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魔法使いになりました

あれからどれほど経っただろうか。季節が春から夏になった事から半年は過ぎただろう。

正直、時間に追われないぐうたらな生活をしていたので良く分からない。

しかし、その間に俺は着々と知識を得ていた。魔法は使えんと言われた俺は、お前は十万三千冊の魔本でも覚えるのかというぐらいに片っ端から本を読んでいた。


正直に言おう、この世界の本は面白すぎる。

主な分類は、物語形式の伝承や魔物の生態、魔法の研究結果と魔法の種類、武器や戦闘の指導本、その他料理や音楽などの本と種類は少ないが内容は興味深いものとなっている。

本が貴重故に種類が少ないようではあるが、中身はゲームの設定やカードゲームの魔法、ラノベのような内容だ。


しかもこの身体、環境に適応しようとする能力のせいか何度も反復したことは必要な事として身に着ける。つまり、大変物覚えがいいのである。

もう、俺は遊び人ではない賢者なのだ。そう、遊んでばかりいた竜は賢い竜にクラスチェンジしたのだ。


「ヤンヤン……わかんない」

「歴史か……竜殺しの英雄は三名いるが国を作ったのは一人だ。つまり選択肢から選ぶ答えは、コロンビア!」

「はいはい、コロン……って、そんな奴はいないわー!」


このように、迷えるテスト前の仔羊に勉強を教える事も出来るのだ。

いや、まさか主人公の名前とヒロインの名前覚えたり、敵キャラを暗記しただけで歴史の授業で点数取れるとかね。ラノベが僕の教科書ですって感じだよね。

魔法の授業は、相性とか消費魔力とか難しい事言ってるけど苦手属性とかコスト計算するだけなのでカードゲームだよ。ファイヤーに対してカウンターにウォーターオールを使用するなんて問題は、トラップカードオープンみたいな感じで解ける。

後は魔法陣学とか錬金術とかあるんだが、ぶっちゃけ中学の数学と理科だから余裕だ。

魔法で解決しすぎて質量やモーメントとか計算しないので数学は発展してないのだろう。


「諦めろ、テスト一週間前からじゃ無理だ」

「うるさい、実技が出来る気しないんだから頑張らなきゃヤバいの」

「実技完璧じゃん、初級だけだけどさ」

「そんなの当り前だから素点が全部で三十くらい。つまり筆記で七十以上取らないといけないの!」


凄まじい剣幕で勉強を再開するメアリ、その理由だがこの世界の学校にはノルマがあるのだ。

魔法実技百点と筆記百点、その合計で百点以下の者は退学もしくは留年。

なんとも、現代の中学生たちが聞いたら泣きたくなる内容だ。まぁ、国としては使えない奴には投資とかしたくねぇよと言う事なのだろう。


「はぁ……何でテストなんてあるのよ、誰よ考えた奴焼き殺すわよ」


まぁ、どこの世界にもテストが好きな奴はいないということだな。



数日後、メアリのテスト期間がやってきた。そして俺はこの日を待っていた。

意気揚々と俺は図書館へと向かっていく。実は少しの間、来ることを拒否られていたのだ。

理由は、テスト前に本の精霊で図書館の本の内容がすべて頭に入ってる爺が忙しかったからだ。

でも、テストが始まれば関係ない。さぁ、約束を果たして貰おうか爺!


「来てやったぞ爺!」

「あー、そういえば。煩いのが来おった」


お疲れモードなのか若干だらけた、ローブ姿の爺。そう、魔法使いですと言わんばかりの姿。それが図書館の机に座ってるのが見えるのだ。大事なことだからもう一度言おう、見えるのだ。


「さぁ、俺に魔法を教えるが良い!」

「偉そうじゃな、正直ちょっと前から見えてたのに教えてなかったのは態度が気に――」

「ごめんって、足でも舐めようか?それともメアリの下着でも持ってこようか?」

「お前という奴は……いや、もういい」

「っしゃぁぁぁぁ!魔法だ、魔法だ!」


何故この世界に転生したのか、いや憑依したのか、それについて俺は考えていた。

答えはあったのだ、そう魔法を覚えると言うな!もう魔法が使えたら死んでもいいやー!神様ありがとう、愛してるぜ!


「よし、こんだけ喜べば充分だろ。神様も十分感謝されて満足だろ」

「お前、結構不敬じゃね?」

「うるせぇ、実在してなかったら感謝なんかしねぇんだよ。感謝されてるだけ有難いだろうが」

「その言い分だと、お前の方が偉くなってるわ……」


呆れた様子の爺。俺のテンションにも半年の付き合いなんだから慣れて欲しい物だ。

爺は始めるか、と言って此方を見て大きな声で言った。


「第一回、魔法講義ドラゴン編!」

「わー、ぱふぱふ、ぱちぱち!」

「……のぉ、これやらなきゃダメか?誰かに見られたら死にたくなるんじゃが」

「ああ!?何だよ爺、これやらなきゃ勉強じゃねーだろ!」

「いや絶対、人間でもしないわ……」

「これだから引きこもりは――するかもしれないだろ!」

「貴様!みんなやってるって言ったくせに!」

「言ったけど、それが正しいとは言って無い!」

「……ぐぬぬ、仕方ない教えてやろう」


俺と爺の口論が終わった頃を見計らって、爺は語りだす。それに対して俺は見上げる形でペタンと座っている。イメージとしては、緑色の恐竜のぬいぐるみが床に置いてある感じだ。大体そんな大きさだしな。


「まず初めに魔法とは何かと考えたことがあるか?」

「その時代におけるあらゆる技術を用いても実現不可能な事を実現する力です!」

「いや、そんな大それたもんじゃないよ?あれ、そこから?」

「違うんですか、先生!」

「先生、先生か……おっと、何じゃったかな。そう、魔法じゃった。魔法とは変換した魔力じゃ」


変換した魔力、その言葉に俺が疑問を抱いていること察して追加説明をしてくる。

しかし、なんでコイツにやけてるんだ。


「種族ごとに波長と言う物があってな、人間の場合は五種類、火と水と風と土と無じゃな。その波長に魔力を合わせてイメージすると魔法が使える」

「先生、無とか知りません」

「理論上はある事になっておる。でだ、ドラゴンならブレスや飛行に竜魔法と言うのを使う。他にも精霊は精霊魔法、ゴーストなら死霊魔法、その他色々あるのが魔法じゃ」


なるほど固有技とか特性的な奴なのかな?あれ、でも波長とやらを操れるならどんな魔法も習得できるんじゃ……


「その顔は気付いたようじゃな。その通り、この世界の魔法は努力次第でなら何でも習得可能じゃ。人間では火属性だけだったものが他の属性を使えるようになった話もあるしな」

「マジですか」

「まぁ、リッチとか不死にならぬと習得は無理じゃな。寿命が来てしまう、それほどに時間が掛かる」

「マジ……ですか」

「落胆することは無い、お主はキメラドラゴンじゃ。予想が正しければ貴様は――」


爺は勿体ぶって言った。


「この世界で最も魔法を習得する資質を持っている!」

「な、なんだってー!」

「言われた通り貴様の主の血は飲んで来ておるな?では、イメージするのじゃ、目の前に逆巻く炎を!」

「うおおおおおお!……先生、出来ません!感覚派すぎる!」

「もっとこーう、バーン的な感じじゃ。修行すれば出来る筈じゃ、精進せよ」


その言葉に修行か、とちょっとワクワクしながら考えてみる。

俺はメアリの血によって既に波長とやらは持っている。つまり、必要なのはイメージだ。

バーンと魔法を使うのだ。


「バーン……魔法……炎……」

「まぁ、今日中には出来るだろ」

「オラァ!あっ、出来た!?」

「何じゃと!しかも、中級魔法か!?」

「あ……いや、あれだ!今のは中級ではない、初級魔法だ!」


こうして、俺は魔法使いの一歩を踏み出した。


「ギャー、本が燃える!何て事を」

「わー、水!水!」


その後、図書館で謎の不審火事件が発生したそうだ。

……コワイネー

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