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ドラゴンになりました、使い魔らしいです   作者: NHRM
冥王世界・高天原征服編
146/182

夜と太陽の戦い

勝利の凱旋の如く生首を掲げながらルージュは進む。

そうして、ようやく敵の親玉が良そうな大広間への大きな扉を見つけた。

防衛と権威を表す巨大な扉、間違いなく王や皇帝などの最高位のくらいの者がいるであろう部屋だ。

中から、気配が漏れており数人の強大な存在感が溢れている。

しかも、今までのレベルじゃない強大な気配だ。

少なくとも国内で知ってる人間がいるレベルから、世界中で知られているレベルって所か。

便宜上、主神級とでもいおうか。


ルージュは扉の前に来ると、喉に魔力を集めて息を吸う。


「開けなさいよ!」


吐き出された言葉は魔力を纏って、質量を得る。

強烈な空気の塊、それが扉をブチ破り中の者達の方へと向かった。

それは、ドラゴンのブレスを真似て作り出された声の魔法だ。


「フン、随分な挨拶だな」


迫りくる声の塊を、手に持った扇子で払う動作をして消した女がいた。

それは、玉座のような場所に座った床まで髪が伸びた女だ。

着物を纏い、勾玉を付けたその女は名乗らずとも理解した。

太陽のような女、コイツは天照大神に違いない。


「嫌な気配がするじゃない、ぶっ殺してやるから降りて来なさいよ」

「まぁ、待つのじゃ」


ポンとルージュの膝を叩く何かがいた。

視界を下に送れば、平安貴族のような恰好をした幼女が立っていた。


「誰よアンタ」

「閻魔じゃ、儂は偉いのだぞ。ほら敬え」

「うっさいわよ、馬鹿」

「何じゃとー!」


急に顔が真っ赤になり、プンプン怒り出す幼女。

おいおい、コイツが閻魔大王だって。

オッサンすら幼女に変えてしまう、人間の業の深さに恐ろしさを覚えるぜ。


「儂を馬鹿にした!ギルティなのじゃー!」

「私怨じゃない!裁判官なんかできないわよアンタ!」

「うるさい、屁理屈言うなのじゃー!」


鬱陶しくなったのか、ルージュが容赦なく幼女を蹴っ飛ばす。

いや、確かに神だし見た目通りの年齢じゃないけど容赦ないな。

吹っ飛んで行く閻魔は、暫くして空中に止まった。

それは誰かが助けたことに他ならない。

あ、あれは……

俺は見た、座禅を組んだ状態で宙に浮く神の存在。


「ははぁ~」

「ちょっと、何勝手に出て来て拝んでるのよ!敵に拝んでどうするの!」

「いや、なんかつい」


色々な宗教が乱雑している日本で誰もが名前は知ってる神様である。

流石に特定の宗教を信仰してなくても、頭を下げて拝んでしまうわ。

まさか、無我の境地に到達したことで宙を浮くなんて思わなかった。

もしかしたら、ヨガフレイムとか腕が伸びたりとか出来るのかな。

神様ってスゲー。


「おいスサノオ、ソイツをどけろ。無我の境地に入ると会話できないから邪魔よ」

「うーっす」


ガシンガシン、と鉄で出来た足が動き宙に浮いている仏陀を掴む。

そのまま、背中のブラスターを使ってスライド移動を開始。

運び終えると、全身から白い蒸気をプシューと出して一仕事終えた雰囲気を出す。

しかし、その姿は余りにも人間ではなかった。


「っていうかロボットだよな!」

「失礼な、ビームサーベルで切り殺すぞ」

「やっぱりロボットじゃねーか!」


機械的な音を奏でながら、戦闘態勢に入るロボット。

どこがスサノオだよ、人間やめて機体名になってるじゃないか。


「待ちなさい」

「話し合いするんでしょうが」


いつの間にか、視界が変わる。

俺はルージュの傍に、奴は天照の近くに立っていた。

その背後には、抱きつく形の女の子がいる。

そして、俺の背後には瓜二つの女の子、双子だろうか。


「えぇい、離せ!今日の私は阿修羅すら――」

「やめて、それ以上はいけないわ!お兄ちゃんの言うこと聞きなさい!」

「今は二人とも乙女だろうが!乙女には分からんのですよ!」


あっちはあっちで大変そうだな。

それで、スサノオの兄貴ってことはこれはツクヨミか。

えっ、こんなに可愛いのに男なの?


「な、何ですか?ジロジロ見ないで下さいよ」

「いや、可愛いなって」

「かっ、可愛くないですから!身体は女の子でも、心は男ですから!」

「お、おう」


つまり、男の神様であったはずが捻じ曲がった信仰のせいで双子の女神にされた訳か。

ギリシャ神話に似た神がいるからその影響も受けているのかもしれないが、ある日自分が双子になって性別が変わったという体験をした神様か。


「いや、待て。そういえば、どうして俺の背後にいる。いつの間に移動した」

「周囲の時間を凍結し、自分だけの時間を作り出した訳ね」


したり顔で、私は分かってますよとルージュが解説している。

ゴメン、半分以上何言ってるか分からない。


「つまり、時間を止めたのよ」

「貴様、時の世界に入門したのか!」


最近の神様ってスゲー!っていうか絶対ゲームの影響ですよね。

まぁ、時間を止めるなんて芸当俺でも出来るからね。

超スピードで移動してるだけだけどさ。


さて、こんな風に顔見せのようなことをしても話は進まないので本題に入る事にする。

まぁ、アチラが何やら頼みたい事があるとさっき言ってきたがこの状況は命令だとしか思えない。

複数の戦力でまわりを固めてお願いである、つまり不良に囲まれたボッチな奴がリーダー格の奴にお願いがあるんだけどと言われてる訳だ。

因みにボッチな奴とはルージュの事である。


余裕そうな表情を浮かべながら、たくさんの視線に居心地悪そうになっていくルージュ。

チラチラ俺の方を見て助けを求めるが、無理である。

そんなルージュを気遣って眷族達が周りを囲んでいるが、正直殺気が溢れていて今にも襲いかかりそうで不安である。

ルージュの命令を無視して飛び掛からない事を期待しよう。


「さて、貴様を呼び出した理由だが簡潔に申して、我らが宗教に帰属して貰おうか」

「はぁ?」

「昨今、我が領土である日本では信仰の方向性が多種多様になりつつある。結果、有象無象の弱い神が生まれ、日々信仰に飢えながら存在しているのが現状だ。我らが信仰を分け与え、存在を維持させてやるのにも限界があり、我らの存在すら一部上書きされている現状このままではいけないだろう」

「あ、はい」

「故に、貴様を日本の新しき神として書き換え帰属させることで貴様の持つ信仰心を他の神達に分け当る事を思いついた。貴様も我らの同族となるのだから悪い話ではない。貴様の信仰心は旧支配者など呼ばれており主神クラス、これで信仰問題の解決になる訳だ。全ての神はお前の顔の一つと言う逸話から、似たような神の別の姿として併合してやろう」


何か質問は、そうアマテラスが問いかける。

それに対して俺の感想を言わせて貰えば、ないわーって感じだった。

ウチの会社の一員にしてるからアンタの財産を給料代わりに使わせてくれ、みたいな感じの事を言われてる訳である。

奪われることが嫌いなルージュに、さも光栄だろうって感じで対応してくるのだから困った物である。

しかも、征服する上で使っていた説明を利用されるとは思わなかった。

他の神はルージュの一面である、裏を返せばある神様の別の顔はルージュと言う事だ。

正直、様子も見てない大陸がどうなってるのか知らなかったが、一度世界を統一して消えた支配者だからか旧支配者として信仰されていようだった。

まさか、SAN値チェックする神様の仲間入りとわな。


「あぁ、その際に妖怪どもを駆逐する天使や魔物をどうにかせよ。それとこれからは我が付けた名前で行動しろ。そうすれば、裏で貴様が日本神話の神だったことにしてやるわ」

「フッ、フフフ……」


ルージュから渇いたように笑い声が聞こえてくる。

全身から、感情に反応してか魔力が漏れ出してオーラのようにユラユラと揺れている。


「ここまでコケにさせるとは思わなかったわ。でも、最初からやる事は一緒よ」

「何だ、不服か?」

「うっせーんだよ!上から命令してるんじゃないわよ!っていうか、太陽の化身の時点で生理的に無理だわ!だから殺すわ!」


俺を掴み、剣に変身させてルージュが構える。

対して、アマテラスは扇子を広げて口元を隠しながら不敵に笑っていた。

最初に動いたのは眷族達だ。

まるでルージュの意志に従う様に、命令される前に飛び掛かったのだ。

行けるか、そう様子を窺うが無駄だと言う事を悟る。


「失せろ」


一言、そう告げただけでアマテラスが発光した。

所謂、後光と言う奴を発したのだ。

その光が、一瞬で眷族達を消滅させる。

太陽を克服した筈の眷族達を、太陽からのダメージを驚異的な回復力で防いでいた奴らを一瞬で消した。

つまり、それは通常の太陽よりも強烈な物と言う事だ。


「ぐっ……」

「フッ、貴様の信仰の一つに太陽に弱いと言う逸話があったな。つまり、相性は最悪という訳だが尚も逆らうか」

「これぐらいで……」


ルージュの表面が灰になっては崩れ落ち、すぐさま回復して皮膚を形成する。

ダメージを受けながらオートヒールしている状態だ。


「生粋の簒奪者め、ならば慈悲はない。もう一つの方法を取るまでよ」

「何を……する気よ……」

「貴様を来たるべき時まで幽閉し、しかる後に貴様を殺す。そして、信仰から新たな神が生まれる。そう、お前と同じでありながら我らに従順な神に転生して貰おう。さぁ、我以外が干渉できない空間へと落としてやろう……開門せよ天岩戸!」


ゴゴゴ、と地面が揺れて岩同士が擦れる轟音がした。

重量感のある音、その発信源は俺達の後ろだ。

振り向けば、そこにはいつの間にか洞窟が存在していた。

洞窟の入り口は吸い込まれるような漆黒、否、実際に謎の吸引力を持って吸い込む闇が広がっていた。


「ぐっ、なにこれ……」


ルージュが剣である俺を地面に突き刺し抵抗する。

しかし、その距離は徐々に縮まっていく。


「我が許可なく、外へ出る事を禁ずる!我が慈悲を無下にしたことを後悔するがいい!」

「引き籠りの癖に、覚えてろ!絶対に復讐してやるからな!」

「引き籠りではないわ!さっさと堕ちろ!」


俺達の目の前で入り口が岩によって防がれていく。

その向こうにいるアマテラスに復讐を誓いながら、どこか深い場所へと俺達は落ちて行った。

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