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ドラゴンになりました、使い魔らしいです   作者: NHRM
成り上がり・建国編
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夜戦、ステルスなルージュの独壇場

戦争が始まった。そうは言っても実感の湧かない俺達はのほほんと生活している。

今日なんて、店先で子供を集めてマインが出来上がったパイルバンカーを自慢しているからな。

作ったけど、思ったより売れなかったから店頭販売してるんだよ。


「フハハハ、そんな今までの安い槍ではこの俺を倒す事は出来ぬぞ」

「……笑止、そんな時は一家に一個パイルバンカー」

「何だと、それは突撃の際に引き金を引いて魔力を込めると内部で爆発が起こってすごい勢いで杭が飛びだして敵を貫く武器ではないか!ゼェゼェ……」

「……単発式だが、この店で爆薬を買えば何度でも貫ける。てぇい」


バシュン!と、俺の真横でパイルバンカーが発動されて杭が飛び出る。

正面から見ている子供達には俺の身体が貫いて見えている事だろう。


「ぐわぁぁぁ、やられたー」


そして、息切れになっていた俺は捨て台詞と共に倒れたのだった。

あぁ、子供達の拍手が俺を褒めているようだ。長台詞頑張って良かった……


「お父さんアレ欲しい!」

「よし、勝っちゃおうかな」

「……金貨五枚です」

「やっぱり、あっちの木刀にしなさい。木だから安い」

「えー、アレがいい!冒険者でしょ、お金持ってるでしょ!」


杭を出す為のギミックには呪術が、爆薬はエリーのエンチャントが、そして爆発に堪える為の鉱石が貴重なので高めなお値段。

子供に与えるもんじゃないよな、しかし子供えげつない発言である。


五個作って三個しか売れない不良債権に俺達は、またかと項垂れる。

ドリルの方は穴掘りやモンスターへの武器として売れるんだけどね。


「全部、ヤンヤンが悪い」

「何だと、半分以上売れてるじゃないか!」

「やっぱ……使いにくい」

「性能とか度外視するから浪漫があるんだよ!」


量産型より特注、量産品より特徴的すぎる武器である。

仕方ないから殴ったら爆発するハンマーとか作って貰うか。

それなら、売れるかもしれないからな。


そうして俺とマインが今後の事を煮詰めていると、休憩中だったアリアがギルドから帰ってきた。

なんか傭兵がどうの言ってたけ。


「みんな、戦争に参加するぞ!」

「えー何でですか!?」


ルージュ以外はいいねと賛同していたが、どういう事なんだろうか。

それについて、アリアは説明してくれた。


「勝ち戦だぞ、どうせ後方支援くらいしか防衛戦じゃやらないさ。貯金も人数分のギアスロールに代えて来たしな」

「そんな……アレだけ集まったのに」

「ルージュ、冒険者たる者チマチマした稼ぎじゃダメだ。一発逆転の仕事で稼がないとな。まぁ、老後に備えて貯金する事は賛成だがな」

「もう、強制なんですね……」


がっくし、と落ち込むルージュ。

まぁ、今までルンルン気分で商売してたのに戦場に行くぞってなったら落ち込むよな。

俺は渋々ながら血をギアスロールに付けるルージュを見ながら思った。


なぜギアスロールを買って来たか、それは傭兵になる為である。

破ったら殺す事も可能なギアスロールは契約上、便利なアイテムだ。

条件として今回は簡単に言えば裏切りをしてはいけないと言う物だ。

ただ、ちゃんと見てないと奴隷になる事や遠回しな言い方で気付かぬ間に損をする場合もあるから注意だ。


「主な仕事は物資の補給や調達だが、後半からは荷物運びだろ」

「何で分かるんですか?」

「私なら、この形状だからな。都市を囲んで兵糧攻めする。民間人は今のうちに口減らしで殺されないために避難しているな。もし兵糧攻めになったら戦えない者達は殺されるからな」

「だから最近、街から出る人が多いんだ」


まぁ、おかげで呪術による保存の効く食料関係が高値でも売れているんだけどな。

しかし、宣戦布告からだいぶ経つが戦争は始まらないな。

そして数日が過ぎて行き、事態は急転した。




見張りの人間がそれを見つけた時、要塞都市は不安に包まれた。

敵の軍勢は農民を徴兵した部隊と騎士達の部隊。

そして、傭兵部隊に奴隷部隊。ここまでは別に良かった。

戦力で言えば劣勢ではあるが、倍はいない。互角と言った所だったからだ。


しかし、奴隷部隊が運んでいる巨大な植物が良くなかった。

見張りである竜騎士はそれの正体を知っていて、声が枯れる程に叫んだほど危険な代物だったからだ。


「大変だ、ドラゴンイーターだ!」

「な、何だって!?」


その知らせは都市にいる全ての人間に伝えられるのだった。




アリアは血相を変えて、店の中で皆を集めて話し出した。

それは最近噂になっているドラゴンイーターについてだ。

俺の目の前で、皆が唸りヤバい問題だと言う事が窺えた。

なんだよ、ドラゴンイーターって黄色い鳥とか食べてそうなモンスターだな。


「大変な事になったな……」

「みんな、どうして悩んでるんだ?」

「アンタ、ドラゴンなのにドラゴンイーターを知らないの!」


俺の質問に、ルージュが説明してくれる。

ドラゴンイーター、それは植物のモンスターで花粉を飛ばして特定のモンスターを食べる奴だ。

その特定のモンスターとは生物の中で強くて栄養豊富なドラゴンである。

その花粉はドラゴンを虜にして骨抜きにする。そして、近づいたドラゴンを枝で叩き殺して捕食するモンスターだそうだ。ドラゴンは死ぬ事になっても恍惚となるほど花粉はドラゴンにとって危険である。

しかし、繁殖は難しくドラゴンしか食べない貴重なモンスターで花粉は出回っても本体なんて滅多に出回らない。しかも、恐ろしく弱い事でも有名なモンスターらしく普段は敵の少ない高地で飛んでいるドラゴンを待っているモンスターらしい。


「そんなモンスターがたくさんいるのかよ」

「今の所、十数体確認された。竜騎士の天敵だ、これでは戦力はほとんど無いに等しい。遠距離でやるか討って出るしか道はないだろう」

「嫌だ、アへ顔で撲殺されるなんて」


そんな強敵が出て来るなんて、というか持ってくるなよイグニス王国。


「アンタ、鼻とか変身で消していけば平気じゃないの?」

「いや、ルージュの案は無理だろうな。体内から寄生する花粉らしくて、口や目からも入ればあとは自分から死に行くそうだ。戦闘中は花粉の入らないように竜騎士たちのように地下にでもヤンヤンは隔離するべきだろう」

「アンタ、能力で影に潜れたわね。待機してようか」


うんうん、と俺は涙目で頷いた。

ドラゴンイーターとやらは危険すぎる。花粉なんて、どこにいても逃げられないじゃないか。

花粉症みたいなもんだろ、予測回避不可能だろう。


「恐らく、野戦にてドラゴンイーターを倒す事になるだろう。想定より危険が増えてしまった、すまない」

「まぁ、そうなるなら多分高い装備が叩き売りされるだろうな。弓の次は防具が欲しかったんだ」

「私、暗器とか増やしたいニャ」

「……パイルバンカー、安売り、ぐっ!」

「いやいや、アレは爆薬とセットだから難しいですよ!遠距離武器じゃないんですから」

「……じゃあ、値下げ無しで」


ともあれ、俺達の戦争が始まった。




この世界の戦争は魔法がある分、派手だった。

外の奴らは遠距離攻撃以外気にする必要なく、長い詠唱で強い魔法をバンバン撃ってくる。

内側の俺達は要塞を土魔法で補強したり、遠距離にいる魔法使いを狙って戦う。


結果、内と外で爆発音などの騒音が絶えなかった。

交代で時間を決めて何人かの傭兵が森に食料を確保しに行くが、いつも襲撃があり大体七割ほどしか生還しない。

このままでは負ける、ジリ貧だった。


敵はドラゴンイーターが全て死ぬ前に決めたいのか短期決戦を仕掛けて、三日も連続で攻撃していた。

此方は敵の対応に否応なく休むことも出来ず、疲労が溜まるばかり。

竜騎士たちは、傭兵たちを集めて作戦を提示した。


「この度、緊急作戦を発令する。ギアスロールによって諸君らは契約を守る義務がある。なので、我々の指揮の元に戦闘する事は強制だ。これより、夜戦にて敵を倒す。目標はドラゴンイーターだ!」


本来は、竜騎士と共に野戦で決着を着けたかったが今回は竜が使えない。

だから、夜戦によって戦う事を宣言された。

夜は敵の魔法使いが狙いを付け難くなる。

また、混戦となれば魔法使いは仲間を巻き込むので攻撃出来ない。

相手が仲間事、殺しに来れば違うがそれは拮抗した戦力では無いだろう。

気を付けるのは奴隷部隊、生き残っても後が無い捨て身の奴らで奴隷部隊を巻き込む攻撃を敵の魔法使いが出来る元犯罪者の部隊だ。


俺達はそれに注意しながら、少数で攻めて行く。

相手の同士討ちを狙って行く為だ。

そして、少数の部隊で戦っていくうちにルージュが辛そうに座り込んだ。


「血の匂い……うっ」

「大丈夫かルージュ、体調が悪ければ後方支援に回れば戦闘扱いになるから苦痛は無いはずだぞ」

「そうにゃ、ギアスロールで最悪は死ぬけど。仲間殺し以外なら死なないし、命令違反で激痛が走るのは痛いにゃ」

「大丈夫です、ちょっとクラッて来ただけです」

「殺人は初めてか、まぁ慣れない方がいいだろう。覚悟していてもそういう症状は出る物だ」


息が荒くてフラフラするルージュをアリアは慰めるように言った。

しかし、影の中から様子を見ていた俺は吸血鬼だからかと頭を捻る。

最近、血なんて飲んでなかったからな。


「ハァハァ……」

「おい、本当に大丈夫か?」

「ちょっと、ドラゴンイーター倒してきます」

「おい勝手にって早い!?魔法でも使ってるのか!」


もう辛抱出来ないのか両手に剣を持ってルージュは走り出した。

その顔は獰猛な笑みを浮かべて、返り血を浴びながら舌舐めずりする。

アリア達どころか、他の味方を置いてけぼりにして敵へと突っ込んだ。


「な、何だ!?」

「まず一体、次!」


赤い目が線を描くように兵士達の横を残光を起こしながら通過する。

すると、動脈を切られて血を出しながら死んでいく兵士。

敵の姿からは見えなくても、俺達からははっきり見えた。

久しぶりの血に興奮しているのか、軽くトリップ状態でルージュは斬り捨てる。

使えなくなったら武器を交換して切り裂きまくる。


「敵だ!既に接敵しているぞ!前線じゃ無いはずな――」

「死んだ、ヤバい逃げ――」

「もうこん――」


気付くのが遅れた敵を見つけ次第に斬っていく。

夜と言う戦場はルージュの独壇場だった。


「た、助けてくれ……アンタには敵わない」

「え、なんて?聞こえない!」

「嫌だ、いっ、ぎゃぁぁぁぁ!?」

「フフフ、アハハハハ!何見てんのよ、ぶっ殺すわよ!」


血に酔って暴れるルージュは、まるで酒に酔ってる時みたいに凶暴だった。

運が無かったな、イグニスの兵士は……

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