紅の帝国、建国開始
カオス平野を統一し、強制的に初代皇帝にルージュはなった。嫌がっていたが外堀を埋めていたので断れなかった。名前は改名と言うか付け足しと言うか、カオス平原から貰い初代皇帝、ルージュ・カオスの誕生である。国家の特徴を上げるならば恐らく最も雑多な種族の国であり、弱肉強食な国だろう。正直な話、国家の運営はソレイユが裏でやっている。
沢山の種族が集まりグループごとに分かれた集団がカオス平野にはあった。
まだ国とは言えない、他種族が複数所属する集団だ。
俺達が最初に解決しないといけない問題は山積みだった。
そこで、何が問題なのかそれを説明するのは俺達の頭脳的な地位にいるソレイユの仕事だ。
ソレイユは簡易的なテントであり、寝床である場所でみんなを集めて今後の方針を話しだした。
「諸君、一先ず終わったがまだ問題があるぞ」
「あとは住処を作って終わりではないのか?」
「馬鹿め、エルフとは規模が違うのだ。頭を使えば分かる事だろ」
なんだと、とエリーが殴り掛かるが周りが止める。
ソレイユは鼻でエリーを笑って問題点を上げた。
「俺達がまず最初にしなければならないのは、水と食料だ」
「えっ、みんなで分け合えばいいんじゃないの?」
「馬鹿め、肉だけ喰ってるから頭まで筋肉なのだ、無理に決まってるだろ」
にゃんだと、とカシスが殴り掛かった。
俺達は必死にそれを止める。しかし、エリーだけは寧ろ応援していた。
外れ掛けた顎を直しながら、ソレイユは説明する。
「今まではどこかの種族の物を略奪していた。パイを奪い合うような物で、新たに作っていた訳ではないのだ。有る物を消費し、入手は一部の物達がやっていた。当然、これだけの規模だ今までみたいに上手くいかない。俺が調整していたことも知らんのだろ?」
「えっ、アンタなんかしてたの?」
「馬鹿め、好き勝手していたら集団を維持して統率できる訳ないだろ。それでも人の上に立っていたのか?だから調子に乗って恥ずかしい黒歴史を作るのだ、考えて行動しろ」
うがぁぁぁ、と涙目のルージュが飛び掛かった。
ソレイユはそれをスルリと避けて拘束する、王族の教育で習った捕縛術だ。
胸が押し潰れていて見るに堪えない。なんというか、エロいのである。
「これからは水源の近くに簡易の拠点を作る。しかし、それだけでは足りないので周囲の小国を襲撃する。拠点を作りながら略奪するのだ。そして、今から集めた情報を元に地図を描く」
器用に、地面へとソレイユは精巧な地図を描いていく。
俺達のいるカオス平野、その周囲にある大まかな小国が五つ、カオス平野を横断する川に水源である湖がある山、そして端の方には森を描いた。そして、ソレイユは山を指差した。
「要塞を作る程の資源と時間はない、だから自然の要塞でもあるここ、この山を利用する。この湖から水源を確保し、食料は山の恵みと略奪で賄う。略奪で国力の低下から、報復に出る小国はカオス平野に進行して誰もいない状態を目にする、その後はどうすると思う?」
「それは、自分達の物にするんじゃないのか?」
「馬鹿め、襲撃はあるのに見つからないなら調査するだろうが。カオス平野の者達はどこに行ったか。奴らはカオス平野が今までどうだったか知らない、正確な規模は分からない。だから利用するのだ」
立ち上がろうとしたアリアの頭に片手を置き、動けなくしながらソレイユは言った。
因みに自分でも何故動けないのか分からず、アリアはあわあわしている。
「襲撃人数を徐々に減らしていく、いつも同じメンバーで行い弱っている演出をする。そのうち戦う必要のない程の規模になったと相手は思うだろう。山か森かに篭った相手を恐れるに値しないという状態だ。そうして他の国で略奪をして同じケースを作る、すると――」
「……みんなやってきて、喧嘩になる」
「馬……ぐぬぅ、その通りだ」
ドヤァ、とマインが周囲に自慢する。
俺以外、全員がぐぬぬといった表情で悔しそうだった。
「まぁその間に、拠点を拡大していく。次の問題は宗教だな、あと種族間の問題だ」
「それは放置で良いんじゃないか?」
「馬鹿め、お前がいた国の様な状態じゃないのに同じにできるか。宗教は政治に利用するなら都合がいい、腐敗が進むとダメだが神から王権を授かった国など沢山ある。箔を付けるなら都合がいいのだ。纏まりを作るには便利だ、だからルージュを神にする。コイツは変身できるから、全ての神の側面を持っている王であるとでも言えばいいのだ」
俺の意見は一蹴される、確かにイラッとくるな。
そして、ソレイユの下で自分が関わると聞いたルージュが暴れ出す。
しかし、何回かソレイユが尻を叩いたら泣きながら謝罪しだした。可哀想に、尊厳の全否定である。皇帝を尻に敷いて初めて尻を叩いた男の誕生だ。
「幸い、殆どが先祖の霊を信仰する祖霊信仰だ。死者は俺の領分だから説得力もある。同じ信仰と寝食を共にし、祭りでも開けば勝手に仲良くなるさ。そうして、安定するのに数年は掛かるだろうな。その頃にはカオス平野の利権を狙って争う小国達があるわけだ」
思い通りに行くか分からんが可能性の高い話しである、との事だった。
戦争が始まれば、流民や戦争孤児が出て来る。そう言う奴らを集めたら、マインの作った火縄銃を持たせる。新しい武器は戦力を革新的な速度で増やすのだ。
「俺達の国は他国よりも戦力を持っている。最初期はそれで侵略し、搾取する。時間を掛けて雑多な魔法技術から戦闘技術や工業技術も纏め上げる。人間だけの国家は視野が狭いから必ず俺達は優れた国家を作ることになるだろう。奴らは異国や異種族の魔法や技術を馬鹿にしているからな、俺らは貪欲に吸収していく。そうなれば、いつか数世代先を行く国家が出来る、そうなれば戦争になろうが問題ないさ」
「そんな、それでは時間が掛かりすぎるんじゃないか?」
「当然、お前達が生きている間に事を為せるかは分からない。だが俺とルージュは死なんし、エリーは長命種だ。お前達は国の高官として生きて行けるんだから冒険者より楽だぞ」
アリアはそれを聞いて押し黙る、自分は生きて行くためにパーティーを組んでいたからだ。
最終的にはエルフの至宝を手に入れようとしているのでエリーは文句が無く、カシスは差別されない環境を手に入れて、マインは好きな武器を作る事が出来る。
ルージュだけが嬉しくないが、やることもやりたいこともないので問題は無かった。
みんなが納得のいく形だ。
「戦車や飛行機など、魔法を使って作れば無敵だ。俺達の国は魔法に関する知識の量が豊富だからな、兵器をバンバン作れる。兵器は兵士を育てるのに今までよりは時間が掛からんからな、女子供が屈強な兵士を殺せる時代が来る。国の為に働く者は受け入れ、国に逆らう者は処分する。永遠の命を持って永遠の独裁国家を作るんだ、いいな夢が広がる」
「お前、世界が変わるぞ。銃とかこの世界ないんだからな」
「俺だってチートしたいんだよ、自分がダメならまわりの奴らで無双してやるんだ」
フハハハ、と笑い方だけは独裁者として一人前リッチがいた。
こうして、俺達の建国は始まったのだった。
山の中腹、そこまで俺達は移動を開始して生活する事となった。
手始めとして、それぞれが住む仮設住宅をスケルトンが二十四時間体制で作り、魔法で補強していく突貫工事が行われた。
骨達が木材や石材を運んで、魔法が得意な種族が大まかな枠組みを土で覆う形である。
柱は木で、壁は土と言った簡単な作りで、一戸当たり一時間以内に出来るのは魔法のおかげだ。
まぁ、仮設であるので雨風さえ凌げれば問題ない。
「さぁ、諸君働くのだ!」
「クソ、なんて楽そうなんだ!」
そんな建物を作るスケルトン達のエネルギータンクであり魔力を注ぐソレイユは、魔力が回復するポーションの風呂にずっと入って指示を出している。
道のど真ん中に野晒しの浴槽があり、浴槽の中にある緑色の液体に浸る白骨体が暇だ暇だと言う度に舌打ちが聞こえる。入浴剤を入れて風呂に入ってるようにしか見えないからな。
そんな楽そうな姿を、せっせと魔法が使える者達が働きながら恨めしそうに睨んでいた。
頭では分かっているのだがムカつくのだろう。
そんな山の中腹と違う別の場所では、穴を掘る者達がいた。
彼らはマインの鉱石を見つけるドワーフの直感に従って武器の材料を集めているのだ。
オーガやゴブリン、オークにトロールなど力や数の多い者達が連携しながら採掘している。
また、湖の方では用水路の建築と食料の採取をエリーとカシスが行っていた。
此方はフェアリーやコボルトなど小さい種族が多く、力は弱いが目敏く素早い者達が多かった。
ユニコーン達が湖を浄化して、フェアリーが上から指示を出し、スコップを持ったコボルト達が穴を掘り用水路を作る。近いうちに俺達の生活圏に湖の水が引かれる事だろう。
残った者達は食料を作ったり略奪を始めた。
戦闘以外出来ない奴らは畑を耕すか戦うしか今の所は出来ないからだ。
足の速い種族が主力で狼系獣人やケンタウロスが小国を平原から攻めていた。
食料だけでなく貨幣などの物資も後で使えそうである。
ルージュは種族特有の魔法の研究をしていた。
例えば、歌や数字に色や絵と言った種族特有の魔法を他の物と合わせて違う物に出来ないか、共通する要素はあるか等である。
また、小国の国境付近でどこからか商人と話を付けて貿易もし始めた。
当然、盗品ばかりを扱っているので裏の商人であるのだが規模がデカイ。
複数の商人達と交渉し、話を纏めて行く姿を見ていると実は商人の才能があったのではとすら思える。
まぁ、ノウハウとか色々とやってたから知ってるのかもしれない。
金稼ぎだけはルージュの誇れる特技だな。
「ちょっと、どうしても欲しいの分かってんのよ!もっと値上げしなさい!」
「もう勘弁してください、これ以上は出せませんって!」
金に汚いのは目を瞑ろう。
そして、少しずつ軌道に乗り始めたのだった。




