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新世界と機械天使

最後の世界に繋がり、俺達はそこへと至る為の準備を始めた。

ルージュは時間を歪めた空間を作りだし、自分の中にある力のコントロールを始めた。

管理者権限と呼ばれる力である。

ようは、精神と時の部屋みたいな不思議な空間で修行している訳である。


俺はその間、先に進んで調べに行くことにした。

管理者権限、つまりそれを制御できればルージュはまさしく神のような存在になれるのだろう。

世界を管理する力である、だがそれは逆に言えば神の如き存在がまだ残っていると言うことだ。

そう、龍王……いや、龍神とやらが残っている。


「ここがその世界か……」


海を越え、空を駆ける。

水平線の彼方には少しだけ大陸が見え始めた。

大陸は、近代的な文明が築かれているように見えた。

全てが何かで構成される地面、金属のような物で出来た道路に乱立するビル群。

山よりも大きく、ビルが集まり森のようになっている。

……随分と近未来的な世界だな。


文明の発展がこれまでに比べてとても進んでいた。

と言う事は、それなりの兵器があるだろうなと予想する。

その予想は当たっていたようで、俺の目の前に答えが現れる。


「アレは……」


人が飛んでいた。

巨大な、離れていながら輪郭がハッキリ見える巨大な人だ。

機械で出来た巨椀に鉄の翼、謎の光を発する物体が周囲を旋回し、頭部には光の輪が浮遊する。

一見、天使に見えなくもないそれは機械で出来た人、否、ロボットである。

機械天使、名を付けるならそんな物か。


「なるほどな」


機械天使が急停止し、空中に滞空する。

そして、徐に銃らしき武器を構えた。

俺はそれに反応して、旋回を始めた。

すると、機械天使は構えていた武器を降ろした。


「やはり、銃か何かだな」


恐らく狙撃でもしようとして、俺の動きによって無理だと判断したのだろう。

撃ってこなかったと言う事は一発限りとか、一撃で仕留める物なのだろう。

レーザーとかスナイパーガンの類で、数撃って当てる機関銃とかではないのだろう。

機械天使は虚空に手を突っ込んだ。

何もない空間に手を動かして何がしたいのかと思えば、腕が半ばまで消えていた。


「消えた?……いやあれは」


腕は再生する様に元に戻ってきた。

そして、先程まで何も無かった場所にハンマーのような物が握られる形で現れる。


「空間に転移?どこかに繋げて取り出したって事か?」


魔法で作った異空間から物を取り出す時の様子に酷似している事から推測する。

しかし、ハンマー何て近距離武器を取り出して何をするつもりだろうか。


「ん?うおっ!?」


俺が機械天使を注視していると、構えられたハンマーが飛んだ。

飛んだハンマーの頭部、それは分割する様に蓋と箱に分かれる。

箱の中には小さな筒がたくさん入っているのが見えた。

まさか、アレは!?

そう思った瞬間、その予想は的中した。

ハンマーの頭部が全方位に向かって小さな筒を発射する。

そして、箱の中に入っていた小さな筒達が火花を散らしながら飛び出し急発進したのだ。

そう、ハンマーの頭部には収納されたたくさんのミサイルが入っていたのだ。

しかも、その速度は驚くほどに早い。


「ミサイルかよ!」


俺は急旋回する様に海に向かって落ちて行く。

ミサイルと言う事は、追ってくると思ったからだ。

海の中に潜ると、暫くして何かが水中に落ちる音がした。

振り返る事をせずとも予想できる、やはり追尾ミサイルである。

……野郎、俺が動くからホーミング攻撃に切り替えたのか。


肉体を変形、泳ぎやすく最適化する。

肉体は魚のように、水を弾き防御力を損なわないように鱗を纏ったまま尾ひれが着く。

差し詰め、鮫と言った所だろうか。

そんな俺を背後で爆風が撫でてくる。

ホーミングしていたミサイル同士が水中でぶつかって、他を巻き込み誘爆したのではないだろうか。


まぁ、それは置いといて反撃である。

俺は口内に水を取り込んでいく。

水の中に生息するモンスターが良く行うブレス攻撃で反撃しようと思ったのだ。

所謂、ウォーターカッターであれば、機械天使など恐れるにあらずだろうからな。

しかし、それは敵によって中断される。


「ッ!?」


水を掻き分け、白い泡沫を身に纏って機械の肉体が落ちてくる。

そう、海中に機械天使が突入して来たのだ。

そして、その手には機械で出来た筒のような物が握られている。

何処かで見たことあるような形状、それはまるで柄のような物である。


「まさか――」


水が弾ける。

圧倒的熱量に水蒸気爆発を起こす。

それに耐える俺の視線の先には、衝撃に耐えて物ともせずに此方を見据える機械天使。

その手には光り輝く強大な熱源があった。


「ビームサーベルッ!?」


海中を機械天使が急発進する。

スラスターでも付いているのか、背後に泡沫を発生させて爆発を背に乗せて移動するが如く急速に動く。

単調な、振り降ろすだけの動き、なのにどうしてかそれは強烈な一撃。

紙一重で避ける、避けてしまった。

そのせいで、強大な熱量が俺の身を焦す。


「ぐっ、あぁぁぁぁぁ!」


皮膚が焼ける、焼けてケロイド状になる。

炭化して消滅してもおかしくないのに、皮肉なことに丈夫であるから火傷で済む。

しかし、いっそ炭化してくれたのならば良かった物を中途半端に残っているから再生がしにくい。

内側から火傷した皮膚を分解する手間が増えた分、再生力が遅れる。

この、ビームサーベルで切断されたら最後。

俺の断面は焼け焦げ、再生が遅れ、バラバラの儘になるだろう。

まさか分かってやっているとしたら、その判断は最適で機械天使は天敵と言えるだろう。


「この、野郎!」


全身を光らせて目晦ましを起こす。

幾ら機械の身体であろうとも、目と言う器官を模して作った物を搭載していると言うならばそれは外部の映像を見ていると言う事。

だったら、強烈な光は行動を一時停止させるだろう。


俺の攻撃ともいえない攻撃に、強烈な閃光に機械天使は微動すらしていなかった。

否、微動すらしていないのだ。

真に意味が無かったとしたら斬り掛かって来たであろう機械天使は静止している。

つまり、効果があったということだ。


「やったか、あっ、これフラグだ!」


思わず言ってしまった言葉はまさしくフラグだったのか。

機械天使の背中から、何かが飛び出した。

それは早過ぎて視認しにくかったが筒のような物に見えた。

ミサイル?しかし俺の所には飛んでいないが……

そう思うのも束の間、考える事を中断して機械天使を俺は見た。

何やら、様子がおかしいのだ。

目の部分は赤く輝き、というか全体的に光っている。

何かを抜いた途端に、見た目がパワーアップしている。


もしかして、リミッターだった?

あの筒が、そうなのか?

アレがあるとパワーアップ出来ない。

もしや制御装置か?

では。今の状態は――


「ふごぉ!?」


思考を強制的に中断される。

視界が真っ暗になり、すぐさま戻る。

其処には拳を振り抜いた姿勢の機械天使が移る。

殴られた、のだろう。

頭部損壊、からの急速再生というところか。


「グッ……」

「ぐっ?おいおいまさか」

「グォォォォォォォ!」


吠えた。

機械天使が吠えたのだ。

ロボットだと思ったそれは、生物兵器だったのか。

今までの単調とした動きではない。

前かがみに、首を震わせ、まるで威嚇する動物のような躍動感のある動きとなったのだ。

それが、俺に襲い掛かる。


「グォォォォ!」

「クソ、がッ!?」


殴り飛ばされる。

その挙動は早過ぎて、一瞬で距離を詰められた。

殴られた俺は海中へと飛ばされる。

水圧が増し、肉体が悲鳴を上げて行く。

上には此方を追ってくる機械天使がいる。


クソ、適応させて深海仕様にしないといけない。

だが、時間が無い。

故に、転移する。

短い転移を繰り返し、敵を錯乱しながら移動する。

短い転移に機械天使は、そこまでの長距離を移動できないと思うだろう。

そう思わせといて、一気に転移して海中から上空へと、空へと転移した。


「第二ラウンドだ、機械野郎!」


肉体の変貌、人型のドラゴンへと身体が変わる。

それはドラゴンニュート、と呼ばれる種族に酷似している。

ただ一つ違うのは、肉体のそれが機械に近いそれだということだ。

機械の龍人、そんな感じだろうか。

機械の天使と、機械の龍人がぶつかり合おうとする。


「グオォォォォ!」

「ガァァァァァ!」


お互いにブレスを吐き出しながら、敵に向かって行く。

動物のように襲い掛かってくる天使。

その無軌道で我武者羅で非合理な動きを、嘲笑う様に人間の技で対応する龍人。

あっけない幕引きだ。


「グォォ、オォォォ……」

「ハッ、絞め技の味はどうだ!」


人に近い形の機械天使、近いが故に構造も同じ。

だから、絞め技が可能であったのだ。

機械天使が暴れるが、外す事は出来ずミシミシと肉体に罅が入る。

機械天使が窒息死などとは思っていないが、圧殺されるのは時間の問題だろう。

そう、勝利を確信していた。


「ッ!?」


急に、機械天使が動くのをやめた。

寧ろ、身体全体を使って俺を拘束する様になった。

まさか、コイツ自爆する気か。

その答えが正解かのように、機械天使の身体が輝きを増して熱を発する。


「し、しまっ――」


視界が白く染まった。

目が焼け、肉が焼け、強烈な衝撃にバラバラになる感覚がする。

痛みは無い、痛覚すら凌駕する強力さだ。

麻痺して、痛みすら飛び越していた。

しかし、たかが爆発。直ぐに再生する。


『それは面白くないな、雑種よ』


再生……出来ない!?

馬鹿な、いや今の声は何だ。

一体俺に何が起きているんだ。



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