新たな君らをエスコート!☆
「館内を歩くのに、エスコートがある方がいいわ」
いいのか?
……と新人三名は思ったが、素直に頷いた。
思いやりの気持ちでレナ女王様が発言したと、分かるからだ。
かりそめの絆の細い繋がりでも、主人の素直な心がよく伝わってくる。
それはとても不思議な感覚で、むずむずと、こそばゆくて、まだまだこわい。
でも「首輪の制限があるから」「従魔だから」と考えることで、三人は前に進めた。
どうして館内を歩く程度にエスコートがいるのか?……これから新たな世界を知る。
「先輩従魔と手を繋いで欲しいんだけど。いいかしら?」
「「「……っはい!?」」」
「まあよかった。いい子たちね。床が波打ったり、階段が動いたり、花びらが舞ったりするから驚かせちゃうかなって」
レナもしたたかになったものである。
ポルターガイスト現象? なんて三人が思っていると、レナがニコッと微笑む。
その微笑みは、なんだかちょっと意味深で、こわさが一割増しになった。
アグリスタが涙ぐむと、三人ともが震える。
「ジレとクーイズ、アグリスタとチョココ、マイラとミディ」
レナが指示する。
どきっ、と三人が固まっている間に、一瞬で手を取られる。
合意だからね!
ぐいぐいいくよ!
「我らがクーイズ! ブリリアント・ジュエルスライムだよん。毒耐性があるから君の世話役にうってつけなんだぜ、ジレ少年〜!」
「……よ、よろしくお願いします」
「はいよーっと」
ひんやりと冷たいスライムハンド。
毒が効かない、と教えられたジレは、安心して、クーイズの手を握り返した。
ぐに、といやに柔らかい感触にびっくりした。
「あ、ごめんっ、俺、力加減が下手で……手のひら貫通してる!?」
「にゃはは、スライムだからねー平気平気! 君、力強いんだなー。いっぱい練習するといいよ。我らスライム、何事も柔軟だからさ、痛くない痛くない〜」
ケラケラ笑い飛ばすクーイズのおおらかな性格と、宝石みたいな極上の美貌とのギャップがすごくて、ジレの脳内は大混乱だった。
(こんなギャップ……スイがブチギレた時くらいだ……)
ジレはスッと冷静になった。
アグリスタの周りを、チョココがくるくる駆け回っていて、律儀に視線で追いかけていたアグリスタが、目を回しかけている。
「わたしはスイーツプリンスのチョココでーす♪ あれ、あなた、泣きそうですか? んー、では涙を、甘〜い飴に変えてしまいましょうね」
「えっ!?」
「はーい、スウィーツギフト♪」
「えっ、えっ!? あぐっ」
「あなたからも幸せの味が、生まれるのですよ〜! なんてハピネス♪ デリシャス♪ るんるん♪」
チョココに涙キャンディを食べさせられたアグリスタは、ふらふらとしている。
(共食い!? えっ、なんで!? ……あ、甘い)
幸せの甘みに、恐れが引っ込んだのも束の間、
「あっ手を繋ぐんでした」
「……ぎゃー!? 君の、その手に触ったら、お菓子にされるんじゃ……ッ!?」
「生物はまだはんぶんしかお菓子にできないから〜、大丈夫でーす♪」
「はんぶん!」
ギャーギャー喚いているアグリスタの嘆きの感情にも、チョココはビクとも靡かない。
常にスウィーツハッピー。
生クリームの脳みそ、つよい!
涙キャンディを追加されたアグリスタの頬が、リスみたいに膨らんだ。
「デリシャス♪ るんるん♪ ミィはデリシャスクラーケンのミディアム・レア! お腹が空いたらいつでも召しませ、あなたのお口に、イートミィ♪」
「よ、よろしく……」
「カトラリーの整理整頓は得意ナノ! ミィが教えてあげるからね」
「あ、そっか。私……メイドにならなくちゃ……はい」
「後でルージュ様も手伝いにくるノヨー」
「精霊が家事を!?」
叫んだとき、マイラの目玉がポロリとひとつ落ちた。
前髪で顔の上半分は隠れているが、眼球が床に転がっている光景はけっこうなホラーである。
「キャー! 目玉だ! 焼く? 白炎あるノヨー?」
『我々を呼んだか!?』
「焼かないでー! ……ッまた精霊!?」
ふたつめの目玉も落ちた。
カルメンは聖霊で……なんて説明をしたらまた驚かせそうだ。
「モスラ……」
レナが助けを求める。
「はい。──リトルレディ、あなたが落とした目玉ですよ」
モスラの言葉がなんだかおかしいけど、現実だから仕方がないし、カリスマ執事スマイルで新人メイドがごまかされたから、よしとする。
▽がんがんレナパーティに染めていく!
▽まだ玄関前!!!!
▽扉が開いた!
▽レナ女王様の石像がどーーーーーん!!!!
……だが、新人たちは落ち着いている。
(((本物の方が、インパクト、あるかも……)))
レナ女王様のナマ高笑いは、覇気付きなので、臨場感がケタ違いなのだ!!
▽先により驚かせていたことが 功を奏した。
▽結果がきちんと後でついてきたので、これでよし。
▽はい次!
(((どこにいくの?)))
「まずは館内の案内よ。自分たちが暮らすところのこと、不明なままだと不安でしょう?」
新人たちの心理を読んだかのような、レナの言葉。
手を引かれている三人は息を呑んだが、黙って、言葉の続きを聞くことにした。
(どうして不安さがわかったんだろうな)
(仮従魔契約、したから、心読まれてる?……ひぃ)
「まったく知らないところに放り出される不安ってね、実は、よく分かるの」
(((!)))
一番前を歩いていたレナが、変身した。
変身が解けた、というべきか。
赤いドレスが淡く光って、シンプルな白のシャツと赤のキュロットスカートに変わる。
長い三つ編みを揺らして、振り返った表情は、先ほどとはまるで違って、ただのやさしい「お姉さん」だ。
顔立ちのせいか「少女」という言葉の方がふさわしいとすら言える。
(((誰?)))
三人にとっては晴天の霹靂だった。
だって女王様状態以外のレナを見たのは、初めてだから。
先輩従魔たちがうっとりと三つ編み少女眺めているので、あれはさっきまでのレナ女王様らしい……となんとか認知できた。
「私もねー、経験があってねー。知らないところにぽんっと放り出されて、不安でしかたなくて。周りの情報を手に入れたかったし、頼ってもいい手が欲しかったんだよ」
(あっ)と三人が気づいた。
自分たちが、先輩従魔と手を繋いでいるのは、レナの経験に基づいた気遣いでもあったらしい……と。
レナが嘘をついていないことは、細く繋がった魂が素直に震えたことで、知った。
過去、そのような状況で、レナもきっと怖かったのだ。
思い出しても震えるくらいに。
この魂の繋がりもまた、頼ってもいい手、である。
三人は、自分たちに与えられたチャンスに、またひとつ、気づいた。
「もしもみんなが、本契約をしてくれた時にはね、私の過去のことも、きちんと全部話すからね」
知りたいか、と言われると、知りたい。
夢組織は、傷の舐め合いで成り立っていた。
だから、レナに暗く悲しい過去があるなら、覗いてみたいと、三人はそのように考えて、少し前のめりになった。
それから、先輩従魔にぎゅっと手に力を入れられて、ハッとする。
引きつった苦笑いを浮かべた。
(……まあ、レナに関心を持ったってこと、我らは前向きにとらえるけどね。危なっかしいなぁー。厳選して選んだ三人でこれかぁ。まったく、教育頑張らなきゃ)
「「転ぶとあぶないよー!」」
チョココとミディの純粋な心配の声を聞いて、クーイズもパチリと目を見開くと、自分への苦笑いを浮かべた。
「そんなに信用してもいいの……?」
ジレが呟く。
(だってどれだけ取り繕っても、犯罪者だってもう称号に刻まれている。この主人、けして軽率なわけじゃないだろうし、全部教えるとか、なに考えてるんだろ……)
レナとの距離感を測り兼ねている。
クーイズがとなりで、軽く言う。
「本契約をしてくれたら、ってレナが言ったでしょ〜。君らが対価を渡したら、得られるものがあるってだけのこと。だから、そんなに緊張しなくていいって」
「……そう」
落ち着かなくて、心がざわざわする。
ジレは親切を提示される得体のしれなさに、とくに引いてしまうようだ。
(この子は……煉獄火蜥蜴の能力で嫌われることには慣れてて、その逆は未知だから、こわいってタイプなのかな)と、クーイズは察する。
(ルーカも我らもその未知に飛び込んでいけたから、きっと大丈夫!)
じんわりと指先に毒が滲んでいることに気づいたジレが「ごめんっ」と青ざめる。
「珍味ごちそうさま☆」
「……!? スライムって全身捕食……手から、毒を食べた? そ、そういうこと?」
(お、かしこいじゃん)
ウインクしてみせるクーイズに敵う予感はまるでしなかった。
ジレは、ぽかんと見上げるばかりだ。
アグリスタとマイラも、クーイズの大胆なフォローに耳をすませていて、安堵したのか、ホ、と肩の力を抜いた。
──ひとつずつ、ひとつずつ、解かれていっている気がする。
──とても丁寧に解いたぶんの「代わりのなにか」を施されている、そんな気もする。
前に目を向けた。
レナの歩調はゆっくりだ。
赤いブーツが絨毯を踏みしめると、あらかじめ告げられていたとおり、バラの花びらがぶわっと舞う。
こんなに普通の少女なのに、薔薇の花にもまるで負けない気品があった。
従魔みんなが、レナに足並みを揃える。
動体視力に優れた魔人族たちが、動きを読むことはカンタンだ。
一歩。
一歩。
従魔みんな、もちろん三人もである。
このようにゆっくり歩くと、心臓のリズムも整うことを、初めて知った。
いつも、なにかに追われるように、早足だった。
それは自分たちを疎む敵だったり、腹をすかせた野生の獣だったり、壊れかけの建物の床だったり、とにかく世界は優しくなくて。
怖がって逃げてばかりいたけれど。
ここは安全なのだ。
安全保障というものが、こんなにも心の余裕を生むと、初めて知った。
館内をそろりそろりチラ見して、やがてじっくり眺め始める。
歩く方向は、きちんと導いてくれる手がある。
先輩従魔と目が合ってしまっても、睨まれることはなかった。
ニコッと微笑まれるか、見守る目をしている。
良縁を得たのかもと、知った。
きれいに清掃された館内には、埃ひとつ落ちていない。
その代わりにサンドクッキー・モムが入り込んで、砂つぶを落としていくけど、シュバッと吹いた隙間風が砂つぶを回収した。(超速鈴生りマッチョマンが、お家妖精よろしく生息しているのだ)
天井でリンリンとやわらかな音が鳴って、のんびりとした心地よさを演出する。
時計は置かれていない。
今は、自分たちの時間で生きればいい。
豪華なエントランスホール。
しかしその基となる家具や建築内装は、ボロボロ状態だった時のものが修繕されていると気付いた。
(ボクたちが使ってたオンボロ椅子!……布が張り替えられて、木がつぎはぎに足されて、すっかり見違えてる)
素材そのままに「リメイク」して美しくなることを、初めて知った。
それを自分たちに、反映して、考える。
(((元が、望まれない魔物だったとしても、きれいになれるんだろうか……)))
▽きっとできる!
▽レナパーティがついてたら百億人力だからね!
▽やったーーーーー!!!!
きれいに、歩み直したいのだろうか?
きまってる。
仲間のところにチョコレートを持っていく、と決意したあとだ。
ここにきて、初めて知ったことが、いくつあるだろう?
それはきっと大切な気づきだ。
「幸せを、知っているから……幸せを、教えられるの! ねっ」
「そうそう。シュシュがリリーたちに、教えてもらったことだね。押忍!」
軽やかに笑う漢女の会話を耳にして、三人の頬が、期待にうっすらと染まった。
▽お仕事を始めよう!
エスコート!
クーイズと身長差ちょっと出しすぎたかな^^;
執事メイド服!
こんなのいいよねっと描いてみました
【夜季さん[@Satan_Reakura ]の色塗りファンアート!】
綺麗すぎたから紹介です(*´ω`*)えへへ
嬉しい♡♡♡♡
ありがたくもファンアート沢山頂いていて、全てはここで紹介できないけど(みてみん→なろうの画像掲載かなり手間なので)
本当に嬉しくて、スマホとHDに大切に保存しています!!
ウルトラスーパーエナジーです(*´ω`*)
ありがとうございます!!!!!!!!!
はー、創作始めて幸せですよぉ……
いつも読んでくださるみなさんも、本当にありがとうございます!
PV嬉しい!!!!ヾ(*´∀`*)ノ
なんかボリューム足りないなぁぁぁと違和感モゾモゾしてるので、あしたちょっと加筆するかもです(。>ㅅ<。) 今日は子供がパーリナィなので見直し不足(苦笑)




