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ドラゴンになりました、使い魔らしいです   作者: NHRM
成り上がり・建国編
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王城に侵入しよう

侵入する事が決定して、早速問題が発生した。

それは……


「えっ、変身出来ない?」

「……はい」


ルージュが変身できない事を申し訳なさそうに告げる。

それを聞いたアリアは疑問を隠せないようでいた、理由として彼女の知識の中では吸血鬼はあらゆる物に変身できたはずだったからだ。

記憶違いだろうか、彼女がそう思っているとルージュが続けて話す。


「吸血鬼、と言っても日が浅い方ですので……すいません」

「そう、なのか?しかし、ヤンヤンは出来るはずだったよな?」

「多分、経験的な問題かなと。爪とか髪なら長さを変えられる程度に変身できますけどね。全身はちょっと」


すごく気まずそうに俯きながらルージュは説明した。

最初の段階で俺達は躓く。

部屋の中にいるアリア以外のメンバーから、やっぱりダメじゃんと言った雰囲気すら伝わってきていた。

これは不味い、リーダーの威厳が不味い事になる。

アリアはどうにかして打開策を考える。


「練習したらどうだ?今までやろうとしてなかっただけだろ」

「そうですけど……もう他の方法に」

「いや、さっきまで全員賛成してくれてた。うん、私の作戦は間違ってない」

「意地張ってません?」

「張ってない」


目線だけ泳がせながら、胸を張ってアリアは答えた。

その態度だけで引くに引けなくなるくらいなら無理そうな作戦なんて考えるなよ、とルージュは思いながら溜息を吐く。

アリアの言うとおり意識的に変身しようと思った事は無かった。

可能性としてはあり得るが、果たして変身が出来るかは分からなかった。

まぁ、取り敢えずやってみようとのことで三日の時間が経過した。




宿、その一室に俺とルージュは監禁されていた。

部屋の中には、鳥籠の中に入った鳥だらけ。食料は鳥料理で、鳥の人形に鳥の仮面、鳥のグッズが所狭しと置いてあった。

原因は、アリアにどうやって変身したんだと言われてスケッチしたり舐めたりしたら出来るようになるよと、自分でも分からないくせにアドバイスしたのが原因だった。


「イメージだ、俺が出来るならお前も出来るだろ」

「鳥、鳥、鳥……私はヘルメスの鳥だ」

「それ、別の吸血鬼なんですけど……」

「ヤンヤンの知ってる吸血鬼人間やめてるでしょ、自分を魔法化したり同族を食べたり」

「いや、大概の事は出来るって認識してんだからいけるだろ。別に霧になれって言ってる訳じゃないし」


しかし、自分の身体がコロコロ変わる俺と常に人間ベースだったルージュでは変身も上手く出来ないのかもしれない。

一応、翼は生えたのだから及第点だろうか。


「取り敢えず、この三日でアリア達が調べたことを説明するぞ」

「目標の半分は達成してる、もうゴールしていいよね、問題ないよね」

「そこ、自己擁護してないで話を聞け」


俺はうがぁぁぁと叫びながら小鳥を生きたまま口の中に入れるルージュを見て言った。

っていうか、怖いよ。


「えげつねぇな……じゃあ、切り替えてけよな説明するから。二匹目に手を出すなよ」


アリア達の情報を纏める。

まず、王城は正方形のような形の塀に囲まれており入り口は正面のみ。

正面には兵士が交代体制で見張っている。

塀の中には見張り台があり、ある程度高くなければ見つかるが巨大な飛行モンスターの使い魔などを想定しているので大丈夫だろうという話だ。

ただ、注意しないといけないのは匂いに敏感なモンスターが徘徊していて吠えられると言う物だ。

まぁ、それは連日臭い物を投げてるアリア達によって意味もなく吠えてる物と認識されるだろうとのことだ。

そして、第三王子の特徴は黒髪黒目の珍しい物だからすぐわかるらしい。

当然、部屋は窓があるのでそこから侵入する。

だが、部屋の外には見張りがいるらしく静かにする方がいいとの事だ。


「何か質問は?」

「もう、城の奴ら殺そうよ」

「あなた疲れてるのよ、今日は休むべきだわ……」


大分ストレスが溜まっているようなので、残業を終えたOLの様なルージュさんには死んだように眠って貰った。




夜、部屋の中でメンバーが最終確認をしていた。

因みに、ルージュはベッドから顔だけ出して傘下である。

真面目にやらんかい。


「鳥くさいにゃ……」

「おい、血が……シーツ代踏み倒すか」

「アリア、もう手遅れだ。さっき請求されたからな」


女が三人寄れば姦しいというもの、ザワザワと騒がしい。

因みにマインは新しい武器の基礎、火縄銃(仮)を製作中である。

ゴーレム系の技術と精霊魔法、これにより操作できる弾丸を目標にしている。


「まぁ、いいか。作戦は……出来そうではあるな」

「一応……翼は出ましたので、もう鳥肉は嫌です」


ルージュの背中の黒い翼を見てアリアが苦笑する。

彼女も三日目のルージュを知っているからな。

少し、情が移っていた鳥達が全部食べられた時は部屋に篭ってけど。

その後、寝ていたルージュとガチ喧嘩してたけど、苦労は分かるのだろう。


「アル……じゃない。鳥達、の犠牲は無駄ではなかったんだよな」

「ちょっと、錯乱して食べちゃいましたけどね」

「アルケ……じゃなくて、鳥達か。アレは必要な犠牲だったんだよな、私達が生きるために」

「まぁ、食べる事は生きる事に必要ですしね。あっ、美味しかったですよアルケニオスちゃん」

「アルケニオスの仇ィィィ!」


号泣しながら、特に気に入っていた鳥の名前を泣きながら言う女の姿があった。

いや、当初は食費が浮くって喜んでたでしょアンタ。

気安い中になったのかキャットファイトが繰り広げられた……すごくエロイです。




さて、大分落ち着いてから段取りをアリアは話す。

アリア達は、明日の朝から町の外に出る。

ルージュは夜に忍び込んで、成功しても失敗しても逃走し合流する。

巨大な壁は、巨人を攻撃するために内部に人が入れるようになっているそうなので逃げる際は攻撃用の穴から出て来いとのことだ。

大砲の代わりに魔法を放つ魔法使い用の穴があるんだろう。

失敗したら、アクア王国かどっかの小国に行くしかないそうだ。


そして、夜になった。

ルージュは宿屋の窓に足を掛けて黒い翼を軽く振るう。

幾つかの黒い羽がゆっくりと落ちて行き、月明かりに照らされて幻想的だ。


「ヤンヤン、行くよ」

『オーケーだ。影からの奇襲は任せろ』


念話で答え、俺は返事を返した。

飛行状態で、影は地上に出来上がる。

地上の影からの視界は下から見上げる形になるが、今は服の影から地上を見ている状態である。

影の中で服の影から出来た小さい窓とルージュの影からできた人型の窓がある感じか。

緩やかに、ルージュは飛び立ち。今日の分だけ宿代を踏み外して俺達は飛んで行った。




城の中へは問題なく入れた。空を滑空しているから当然でもある。

一応、秘密なので練習していなかったルージュは初フライトに結構楽しそうだ。

夜だからいいが昼なら見つかるくらいハイテンションだろう。


「ワン!ワン!匂いだ、匂いがするぞ!」

「おい、またかよ。密偵が入る可能性あり、警戒を強化しろ」

「匂いは既に中でする、臭くはないがな」


下で巡回している兵士達に犬に見える魔物が吠えたてる。

っていうか、使い魔で喋れるのに最初はまんま犬みたいな感じだな。


「気付かれた?」

『影が塀の影と重なる際に取り込む』


雲に掛かっていた月がゆっくりと顔を出す。

そして、地上に写る影。それは塀の影と重なり俺が出て来れる場所を広範囲にする。

影の中にある窓は広くなりガラス越しに下から兵士達が見えた。

俺は最後尾にいる犬の使い魔の真下に移動して口を広げて、一気に地上の影から顔だけ出した。


「おい、聞いてッ!?」

「何が起きた!消えた……ハッ、敵襲!敵は近くにいるぞ!」

「うわぁぁぁぁ!そんな、嘘だろダニー!」


一瞬で喰われた使い魔に、飼い主であろう兵士が驚き泣き崩れた。

苦楽を共にしたペットだったんだろう、王宮勤めの貴族だ甘やかしたりしていただろう。

いつしか親友の様なそういう関係だったんだろうな。家族のように良い物を食べて一緒に育った。

だから、結構美味しいです。その使い魔は口の中で噛み砕かれてる最中なんですけどね。


「いい関係を築いていたみたいね」

『俺らもな』

「私は別にヤンヤンが死んでも変わりはいるし」

『嘘だよな?』

「…………」

『マジですか!?』


軽口を叩き合いながら、俺達は王子を探す。

俺は影の中から、ルージュは外から探していく。

王城は金があるだけあって明るいので影がたくさんあって探しやすい。

そして、バルコニーがある部屋のベッドで本を読む黒髪黒目の男。

間違いないだろう、王子がいた。


「見つけた、でもどうしよう。起きてる」

『おい、念話にしろ!こんな近くで声が聞こえたらどうする』

「大丈夫よ、あれ目が……あってる」


目が合ってしまった。

大きく口を開けて、目を見開いた王子がいた。

周りをキョロキョロしてドッキリのカメラを探すような動作の後、目を擦って外を見る王子。

目が合った、飛んでいるルージュと目が合った。


「ど、どどどどうしよう」

『お、落ち着くんだ!』

「なんか、剣を取ったり置いたりしてる!っていうか、扉の辺りで右往左往してる!」


戦おうか悩んでるのか、壁に掛けていた剣を持っては床に置き乱数調整の如く繰り返し持ったり置いたり。

はたまた、人を呼ぼうとしてるのか扉の前まで行って見間違いじゃないよなと、窓の外を見る為に移動。そして戻るを繰り返す。

今度は腕を組んで悩みだした、何だか唸りそうな表情だ。


「なんか、イメージと違う対応ね」

『危機感が無いな』

「おかしすぎて、落ち着いてきたわ」


そして、王子の取った行動は窓を開け放ちバルコニーから出て――


「親方、空から女の子がー」

「…………」

「やぁ、君は暗殺者か何かかな?」

「あっ、違いますけど」


――ルージュに話し掛ける物だった。

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