めるとソフトな食感で、ネコマタヒト族特有の牙が、ホワイトチョコレートを砕いた。
「甘……。うん、うん」
ドーム型のカステラを多めにつまんで、ふわっと食べる。
ふかふか、レナが作ってくれるカステラそっくりの味がした。
「愛情って美味しいものだなぁ。……甘さで身体の内側が、ぜーんぶ満たされていくような感じがするよね?」
クッションにもふっと埋もれて、ルーカは怠惰に力を抜いて、にこにことお菓子を食べた。
▽ミディが 現れた!
「ルーカ? それ」
「チョココ」
「イイナー! 食べてもらえてイイナー!」
▽ミディは羨ましがっている。
▽ルーカはお菓子を分けてあげた。
ルーカがミディを抱えて、立ち上がる。
「よっ。せっかくだから、チョココ追いかけて見ようか?」
「いいわねー!」
書斎に、コンコンコン、と三回のノック。
▽チョココが 現れた!×3
『チョココっ! バレンタインの幸せをお届けですよ〜!』
『『あなたが好き好き、スウィートミィ♪』』
「あら」
「おや」
「!?」
アリスが目を丸くしていて、モスラとマイラが給仕の手を止めて振り返っている。
「チョココたち。少々待てますか? 40秒ほど」
『『『幸せが遅くなりますよー? むう!』』』
「幸せが訪れるには、タイミングが大事なんですよ。受け皿がきちんと用意されていないとね、お菓子も落とされちゃうでしょう?」
『『『なるほど〜』』』
「さてマイラ。続きです」
モスラが柔らかく声をかけると、マイラはビクッと肩を跳ねさせた。
手に持っていた紅茶のポットを落とすことを懸念したモスラが、手を添える。
「注ぎ方の学習ですし、一緒にやりましょうか。回しながらカップに注ぎます」
「う〜、はいっ」
きれいな茶色に透き通った紅茶がとぽとぽと、ティーカップに注がれた。
「ベスト・ドロップ。いい感じですよマイラ。この動かし方と紅茶の色、覚えておいてくださいね」
「ふぁい……」
ほんのりと赤くなったマイラの耳を見たアリスは(モスラはカリスマ性を放出しすぎ)と思いながらも、クスリと微笑むにとどめた。
マイラはアリスから見て、まあまあ優秀で覚えが早く、しかし誰かに配膳するとなると、恐れているような動きの拙さを見せる。
過去が過去なので、レストランのようなかしこまった配膳の場となると震えているのだろう。余計な緊張をしてしまうのかもしれない、と察した。
モスラのカリスマ性で気が紛れるなら、気分転換するのもいいだろう、と、ウブなマイラの反応をそっと眺める。
飛び跳ねているチョココに視線を移した。
「来てくれたのにごめんね、チョココちゃん、ティーカップ三人分しかないんだ……あ、先に飲む?」
『『『ご心配なく』』』
「そうなの?」
『『『わたしたちは食べられにきたのです!』』』
「納得した」
アリスが深〜く頷く。
レナパーティとの付き合いが長くもなると、その独特の思考回路にも慣れるというものだ。
「そんなに小さいのはどうして?」
『すこしの量でも、みんなのところにお菓子を届けられる方が、いいなって思ったからですー』
『ちいさなお菓子、おおきな愛』
『召しませ♪』
「おお〜」
小粒でも風味は濃厚、らしい。
ちょいちょいとアリスが手招きすると、チョココは『うんしょ』『コラショ』と机に這い上がってくる。
結構器用だ。
『わー。これなんですか? アリスねえさま』
「本。勉強中だったの。スカーレットリゾートの事業、絶対に成功させたいからね。あなたたちが末長く快適に暮らせるように」
『それって、とってもおおきな愛です!』
チョココの言葉に、アリスは声を上げて笑った。
「レナお姉ちゃんは、私の恩人だからね!」
「私の恩人でもありますね」
「……恩人、だと、思います……」
マイラの声は小さくて消え入りそうだったが、口元がもぞもぞとほんの一瞬、確かな笑顔になったのを、アリスたちはそうっと横目で確認した。
((よし!))
全員が足並みを揃えるのは、商業の基本。
レナパーティは見事にこの段階をクリアしている。あとの懸念はギルティアだが、しばらくそれはおいといて。
『『『ハッピーバレンタインデー!』』』
三体のチョココがちいさな手をえい! と上にあげて振ると[お菓子な魔法]が発動した。
▽ぽふん!
▽オランジェ・レモンピールビターチョコレート、キャラメルソースホワイトトリュフ、スイートチョコレートパフェに変身した。
「わ!? ……スウィーツミィ、ってことね?」
「そうでしょうね。いただきましょう。紅茶もいい具合のあたたかさです。チョコレートを口に含みながら飲めば、いい感じに溶かしてくれるでしょう」
「ふ、普通に食べるのぉ!?」
「「美味しいものは美味しいうちに」」
アリスもモスラも、チョコレートが大好きだ。
普段から高級なものを食べて舌を肥やしているふたりでも、チョコレートは赤の聖地に来た時にしか食べられない。
ミレージュエ大陸でチョコレートを求めれば、ほんのすこしで、モスラの給料三ヶ月分ほどが飛ぶ。
本来、とても更生中の罪人が食べられるようなものではないのだが。
(まあ、ここに彼女たちが来たのも幸運のお導きでしょうからね)
▽運命!
▽運命!
アリスは本を机の隅に片付けて、紅茶とお菓子が三人分並んだ。
「「「いただきます」」」
アリスがオランジェピールを齧る。
ねっとりした砂糖漬けフルーツの噛みごたえと、さっと溶けるチョコレートが絶妙なハーモニーだ。
「すごく美味しいよ……! このオランジェ、どこ産だろうっ……言うなれば世界の概念が作り出したオリジナルフルーツって考えるべきなのかなぁ!? 気になるんだけどっ……! ううっ」
キャラメルソースホワイトトリュフで口の中を甘々にしながら、砂糖マシマシマシマシの紅茶を飲んだモスラが、ふうと甘い息を吐く。
「お菓子な魔法、とても不思議ですよね。この世界において不思議を気にしていたらキリがありませんが、アリス様が商人としてもやもやしてしまう感覚はお察しいたします」
「でしょう!?」
「最初からベストバランスで生み出される概念のフルーツ、これは農家泣かせですね。既存の材料で作ろうと思うと……うーん……」
モスラとアリスが話し込んでいる。
マイラは、ドキドキと胸を高鳴らせながら、パフェにスプーンを差し込んだ。
チョコレートアイスクリーム、生クリーム、チョコレートプリン、どれから食べようか目移りしてしまうので、全てを少しずつスプーンにすくった。
そして、その欲張りは正解だったようだ。
全てが合わさって、完璧。
「〜〜〜〜!」
美味しさのあまり、目玉がコロンと飛び出す。
「おや、落としましたよ」
「どうもぉ……」
モスラに目玉を拾われても、心ここに在らず、ポワンとうららかに返事をしている。
恋してしまうような、素晴らしいパフェであった。
舌が感じている。
美味しすぎて大好き、と。
「良かったですね。ほら、早く食べないと、アイスが溶けますよ?」
「ハッ!」
マイラは一口ごとにジーンと噛み締めつつ、急いでパフェを食べる。
アリスとモスラは味わいながら、紅茶を口に含んであたたかい息を吐くのだった。
それは確かな愛しい時間であった。
──ルーカとミディがやってきた。従魔なりのバレンタイン企画改を聞いた全員が、たくらみ顔をつき合わせた。
それからくすくす笑った。
▽イベントって楽しいね!




