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立てよ領民!ルイスの野望

ギアスロール、それは魂の契約書とも言われるマジックアイテムだ。

互いの血を混ぜたインクで羊皮紙に契約内容を書き、魂に命令として書いた事を刻み付ける。

互いにその契約を違える事が出来なくなるそういうアイテムらしい。


ルイスはメアリの血と自分の血を混ぜてインクを作りながら語った。

契約内容は簡単な物だ。互いに相手の不利益になる事をしない、やむ得ない場合は何らかの形で補填する。

この二つの内容は応用が利き、一言で多くの行動を制限するのである。


書き終えた内容を何度も読み返し、メアリは羊皮紙に署名した。

そして、ルイスが署名した瞬間にギアスロールとして羊皮紙は働き発光する。ギアスロールは半分に破け、互いの胸の中へと一人で向かって行き湖面に沈むように胸の中へと入ったのだ。

メアリの身体には何ら変化はないが、魂に何かが刻まれたのだろう。その証拠に彼女は少し痛そうな表情になっていた。


「これで契約は終わりですね」

「あぁ、そうだよメアリ。これで私は好きに領地を弄れる」

「……ッ!どういうこと、あなた私を騙したの!?」

「私たちの領地が発展することは利益ではないか?その証拠に行動の阻害はされていないだろ?」


ルイスの言葉に食って掛かるメアリ、ルイスの言葉が彼女を不安にさせたのだ。

しかし、ルイスはそんなつもりが無いのだろう。実に楽しそうにこれからの事を想像してか嬉しそうなのだ。

それに、メアリにとってそれが不利益ではないのも確かであり契約を利用された形なのだろう。


だが納得のいかないメアリは感情の赴くままに杖を振りかざし、


「もう怒った、ルイス覚悟なさ――」

「無駄だよ」

「――ッ!?」


すぐさま杖を床へと叩き付けた。

その顔は驚愕で彩られ、自分の利き手を抑えるようにして疑問を隠せずにはいられてなかった。

その様子は、杖を落とす意志が無かったのに勝手に動いてしまったという所か。

どういう事だろう、これがギアスロールの力なのだろうか?


「怪我を負う事は、領地に負担を掛けるというのが我々の共通の認識だ。だからそれは私に対しての不利益だ。どうかな、ギアスロールの強制力は?」

「……少なくとも自分に危害がないという説得力だけは確かね」


楽しそうなルイスに、忌々しげにメアリは皮肉った。

俺はそんな二人を見ながら床に丸まり、事の成り行きを見守る。だって、あんま関係ないからな。


「何でこんなことしたのよ」

「良く聞いてくれた。メアリ、君はこの世界が歪んでいると思わないかい?」

「歪んでる?何言ってるのよ」


心底意味が分からないと言った顔でメアリは答えた。そして俺の方を見る。

おい、俺もコイツが何言ってるのか分からんぞ。自分が機動戦士だ!とでも言うのか?


「貴族と平民の違いは何だい?最初の魔法使いと使えぬ者、何を理由に分かれたのだ。そもそもどうして平民は魔法使いになれないんだ?そんなことは思ったことは無いか」

「ないわ!」

「思って欲しいもんだよ。私達と平民はね、実は明確な差が無いんだ。余分に魔力を生成出来るかどうか、波長を操作できるかどうか。たったそれだけだった」

「どういうこと?」

「調べたんだよ、そして知った。子供の時に貴族と同じ生活をさせれば平民だって魔法使いになれるんだって。ただ豊かな環境と学ぶ場所さえあれば誰でも魔法が使えるんだ。私はね、平民と貴族に別れるこの社会は歪んでいると思うんだ。全ての人が魔法を扱えるのに何故平民と貴族に分けるんだ。人は平等であるべきなんだ」


それは驚くべき内容だった。満足な食事と誰かに教えてもらう、これだけで平民は魔法が使えるようになるというのだ。実際に検証もしたとルイスは補足するし、何より彼の考えはどっかの大統領のような考えなのだ。ルイスは未来に生きている、この時代の人間とは思えない視線を持っているのだ。


「その為には生活環境さ。平民の生活レベルを満足行くレベルに引きあげ、そして私達が知る知識や技術を広げる、そして魔法使いとなった平民達と共に国に伝えるんだ。平民だって条件次第では魔法を使える、私達は同じ立場の人間だって!」

「何考えてるの!そんなことしたら――」

「内乱という名目で鎮圧されるだろう、しかし私の行動はこの長い歴史を変えるんだ。変えられない関係の歪んだ社会を、全ての人間が平等な社会に変える大きな一手だ」


確かにそれは革命のような物だろう。人間が集落を作り、たまたま人より豊かな生活をしていた者だけが魔法を使えるようになった。そんな理由をみんなが知れば、一部の平民は貴族のような生活をして魔法使いを目指すだろう。そうなったら、後は前世の歴史のように腐敗貴族とレジスタンスの革命戦争だ。

魔法と言う同じ武器を手にすれば、圧倒的に量の多い平民が勝つだろう。ハンデとして今までの歴史ある技術を貴族だけが持っているが、それは何時か追い付く。そして、いつしか革命は成功するかもしれない。


でも、それって最初に起こしたらテロだと思うんだよ。正しいけど、周りからしてみればやっぱテロだよな。

ルイスはメアリに邪魔させないで領地を弄って豊かにするんと言ったが、すぐには豊かにならないだろう。仮に生活レベルが三食毎日食べれる様になったとしても、子供の時からでないと平民が魔法を使えるようにはならない。とても時間のかかる作業だ。


沢山の平民の犠牲の上で貴族が育てられ、そして魔法を貴族だけが使えるのだ。

食糧不足なこの時代では無理な話である。平民一人一人が、貴族のように生活できるなんてありえないレベルでの生活環境の変化だ。


「さぁ、二人でこの世界を変えよう!」

「嫌よ!絶対無理」

「心配はいらない!二人でなら何だって出来るさ!」

「ちょ、そういう事言ってんじゃ――」


まぁ、少なくとも今は嫌なことを忘れてメアリには何かを熱中して貰おう。

それに領地が良くなるってことは飯が上手くなるってことだ、悪い話でもない。

テロでも起こしそうになったら、後ろからサクッと殺せば丸く納まるしな。間接的にならルイスに対して不利益な事も出来るだろう。つまり俺は契約には縛られ無いはずだ。

契約内容に間接、直接問わず相手に危害を加えないって書いてないしな。


「さぁ、これから忙しくなるぞ!」

「いやー!ちょっと、ヤンヤン笑ってんじゃないわよ!助けなさいよぉぉぉ!」


ルイスはメアリを引きずりながら部屋を出て行った。



それから、初めの数日は文句を言っていたメアリも嫌々ながら働きだした。

最近出来た、魔法使いを育てるための孤児院の経営を手伝わされてからの事だ。

きっと、子供に何かしら影響を受けたのだろう、メアリはチョロいからな。


ルイスは色々な国の政策や農法などの研究をしながら実際に領地を実験台にしている。

その事に対する不満は平民の仕事が楽になる道具で返していたので少ないようだ。

時に森で腐葉土を集めたり、様々な種類の糞から肥料に適する物を経過観察したり、本当にいろいろやるようになった。


最近はペトロの領地をお忍びで視察して真似している。お前それってスパイ活動じゃないか、と最近思う。近い将来、現代知識によって豊作だらけになるかもしれない。


こうしてメアリが実家に帰ってから半年が過ぎた。

そしてこの頃、隣国のウェントス王国と俺達のテラ王国の同盟が発表された。


「俺達の国ってこういう名前なんだ」

「そこに驚くの……一応大地って意味の国なのよ」


あれ、もしかして知らない所でイベントでもあったのかな?

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