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ドラゴンになりました、使い魔らしいです   作者: NHRM
冥王世界・高天原征服編
150/182

世界の終末

アマテラスは、種明かしするように嘲笑しながら答えを告げた。

理解できない事象に、優勢だった状態を逆転された事に固まるルージュに向けて告げたのだ。


「貴様の攻撃は当たらない」

「なん、ですって……」

「私は無限の宇宙、距離すらも無限。次元が違うのだ、貴様の攻撃は――」


――届かない。

それは、距離と言う概念への干渉だった。

攻撃が当たる瞬間、アマテラスとルージュの接触する筈の距離が広がっていたのだ。

空間も、座標も変わってはいない。

ただ、座標と座標の間にある間隔とでも言うべき距離が改変されていた。

等間隔に座標が存在するとしたら、ルージュとアマテラスの間にある間隔だけが広がっていたのだ。


「そんな筈、ないでしょうが!」

「無駄な事を……」


ルージュがその言葉を否定する様に魔法を放つ。

あらゆる方向、三百六十度全てからの魔法による砲撃。

アマテラスを囲むように空間に魔法陣が敷かれ、そこから嵐の如く魔法の砲弾が浴びせられた。

放たれる魔法、周囲を魔弾の閃光に包まれながらアマテラスは悠然としている。

攻撃は――


「馬鹿、な……」


――当たらない。

ルージュは不思議な光景を目の当たりにする。

アマテラスへと向かって行く魔弾が静止していたのだ。

否、進む速度と同じ距離が開いていた。

魔弾が縮めた距離だけ、距離が開かれていたのだ。


「私に到達する事は出来ない」


魔弾の嵐に変化が起きた。

それは、大きさが急激に小さく変化していったのだ。

まるで、距離が開いたせいで小さく遠くに行ってしまったかのように。

目の前にいるはずのアマテラスの周囲で、当たる前に小さくなっていくのだ。


「無限の時を掛けて、到達できないのだから無いも当然。事象よ、消えよ!」

「私の魔法が、消滅した……」


いつしか、肉眼で捉えられなくなるほど極小へと魔弾の嵐はなっていた。

無限の距離の中で、進み続けた魔弾はいつしかその旅路の中で力尽きたのだ。


「消えた訳ではない、ただ当たる事はいくら時間を掛けようとも無駄になっただけだ。当たらない、攻撃していない状態と同義、無意味な物へと成り果てた」

「おのれ……」

「いつから自分が、宇宙の果てに到達できると思いあがっていた?宇宙の一部である貴様に、宇宙そのものを越える事は出来ない。宇宙が存在する限り、人の信仰は消えず、私の存在は不滅だ」


それは、どうあがいてもルージュの攻撃は到達できない。

無意味な行為であると言う宣告であった。

圧倒的、まさに次元が違うのである。

これが、最高神として存在する天照大神の力。


「フフ、フハハハハ!」

「ふん、気でも狂ったか」


顔を手で多い、狂ったようにルージュは一頻り笑った。

圧倒的力を前に、ちっぽけな存在であると見せつけられたルージュが笑っていた。

それは正気を失ったからではない、気付いたのだ。

天照大神の存在に対する矛盾にだ。


「一つ、思い違いをしているわ」

「何?」

「貴方が宇宙そのもの?人の信仰から生まれた癖して、何を言ってるのかしら?」

「貴様、何が言いたい!私が宇宙でないだという戯言を抜かすか!」

「なら、貴方が生まれる前に存在していた宇宙は何なのかしら?」


それは、存在の根幹を揺さぶる質問だった。

天照大神が宇宙そのものであるならば、生れる前に存在していた宇宙とは何なのか。

自分自身だと思っていた宇宙は、生れる前から存在していたのではないだろうか。

天照大神の誕生と同時に宇宙が出来て、そして人が生まれたのならば、人から生まれた共通幻想である天照大神は何なのか。

天照大神の存在が人を生み出したと言うならば、人から生み出されたと言う天照大神の言葉は矛盾する。


「それは……」

「思い込んでいただけよ。貴方は願われて作られたキャラにしか過ぎない。だから、強大な力を持っていたとしても搦め手で死ぬのよ」

「なん……だと!?」


ルージュは勝利を確信して、告げた。

その方法を、絶対勝利の条件を口にした。


「貴様が宇宙であろうとも、世界の一部であるならば、その世界ごと壊したらどうなるかしらね!」

「まさか、貴様!?」

「この異空間は、一つの世界として外界と分離され独立している。外から信仰の影響は受けない!如何に不死身であろうとも存在と共に滅してくれる!」


空間を維持するための権限がルージュへと移る。

と、同時に俺とシャンバラはルージュの影へと収納された。

共有する視界から見える景色は、天照大神のいない高天原。

俺達がいた荒野の広がるあの空間ではない。

目の前には黒い球体があった。


それは俺達が今までいた異空間である。

ルージュはアマテラスを閉じ込めて異空間から飛びだしたのだ。

異空間は、圧縮される様に小さくなっていく。

時間経過とともに縮小されたそれは、いつしかルージュの掌に納まる程の大きさになった。

まるで、黒い水晶玉のようになった異空間がその手には握られていた。


水晶玉の内側には輝く小さな星々、銀河が広がっていた。

それは圧縮された世界、宇宙を内包したように見える。

そんな中に閉じ込められたアマテラスに聞こえるとは思ってはいないがルージュは語りかけた。


「如何に距離を広げようとも、既に世界の果てはこの手にあるぞアマテラス。貴様に言葉を還そう、いつから宇宙の果てに到達できないと思い込んでいた?宇宙その物であるならば、貴様は宇宙の外側には出られない。世界と言う檻から出る事は出来ないのだ」


それは信仰に縛られた制約でもあった。

宇宙とは人間が認識できる範囲の世界でしかない。

だから、永遠に宇宙の外側を認識し、移動する事が出来ない。

仮に宇宙の外を認識しても、認識できる範囲は新たな宇宙になってしまう。

永遠に遠ざかるゴールのような物だ。

もし、アマテラスが宇宙の外側である別の世界を認識したことがあったならば脱出方法が思い付いただろう。

だが、それはIFの話である。

別世界の存在など、実際に目にしない限り信じる事などできないのだ。


「さぁ、夢が終わる時間よ」


アマテラスが閉じ込められた異空間、ルージュの作り出した世界である水晶が、その握力を持って砕け儚く散っていった。




水晶が砕けた瞬間、高天原が闇に包まれた。

人々の想像によって生み出された世界である高天原は、信仰の影響をダイレクトに受けるのだ。

太陽である神様が死んだなら、太陽は無くなるだろう。

そういった思いが高天原から太陽を消したのだ。


「この光景に神達が騒いでいる。見ろまるで、神がゴミのようだ!」

『高い所に立ってると、言いたくなるよな』

「神は死んだ!だって、私が殺したから!私が最高神よ!」


それは信仰によって作られた高天原という空間の主になったという事だった。

ある意味で、土地神の代替わりのような物が起きたのだ。

もっとも、日本と言う土地の神である。

もはや、そこらの土地神と事情が違っている。

普通ならそんな事は起きず、新たな天照大神が信仰から生まれて引き継ぐはずだった。

だが、全ての神の側面を持つなんて信仰から天照大神になるであろう信仰がルージュの物になっていた。

高天原がルージュを天照大神として認識してしまったのだ。


「そんなに太陽が欲しいか、だったらくれてやるわよ!」


ルージュが片手間で太陽を作り上げた。

いまや太陽神としての役割を奪った形である為、太陽を作り出すなど造作もなかった。

ただ、ルージュが作った為に自分の都合がいいような物になっていた。


『太陽だって?おいおい、冗談キツイぜ』


それは禍々しい、俺の知っている太陽とは別の物だった。

全てを漆黒に照らす黒い太陽、高天原が薄暗い世界へと変貌していた。


「私の太陽がいやなら、高天原から出て行きなさい!」

『あぁ、喜んでいる奴らもいるな』


ブーイングの嵐かと思いきや、意外と好評でもあった。

鬼や河童、天狗に化け猫、その他人外の妖怪にしか見えない神達。

人型の神達はそんな妖怪達にしか見えない神から逃げ惑っていた。

あれ、何かパワーバランスが崩壊して彼方此方で争いが勃発している。


『おい、何か世紀末になってるよ!人外魔境になってるよ!』

「ハッ、この高天原に弱い神などいらぬ!淘汰され生き残った神だけが、この高天原にいればいいのだ!」

『誰だお前、もはやノリノリすぎてキャラが違うじゃねーか!』


高度な文明があった高天原は神々の争いで荒廃していく。

ビルが、道路が、一瞬で散りとなって消えて行く。

バカンスに来ていた、他の宗教圏の神達まで争い始めたのだ。

戦神同士の戦いが最も酷かった。

何故なら、投降した槍によって巨大な爆発が起きたり振り落とした拳で大地が裂けたりしたからだ。




いつしか平和を体現したかのような理想郷である高天原は、魑魅魍魎が日々勢力争いに明け暮れ、弱小の神が逃げ惑い、少ない信仰を搾取されるような世紀末な世界へと変わっていた。

戦神達のせいでインフラは全てがダメになり、まさに荒廃した世界へと早変わりしていた。

そして、そんな世界でも生き残れる自信のある生れたての神達が外からやってきては消滅させられ、争いの絶えない高天原に嫌気がさした神達は外の世界にある自分の社などに逃げ出した。


「飽きた、私帰る!」

「えっ?」

「私の次に強い奴に、この高天原の統治を任せる!これ、最高神命令ね!」


そして、三日ほどで飽きたルージュと言う最高神の思い付きによって、新たな戦いの火蓋が落とされるのだった。


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