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ドラゴンになりました、使い魔らしいです   作者: NHRM
成り上がり・建国編
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侵略計画

国で最も力を持っている商人であるアヴルは俺達の考えを読んでいた。

俺達がしようとしている事、した結果の想定を事細かに彼は語ったのだ。

簡単に想像しようとすれば出来るが、それは教育がされた者に限る。

少なくとも、この世界の俺達以外の国の人間が予想できる訳がないとソレイユは言っていた。


説明を終えたアヴルはニコリと笑顔を向けていた。

通常ならば歓迎する笑顔だが今は苦い顔を作る原因でしかない。


「残念ですが、今回は――」

「御待ち頂きたい、此方は既に戦争の準備をしている。ここでやめると言うならば我々は他の方法で損失を補うことになる。それはあなた方にとって嬉しくないことだろう」


言葉を発したのは鉄で出来た仮面を被り、人間に見えなくもないソレイユだった。

ソレイユは自分達がしていないことを、していると言い張りアヴルを脅す。

しかし、対するアヴルはグルリと周囲を見渡しニヤリと笑った。


「宰相殿でよろしいですか。どうやら、周りの皆様は知らないご様子ですがどういう事ですかな?」

「ここにいる者達はトルキアと組む事を想定していなかったから驚いているに過ぎない」


平然と、声は謁見の間を通る。

その声音を聞いて冗談の類ではないとアヴルは感じた。

戦争を代理して貰えなければ、痛手を負うが他国を使ってのやりようがある。

しかし、ここでトルキアに協力されると損害が麻薬を流通していた場合より出てしまう。

アチラも勝手に戦争を肩代わりしてくれると言うのなら話は乗ってくるだろう。

アヴルはここでカードを一枚切る。


「此方としましても、今まで得た信用を無くすことは出来ないのです。信用は金では買えませんので損失分はこちらで出しましょう」

「ふん、その必要はない。どの道トルキアを攻めようが協力しようが、貴様の国は攻めるのだからな」

「ッ!?」


今、何と言ったのか。

ピクリ、と眉間が動く。

ここで驚きの前に跪いた状態から立ち上がらなかったのは長年商人をしていて感情を隠す事に長けていたからか。

しかし、事態が悪い事になっている状況は変わらない。


「それは周囲の影響を考えての発言ですかな?」

「勿論だ、例え束になろうとも我々には勝てない。愚かと思うか?俺達の技術を知らない物な……見ろ、これはその一端だ」


明らかに上からの物言いで、ソレイユは四角い筒を投げた。

それは何度か弾み、アヴルの元に落ちる。

アヴルはそれを拾おうとして、次の瞬間。


『これは遠距離でも会話する事が出来る魔道具だ』

「ッ!?」


思わず手を慌てて引っ込めてしまった。

驚こうと表に出さないよう心掛けていたが、流石に物が喋るという事象を見ては驚愕せずにはいられない。

もっと大きく、遠距離の者と会話する道具はある。

しかし、それは馬車程の大きさで片手に納まる物ではない。

これ一つで何が起きるかアヴルは想像した。軍事や経済の両方に大きな影響を与えると言う事をだ。

確かにこれが一端ならば味方に付くべきだろう、それが最善だからだ。


「もう一つ、忠告しよう。我々の要求が飲めないならカオス平野の開拓地が不幸な事になる、水害などな」

「馬鹿な、貴方は小国全てを敵に回す気か!」

「勿論だとも、我々は既に数世代先の技術を手にしている。一度戦端を開けば、大国ですら恐れる軍勢だ」


宰相の言葉にまるで分かっていないような顔を周囲の者達はしていた。

というか、嬉しそうな者までいる。

嘘ではないのだ、自分たちがしようとしている事を理解していない。

だが、無謀を成し遂げる自信に溢れる何かがあるのだろう。

なんというか、凄みと言うべきものが其処にあった。


……キョトンとしているが、アレは私を侮らせるための演技ということか。

全てを奴の頭の中で構成されたシナリオ、宰相に言わせることで自分は無能に徹しようという訳だ。

あの仮面は表情を悟られないための物、であるならば顔に感情が出るような素人。

発展途上と舐められない対策か、恐ろしい手腕だ。

無能ならばこの者達の自信が分からない、そう奴を中心に回っているのだ。


王にしては覇気がないように見えたが、それは間違い。

アレは覇気すら隠し、敵を屠る。そうか、これが王でなく皇帝と態々名前を変えている由縁か。

アヴルは身震いを禁じ得なかった。


「しかし、無理な要求かも知れない。植物紙のような技術を一つ提供しよう。ドライアイスと言う冷たき炎の精製術式だ」

「冷たい……炎……」

「あぁ、それ一つで周囲を凍らせ触れた物に火傷を負わせる鉱石のような炎だ。これを簡単に作り出せれば、物の流通が楽になるだろうな。腐敗が抑えられるのだから」


幾らで買う?

そう聞く宰相に、アヴルは自分が使える全ての金を出すと言った。

この国に協力する事が、最も利益を出すからだ。




アヴルという老人が退出して数分が経ち、謁見の間を守護する兵がOKサインを出すと一同は大きな声を上げて安堵した。

いきなり、何を言い出すんだと自国の宰相に言ってやりたいくらいで各所で愚痴が零れる。

だが、一番反応していたのは皇帝自らであった。

まるで威嚇する様に、両手を上げて怒鳴ったのだ。


「どういう事よ、聞いてないわよ」

「まぁ、いつ攻めるとは言って無いから嘘ではない。どっちに転ぼうと湖を確保している時点でアイツらは協力するしかないんだ。少なくない投資をしているのに壊されたくないだろうからな。でもって、同盟を組んで俺達に挑もうがどこが先陣をやるかで時間は掛かる。同盟が終わったら襲われるから誰も先陣をやりたがらない、だから周囲を敵に回すと言う選択肢はあってないような物だ。大国は遠いから動かないしな、そもそも旨みが無い」

「何を言ってるかさっぱりよ。もっと、こう駆け引きとかあったんじゃないの?」

「明らかに強さが違うんだ、俺達は弱点は在れど驚異の強さを持っている。アンデットに勝てるのは宗教国家くらいだ。あとは、蟻のような小国と象のような俺達だ」


ルージュの中で、蟻に食われる象が想像された。

この世界の蟻と象では、蟻の方が巨大で強くて脅威だ。

アレ、それってやばいんじゃないか。

そう、混乱してしまった。異世界の例えと情報の齟齬が発生していた。


「って訳で、これから金を使って小国五つを手に入れる。ギアスロールがあると戦争が楽でいいな、あとは勝手に大国同様の力を手に入れられるんだからな」


こうして俺達の魔の手が小国に伸び始めた。




それから二年の月日が経った。

俺達は急激な発展から緩やかな発展へとシフトした。

情報を得る部隊も設立されて、国として密偵を送れる程度の規模にはなっていた。

俺達の国を正確に知っているのはアルアナ協同共和国だけ、ただ噂程度には知られている。

努力すれば認められる国がある、どんな者でも差別されない国が存在する。

俺達の密偵による情報操作の結果だ。


現在では兵器の方も順調に出来上がっていた、戦車から飛行機まで魔法を使えば木造で出来てしまうのである。木で出来た筒の付いた馬車から石の塊が飛び出る光景はビックリする物がある。まぁ、鉄じゃないと反動で大破するのだけど。スケルトンで遠隔操作できるのもデカイ。

今後は魔法の負担を減らすために航空力学などが発展する事だろう。


トルキアに対して麻薬を流通させる他に新しい事も始めた。

残る周辺の小国である三つの内、リヒニア共和国という所に間接的な侵略を試みたのである。

共和国が多いのは小国だからか、共和制なので煽れば意見が違う者達が出て来る。

今は武器を支援して、内乱を起こしている。

北リヒニアと南リヒニアの戦争だ。

ギアスロールで支援している方が勝った時には自治権を与える代わりに属国となる事が決まっている。

約束を破らせないと言う事が出来るのだから都合がいい。




その日は、いつものように会議をしている日だった。

会議の議題は変わり映えしない物だったが、その日だけは違った。

ソレイユが議題を持ってきたのだ、あぁまたかと一同の思いは一致した。


「で、今度は何?」

「今から配る資料が議題だ」


俺はルージュの視覚を共有した状態で資料を見た。

資料には三つ。

紙幣による経済支配計画、魔物に対しての実験的誘導計画、教会勢力への威力偵察。


「説明して貰えるかしら?」

「まず、同盟国を結び軍事ではなく経済から支配しようと言う物だ。そこで紙の量産が出来るウチは紙幣と言う金と交換できる紙を作る。紙幣で金貸しをして担保にした物を少しずつ奪って行く。最終的には国まるごと俺らの物だ」

「上手く行き過ぎだと思うんだけど」

「それは経済学者じゃないから試してみないと分からないが、まぁ最初は便利に感じて普及するだろうさ」


最初は紙切れを国家の保有する貨幣と交換する。

同盟国は俺達の国の物資を紙で大量購入できる。

しかし、それは敢えて安くして売っているから出来る事だ。

俺達の優れた技術で出来た物は便利だ、だから欲しくて紙幣が欲しくなる。

最終的に交換できる貨幣が少なくなっていくので、そこで貸してやると言う。

借りた金は当然利子を付けるので返済の時に俺らは利益を得る。

そして少しずつ依存した所で値上がりさせていくのだ。

最初は自国の貨幣を増やしたり外貨で何とかするだろう。

その間、俺達は同盟国の貨幣を他の場所で使って行く。

大量にある貨幣は、それ自体の価値が下がっていく。

外貨は尽きて、俺達のせいで貨幣の価値が下がり生活は危うくなって担保に出来る物もなくなっていく。

いつかは借金で国ごと売るしかなくなるだろう。


「自国の経済を他国に左右されるようなことするかしら?」

「相手が乗って来たら試すだけだ、馬鹿は他国の金程度にしか認識しないだろうしな。それで普通より物が買えるなら最初だけ利用しようとして、依存したらこっちの物だ。俺達は最初は損するが後で儲かる」


俺はその話を聞いて、昔読んだ小説や漫画を思い出した。

ロスチャイルド家の陰謀説とか帝国が紙幣を使って似たような事をする漫画もあった。

恐らくそう言う事をするつもりなんだろう。

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