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夢の子供の仮契約

 



 玄関で、出会い頭に、きらびやか主従ビジュアル攻撃を受けて、震えあがった元夢組織メンバーの三人。



 しかしながら、その程度で済んだ、とも言えるのだ。


 ロベルトとクドライヤは正直驚いていた。


((レナパーティをくらってこの落ち着きとは!))



 ▽レナパーティという概念を攻撃力にするんじゃない。

 ▽でも冒頭似たような説明しかできていない。

 ▽うーん……



 ……高笑いするレナの後ろで、キラが首を傾げている。


「キラ、先輩。どうしたのっ?」

「いやぁ、概念ってなかなか複雑だなあって思いまして……うーん……」



 キラの背中に、小さなウィンドウが現れた。


(どのように状況説明すべきでしょうか? より分かりやすく、より面白く、それでいて世界の常識から外れすぎないように……)と考えると、ウィンドウに瞬く間にメモが書き込まれていく。


 リリーが隣から、それを覗き込んだ。


「わ。難しい、言葉だらけ……よく分からないの! えへっ」

「それは困りましたねぇ」

「そうなの……?」

<これ、赤の経典の下書きなんです。だから老若男女に読んでもらえて、楽しくて、マスター・レナの素晴らしさがわかる文章にしないとって>


 まだ秘密ですよ? と脳内音声でこっそりと教えてくれたキラに、リリーはポンと手を打ってみせた。


「ご主人様の、いいとこ。今、全力だもんねっ!」

「そうそう。今のマスターの勇姿を記録せずにいられますかっ! てね」


 ぐっ、と拳を握って小声で力説するキラ。


(校正頑張りましょうね?)


 そっとキラが視線を送った先の、モスラは慣れたもので、パチンとウインクを返してきた。



 ▽従魔たちは ご主人様の堂々とした高笑いに 聴き惚れている。

 ▽敵を挫き 味方を鼓舞するのだ!


 ▽そしてこれから 敵が味方となる。

 ▽その類いまれなる女王様パワーによって 

 ▽女王様とはパワー!



「あっいいですねこれ。わけわかんないけど面白くて勢いがあって、雰囲気はバッチリ伝わります。カリスマの方が適正な気がしますけど、パワーいいですね」


 ぷふっ、とキラが笑う。

 リリーもつられて笑った。



((あ、なんか馬耳の子アグリスタがこっちを見てる。泣きそうだ))


 激烈ポジティブリリーはニコニコと手を振って。


 キラは試しに、涙ひとつぶをエリクサーに変えてみた。唇の端に涙が吸い込まれた時、アグリスタの目が白黒している。



 ▽回復(物理)回復(精神)〜!

 ▽アグリスタはきょとんと 泣き止んだ。

 ▽ポジティブって 最強!



「ねぇ、キラ先輩。文章だけじゃなくて、映像つけよう……? 視覚でフォローっ」

「やや、リリーさん、それは素晴らしいアイデアです! 赤の教典ホログラム版とかいいですね」

「ん???? えーと……いい感じに♪ だって難しいの、分かんないもん」

「素敵な補助ですよ」


 キラとリリーがにこやかに見つめあった。


 短所を長所にできる、それぞれが補助をしたらいい、ここはそういう場所なのだ。


 夢組織の三人も、きっと、自分の素敵なところを見つけていける。



 ▽記念すべき一幕が 赤の教典に 納められた。

 ▽【赤の女王様と夢の子どもたち】

 ▽ホログラム映像版もあるよ!



 ちょこちょこと、ホワイトチョココが、リリーの前に走ってくる。


「スウィートミィ! 生クリームケーキをどうぞ、さあ、リリーさま」


 ▽脳みそ生クリームになーれ! もーっと!


 深く考えすぎないほうが、面白い文章を作ることができるのかもしれない、ナイスセンス、とキラは感心した。


 ▽注意! 生クリームを食べたからといって脳みそに悪影響はありません。

 ▽なーんて。


「あっれー? キラさま、どうなさったんですか? お口が笑っていて、なんだか楽しそうです〜。楽しそうって、しあわせですね〜。生クリームケーキをどうぞ♪」

「ありがとう御座います」


 キラが、生クリームケーキを受け取った。


「ミィのイカゲソとのコラボなノヨー♪」

「イカ断片を[お菓子な魔法スウィーツマジック]してホワイトバニラスポンジにしたんです。ねー♪」

「ねー♪ マシュマロ綿花を乗っけたとこが生クリームになったノヨ」

「なんと」


 キラが目をパチクリさせながら、生クリームケーキを眺める。



 分身体が、ゴクリ、と喉を鳴らす四人・・の様子を察知。

 ふむふむ……とアテレコしてみる。


<(なにあれ美味しそう!)(主人が高笑いしてる後ろでケーキ食べてんの!?)(何が何だか……自由……)ってところでしょうか? あと(面白そうだな!!!!)って念も感じます>


 キラが、ニヤッと口角を上げた。


<いいですよ。面白いシーンが撮れそうですね?>


 赤の教典の文章テンションと、新人の好感度、どちらも上げられたなら最高ではないか!



 ▽やってみよー!!!!



 キラが一歩前に出る。声を張る!


「赤の女王様の指令に基づき!」

「よろしくてよ!」


 ▽レナは女王様が解けないー!

 ▽おそらく、こんなはずじゃなかっただろうけど、従魔を信じて微笑んで!


 ばさあっと赤のマントが翻って、花びらが舞う光景は、赤の教典・中章の始まりにふさわしい。



「夢の子供達に、ウェルカム・ドリンクを贈りましょう。ミディさん、チョココさん、二人の出番で御座います!」


 キラが異空間から[パフェグラス][ねじねじストロー]を出して、お盆にのせた。


「「りょーかいっ」」


 ▽よくわからないけどドリンクを作ればいいらしい!

 ▽思いやりと美味しさがあったらいいんだよね??

 ▽オッケー!

 ▽幸せになーれ!


 ミディとチョココが、可愛らしい拳を天につき上げた!



「炭酸シャボンフィッシュ、おいでおいで〜」

「こっちナノヨー」


 二人が空に手招きすると、四体の透明なフィッシュが降りてきて、パフェグラスに入る。

 とぷんとグラスを炭酸水が半分満たした。


 マシュマロ綿花をひとつのせる、アイスクリームになって炭酸をまろやかにする。


 スライムジュエル(赤)をひとつ飾って、[お菓子な魔法スウィーツマジック]ジュエルチェリー(赤)に変えてしまった! 砂糖に漬け込んだように表面はとろりとしていて、果汁がしたたると、炭酸ジュースをきれいな赤に染めた。


 イカの吸盤リングがホワイトバニラクッキーになり、アイスに刺さる。


 キラがエリクサーの魔法を施すと、しゅわしゅわっと泡が輝いた。



「「さあ召し上がれ!」」



 給仕をしたのは、ミディとチョココ。


 自分たちよりも幼い二人に、近寄ってこられると、夢組織の三人もそこまでの警戒心は抱かなかった。

 にこーーっと無邪気に笑っているのもよかったかもしれない。


 いや意味がわからなくて硬直しているのかもしれないけど。

 一番に手を出さなかったドグマはえらい!


 ……と、オズワルドはホッとしている。


 そっと[重力操作グラヴィティ]して、パフェグラスを落とさないようにサポートしながら。



 誇らしげな顔で、パフェグラスを運び終えたミディとチョココは、「「はい!」」とぐいぐい差し出す。



「ええ〜……あの、そのっ……っ……!」

「こ、これ、どう、えっと、どうすればいいのっ」

「……………立って飲めばいい、ですか……?」


 上から、アグリスタ・マイラ・ジレ。


 レナがにっこりと言い放つ。



「椅子がなければ、魔王に座ればいいじゃない?」


(((ウワアアアアーーーッッ!?!?)))


「もふもふのちょうどいい獣椅子よね」


((((レナ様ーーーーッッッ!?))))


 ビシャアアアアン!! と子供3人・護衛部隊のメンタルに雷が落ちる。


 ガクガク震えながら、レナ女王様と魔王の動向を見ているしかできない。



「む。それでは我が食せないではないか?」

「一番に召し上がって。そうしたら子どもたちも安心して食べられるでしょう? 貴方ならレナパーティを信用して下さっているもの、さあ、一番にお飲みなさいませ」


 レナがにっこりと微笑む。

 毒味をしろ。

 そしてその後に椅子になれ、と。


「一番という響きは大好きだ!! ふははははは!」


 ……オズワルドが片手で顔を覆った。



「スウィーツドリンク・スカーレットバニラフロート! 赤と白の幸福、ウェルカムな気持ちを添えて、ですよ〜♪」

「イートミィ!」

「スウィートミィ!」


「いただこう!」


 魔王がパシィィィン! と手を合わせた。

 衝撃で空気が震えて、炭酸が、プクプクプクっ! とたくさんの泡をきらめかせた。



 ▽ウェルカムドリンク 実食。


 ▽ストローからしゅわしゅわっと吸われていく赤の炭酸水は、チェリー&ベリーテイストの華やかな甘さ。エリクサーの回復力が浸透していき、体調を整えて、五感をより冴え渡らせる。


 ▽バニラアイスクリームは天上の味。まったりとした舌触りが、炭酸をやわらかく包む。舌の上でもったいぶって溶けた。


 ▽クッキーをサクッと噛めば、バニラの相乗効果!


 ▽ジュエルチェリー(赤)は食感がどこかスライムグミに似ている。表面のハリを歯で破れば、じゅわっと果汁が溢れ出した。魔王の美しさが向上した。



「ガオオオオオオン!!!!」


 ドグマは吠えた。

 この咆哮に、いろんな、味の感想を込めた。

 本能が「美味い!!!!!!」と叫んでいる!



「翻訳するね」


 ルーカが言葉を補完して、たくさん褒めた。

 ミディとチョココの顔がぱああっと輝いて、キラがニッと笑う。



「さてお前たちよ。我に座って食事をするがいい。許す」

「「「エッッッ」」」


 魔王が良くても! 子供たちのメンタルが持たない! でも拒否権はない!



「なに、汚れは気にしない。オズワルドも幼い頃は、我の毛皮の上で漏らしたこともあるのだし」

「父!!様!!」


 遠方でオズワルドが顔を真っ赤にして吠えた。


「赤子なんてそんなものだ」

「デリカシーってもんがないんだ、アンタには!!」


 わなわなと震えたオズワルドが(あの人にとって恥ずかしいことってなんだ!? ……絶対、戦闘で負かしてやるッ)と、武闘大会を想像しながら、眼力鋭く父親を射抜いた。


 そんな目してたら新人が怯えるだろうが、とレグルスに目を覆われた。



 ドグマはけふっと息を吐いて、大満足と言わんばかりに「大満足!!」……うん。バッチリ言葉にしてから、獣の姿になる。


 すこし体を小さくすることくらいは、できるようだ。

 高さ6メートルのデス・ケルベロスが、地に伏せた。



 護衛部隊の口があんぐりと半開きになる。


(いやいやいやお昼寝スタイルって、いやいやいや)

(魔王の尊厳というものが、待て……いいのかこれは……!?)

(法律的アウトラインはなかったわよね!? あとはモラルの問題だけのはず、きっと大丈夫ぅぅ……! そうであって……!)

(プライベートですもんねー魔王様。あれ今って業務中?王宮に帰るまでがオシゴト?……考えないようにしとこ)


 ▽護衛部隊は 視点を 魔王から微妙にズラした。



「アイスクリーム、溶けちゃうよ?」

「今が一番美味しいノヨー! それってだいじ!」


 ミディとチョココが、よいせっと、子ども3人を押して魔王に座らせた。


 漆黒の毛並みがジュエルの輝きを纏っている! ツヤツヤ! トゥルルン!


(((ひええええええ)))


 ▽語るには語彙が足らないくらいの極上の座り心地!


 落ち着かない。

 護衛部隊も落ち着かない。



「さあ召し上がれ」


 にこにこと告げるレナは、金色ソファに腰掛けている。


 きんきらきんの羊毛に赤色がとても映えて、ド派手。

 イチゴジュースが注がれたワイングラスをくゆらせている。


 片や金色羊ソファに赤の女王様、片や漆黒魔王ソファに3人の子供。




 なんの儀式なんだこれは。




 ──というのが、護衛部隊から見た感想なのであった。


 盃を交わすにも、もう少しこう、ビジュアルが……なんか、こう……!


 報告書にどのように書けばいいのか、頭が痛い。

 キラが動画(赤の教典ホログラム版サンプル)を渡してくれるので、心配ない。お楽しみに。



「んっ」

「ふあっ」

「ンーーー!」


 一口、ジュースを口に含んだ子供たちから、感激の声が漏れる。


 身体中を爽やかな甘さが駆け巡っていって、血液に溶け込んだエリクサーがドグマドライブの酔いを治した。


 アイスクリームのひんやりとした冷たさは、喉を通ると、あたたかく心を癒していくように感じた。


 クッキーはパリリと食感が楽しくて、夢中で食べる。


 チェリーを齧ると、目が輝いた。



「「「……!」」」



 いつの間にか、泣いていた。


 不安をみんなまとめて甘く包むような、体も心もひっくるめて招待されているような、そんな感覚になったのだ。


「美味しいね……」


 こぼれ落ちたようなアグリスタの言葉に、共感したジレとマイラは、素直に頷いた。




 ありがとうございました、ごちそうさまです、と小さな声でおずおずと告げて、3人がパフェグラスをお盆に返す。


「「ゆーあ うぇるかむ♪」」


 ミディとチョココはそういうと、ニコッと笑ってレナの方に戻っていった。


 何かの映画に影響を受けたに違いなかったが、そんなことはまだ想像もできない3人は(このお屋敷の合言葉とか……?)と首を傾げる事になったのだ。



「さあ!」


 ▽魔王ドグマが 人型になった。

 ▽美髪ぅーーー!


 同じくキラキラの髪になった子供たちを見て、魔王が豪快に笑う。


「すでにレナパーティの仲間らしくなったではないか!」

「!?!?」

「まずは同じ獣を共に喰らう、釜の飯を共に食う、ウェルカムドリンクを共に飲む、だな! うむ。我とお前たちも仲間だということか!? なんと愉快な!」

「!?!?」

「次は仮契約だったな!」


 3人が申し訳なさやら怖さやらで混乱している間に、魔王が話を進める。



「ドグマ様、進行をきちんとこなしていて素晴らしいな。そう思わないか? オズワルド」

「…………」


 レグルスの言葉にも、オズワルドはぷいっと顔を背けた。

 しばらくは反抗期となりそうだ。



「3人とも、こちらにいらっしゃいな」


 レナが金色ソファから降りて、数歩進む。


 3人は緊張しながら、前に歩んだ。


 向かい合う。



「魂の浄化、ともに頑張りましょうね」

「「「!」」」

「レナパーティの役割は、シヴァガン王国との約束に基づいて、あなたたちの魂の浄化をすることよ。そのためにお屋敷での善行をお願いするわ」

「善行……?」


 3人が戸惑って、お互いの顔を見合わせたあと、魔王ドグマを振り返る。


「ん? 奉仕作業と聞いている。つまりは魔物使いレナにとっての奉仕をすればいいのだろう? それが善行、ということなのでは? 何をすればいいのか、詳細に聞いておけ」

「あ、は、はいっ」


 子供たちが背筋を伸ばした。


(さすが野生の本能)

(えっ父様すごい)


 レナパーティはドグマの理解力にちょっぴり驚き、それから子供向けの説明が上手だったことに感心した。


「奉仕作ぎょ、善行って……どのようなもの、ですか?」


 ジレが代表して、レナに聞く。


「ジレは体力があるから、園芸補助。アグリスタは想像力豊かだから、ダンジョン創造のお手伝い。マイラは気配り上手だから、おもてなしメイドよ」


 予想外のことを言われたので、3人が目を見開いて口がぽかんと開く。

 目はジュエルチェリーの名残で、まだキラキラとしている。


「それからね、ご飯を残さず食べることとか、みんなと仲良くすることとか。してほしいわ」


 レナがさっきよりも強調して、にっこりと伝えた。


「ええ、それって、善行……? 作業……? にカウントされるんですか……?」

「あなたたちの年齢に合った善行が、あるのよ。魂はまだまだ未成熟ということ。みんなこれまで、いそいで大人っぽくなりすぎていたんだわ」

「「「…………」」」

「今のあなたたちの視点で、吸収できるものを、楽しんで生きなさい」


 最後は有無をいわさなかった。


 強引に命じられても、今の3人はそれを嫌だと拒否できる立場にない。

 強引、なのだろうか? とは、分からないけど……なにせ求められているのが、楽しむことという娯楽なので。


(((楽しいって、なんだろう?)))


 すぐに思い浮かぶのは、やはり、夢組織のメンバーと過ごした日々のことだ。

 危なっかしかったけど、みんな傷を抱えているためお互いに優しくて、初めて認められた、特別な思い出。


(((みんなに会うには、魂の浄化をしなくちゃいけなくて)))


 それならば……と、レナの元に踏み出す一歩は、おどろくほど軽やかだった。


 どれだけたくさんのものに補助されて足が軽くなったのか、まだ、3人は理解しきれていない。


 いつか、わかるだろう。




「仮契約を施します」


 レナが鞭にそうっと触れて、3つの魔法陣を出す。


 小さな体が輪をくぐり──契約が結ばれた。


「ようこそ」


 シンプルな言葉には、とてもたくさんの思いやりが込められていた。



 レナは、友愛の笑みを浮かべた。




<<<[仮契約]が成立しました!>>>

<<<契約期間は残り7日です>>>

<従魔:ジレのステータスが閲覧可能となりました>

<従魔:アグリスタのステータスが閲覧可能となりました>

<従魔:マイラのステータスが閲覧可能となりました>

<<<ギルドカードを確認して下さい>>>



 ▽ドグマ・リーカ・ドリューが帰っていった。

 ▽ドグマはお土産にチョコレートを貰った。



 ▽Next! いざ、衝撃の館内へ!

 ▽レナパーティに馴染もう








お待たせしました!(。>ㅅ<。)


館内いっちゃうとビビるの確定だから、玄関契約にしました。リーカとドリューが確認もしなくちゃいけなくて、わちゃわちゃしますから。



子どもの風邪を心配してくださった皆様、ありがとうございます! ただの風邪だったよ、インフルじゃなくてよかったー!( ;∀;)


年末年始、みなさま健康に気をつけて乗り切りましょう!(`・ω・´)ゞ



読んでくださってありがとうございました!

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