long road round
自転車ロードレース世界選手権が今年も、行われてようとしていた。
ある国のチームが、ミーティングをしていた。四人の選手がエントリーしていた。
作戦は、至ってシンプルだった。一人が、エースで、あとはアシストだ。エースがリタイヤすれば、誰も勝てないのは分かっていた。
ミーティングがスムーズに終わり、スタート時刻が近づいていた。
エースを囲むように、アシストの3人が、スタート地点にスタンバイしていた。
すると、一人のアシストが、コーチの元に戻ってきた。
メカトラブルだと、心配してコーチが歩み寄った。
そのアシストは、告げた。
「コーチ、黙っていたんですけど、コーチがロード世界選手権で勝ったレースを見て、俺、自転車ロードのプロを目指したんですよ。あの時のコーチみたいに、かっこよく走りますよ。アシストだけど」
そう言って、コーチが声を掛ける前にスタート地点に戻っていった。
そして、その年の自転車ロード世界選手権がスタートした。
長い、長い、距離を。
本当に遠い道のり。
その道のりの果てに一人の世界チャンピオンが誕生する。
かっての世界チャンピオンが、その会場にコーチとしていた。
そのコーチは、初めて心の底から祈っていた。
四人が、また無事に自分の元に戻ってくれることを。
コーチには、四人に、そして昔から見ていた、あのアシスト選手に伝えたいことがたくさん、あった。
本当に、伝えたいことが・・・.
(FINE)
内容や登場人物は、筆者の架空です。