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お着替えしましょ☆




 ▽お仕事を始めよう!



「お着替えです」


 レナの顔がほくほくと輝いているーー!

 いえーい!!!!



「仕事をするには制服から、だね。まずマイラ」

「……メイド服。はい」


 おずおずと主人の手ずから受け取って、メイド服を眺めている。


 シンプルなワンピースドレスに、エプロン。デザインは洗練されている。

 縫製はほつれ一つなく、布地は少し触っただけでも指に心地いい。裾にはひらりとレースが揺れた。


(こんなの着たら……うっ、贅沢! うわ、いい匂いもする)


 マイラの目は前髪に隠れているが、口元がむずむずと動いて、どうやら嬉しいらしい、とレナはホッとした。

 マイラの好みを覚える。



「1人で着替えられそう? ワンピースとエプロン、今の服装と似ているしね」

「あっ、はい」

「じゃ、あっちの小部屋使って。何かあったら呼んでね」


 マイラがこくっと頷いて、足早に去っていった。



(……小部屋ぁ!?)


 中の広さに愕然としたとき、ぽろんと目玉が落っこちた。

 でもここには目玉を焼きにくるイカ娘も聖霊もいないので、マイラは落ち着いて着替えることができた。




「アグリスタ。んーと、外したくないものって、ある?」

「……ひぃぃ」


 アグリスタは口を開きかけて、閉じたり、なかなか自分の言葉を伝えられない。


「わたしが選んであげましょうか! これボロボロですね〜代える?」

「さ、触んないで!」


 チョココが、アグリスタの首に引っかかっていた古めかしい縄に手を伸ばすと、弾かれた。

 パシィン! と乾いた音が響く。


 チョココが目を丸くしてアグリスタを眺めている。

 アグリスタは真っ青になっていた。


 ニコ! とチョココが笑いかける。


「なるほど〜。これ、君の大事なものなんですね! どうして大事なのか、聞きたいです〜!」

「……叩いた、お詫びに、言うよぉ。これがないとボクは眠れなくて……」

「そうなんですか〜? それ以外に理由はないんですか?」

「な……うっ」


 ▽ルーカと ハマルが アグリスタを じーっと眺めている!

 ▽ルーカが チョココの肩を ちょこんとつついた。



「こういう時は、大事なものだから手放したくないですか? って聞くといいよ。チョココ」

「分かりました〜。わたし脳みそ生クリームなので、ルーカ先生から学ぶことがたくさんあります!」

「頭で覚えようとするとすぐ生クリームミックスになっちゃうから、本能に刻んでいくといいかもね」


 ルーカが、すっと離れる。

 アグリスタの嘆きの衝動が感染うつったので、別室で少し泣いた。



「大事なものって手放したくないんですか!?」


 ▽チョココ 渾身の失敗!


「ええ!? それって、魔王様みたいな……死ぬのって怖いのか? みたいな……君も、そういう、タイプなの?」

「お菓子の王族だから似てますね!」


 ひぃぃ、と言いながら、アグリスタは先日のことを思いだす。


「輪廻転生……魂が循環、すること。大事なものを手放しても、いつか、また現れるのかもしれない……」


 でもまだ、古びた縄を手放すことはできなくて。


 馬飼いの男が、首を吊った怨念の輪。

 これが仔馬の首に触れた時、アグリスタは魔物になったのだ。自らを苦しめる呪いであり、アイデンティティでもある。


「縄、まだ欲しい、です……」

「わかったよ」


 じれじれしながらも口を出さずに待っていたレナは、ふわっと友愛の笑みを浮かべた。



「シャツもそのままが良いんだね、分かった。ズボンは……新品だからそのままにしよっか。足に怪我をしてるから、包帯を巻いて。あとフードケープ」

「フードケープ?」


 レナがそれは嬉しそうに取り出した、丈が長めのケープを着て、フードを被るアグリスタ。

 まるで赤ずきんちゃんさながらになった。


 レナが、歓喜に叫びたい衝動を抑えて、せいいっぱいのほんわか笑顔でアグリスタをみる。


「アグリスタは人と目を合わせるの、ちょっと苦手だよね。ここって人が多いから、目線避けがあるとちょっと安心なのかなって。アグリしゅっいたっ」

「……アグ、でいいです……」


 ▽舌を噛んだレナをいたわった。

 ▽先輩従魔からの好感度が、100上がった!



「ジレ」

「はい」


 ジレが受け取ったのは、黒い布地に花模様の……


「えっと、エプロン?」

「そう。私たちと庭のことやるからさ」


 パトリシアがぽんと肩に手を、置こうとして紫の触手と握手した。


「んっ!? ……あー、毒か。ごめん」

「おうともよー。パティお姉ちゃん、ヒト族だからさー、毒効きやすいよ? 気をつけて!」


 クーイズが注意した。


 それからジレを眺める。

 本人は気にしていないそぶりを頑張っているが、ひくりと目尻が引きつった。


(毒が滲むこと、壮絶なコンプレックスらしいもんねぇ)


「と、いうわけで! 我らから服もプレゼントだよーん。なんと! 毒を吸い取ってくれるんだな」

「は!? そんな都合がいい服が……」

「店には無いよね。だからオーダーメイドだぜ、君の更生のために」

「……ッ」

「君以外には使用用途がないからさ、受け取ってよ? 漆黒大薔薇とゴーストローズの花びらをうすーく伸ばして、紫スライムジェルでくっつけたものに、付与魔法をかけて柔軟な布みたいにしたの! ホラホラ〜」


 クーイズが渡した服は、体にぴったりとフィットしそうな細身の長袖長タイツ。今の服の下に着ることができそうだ。尻尾を出せるような獣人向けのデザイン。


「ジレさ、肌荒れもしてるっしょ。自分の毒で。それも治ると思うよ」


 毒で自らの皮膚も傷つけられ、細かなかさぶたができているジレの腕。

(よく見てる……)

 ジレは緊張したが、頷いた。



「それから園芸をするのに、肌出しは厳禁だしな」

「おうともよ」


 パトリシアとクドライヤが深ーく意気投合している。

 そっと店長の後ろから顔を出したリオが「頑張りましょうね」とそっと声をかけた、その顔が決意に満ちているのが気になる……。


「な、なにをやるんですか?」

「「「園芸」」」


 ▽レナパーティのお屋敷の、園芸。

 ▽園芸ダンジョン。


 ▽不安そうにしながら、ジレが着替えを終えた。



「うわ……あの……花びらの表面って、こんななめらかな触り心地、なんですね? 肌が痛くなくて……えっと、快適です。すごく」


 ちょっと気恥ずかしそうに、エプロンの端を摘んだジレ。

 治療効果が高まるように、エリクサーを吸収したあとの薔薇を使ったので諸々任せておけ。


花を褒められ慣れていないクドライヤも、少し耳の先を赤くした。




 ▽マイラが登場した。


「「あ、似合う」」

「う。ありがと……」


 ジレとアグリスタが褒めたので、マイラは頬を染めてほんのり笑った。

 ふわふわ、浮かんでいた足が、床に着く。

 こつん、と丸みのあるローファーが音を立てた。

 ぴかぴかの黒色だ。



「みんな、とっても素敵! 準備が調ったね」


 レナがにこにこと言う。

 心の中で「ああああ可愛いいいぃ!!」と感激しているのが、主従の絆でほんわりと伝わって、レナは本心で褒めてくれたらしい、と新従魔三人を安心させた。



「それぞれの仕事をすこし、してきてもらいます。先輩たちの話をよく聞いてね、分からないことや不安なことはできるだけ相談して。どうしても言葉にできなかったら、呼べば魔眼の金色猫がやってきてくれるから。

 じゃあ夕飯まで、行ってらっしゃい!」



 ジレとクーイズ、園芸組。

 アグリスタとチョココ、創造組。

 マイラとミディ、家事組。


 それぞれが持ち場に向かう。



 戻ってきたルーカが、レナとそっと目配せした。


(レナはあの子たちの側に、いなくてもいいの?)

(今日の物語の主役は、譲ろうと思って。私が行ったら、指揮する私の物語になっちゃうでしょう? そうじゃなくて……三人分の、それぞれの物語を紡ぎ始める、大事な時だと思うんですよ)

(なるほど。レナ、世界構造をなんとなく理解してるね)

(なんとなく!)


 くすくすっと一緒に笑った。

 ラナシュ世界のことはなんとなく、でもいい方向に進むように、考えることが大事なのだ!



 考え方によってはどんどんと良い世界にしていける、そんな場所なのだから。

 夢組織の思想を聞いたレナは、逆転の発想で、これからの生活に活かしていくことにした!



「本日中はもう、できるだけ目立たずに過ごすつもりなんです。もう目立ち尽くしたからね!!」


 今ここに残っている従魔たちとレナが、大きな笑い声をあげた。



「さて。待機組のみんなー! ヘルプがあった時にすぐ対応できるように、それから隠密行動スキルを上げるために、そっと壁の陰から見守りに行くよ?」

「了解!」




 ▽レナと先輩従魔が 暗躍スーツに 着替えた。

 ▽シチュエーションコスチュームプレイは大事大事ィ!


 ▽気をぬくとすぐにレナが物語の主役になるぞ。気をつけろ!


 ▽そーっと……そーっと……

 ▽…………




 ▽明日から3日連続ミニ更新となります。

 ▽年末をお楽しみいただけますように!



挿絵(By みてみん)

可愛い♡♡♡


読んでくださってありがとうございました!



三連続更新、キサミディレグルスが仲間になった時みたいなSSにしたいです。

それぞれの気持ちと過去をちょっと掘り下げて、お屋敷システムに触れるような。


年末、楽しんでいただけますように!


( *´꒳`*)੭⁾⁾


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