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魔王国空便

また長くなってきたので、分割(>人<;)

明日もう一話、掲載します〜!


(更新日曜になります、そろそろ一万字、しかし終わらぬのです……がんばります!(>人<;)ひー)



レナたちが目指しているブレスレット専門店は、高級店街の一角にあるらしい。

現在地からはかなり遠いので、シヴァ空便を使うことにした。

魔王国の国境検問の近くには、駅ターミナルのタクシーよろしくたくさんの翼を持った魔物が空カゴとともに客を待っている。


「いつか空便を利用したいと思ってたの! 楽しみだなぁ」


レナがうきうきと光景を眺めた。ずらりと大きな魔物が並ぶ様子は、かなり迫力がある。魔王国らしい、と観光客からも人気だ。


『『ねーー! どの魔物にお願いするのっ?』』


『えーと……大人が、3人。子どもがひとり。小さな魔物が……6体!』


『オズも魔物の姿に戻ってねー。カゴが小さいので済むから、料金が安くなるしー』


「はいはい。そのつもりでいるってば」



オズワルドが魔物姿に戻り、ハマルが[体型変化]で手のひらに乗るぬいぐるみくらい小さくなったところで、みんなで空便の選別を始めた。

小さな魔物が多いとはいえ、余裕を持って大きめの空カゴを選んだ方がいいだろう。

資金は潤沢である。

アリスがパチンとウインクしてみせたが、レナパーティの人数が圧倒的に多いので、お姉ちゃんが払うと譲らなかった。



『魔物の体の大きさ、強靭さによって、空カゴのサイズは決まってる。

空便検定試験を通った魔物だけが、営業を許可されているんだ。

カゴの紋章がその証。

紋章がおかしいのや描かれていないのは無免許だから、選んじゃダメ。通報案件』


「ありがとう、オズくん」


レナたちは、青緑色のワイバーンに近づいていった。

尻尾を含めない頭胴長が5メートルはある大きな個体。たたまれた翼も立派である。


「こんにちは。この住所付近までお願いしたいんですけれど、可能でしょうか?」


ルーカが一歩前に出て、声をかけた。


ワイバーンは黄色の瞳を瞬かせてレナたち全員を見つめて、まかせておけ、と言うようにトントンと己の肩をたたく。これは、承知した! という空便業界の合図だ。



『ちょっと待ってな。住所の札を、空カゴに下げとかなきゃならねぇ。

えーと目的地に一番近い離着陸広場は……っと。

ちょっと遠めのところしかねぇなぁ……。

料金もけっこう高くつくし、さすがにヒト型に戻って言っとくか……』


「予算はあるので大丈夫です。一番近いところに降ろしてもらえるなら、あとは歩くので構いませんよ」


『なんだ! お兄ちゃん、ドラゴン種族の言葉が理解できるのか?』


「ええ。ギフトの恩恵で」


脳内の思考を覗くという反則技で。


『そいつぁ助かるなぁ。俺、魔人族の姿が強面コワモテだから、女性や子どもには怖がられちまうことが多いんだよ。だからできるだけ魔物の姿で仕事をしたいんだ。

言葉が通じるのは嬉しいネェ。

空の上で街の名所を説明していくから、通訳してくれるかい?』


「是非。よろしくお願いします」



ルーカとワイバーンが笑いあった。商談成立。


ワイバーンが、金色のリングがかけられた爪で、空カゴのホワイトボードを「ツーーー」と横になぞっていくと……目的地最寄りの広場の名前が表示された!

これはお客に目的地を提示するためと、他の空便に行き先をアピールする狙いがある。

ぶつかり事故を防ぐための措置だ。


行き先までの料金が、ホワイトボードの端に表れる。

今回は1000リルとのこと。

ルーカが自分のマジックバッグからお金を出して支払いをした。

レナパーティのマジックバッグの異空間はすべて繋がっていて、スマホがきっちり管理している。

レナたちのお金の出所は主にスライムジュエルだし、冒険者ギルドのクエストも共闘。

お金は主従の共有財産という考えだ。



『空カゴ一番乗りっ!』


『あー! シュシュ……待ってー! ずるいー』


『『広ぉい! しっかりした造りで、スライムダンスで弾んでも大丈夫そう〜!』』


空カゴは気球のカゴのような見た目。

ホワイトボードと大きな紋章、出入りするための扉がカゴの側面に付けられている。

カゴを支える魔法ロープも頑丈そうだ。


従魔たちが我先にと空カゴの中に飛び込んでいき、大人が微笑ましそうに後から乗り込み、扉がしっかり閉められた。

レナの胸元あたりまでカゴの高さがあるので、レナとルーカが従魔たちを抱える。



『おう、準備はできたみたいだな、お客さんたち。存分に空の旅を楽しんで行ってくれ!』


青緑色のワイバーンはニッと軽快な笑顔を見せると、控えめに『グルルゥ!』と咆哮を響かせる。

飛び立つぞ! の合図だ。

周囲の魔物がきちんと距離をとったのを確認して、ぐあっ! と翼を広げた!



『魔道具発動、[空中浮遊]』


ワイバーンの首にかけられていた金の装飾品が、キラリと光った。連動して、空カゴの紋章も光る。

静かな上昇・降下の補助をするため、すべての空便にはこの魔道具の装着が義務付けられている。


ワイバーンが大きな翼で羽ばたくと、ふわっと空カゴとワイバーンが浮かびあがった。

数回バサッバサッと羽ばたきを繰り返しながら、穏やかな上昇を続け、ついに地上50メートルの高さに達する。


「本当に床が全然揺れないね……!」


『うん。言った通りだっただろ』


レナの腕の中で、オズワルドが少し得意げに答える。

だんだんと本音で話してくれるようになっているかな、とレナが嬉しそうに頷きを返した。



『お客さん。そろそろ飛行が安定する。並行移動を始めるから、カゴの端から外を眺めてみるといいぞ。一箇所に固まらないようにだけ注意してくれ』


「分かりました」


ルーカが仲間に言葉を伝えると、全員が3方向にちらばって眼下を眺めた。


「うわあああ……!」


『すっごーーい!』


誰ともなく、興奮した声が自然に漏れる。

アリスは背伸びしてなんとかカゴのふちから空を眺めているものの、かなり体勢が辛そうだ。


「アリス様。抱き上げてもよろしいですか? せっかくなので景色をみんなで楽しみましょう」


「う……」


「これだけ高所にいるのだから、他の人々にひやかされたりしませんよ」



羞恥心と葛藤していたアリスだが、空から魔王国の街を一望できるという誘惑には勝てなかった。

モスラが膝裏にそっと手を差し入れ、アリスを横抱きする。

華奢な手がしっかりと、執事の首元に回された。

青い瞳が輝く。


ひやかしたい性分の先輩たちも、モスラが幸せそうなので自重している。


魔王国特有の、黒とグレーの街並み、紫の国旗がひらめく光景。

空の上から見下ろしてみると、街道や商店街の配置が見事に計算されているとわかった。

王都の国境結界は丸い形状。

中央にそびえる荘厳なシヴァガン王宮から、国境沿いまで放射状に街道が伸びている。バランスよく商店街が一定の距離ごとに配置され、人通りの多い街道は、渋滞しないように幅が広い。

ところどころに自然訓練場の緑が見られる。

冒険者ギルドや教会など、重要な施設は王都中に何箇所もあり、一箇所に人が留まりすぎないよう配慮されていた。



『この街並みは、シヴァガン王国のみんなが長年をかけて試行錯誤し、改良してきたんだ!

政府は住人の意見をよく聞いて、住みやすいようきちんと対応してくれる。

水生の魔物が水浴びできるように泉を掘り起こしたり、空便専用の待機ターミナルを作ってくれたりな。

魔人族に理解がある。こんなに住みやすい国は他にないさ!』



青緑色のワイバーンは、空便ターミナルのアイデアを仲間たちと提案したのだという。

嬉しそうに語ると、口から[氷ノ霧]を吐き出した。

微細な氷がキラキラと空カゴの周りを舞って、レナたちの目を楽しませてくれる。

幼い従魔たちから『きゃはは! 冷たいー!』と笑い声が上がった。



『あれは海産物を扱う店が多い商店街。

そっちの小さめの商店街は、地元の客が多いぞ。見た目は地味だけどしっかりした商品を扱う、昔ながらの店が多い。

果樹系樹人族の造酒ファクトリーに、あっちは茶葉の加工場。

ハサミを持つ魔物とハペトロッティ、エルフ族の糸紡ぎの施設。

ハペトロッティは知らないヒト族が多いから説明しておこうか。女性のブラウニー系統の種族だ。白髪で小柄、若い時期は10年ほどで、老婆の姿であと10年ほど過ごす短命の種族。裁縫や糸紡ぎ、機織りがとても上手い』


「へえ……初めて聞きました。魔人族の皆さんはそれぞれ個性豊かで、興味深いです」


『ははは! ここにはたっくさんの種族がいるから、全部は説明しきれねぇなぁ。

魔人族と仲良くなったら、種族の特徴について尋ねてやるといい。

おそらくみんな誇らしげに語るだろう!

固有種族は一族の伝統を、一代で成り上がった魔物は己の武勇伝をな』



ワイバーンは機嫌良さそうに翼を大きく広げて、丁寧に空カゴを支えながらも、力強く羽ばたいた。

ぐんっ! と少し上昇する。

爽やかな風が全員の頬を撫で、髪と毛皮を揺らしていく。

▽空の旅は、大満足だった!

▽スマホの 魔王国マップ(地元情報)が 更新された!



目的地の離着場に着く。


『じゃあまたな、お客さんたち。夕方くらいにまたここを訪れたらいいかい?』


「ありがとうございました。お手数をおかけしますが……貴方にまた空の旅をお願いできると助かります」


『おう! あんたらが気に入ったんだ。ここいらで他のお客を探しながら、観光が終わるのを待ってるよ』


青緑色のワイバーンはラギアと名乗った。

片腕を肩に置きながら、ゆっくりと頭を下げてお辞儀する。


『空便のご利用、ありがとうございました。またの巡り合いを期待しております。……ってな!』



ラギアはにっと笑うと、咆哮を響かせ、力強く飛び立っていった。


この離着場は狭めなので、長時間の客待ちは禁止されている。

高級街の近くだけあって、観光客の利用は少なく、近くに空便待ちのお客がいなかったためもっと人が集まる場所に行ったのだろう。


ここを待機場として申請している小柄な翼竜がチラリとレナたちを見たが、大人数だしラギアをまた呼ぶと会話していたので、なぁんだ、とすぐに視線を逸らした。



「さあ! お買い物に行きましょうか!」


「張り切ってるねぇ、アリスちゃん。そしてめちゃくちゃ嬉しそう」


<道案内でしたら、ナビアプリにお任せ下さいませ! シヴァガン王国の地図マップを表示、現在地と目的地を赤の線で繋ぎます>


「なんというロベルトさん殺し」


アリスが取り出したロベルトの簡易地図入りメモは、必要なくなってしまった。

しかし店の出入りに難色を示されてしまった時には、ロベルトのサインが黄門様の印籠となるだろう。


スマホの脳内音声ナビを頼りに、レナたちがうきうきと街を歩いていく。


▽ブレスレット専門店に行こう!






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