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オマケ その1

伏線もありますが、ちょっとした過去編。

読まなくても本編に影響のないのでグロがいやなら飛ばしてね。

もしもの世界です、もしもですので本編と繋がりはありません。

IF キメラドラゴン回収ルート


王城の奥、そこは専用の遊び部屋があった。

国中から集めたドラゴンの幼体の巣であり、マーガレット王女の宝物だ。

それを見守る王様は、国の軍事力増強になり大臣達を適当な理由で誤魔化せたと思っていた。

しかし、本来なら自分と同じドラゴンスレイヤーになって欲しいのも事実だ。

自分達の足を引っ張るだけで、世界の真実を知らない大臣だけでは不安だからだ。


世界は拮抗していないといけない、例え魔王に間引きされたとしても生き延びて繁殖しないといけない。

でなければ、人類の苦渋の決断は子孫の手で台無しになってしまうからだ。


「王よ、またご息女を見ていたのですか?」

「あぁ、彼女をどう利用しようかとね。あと、最近怪しい奴らを纏めといたから殺しといて」

「またこんなに、見逃すから付け上がり民が死ぬのですよ」

「彼等の犠牲が決定的な証拠になるなら利用しないといけないだろ」


王は手元にあるワールドインデックスという本を閉じながら、側近に答えた。


「王の言いつけどおり、本の精霊は移動しました。移植の際に記憶は初期化されています」

「そうか、アレは便利なようで不便だからな。一番怖いのはアイツの予測変換機能だ」


自分の手元にある本の形をした国宝を見ながら呟いた。


「既に一人目が生まれている、我が国内にだ。王女でないのは頂けないが利用しない手はない」

「しかし、記憶を消すだけで大丈夫なのですか」

「アレはキーワードに反応するだけだからね。自分では調べられない哀れな道具さ」


だから安心だが、しかしまだ懸念材料がある。

王は、窓の外にいる姫を見て一計案じる事にした。




マーガレットは歓喜した。寝る前に呼んでもらったドラゴンスレイヤーの物語にいたドラゴンが手に入ったからだ。

父はドラゴンは悪い奴だと言っていたが、マーガレットは知っている。

竜騎士のおじちゃんが竜は友達と言っていたからだ。

おじちゃんはその後、遠い国に行ってしまったけど思い出は残っている。

竜は友達、絶対に裏切らない相棒、難しい言葉ばかりだが多分家族みたいなものだ。


そのお部屋の中にはたくさんのドラゴンがいる。赤いのに青いの、緑や白いの。

みんな可愛い、ぷにぷにの友達だ。ちょっと痛かったけど、お呪いをしてからお話しする事も出来る、私の家族だ。


そんな私には心配事がある、とっても不細工で小っちゃい子がいるのだ。

その子は身体が弱くて、みんなに虐められてる。

作り物、失敗作、良く分からないけどきっと悪口だ。


「どうしてみんな、貴方を虐めるのかな」

「オレ、ネムイ」

「そうよね、きっと同じじゃないから虐められるんだわ、私と同じ特別なのね」

「ハラ、ヘッタ」


特別なこの子、そうだ父に言って助けて貰おう。

父の部屋に行った私は相談する事にした。


「パパ……じゃなくて父!」

「父上だよ、ドラゴンの事で来たんだろ」

「すごい、なんで分かったの!」

「私も同じことを考えていたんだ」


そう言って父が笑う、みんなは怖いというけど私は好きだ。

父が言うには身体が弱いのがいけないらしい、みんなと遊べないからね。

だから、魔物のお肉をたくさん食べさせればいいんだって。


「父上に任せなさい、淫魔やオークの肉があるからね」

「よくわからないけど分かった父!」

「父上だよ、マーガレット」


その日から、あの子の育成っていうのが始まった。

育成ってのに大事なのは、隔離という奴だ。みんなに虐められない特別な部屋を作るんだって。

私はそこでご飯をあげる、この時手伝って貰ってはいけない。なんかダメらしい。


ちょっと臭いけど、お肉をたくさん持っていくとあの子は嬉しそうに食べる。

不思議なのは、お腹いっぱいにならないのかずっと食べる事だ。


「おいしいの?」

「クウ、ハラヘル、クウ」

「ふーん」


良く分からないけど元気になって良かった。

少し日が経つと、みんなと同じ翼が生えた。喜んでもっと上げると、今度は身体がおっきくなった。

最近は懐いてくれて、私を押し倒してくる。もっと力が強くなったら抱き返せないな。


その日もいつもと同じ、でも少しだけ違う。

父がトロールの肉を用意した、おいしいからよろこんでくれるんだって。

あの子はすごく特別だった、お腹まで口が開いてあってたくさん食べれる。

ブヨブヨした身体と、ねっとりした皮膚、お腹には大きな口、どれも個性という奴だ。


「今日もたくさんたべてね」

「…………」

「アレ、食べないの?うわ」


あの子が私に抱きついた、きっと甘えているのだろう。

いままで虐められてたし、父がもうこの部屋がいらなくなるって言ってた。

もう大丈夫ってことだろう。


「ねぇ、重いよ」

「オレ……クウ」


私の足にねっとりした液が掛かっていた、アレ?


「……ぁ……いだぁぁぁぁ!?」

「クウ、クウ、タベル」

「うぅぅぅ、やめて!はなして!」


足が熱い、熱くて痛くてたまらない。

何が起きてるか分からないけど、逃げないといけない。

でももっと怖い事が起きる気がする。


一生懸命逃げる、あの子は足が遅いからうまく歩けないけど逃げられる。

見れば、足に穴が開いていた。初めて噛まれた、痛い。でも、さっきよりは平気だった。

ドアノブに手が触れた、これでお外に出られる。


「えっ……えぇ……なんで!なんで!」


開かない、何度も回してもガチャガチャ言うだけで動かない。


「待って、そんな、やだ!開いて、開いてよ!」


ピチャ、音がした。

私の顔に付着した何か、それは私の……血?


「い、いやぁぁぁっ!」


あの子が私を食べに来た。

また足が刺さる、でも痛くない。何で、どうして?

なんで私の腕はあそこにあるの?どうして痛くないの?

あの子が私の腕を食べていた、なのに痛くない。


とうとう足と腕がなくなった、今度こそ食べられてしまう。

でも、違った。


「オレ、オカス」

「な……に、それ?」


私の知らない言葉だった。

えっ、痛い?痛い……痛い、痛い痛い、痛い痛い痛い、痛い痛い痛い痛い!


「いたぁぁぁぁ!?やめて、何、痛いよ!パパ!助けてパパ!」


身体の中に何かが入ってくる、痛い気持ち悪い。


「いやぁ……いやだ……うぐぅ……」


喉から込み上げて、私は吐いてしまう。

気持ち悪い。


「ハァハァ……たす……て」


咳が止まらない。

目の前が涙で歪んでいる。

呼んでいるのに誰も来てくれない。


あの子の口がゆっくり迫ってくる。

赤いブヨブヨした何かに私は包まれる。ここはすごく気持ち悪い。

でも、やっぱり痛みは無かった。

ただ、お腹が凄く熱かった。熱くて怖くて、ここには居たくない。

誰か、私を助けて……


「助けてあげるよ、マーガレット」


声がした、パパだ。パパが来た。

暗い場所に、白い線が走った。ゆっくり白い線は広がり、まぶしい光が見えてくる。

あの子の身体の中にいたと気付いた頃には私はパパに抱きしめられていた。

良かった。本当に……良かっ……た……


「あーあ、処女じゃないのか価値が下がった」




私が目を覚ますとそこは病室だった。

お医者様がいっぱいいて、心配してくれる。本当に良かった。

私の家族も、病室に入って来た。小さくてかわいい白いのをママが持ってきてくれたのだ。


「マーガレット、大丈夫?」

「私の、かわいい、家族」


口の中が熱かった、でもすごくおいしい。

誰かが私を押さえつける、痛いから触らないでほしい。

ママが叫んでるけど、分からない。私を押えていたお医者様は怯えている。どうしたのだろう?


「一人死んだか、後は私がやろう」

「あっ、パパ!」

「マーガレット、そんなものは捨てて。さぁ、おいで」


パパが手を広げて待っていた。

だから、私は持っていた誰かの腕をベットに置いて走っていく。

あぁ、パパはあったかい。


「マーガレット、言っただろう?」

「えっ?なにを?」

「ドラゴンは悪い奴なんだ、見てごらん」


見れば、ベットの上にお医者様の腕があった。

その横には、白いのがぐちゃぐちゃに横たわっている。


「酷い……お医者様、痛いよ」

「あれぐらいなら、直ぐに治るけど。ドラゴンは悪い奴だからまたしちゃうね」

「えっ?ダメだよ、そんなの」


あんな事はあってはいけない。とっても痛くて暗くて怖いのだ。

あの時の光景が鮮明に蘇ってくる。


「大丈夫だよ、マーガレット。恐ければ食べてしまえばいいんだ」


声がした。暗いあの子の身体を引き裂きながら、私を助けるパパの声がした。

また、助けられた。あぁ……良かった。


「今は混乱している、私が預かる」

「しかし、危険では」

「同じドラゴンスレイヤーだ。それより成長薬の手配をしないとな、婚約に使えなくなる」


みんなの声がしたけど、今はもう少しだけ眠ってよう。




目が覚めて、最初にいたのはパパの部屋だった。

ここは……そう、私はあの部屋から助けられて……お医者様が、あれ?いない。


「おはよう、マーガレット」

「あ、あのね、お医者様がね?あれ?」

「怖い夢でも見たのかな」


夢?全部、夢?

パパは昨日までの事を教えてくれる。


「昨日は初めてドラゴンを倒したんだ。そしたら疲れて寝ちゃったんだよ」

「そう……なのかな?」

「想像してごらん、ドラゴンに襲われる人の気持ちを」


その瞬間、私は怖いくらいに想像してしまい思わず泣いてしまった。

酷く、悲しい気持ちだった。


「同じ気持ちをみんなにして欲しくないだろ?」

「うん、どうすればいいんだろ」

「簡単だよ、ドラゴンを食べてしまえばいいんだ。そしたら、もっとドラゴンを殺せる」

「食べるの?悪い子だから?」

「マーガレットが殺した数だけ救われる人がいるんだ、分かるね」


お勉強で先生が言っていた事を思い出した。

そう、それは王族の義務って奴だ。そっか、ドラゴンを殺せばいいのか。


「これを貸してあげよう、さぁドラゴンにバイバイしようか」

「うん、行ってきます」


パパがみんなが怖いと言う顔をしていた。

でも、やっぱり私は好きだった。


「薬、効きすぎたかな?」


そんな声が聞こえた気がしたけど、私はみんなの元に向かっていた。

待っててね、みんなすぐに殺してあげるから。

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