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ドラゴンになりました、使い魔らしいです   作者: NHRM
冥王世界・大罪の魔女編
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テンプレみたいな真っ白い空間だな、おい

ぐったりした飛鳥の横で、ルージュは寛いでいた。

もう、全裸になるなんて良くある事だから、その後の切り替えも慣れたもんだ。

服を出して、ついでにテーブルと紅茶セットを出して荒野の中でお茶をするなんて普通の事だよ、うん。


「飲んでる場合かぁぁぁぁ!」

「飛鳥、まだ慌てる時間じゃないわ」

「時間だわ!世紀末、世紀末なの!?学級崩壊って言うか、校舎その物が無いんですけど!」


キレのあるツッコミが冴え渡る。

そんなツッコミもルージュはキョトンとして受け流す。

流石です吸血鬼様、略してさす鬼。

吸血鬼は伊達じゃないね。


髪をうがぁぁぁと掻き毟って、地団駄を踏む飛鳥にルージュは自分の髪を弄りながら視線を向けた。

面倒だけど仕方ないなと言う感じで、まぁ待てとルージュはパニくる飛鳥に説明する。


「そもそもな話、ここって異界な訳だから現実ではないのよ。現実って言うか、元の世界に影響はない訳よ」

「あぁ、あっ、そっか……」

「ただね、吸収されちゃったアイツらがどこに行ったかなのよね。一緒に消滅したとは思えないのよ、だってさっきまで横にいたし」


吸収されてたんだぜ、とふざけたルージュの頭に飛鳥のローファーが激突した。

靴を投げるな汚れるだろ。

まぁ、実際問題生きているのか死んでるのか分からない訳だが、取り敢えずは異界を出ることが先だろ。

このままだと、ローファーを煮込んで食べるしかなくなる。

飛鳥が吸血鬼の国で女王に革靴を喰わせた女として教科書に載る事になるのだ。


「それで、出方は分かってるんでしょうね」

「分かってるけど、正直何かヤバいのよね」

「あぁ、嫌な雰囲気は何か感じるから分かるかも」


ゴゴゴゴゴ、とでも聞こえてきそうな雰囲気がある地点から感じられているのでそれの事をルージュは言っているのだろう。

恐らく出口、でもってラスボスが良そうな感じだ。

此処から先は、セーブしてから行きましょうとかそんな感じ。

出た先に、残留思念の宿った鎧でも待ち構えてきそうだよな。

鍵の形した剣で戦いそうな、バイクみたいに乗り回す奴。


「行くしかないでしょ」

「それもそうね、それしか方法ないし」

「当初の目的は理事長を倒す事なんだから行くしかないでしょ」

「そうだったわね、忙しくて忘れてたわ」


いや、ホントもう忙しすぎて遠い過去のような気がするよ。

まったく、今までの魔女より強い理事長ってどんな奴だよ。

アレだな、魔女達を差し向けて来たんだから魔女だな。

魔女で、偉くて、強い、間違いないね幼女だぜ。

ロリ校長とか、ロリ理事長、これはテンプレ。


「じゃあ、行くわよ」

「あぁ、空間が捻じれて何か入ったらヤバげな物が」

「ブラックホールみたいね、先行くわよ」

「大丈夫かな……ちょ、押さ――」


埒が明かないのでビビる飛鳥の背中を無理矢理押して、中に突入する。

水の中に入るような、そして水の中から出るような、取り敢えず何かを潜るような感覚の後に視界が変わった。

そこは、何もない真っ白な空間だった。

あれれ、俺ってば死んだの?いや、良く見たら横にルージュとか飛鳥がいたわ。


「よく来たね」

「白い!」

「髭モジャ!」

「爺だ!」


俺達の目の前に、これまたテンプレな神様って感じの爺が出て来た。

頭に草の冠を付けて、白い布を全裸に巻き付けて、肩にハトなんか乗せて、それで金の長い杖を持って居る。

顔なんかサンタクロースとか魔法学校の校長とかみたいな、長い髭を生やした爺だ。

あれ、もしかしてマジでブラックホールで俺達死んで、三人は死ぬはずじゃなかったので転生させてあげますとかいう展開だろうか。


「私は、神だ」

「うわぁ……」

「知ってたわ!っていうか、なにこの展開」

「アレが理事長、理事長がロリじゃないだなんて、スッゾコラー!」


何の演出か、爺の背後から後光が差しこんできた。

まぁ、ふざけるのはここまでにして爺から力と言うか波動的な物を感じる。

この感覚、グリードに近いです。間違いなくラスボスですね、分かります。


「さて、話をしよう。君は私と、というよりも私よりも上位の存在だがね」

「何を言ってるの?」


自称神は指を鳴らした。

すると、いつの間にか俺達は神とテーブルを囲んでいた。

テーブルの上には食事が置いてあり、一瞬で何が起きたか理解できなかった俺達は呆然とする。

ありのまま起きたことを、みたいな台詞をいいそうになるくらい催眠術とか超スピードとかそんなチャチなもんじゃない恐ろしい物の片鱗を味わったぜ。


「何から話すべきか……」

「うわっ、えっ、何で座ってるの!?」

「飛鳥、落ち着きなさい。こういう事もあるわ」

「いや、意味分からないよ!本当に、神様なの!?」


自称神は髭を撫でながら指を一振りする。

すると、飛鳥の口が左から右に順に閉じられてうーうーとしか言えないように、お口をチャックしたみたいな状態になった。

なんか、映画で見たぞ。お前は頭のデカイ魔女かよ。


「空間を支配してるんだから、何が起きてもおかしくないでしょ」

「うーうー!うーうー!」

「ごめん、何言ってるか分からない」


まぁ、驚くのも無理はないと思うが今は静かにしとくべきだ。

さて、そんな俺達の横で自称神は暫く考えて口を開く。


「何処から話すべきか、我々のルーツからかそれとも世界についてか」

「ルーツ?」

「あぁ、そうだ。我々のルーツについてから話そう、そうまだ世界が一つの時の話だ」


世界が一つであった頃の話だ、そこには多くの種族と混沌とした指向性の無い法則があった。

その世界で、法則を操る事が出来る者達が生まれた。その者達は自らを王と称して、種族を束ね、お互いに争った。

ある時、最も弱く最も臆病な人の王は何故争うのか考えた。

臆病故に考えることが得意であった人の王は何かに気付き、世界を六つに割った。

そして、何かを計画して自身の力を人に分け与えた。それ単体では脆弱な力、しかし成長する事で自身すら凌駕するであろう力、人と言う種に個体差が出る原因、可能性の力とでも言うべきものである。


六つに世界を割り、結界を作り、そして他の王を騙して何かを計画した人の王。

何を計画していたのかは分からない、ただ確実に何か意図があったのは確かである。

しかし、ついこの前のことだ。可能性の力を束ねる人の王の残滓が消えた。

そして、世界が繋がった。すなわち、人の王は死んだと言う事である。


「ちょっと待ちなさい、私は確かに王を殺したわ。多分、魔王とか神王がそうなのでしょうね。でも人の王なんて物は知らないわ。だって、守護者とやらを生み出すために死んでるはずだもの」

「それはないのだよ。最も弱いが最も強くなる可能性の力は、確かに人の王に繋がっていたからだ。つまり、死を偽装していた筈なのだ。私は他の王が死んでから復活する為だと思っていた。しかし、唐突に消えた事から考えるとそれが計画ではないのかもしれない」

「計画って、そもそも計画って何よ?」


疑問符を浮かべるルージュに自称神は分からないと言った。

何で分からないのか問い質そうとルージュが口を開いた瞬間に、被せるように自称神が答える。


「そもそも、私は覇王を殺す間際に聞いたに過ぎない。私も同じ、簒奪者と言う訳だよ」

「簒奪者……」

「君よりもずっと昔の話だ、世界その物を改変する管理者権限のような物。言い方は様々だ。権能、異界法則、世界構築、世界改変、好きに呼べばいい。一つ言えることは、神の所業に等しいと言う事だ。そして、私はかつていた世界を生み出した」


自分は転生者だと自称神は言った。

その言葉に、飛鳥が飛び上がるように反応した。

しかし、どうして転生したかは分からないらしい。


「王を殺すと、世界が繋がる事を知った私は冥王を生きて吸収した。殺さない限り、管理者権限を奪わない限りは結界は壊れない筈だからだ。と言っても、君によって壊されてしまったがね」

「管理者権限……」

「まぁ、君はまだ操れてないだろうが気にする事は無い。私も万の年月を必要とした、気が狂う程の時間が必要なのだよ」


その言葉に俺は納得した。

どこか前世に似ていると思ったら、似せて作られていたのだ。

そう、世界を作る。神と言わなければおかしい所業を、この男は為していたのだ。


「私は世界を何度もリセットしている。そこの彼女のような同郷の物がいたとは知らなかったけどね。大罪の魔女と言うのは、そもそも管理者権限を実験的に再現した物でシステムみたいな物だ。彼女達は何度も世界を壊して魂を、世界を構築する要素を収集していた。まぁ、君に今回壊されてしまったからまた作らないといけないけどね」

「それで、またやりなおすのかしら?」

「それもいいが、歴史を再現するのには飽きたよ。もうこうなったら、思い通りに世界を作るのも良いかもしれないと思うんだ。だから、君には死んでもらう」


さらっと、殺害予告されルージュが飛鳥を掴んで飛び退いた。

目の前にはニコニコしている神、クレイジーだなコイツ。


「アンタ、なんでまだ座ってるのよ!」

「あっ、待って!俺もそっち行く」


おっと、一瞬反応が遅れてしまったぜ。


「管理者権限が二つある君、一つしかない私では実力は違うが強力な力も使えなければ意味はない。だから、私が勝つ事は確定している。どうだろうか、諦めてくれたら楽に殺すが」

「冗談でしょ、はいそうですかって死んでたまるか」

「そうか、残念だよ。因みに私は、破壊不能設定だから好きなだけ攻撃しても無傷だよ。君が管理者権限を使えない限りね、それでもやるのかい?」


何ですか、チートですか。

破壊不能設定ってのはどういうことだよ。


「それじゃあ、私が管理者権限とやらを使えるようになればいいだけの話しよ」

「やるのか、それは残念……ぐっ、な、何が!?」


突如苦しみ出す神、突然の事態に俺達は混乱する。

胸を押さえて、膝を着く神に尋常じゃない事態を察する。


「何故痛みが、設定してない!私は……僕は設定してないぞ!どういうことだよ!」

「何が……」

「そうか、貴様!本当は使えたんだな、僕を不正アクセスしてるんだな!いや待て、違う、僕自身が攻撃している?どうして、何で違う世界の魂が――」


苦しみ悶えていた神が自分の首を掴み、暴れていた。

まるで自分の右手に殺されそうになっているように異様な光景が続く。

そして、胸から黒い日本刀のような物が飛び出した。


「あ、あり得ない……こんな、こんな――」

「こんな筈じゃなかったか神様?」


神の胸から男の上半身が出てくる、その男を俺達は知っている。

着流しの浪人風の男、あぁコイツは……


「思い通りになるかよ、クソッタレが!」


神の首を斬り落とした男の正体は――


「朧……だと……」

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