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泥仕合と防衛線、速攻ボス攻略

夜空に飛び交う吸血鬼の群れ、其処に俺は目を見開いて対峙する。

この瞬間、すべての条件がそろった。俺の勝利、俺の秘策の発動である。


「知ってるか?真の英雄は目で殺すんだぜ!」

「ッ!?レミゼル様!」


俺の両目が赤く発光する。それだけで、空が夕闇のように一瞬だけ照らされた。

その効果は歴然だった、俺の視界に映る吸血鬼の群れが徐々に石化していくのだ。

そう、それはバジリスクの石化の魔眼。俺の視界である前方に限り効果を発揮する力だ。

両目に魔力を込める事で発動する、因みに何回か使ったがその度に目がドライアイになるので俺の中で滅多に使わない必殺技と言う事になっている。


「スゴイ……って、なんで最初から使わなかったの!」

「囲まれてたから後ろから狙われんだろ!」

「これで、安全ね」


メアリの言うとおり、魔眼を発動した一瞬で吸血鬼達は逃げ出そうとしたがそれも虚しく全て石になった。

拍子抜けだが、俺は敵を過大評価していたのだろう。


「これで――」

「どこに行こうと言うのかね?」

「――ッ!?」


突如、背中に強烈な圧力が掛かった。圧力は身体を押し出し、地面に向けて俺を落とす。

翼は動かせず、抵抗する事も出来なかった。視界が急激にスライド移動することで、攻撃を受けたことを認識した。


「キャァァァァ!?」

「ぐっ、うおぉぉぉぉ!」


飛ぶことは叶わない、だから俺は落ちる事にした。速度を落とすために全身を、カエルのように広げる事で空気抵抗を出来るだけ増やして落ちて行く。


「落ちてる!落ちてる!いやー!」


そして、メアリの悲鳴と共に俺の身体は地面へと叩き付けられた。


「いっ、痛ってぇぇぇ!」

「う、うぅ……顎痛い……」

「腹が、ぐぉぉぉぉ!股間も痛い、クソ!何だよいきなり!」


クレーターを作り、俺はその中心で痛みに震える。

少し離れた所には、完全に抑えられなかった衝撃で背中から振り落とされたメアリが倒れていた。

っていうか、この状況。まさか、奴は生きていたのかよ。


「はん!無様だな、トカゲめ」

「テメェ、何で生きてんだよ……」


其処には、左腕と上半身だけの奴の姿があった。体の三分の二を無くして、今では胸から下が完全に消滅していた。というか、胃袋的なのぶら下がってグロイ。


「何だその姿は、碌な抵抗も出来ないだろ。食い殺してやる」

「眷族程度を殺して粋がるなよ、トカゲ!見せてやるよ吸血鬼の力を!」


月明かりをバックに、奴の破損した体目掛けて何かの粒子が集まっていく。

赤い光を発するナニカだ。


「私の力は普段は眷族に分け与えられて、一割程度しか使えない。しかし!」


徐々に奴の失われた体が再生されていく、既に上半身は復活していた。

ヤバいな、このままじゃ殺される。


「石化しようが、魂に付与された力は私の意のままよ!更に!」

「これアレでしょ、パワーアップフラグでしょ?いや、空気読んだりしないからね」


だから、俺は痛む体を動かして奴の方へと飛んで行く。

残念だったな、回復してから攻撃すれば良かったのだよ。


「今まで眷族の得た力を還元し、私自身の限界を――」

「そうか、じゃあ復活する前に死ね!」

「――しまった!?」


気付いて応戦しようとする奴を、そのまま口の中へと入れる。

フハハハ、このまま噛み殺してやる。楽勝だっ――


「ぐぶっ!?」


痛たたたた!コイツ口の中で暴れてやがる!


「私をうっぷ、喰えるぐっ、思うなぁぁぁ!」

「ひふほいやおうふぁ!」

「私はこんな所で死ぬ訳にはいかんのだぁぁぁ!」


俺の歯の上に足を起き上あごを押し上げ、無理矢理口をこじ開ける奴がいた。

何だよそれ、それは主人公とかがやるパターンだよ。

俺が攻めあぐねていると、地上から火力支援として炎の弾丸が飛んできた。メアリだ。


「喰らえ、ファイアー!」

「ぐおぉぉぉ、おのれ代行!背後から攻撃とは卑怯なり」

「ヤンヤン、もっと降りてきてソイツ殺せない!ファイアー!」


言われた通り俺は急降下して、メアリへと近づいて行く。

その間、必死に抵抗しているレミゼルを一方的に良い笑顔でメアリが攻撃していた。

まさに外道!


「私は、私を庇った奴らの分まで、うおぉぉぉぉ」

「ふぐぅぅぅぅぅぅ!」

「何押し負けそうになってんの!ファイアー!ファイアー!」

「ぐぬぬ……おのれ、忌々しい!」


奴が力を込め、俺は噛み潰そうとしながらブレスを浴びせる。しかし、ブレス攻撃も気合の掛け声と共に我慢されてるのか、無効化されてるのか効いてはいない。

全身に紫の粘液をくらい、しかも若干皮膚が溶け爛れ、背中からはハメ技のように一方的に攻撃するメアリ。

なのに、この吸血鬼倒れない。


「あぁぁ、あぁぁぁぁ!」

「ふぉぉぉぉぉ!」

「良いわよ!腕が下がってきた!ストーンショット!」


度重なる攻撃で体力が減ったのか、一瞬力が弱まる。

そこで体力を削る事から、抵抗を辞めさせようと路線変更したメアリの魔法が襲いかかる。

それは石を飛ばす簡単な魔法、抵抗する腕目掛けてピンポイントで石礫が飛んでいた。

そして……


「ぐっ!?あがぁぁぁぁ」

「良し、腹に食い込んでるわ!丸呑みしなさい!」

「おのれ、貴様らぁぁぁ!」


長い戦いに終止符が打たれる。

レミゼルは限界を迎え、その瞬間復活した腹に俺の牙が刺さった。

そして何度も地面に叩き付けられ弱った所を首を上に向ける俺によって、落ちるように飲み込まれた。

大変美味である。


「終わった……終わったのね……」

「まさか、眷族を盾に石化を逃れるとはな」

「フフフ、勝った!勝ったのよ!もう何も怖くない!」


ボロボロの状態で喜ぶメアリ。それは強敵を倒した事による安堵も含まれていた。

でもね、俺達の本当の戦いは村からなんだ。戦う前にボロボロだけどね。


「行くぞ、メアリ……」

「ちょ、もう十分やったわよ!あとは馬鹿と先輩に任せるの!」

「そう言う訳にもいかんでしょ……」

「はーなーしーてー!」


もう十分戦果を挙げたしゴールしても良いよね、な感じの喚き散らすメアリを連れて俺は身体に鞭打ちつつ村を目指すのだった。



一方その頃、襲撃されて焼け落ちて行く村では巨大ゴーレムとアンデットの集団に襲われる騎士団の姿があった。

盾を構えた兵士達が横一面の壁となり、ゾンビたちを押し返していく。その後ろでは、長い槍で頭部を突き刺したり魔法を放つ兵が集まっていた。


「隊長、このままでは!」

「前線が崩れるまで耐えるんだ!俺達が崩れたら後ろまで全滅だ!」

「うおぉぉぉぉ!」


重盾兵達が一斉に声を上げて、再度抵抗をする。そんな時、背後の兵から声が聞こえた。


「あ、アレは孤児部隊!?」

「待たせたな!」


その瞬間、重盾兵達の中で何名かが安堵した。それは特別に作られた孤児達の部隊がアンデット軍団と相性がいいからだ。

馬鹿な所に金を浪費してと普段から思っていたが、貴族の三男や四男ぐらいしか騎士で魔法を使える奴はいない。現に騎士団の中でも魔法が扱えるのは三人ほどだ。

だから原理は知らないが、孤児たちが魔法を使えるのは有難かった。

これで、物理攻撃の利きにくいアンデット達に有利な魔法使いが増えたのだから。


そこからは一気に責め立てる。ゾンビ達の衝突は重盾兵が防ぎ動けず固まった所を孤児たちの魔法が一掃する。炎が飲み込み、風が切り刻み、水が押し出し、土が押しつぶす。

こうも簡単に、そうは思えずにいられない快進撃だった。

そして、残るはいつしか巨大なゴーレムだけとなっていた。



巨大なゴーレムの前には二人の人物がいた。

一人は余裕の表情のナオキ、もう一人は巨大ゴーレムを従える黒いローブを着た奴だった。


「ようやく会えたな、ヒューゼン」

「どうやらバレていたか、流石貴様の領地。中々の強さだ」

「フッ、ここは俺の領地じゃないぜ」

「…………えっ?ちょ、いまなんて?」

「お前は勘違いしている、確かに似ている政策はしているが逆方向なんだよ!相変わらずドジっ子め!」

「何故貴様が私のあだ名を知っているのだ!あと、ドジっ子言うな!」


ヒューゼンは今までの事を思い出す、農民に扮した兵士であろう者達に警戒され小手調べにバジリコックを放った。それも短期間で排除され、あたかも場所を特定されてドラゴンの毒を浴びせようとしてきた。

間違いないと確信して自身のモンスター達を肉体から解き放ち、念には念を入れて巨大ゴーレムを生成した。

ここまで苦労したのに、間違いだと……


「しかし、あれだ、ここで貴様を倒せばいいのだ!」

「フッ、俺には奥の手の憑依は効かないぜ!」

「えっ、奥の手までバレてる!?」


何て奴だ、私の正体を看破するだけでなく誰も知らない筈の必殺技まで知っているなんて。

油断ならない敵だと、ヒューゼンは全力で叩き潰すようにゴーレムへ命令する。


「お前なんぞ押し潰してくれるわ!」


唸る豪腕が、ナオキ目掛けて振り落とされる。しかし――


「どうした、こんなものか」

「人差し指!?」


それは、ナオキの人差し指に触れた状態で止まっていた。


「今度は此方からいかせて貰おう」

「な、ゴーレムの主導権が!プログラムを弄られた!?」

「ゴーレムよ、崩れろ!」


ゴーレムが仁王立ちしたと思ったら、その状態から崩れ去った。

ヒューゼンはその光景に開いた口が塞がらなかった。自分の生成したゴーレムのプロテクトを解除し、プログラムの改竄、そしてハッキング。それを一瞬でこなす。魔法にどれだけ長けているのか想像もつかなかった。


苦肉の策として、得意ではない魔法攻撃へと切り替える。

それは氷柱であった、空中で生成された氷柱がナオキへと襲いかかる。


「たかが、たかがゴーレムが消えただけよ!」

「魔法か?効かんなー」

「馬鹿な、確かに魔法は当たった筈!」


だが、それは防がれてしまった。否、触れた瞬間消えたのだ。

奴は不敵に笑うだけ、万事休すである。どうにかして逃げ出したいが、奴に憑依は使えない。あの自信、ハッタリではないのだろう。どうするか……


そんな時、上空から声が聞こえた。


「はーなーしーてー!お家かーえーるー!」


ア、アレはドラゴン!まさか吸血鬼軍団を、いやチャンスだ!それほど強いドラゴンならば!


「アレはメアリ、まさか!?」

「フハハハ、天は私に味方した!」

「畜生、遊んでる場合じゃなかった!」


次の瞬間、ヒューゼンは魂が抜けたかのように事切れた。

それは、肉体を捨てて魂だけとなったからだった。その本体は、既に上空のドラゴンへと向かっていく。

半透明の何かがドラゴンの中に消えた瞬間、地上にいたナオキは面倒だなと呟くのだった。

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