プロローグ
未来永劫不変の感情。そんなものを信じていられたあの日々は、今思い出すととてつもなく馬鹿で、とてつもなく眩しい。目に映るすべてのものに興味を示し、町中を跳ね回っていたあの時には、思いもしなかったんだ。
今、隣で笑っているあいつが、数年後には思い出になるなんて。いや、そんな事はありえないと、否定していた。俺たちはずっと友達で、ずっと仲良しで、たとえどれだけ離れていようとも相手を想い続けていられると。そんなこと、子供が抱く幻想に過ぎないのに。便箋一枚の近況報告で会話をするために一週間かけるようなこと、率先してやろうなんて思わないくせに。一週間に一枚が一ヶ月に一枚と次々に間隔が伸び、そして途絶えるまでに一年もかからなかった。
あれから数年経って、高校生活も二年目にさしかかろうとしている今なら分かる。何故、人はあんなにも別れを惜しむのか。それが遠く離れるようなものであればあるほど涙を流して悲しむのか。それはきっと、心の奥底、無意識の範疇で理解してしまっているからだ。物理的な距離と、心の距離はほとんど同義だと。一旦離れてしまった人間は、どれだけそれに抗おうが、少しずつ思い出として美化され、擦り切れ、忘れ去られていくのだと。
去る者は日々に疎し。
その意味を、俺は数年かけて学んだんだ。