表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

238/600

特別保護域SS区スウィーツパラダイス1

特別保護域SS区遠征えんそく、当日。


お屋敷の玄関ホールで、レナパーティは最終確認の点呼をしている。


「一緒に行く子ー! クーイズ、リリーちゃん、ルーカさん、ハーくん、シュシュ」


はいはい! はいはーい! と手が挙がった。

嬉しそうに、フリフリ揺れている。


衣装は戦闘用のおそろい赤コーディネート。

目立つ。

とても目立つ。


でも爆速ハマルに乗っていけば関係ないよね!

視線を振り切れ!


レナは自分のマジックリュックを確認した。


キラがグッジョブサインを見せつける。

ちゃんと異空間でつながっていて、必要とあらばエリクサーなど色々届けてくれるようだ。

離れていても、心強すぎる。


<お弁当もたくさん入れてありますからね>

「はーい。モスラありがとう」


電子ウィンドウから、執事モスラが微笑んでいる。

スチュアート邸のキッチンで、お出かけするレナたちのお昼ご飯を早朝から作ってくれていたのである。


高級食材をふんだんに使用した豪華バスケットセット。

バリエーション豊かなサンドイッチが入っているとか。

ゴルダロからもらった肉屋燻製肉と、ジーンの実家から送られてきた緑茶もある。


「メンバー、よし。持ち物、よし。鞭、よし」

『いってらっしゃいませ。レナ様』


ルージュがレナの腰の鞭をするりと撫でた。

緋の薔薇女王スカーレットアンペラトリス

ルージュとの絆によって花開いた鞭が、今日、ついに! その真価を発揮する! かもしれないのだ! 頑張れレナの腕前!


「モンスターテイムで有効活用させてもらうね」

『ええ。その鞭でテイムを達成したならば、よりなつきやすくなりますわ』

「そうなのっ!?」


ルージュがちょちょいと手招きする。影の魔物がよってきた。


『ほら、これをご覧なさいませ』


ルージュの指の動きに合わせて、影の魔物は従順に踊る。周囲を周り、足に踏まれることを至高としたり、そしてハートマークを形作ってみせるのだ。


「ルージュの経験と気持ちがこもっている鞭だから、きっと従魔契約するときに優しさを届けてくれるんだろうねぇ」

『うふふ♡ 甘くも厳しく、厳しくも甘いのが、魔物使いの基本ですわ』


ルージュが足先を蹴りあげるように浮かすと、影の魔物がハートマークを散らしながら遠くに飛んでいった……。


▽レナは、ハマルと目を合わせないようにしている。


しかしハマルが滑り込んできたので、ピチュン、と頬を包むように叩いた。


「えへへ〜。レナ様とのふれあいのおかげでー、遠征の乗り物としてがんばれます〜! たくさん踏んで座ってくださーい」

「はいしゅっぱーーーつ!」


レナがピチュピチュン! と手を叩いて、号令をかける。

音がコレなのでなんだか面白い。

ルーカが笑ってしまった。


「いってらっしゃいー!」


お留守番の従魔たちが、レナにブンブン手をふった。

よく見えるように、レナに存在をアピールするように、ここで待っているからねと伝えるように。


みんなの目が涙で潤って、きらきらとキレイに光っていた。


レナパーティの、新たな日常の、はじまりだ。

それは相変わらずすてきで、でもちょっぴり切ない。


「うんっ。みんな、いってきまーす! 早く帰ってくるね!」


レナは、お屋敷から離れていった。


なんどもなんども、従魔たちに負けないくらい大きく手をふって、ついに、お互いの姿がみえなくなった。


鞭を握ると、きちんと絆が繋がっていると、心が励まされた。







「……それで、彼女は泣いているというわけですか」

「はい」


巨大羊に拉致された宰相が、こめかみを押さえる。

レナのすすり泣きが耳に痛い。


「……愛情を素直に見せてあげられることは、従魔たちへ安心を与えていることでしょう。レナ様」

「はいいぃぃぃ……ずび、ぐすっ」

「緑魔法[パーフェクトクリーン]」


つまりはレナの顔面は涙とわずかな鼻水で汚れていた。

▽顔面が清掃された!


「あああご主人様の体液があああ」

「シュシュ、落ち着いて、あばれないで」

「血? じゅるり……」

「リリー、体液とはいえ、血は出てないからね。血の涙って表現はあるけどもさ」


ルーカが漢女たちへのツッコミに忙しい。

まるで追いついていない。


最近めきめきとツッコミ力をつけてきたオズワルドが恋しいなぁ……とルーカは遠い目で思いながら、器用裕福さをフル活用して、漢女たちを止めるのだった。


「にしし、ルカ坊の仕事たっぷりだねぇ〜?」

「今回、大人たちが留守番だからね。クーイズがシートベルトで手伝ってくれて、心強いよ」


その通り、クーイズは紫触手でみんなのことを羊に縛り付けている。

安全シートベルト、ただし紫触手、縛られている羊は嬉しそう。

いやなんでもない。

ただのレナパーティの日常だ。


宰相がレナにハンカチを渡す。


「……レナ様、なぜこのような編成になったのかうかがっても?」


やたらと子どもたちが多いので、気になったのだろう。

少人数に絞れたことは、こっそりと評価している。

あのレナが。

子ども離れしている!

すごいことだ!


レナは舌を噛まないように気をつけながら、宰相に答える。


「えーと。向かう先はスウィーツパラダイスですよね? ティーリーフの森や、クッキーの丘とかがあるっていう。地面が凸凹で木が多いなら、小回りがきく従魔がいいと思ったんです」


宰相はリリーとシュシュを見る。

リリーは妖精型なら小柄だし、ウサギになれなくなったとはいえシュシュはちょこまか走るのが得意である。


「なるほど。……羊は?」

「体型変化で小さくなることもできますし、大きな姿で暴走はさせませんよ!」

「安心しました。巨大羊が木々をなぎ倒していく可能性も考えていましたが……」

「いやいやいや。特別保護されてる地域でしょう? それはまずいでしょう」

「常識的な考えもお持ちで助かりました」


えへん! レナが胸を張る。

……ん? それから首を傾げた。


常識的な考え「も」?


「ロベルトがいませんね」


▽宰相は 話を進めた。


レナはおっちょこちょいと賢い部分を併せ持っているのだ。

今のうちに思考を逸らしておこうという魂胆である。


「ロベルトさんにはお屋敷の従魔のお守りをお願いしました。今日もキラのダンジョン改造がありますから……なにが起こるかわからない……非常事態には、大人がいてくれると助かります。

赤の聖地は全体的にレナパーティの範囲? 範疇? みたいな判定になるらしくって、ロベルトさんの、私たちを守るって契約も適用されるみたいです。あと、私のすぐそばにいる時のように、従魔は安心できるし、ルーカさんの悪運もおとなしいんですよ」


レナの答えは宰相が求めていたものとはちょっと違ったが、とても興味深いことを言った。

宰相は顎に指を添えて、考える。


(……あの場全体がレナパーティ……)


頭痛案件である。


(土地を与えてよかったのだろうか。いや、そもそもダンジョンになっている時点で……。……おとなしくそこに居てくれるなら、それはいいことだ。魔王国のものが常駐していれば、トラブルにも即対応できる)


宰相はまだ知らない、レナが[物語の主役]などというトラブルパワーアップ称号を授かったことを。


「こちらにはサディス宰相がいてくれますしね!」


▽レナの笑顔が眩しい。


たくましくなったな……と、宰相は出会ったばかりのレナを懐かしく思い出した。

最初から結構図太かったけど、ここまで大物になるとは想定外であった。


「直接モンスターテイムの現場を見るので、部下から報告を受ける手間が省けます。パーティにどのような従魔が参入するのか、我々も興味があります。それから、ノアはチョコレートが好きですから」

「あはは。じゃあ捕まえるの手伝ってくださいね〜」


レナがかるーく流す。

監視的意味合いが強い発言だったが、それくらいの注目は仕方がないと思っている。

宰相はノアを利用しているが、娘を喜ばせたいのは本心でもあるのだろう。


レナが宰相を恐れながらも、なんだかんだ親近感を抱いて近寄っていく理由だ。


「っと、また脱線! ええとですね、ロベルトさんがいない理由ってもうひとつあって。氷魔法が効きすぎると思ったんですよ」

「……もう少し詳細にお願いできますか?」

「氷魔法、炎魔法が効きすぎると、チョコレートって割れてしまったり溶けてしまったり、あと味の変化もあると思うんですよね。魔物であるチョコレートモンスターはどうだかわかりませんけど、警戒はしておいたほうがいいなって」

「その通りです。チョコレートモンスターに強烈な熱変化は避けたほうがいい。ロベルトなら微調整もできますが、しかし、レナ様の的確な判断力には恐れいりました」

「そんなそんな〜」

「とても詳しいですね、チョコレートに」


宰相の探るような質問。


「アリスちゃんがセレブだからおこぼれをいただいてるんですよ!!」


レナの謙遜回答!


日本ではチョコレートが一般的お菓子だったから、なんて言えるはずもない。


油断ならない宰相と、ついゆるゆるに滑りがちな己の口を(気をつけなくっちゃ)とレナは反省した。


「狩りが得意な獣人たちを置いてきた理由も、それですね」

「レグルス、オズくんは白炎まで扱えちゃいますしねぇ」

「デリシャスクラーケンはその辺を水浸しにしかねませんか」

「クッキーがふにゃふにゃにふやけちゃいますね。あと、チョコミルクの池の水を吸って[アクアフィージョン]したらどうなっちゃうんでしょうね……!?」

「……その発想力は、まさにレナ様ですね……」

「でも、どうなるか気になりません……? イカお菓子……?」

「不確定要素を楽しんで話すタイプでは御座いませんので」


宰相がピシャンと会話の続きを断る。


個人の性格的意味、それから、ラナシュ世界が曖昧ゆえ、何気なく言った言葉が現実に反映されてしまう危険もあるのだ。


いっつもレナたちがどハマりしているやつ!!!!!!



「見えてきましたよ」


宰相が指差す。

厳重に柵で何重にも囲われた一角が、見えてきた。


街の外れの小道をゆき、その途中のゲートをいくつも潜って、そのうえこの不穏な入り口だ。


「特別保護域、さっすがー……って感じです……」

「密猟者はここをターゲットにしますから」


スウィーツパラダイスが狙われたのは、資産的価値があるからだ。

チョコレートモンスターは美味しすぎるチョコレートを生成するその希少価値から、狩られすぎて、一時は絶滅寸前まで減ったのだという。


今は、チョコレート採取のために政府関係者がたまに訪れて、計画的に狩りを行う。

個体数調査をもとにしているので、絶滅することはないという。


(飼育所ってかんじなのかなー……)


レナは、この世界にスライム繁殖所があることや、牧場でふつうの牛が飼われていることを考えた。

魔物同士だから、とかいう考えではないのだろう。

レナだって、食材をそのような育成家から得ることもある。


(だから、かわいそう、とか、そんな気持ちは……おかしい、ではないけど、憐れむのはちがうと思う。私たちだってチョコレートモンスターを狩りテイムに来ているんだから。

生き方を変えさせる、今のコミュニティから引っ張り出す、それが死と同等の意味を持つこともあるだろうし……もちろんうちの子に誘うならそんな無理はさせないけど……)


ふと考えたのは、夢組織のメンバーのことである。

彼らの中には、あの場所にいられないくらいなら死を選ぶ、という者もいただろう。


レナパーティのところにやってくる子達は、馴染むように努力すると言っているそうだけど。


(うう、こんがらがって落ち込んできちゃったなー。とりあえず、私は、自分の手の届く範囲のものをしっかりと大切にするの!)


レナは、ピチューーン! と自分の頬を叩いた。


みんなが目を丸くして、レナのことを見ている。


「気合いを入れたよ! 藤堂レナ、チョコレートモンスター、テイム、頑張ります!って!」


ニッ! とレナは力強く笑った。


すると従魔たちもホッとした表情になり、頷きを返してくれる。


「チョコレートモンスター、出会うの楽しみだね〜!」

「どんな姿かな? 他の魔物もスウィーツらしいから、波長が合えばテイムしてもいいんじゃない」

「仲良く、なれる、かなっ♪ るんるん」

「ご主人様の調教で懐かないモンスターなんているわけがない。チョコレートモンスターは尊敬と敬愛を知るとともにご主人様を讃える仲間となるの間違いない。シュシュは確信している。押忍!」

『シュシュ気合い入ってる〜。ボクねー、新しい仲間のお味楽しみだな〜』


……レナはどこからツッコミをしようか迷った。


宰相が巨大羊からひらりと降りて、ゲートを開ける。


ガシャンガシャンと柵が変形して、二メートルほどの人が通れる隙間ができた。

ドアの形に、結界が開いたとのこと。


「チョコレートモンスターについて、補足説明です。かつて個体数が激減していたチョコレートモンスターは政府に助けを求めてきました。メデュリ・アイが思考を読み取って魔物と意思疎通、その結果、彼らは納得してこの区域に保護されています。時折チョコレートを求める際、昔は、ただ体の一部を提供されていました。ある時、チョコレートモンスターのおさは言いました……。”飽きた”、と……。彼らとて魔物、たまには血湧き肉躍るバトルがしたくなるそうです。そのため、現在ではチョコレートを得たければチョコレートモンスター並びにスウィーツモンスターと、戦闘しなければなりません。狩るか、狩られるか」

「なんですかそれ!?!?」

「言っていたでしょう。狩りだと」

「背景までもは初耳ですよ!!」


先ほどの葛藤を返して! とレナは言いたくなった。

悩んだだけ損だった。


そんなに血気盛んなファイターなのであれば、心置き無くモンスターテイムバトルができるというもの!!


「わかりました、狩ります!」

「さすが理解が早い」

「共同作業ですからね」

「……承知致しました。狩られるとなった場合、熱く溶けたチョコレートをかぶせられたりと悲惨なことになりますから、ぜひ、我々が狩る側をキープ致しましょう」

「結構えぐいですねチョコレートモンスター……」


レナが口の端を引きつらせる。



▽ゲートを通り抜けた。



甘い匂いがぶわっとレナたちを包む。


気温は春から夏にかけて、すこしひんやりしているくらいだ。

ふわふわっと夢のようにわたがしの綿毛が飛び、ティーリーフの葉がこしょこしょくすくす喋る。


レナたちが目を輝かせた。


────刹那……



ゴウッ!! と甘くべたつく風!


綿毛が服に絡みつき、バチバチと砂糖が弾けるシュガークラッシュ不快な音を発する。


レナたちが慌てて森の中に。


すると木の上から、ドングリクッキーが落ちてきた!


「いたたたた!? いきなりゲリラ戦!?」


レナがクッキーを拾ってみると、シナモンの豊かな香りの生地にチョコチップ。

ハッ! と上を見た。


トロンととろけたチョコドレスの裾がなびいて、 モンスターが立ち去った。


「レナ! チョコレートモンスターたちだよ……!」


▽従魔たちの 目が ギランと光った!

▽バトル!


血気盛んなスウィーツモンスターたち!

はたして従魔になる個体はどんなタイプでしょう?


お楽しみにですー( *´꒳`*)੭⁾⁾


読んでくださってありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ