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パフォーマンス2★

本日投稿2つめです!

先に前話をよろしくお願いします




クレハとイズミがやけにキレッキレのダンスを披露したのは、オズワルドの派手な戦闘を見て『『自分たちだって!』』と、魔物らしい戦闘意欲を刺激されたから。

スライムボディがギラギラと輝きを増している。



『『スライム勝利のダンス、終わりっ! ご観覧、ありがとーございましたー♡』』


『ねーねー……イズたちも、この訓練場でちょっぴり暴れたいなっ?』


『これだけ広いと、いーっぱい伸び伸びできるもんねー! 仕切りの結界のマジックミラー効果で、お隣に見られる心配もないしぃ』


『『先輩たちの実力もご覧あれやでーー!』』


クレハとイズミが、いいでしょ? と上目遣い(レナ視点)でおねだりする。


「スペシャル可愛い……!」


▽レナが 陥落した!


「そうなの? 俺には、ただボディを曲げてるくらいしか変化が分からないけど……」


『『レナは我らが大好きだからねー! 何をしてるか、したいか、よーく読み取ってくれるのだよ! えへへん!』』



クーイズがぷにょーん! と反って膨らむ。

おそらく胸を張っているのだろう。

相変わらず、従魔たちとお熱いことで、とオズワルドがため息を吐く。なんだかこの雰囲気にも慣れてきた。



「じゃあ、先輩たちも訓練していこう。罠も元に戻ってるし。

せっかく来たんだから、料金の分しっかり楽しませてもらいましょう!」


『『『『『はーーい!』』』』』


「了解。尻尾生やしとこうかな」



半猫状態になったルーカと、尻尾を狙う小さな先輩たちが、じり……じり……とささやかな攻防を始めた。


オズワルドもなんとなく自分の尻尾を守りながら、この仲間たちの実力はどれほどのものだろう? と、慎重に思考する。

希少種の魔物らしい、珍しい技を取得しているはずだ。

好奇心を刺激されて、先輩たちを見つめる視線が無意識に熱くなる。


「お手並み拝見」と、岩に腰掛けてのんびりと観覧体勢になった。



その余裕が続くのもいつまでだろうか。


オズワルドの実力を認めながらも、レナに褒めちぎられた後輩を、先輩たちはちょっぴり羨ましく感じていたのだ。

すなわち。

自分たちも褒められるべく、また、後輩に権威を示すためにも、全力で訓練に励もうと張りきっている!!



「みんな、お互いに攻撃を当てないように気をつけてね。それ以外は、自由に動いてみよっか。ここは広いから、暴れても大丈夫でしょう。見てるから、いってらっしゃい!」


レナが余裕しゃくしゃくのオズワルドを眺めて苦笑しながら、先輩従魔たちに告げた。

結界や罠をぶち壊してしまわないようにと、今回は[鼓舞]スキルを使わないことにした。


主人のエールを聞いた従魔たちが勇ましく頷く。

ーー空気がガラリと変わり、それぞれ猛々しいオーラを纏う。

瞳孔が細くなった瞳をギラリと光らせて、獰猛に口の端を釣り上げる!



(あ。まずいかも……)


<今度こそ、全て完璧に撮影してみせます! でえええい! 第3第4の目、覚醒!>


「スマホさん何やってるの!?」


<褒めて下さいまし!>


「すッッッごい!」



レナが従魔の迫力にうっすら青ざめていると、スマホがまさかの成長を見せた。

これまで1つだった浮遊レンズが3つに増えている。視点変更、多画面展開もおまかせあれ!



<ほほほほ! それでは行って参ります!>


『『『『『うおおおおおおお!!』』』』』



▽先輩従魔たちの 戦闘を ご覧あれ!



『スキル[体型変化]ー、からの〜[跳躍]!』


まずはハマルがド派手にキメる!

3メートルの巨大ヒツジに変身すると、ズダダダダンッと土煙を巻きあげて駆け出し、大跳躍!

落とし穴を全てまとめて跳びこえて、ドスゥン!! と着地すると地面がおおきく揺れた!


レナがふらつく。

オズワルドがごふぉっと喉で紅茶をむせさせた。



その勢いのまま、木にくくりつけられた的を、大木数本ぶんまとめて粉砕する。

今回はクレハとイズミも個別に訓練するので、スライム盾を展開していない。



『きゃあーー! ハーくんすごーい!』


『我らも頑張らなくちゃねー!?』


『『スキル[溶解]』』


ハマルの背中にくっついていたスライムたちは跳躍の瞬間、ぽろぽろと落ちて、空中で大きく伸び広がった。

地上でカチカチと金属の歯を鳴らしていたトラバサミたちを、まとめて包み込む。

にいーっと笑うように、ボディをプルプルさせると、トラバサミを溶かし始めた!



「それ、金属片が少しでも残ってたらまた再生するからね。加減よろしく」


『『ういーーっす!』』


珍しい味にクーイズが舌鼓を打っていると、ルーカが紫の瞳を瞬かせて助言する。

トラバサミは爪先ほどの鉄片を残して、喰らいつくされてしまった……。



「さて。僕はカカシを相手にしようかな」


訓練場の隅に立ち並べられたカカシたちは、弾力があるもの、鉄製のものと様々なタイプが揃っている。


「[瞬発]、スキル[雷剣]!」


ルーカが獣人らしいしなやかな動きで駆ける!

走りながら背中の魔剣をスラリと抜き、自然にかまえた。


カカシの前まで来ると、真横に一振り!

バチバチィッ! と白光が一角に満ちて、カカシ数体を特性に関係なく、なかよく消し炭にしてみせる!


残りはズバッと剣で切り裂いて、切断していった。

ネコミミヒト族になってからの腕力の向上を実感して、嬉しそうに口角を上げる。

カカシは地面下の核が残っていれば再生する、と視て、容赦なくバラバラにした。



『あのウネウネ動くロープ、的にしてみせる。スキル[衝撃覇]! 覇あぁッ!!』


素早く森林の近くに走ってきたシュシュが、ロープめがけてキックモーションを放った!

『覇!』のひと声で、蹴りの威力が飛ばされ、ロープを攻撃する。

バチンッと弾かれたロープが他のロープに絡まって、自由に動けなくなってしまった。


『ん? ……たまたまだけど、これはこれでいい結果! よし、次!』


シュシュはロープを上手く蹴りあげ、[衝撃覇]のコントロールを練習していく。



リリーの上には、小さな岩が降ってきた。


『スキル[軽業]っ』


岩のスキマをすり抜けて、攻撃を避ける訓練をする。

たまに岩の上に乗り、とんっ! と足場にして美しく舞う。

極力翅を使わないよう制限して、感覚向上に努めているようだ。


リリーが足蹴にした小岩は、真下にいたハマルの上に降り注いだ。



『あだっ』


『あっ……ごめんね、ハーくん! 大丈夫……?』


『はいー。耐久訓練ごほうびですー』


『クスクスクスッ』



全ての罠が、瞬く間にぶちのめされてしまった!

だが、大はりきりしていた先輩従魔たちは、まだ物足りない様子。

みんな揃って、遠方からレナを見つめる。



「あー、もう、派手にやっちゃったなー。

スキル[伝令]! ……お疲れ様、みんなすごーい!

お互いに組手してもいいよ。調教師さん、調整してあげてね」



レナが苦笑しながら、攻撃の許可を出した。

施設の備品が完全破壊されなかったので、ホッとしている。

あの戦いぶりを見ても大して動揺していない主人の様子を、オズワルドが唖然と眺めた。



笑顔で頷いたルーカが、仲間に何やら告げる。

効率のいい鍛え方をアドバイスしたようだ。



『いくよーイズ! スキル[火炎放射]!』


『ういっす、クー! その赤い炎で受け止めてぇ[鉄砲水]!』



クレハとイズミが立体的にうにょーんと立ち上がり、羽のない扇風機のような形状に変化した。


まぁるく開いた穴にそれぞれ赤と青の光がきらめくと、お互いに向かって、炎と水を噴出する!

ゴアアアッ! とものすごい音が響いて、攻撃がしばらく拮抗きっこうした。


熱風と冷気が一気に押し寄せ、遠くで見守るレナとオズワルドの髪を揺らしていく。

二人とも顔を引きつらせている。

ここだけですでに怪獣大戦争のようだ。

イズミが『スキル』と唱えなかったのは、水の方が炎に有利だからだろう。



巨大化したハマルが、鼻息荒く地面をガッガッとヒヅメで蹴る。


『ぶっ飛ばしちゃうかもよー……? 覚悟、ルーカ!』


「まだまだ、生徒には負けられないね。全力で来るといいよ」


『もちろんー! メエエエェェ!! スキル[駆け足]ィ!』


「光魔法[サンクチュアリ]!」



ヒツジらしい咆哮を上げて、ハマルがドドドドドッと駆ける!

標的はルーカ。

さすがに獰猛なヒツジの突進を真正面から見ていると大迫力で、涼しい表情をしているルーカも、手には汗を滲ませている。


ゴウゥン!

尋常ではない衝突音とともに、サンクチュアリにヒツジの頭突きがきまった!

あとはお互いの力比べ。

ハマルのおでこがギリギリと結界を押し、ルーカも剣を掲げて、結界に魔力を込め続ける。

静かで熱い攻防が繰り広げられていた。



『スキル[幻覚]! ……さあ、本物の、私はどーこだ? 『『『シュシュ!』』』』


『上等。根性には自信がある。本物のリリーに当たるまで、攻撃をやめないッ! [覇]ッ! スキル[スピン・キック]!』


『はーずれ。スキル[跳び蹴り]!』



漢女たちが怒涛の勢いで蹴り合っている。


たくさんのリリーをシュシュがひとつひとつ蹴り、消滅させていく。

時々蹴りスキルを放ったり、[吸血]しようとしてくるのが本物のリリーだ。

とはいえ、途中までのモーションだけなら偽物も仕掛けてくるので、油断ならない。

ニヤリと笑って楽しそうに戦い続けるその様は、まさに戦士と言っても過言ではないだろう。



スマホの3画面ディスプレイを横目で眺めつつ、目の前で起こる攻防も肉眼で確認して、自分の元まで届く衝撃などに臨場感を感じながら、レナとオズワルドは呆然と戦闘を眺めていた。



『『『『『<どや!>』』』』』


「……すっごくすごいー」



約1時間後。

全力に近いほどの力を見せつけた従魔たちがわらわら集ってきて、レナにご褒美のナデナデを要求した。

ぷよん、もふん、サラサラ、とそれぞれの感触を満喫するレナ。

苦笑が、しだいにとろけた笑みへと変わっていく。



「さすがに疲れたでしょう。スキル[従魔回復]」


ふんわりとした緑色の光が従魔たちを包み込むと、それぞれが気持ちよさそうに目元を緩めた。



先輩も後輩も、お互いの力を認め合った!


「みんな……凄かったな。強い、と思った……!」


「貴方の仲間として、恥ずかしくない戦力でしょう? ようこそ、こちら側へ」


ルーカがオズワルドに笑顔で告げた。

オズワルドは眩しそうに、先輩従魔全員を眺める。

紫の瞳が、ほんの僅かに細められた。



レナたちは訓練を終えて、森林訓練場を後にする。


えぐれた地面、剥がれた芝生、倒された大木が数体。

なかなかの惨状を引き起こしたため、ストーンゴーレムたちに注目され、シヴァガン王国政府に報告が届いて、赤の女王様伝説がひそひそと王宮でも囁かれるようになった。



……オズワルドはまた、レナたちの少し後ろを歩いていた。

仲間たちの堂々とした背を眺めて、耳の先を少し折れさせる。


従魔たちはとても強かった。

別に、俺が特別ってわけじゃないみたいだな……と、誰の耳にも入らないくらい小さく、ボソッと呟いた。




***




お宿♡ に戻ってから、オズワルドはずっとどこか上の空でぼーっとしている。

心配したレナとルーカがこっそり目を合わせて、オズワルドについて語り合う。



「(オズくん、みんなの戦闘を眺めている時、目をキラキラさせててすごく楽しそうだったのに。今は落ち込んでる……どうしてでしょう?

私、平等に褒めてたと思いますけど……)」


「(……どうやら、それがオズワルドの隠れたコンプレックスだったみたいだ。

誰かの特別になりたい、誰より褒められたい、と無自覚に強く願っていたようだよ。

今は、戦闘力が一番ではなかった自分がこの輪の中にいていい理由を、必死に考えている。

無理やり契約を結ばせたんだからって、罪悪感を持っているようだね)」


「(な、なんと! ……もう仲間なんだから、理由なんて、なくてもいてくれていいのに。

オズくん、強引なところもあるけど、根本的には、気遣い屋さんなんですよねぇ)」


「(この子がきちんと愛情を自覚できるまで、しっかり丁寧に向き合ってあげよう)」


「(分かりました。いつもフォローありがとうございます、ルカにゃん)」


「(うっわ台無し。レナ、そういうとこあるよね。

まあ、貴方はいつも通りにいてくれたら大丈夫だよ。きっと、そのうちここに馴染めるだろう)」


「(はい)」



お風呂に入って身体を清めたレナたちは、みんなでベッドに入った。

寝そべった大きな金色ヒツジのお腹を枕にして、レナたちが並んで眠る。


オズワルドはハマルの背中側で、そっと仲間に寄り添って眠っている。

金色の柔らかいもふもふが、丸まったオズワルドの背中に触れて、優しく温めていた。




***





ーーオズワルドの夢のふち

いかにも怪しげな濃紺のモヤが、どんよりとうごめきながら近づいてきていた。


モヤからは時々、長いブラウンの髪の毛が覗いて、緩やかになびく。

一瞬覗いた口元は、むっすり歪められていた。

時たまキラリと光る夜空のような藍色は、モヤの中にいる人物の瞳の色。



音もなく一歩、一歩、ゆっくりと、オズワルドの夢を土足で踏み歩いていく。


やたらと歩みが遅いのは、夢がほとんど閉じられているためだ。

[快眠]しているオズワルドは、意識を深く休ませている。


人物は己の高い能力にものを言わせて、なんとかオズワルドの意識に介入しようとしていた。

これまで毎夜、そうしていたように。


……しかし昨夜は、オズワルドが幸福感を感じていたため、弱みに付け込む隙がなかった。

今晩は、心にわずかに暗い感情が視えている。



たどり着いたオズワルドの心の中は、まるで青い水晶の洞窟のようだった。

どこに触れても硬質で、誰もを拒絶しているかのよう。

光もわずかしか差し込んでいない。

しかし水晶を近くで覗き込んでみると、キラキラと澄んだ輝きを内包している。

天井は高く……まだ幼い彼の、心の広さを表していた。



また、一歩。

モヤがブワッと広がって、オズワルドの心を覆い、ネガティブな感情を増幅させていく!

眠っているブラックドッグの眉間が苦しげに顰められる。


ニヤリ、と闇が歪んだ気配がした。



「ねぇ……。ボクの仲間の夢にー、何の用?」


「!」


「ボクがみんなの夢の管理人なんだけどー?

他人に勝手なことされるのー、すっごく不愉快ー!」



ふと、星のような淡い金色の髪が、夢空間できらめいた。

謎の黒い靄に、夢の世界に介入したハマルが対峙したのだ。

言葉がきちんと届くように、ヒト型になっている。

人物よりもよほど不機嫌そうに、剣吞に瞳を細めて、グルルッと喉を鳴らす。


……人物が歩みを止めた。

まさか、自分のように夢を渡れる存在がいるなどと予測していなかった。



「悪者はー、撃退しちゃうよー。スキル[夢吐き]!」


誰かの夢の中では寝こける事なく[夢吐き]するための夢の選別ができるらしい。

ハマルがバンザイするように、腕を大きく上げた。



隕石落としぃメテオ・ストライクッ!!」



な、なんという過剰戦力ーーー!!

レナがいつぞや見た悪夢をここぞとばかりに使った。


青色のオズワルドの心全体に、物理的な影が落ちて深夜のように暗くなる。


ゴオオオオ!! という耳をつんざくような不快音に、不審者が上を向くと、なんと超巨大隕石が出現していた!

ラナシュには隕石というものが存在しないので、不審者も正体が分からずに困惑している様子。


一瞬の隙が命運を分ける、と思った?

いや、隕石の衝撃範囲からは逃れようがないのだ。



「ええーーーいっ!」


ハマルがバンザイした手を不審者に向けて降ろした!

凄まじい勢いで、隕石が落下する!


ーー轟音!

そして暴風が吹き荒れ、熱波がハマルの身体をゴウッと包みこむ。


夢の支配者ハマルは、この場に限っては無敵なのだ。ふらつくことなく、しっかりと立っている。



目標にぶち当たった隕石は、やがて、煙と共に消滅した。


この場から逃げるには、また細い細い糸のような夢を、ゆっくりと渡らなければいけないはず。

不審者をやっつけられた、と考えていいだろう。



「ふふ〜ん!」


夢喰いヒツジが得意げに鼻歌を歌う。


「ゆっくりお休み〜、後輩よー」


あらためてオズワルドに[快眠]スキルを使用し、ハマルは彼の悪夢を終わらせた。




▽Next! ブレスレットを購入しよう!



淫魔ララニーイメージ

挿絵(By みてみん)


モコモコ綿雲モップでお掃除しちゃうよ!

女子力高い見た目です〜 なお中身は(笑)



読んで下さってありがとうございました!


10,000,000pv突破してました〜ヾ(*´∀`*)ノ

いつもありがとうございます!


電子書籍のご連絡を、取り急ぎ活動報告に上げます。ご興味ありましたら、目を通してもらえたら嬉しいです( ´ ▽ ` )

よろしくお願いします♪

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