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人外魔境日本

俺の肉体が空間に溶けていく。

まるで粒子へと変換されているかのように足から先が薄くなり、そして消失しているのだ。

これは死ではない、あるべき場所に戻る過程だ。


本体であるルージュの中へと俺の身体が流れているのだ。

そして、俺を吸収しているルージュはと言うと魔王の亡骸を片手に持ったまま空を見上げていた。

魔王の亡骸も俺のように消失していく。

ルージュが吸収しているからだろう。

意識が数万、数億、それ以上数え切れないほどの音を捉える。

まるで雑多な人ごみの中にいるような、意識の大河に飲み込まれたようだ。

視界は既にルージュと同一の物、ならば完全に吸収されたんだろう。

人の意識が絡み合うその空間で、俺は自身の意識を強く持つ。

すると、境界線が発生し有象無象と自身を完全に別の物とした。

丁度、水の中で気泡に包まれる感じだ。


ルージュの中に魔王達の姿はない。

此処にいるのは、下僕と消費するための命なのだろう。

だから、多くはルージュ自身の魂に吸収されているのだ。

この薄暗い空間の中央に光り輝く、あの巨大な光の糧となっているのだろう。


もはや一部ともいえる俺はルージュとの同化が息を吸うが如く容易く出来た。

ルージュの見る、それは海の向こうだ。

ガラスの割れるような音と共に空が一瞬ブレる。

そして、突風が俺達の身体を撫でた。

最初の世界統合では分からなかった物も、俺達は身体で感じていた。


何かがべったりとくっつくような感覚。

世界の法則に異物が混ざった感覚だ。

元の形に戻ると言うのかもしれないが、俺達からしたら違和感ともいえる。

恐らく淡水の水槽に海水を入れられたら中の魚はこんな気分を味合うんじゃないだろうか。


「繋がった……」


ルージュの声が聞こえた。

と、同時に彼女の片手が天に向かって伸びる。


「来い」


命令と共に、ルージュの上げられた手に向かって何かが集まる。

微弱な、それこそ意識しないと分からない小さな力だ。

それがぶつかり、統合しては分裂し、そして地上へと雨のように落ちて行く。

落ちた先、そこからは焔が揺らめくように表れて人の形を成した。

天使が跪いた状態で誕生したのだ。

合わせるように、次々と天使が生まれていく。

それに混じりながら、醜悪でありながら見慣れた存在や異質過ぎて美しい存在も生まれる。

混ざるように、次々とモンスターが生まれていく。


眼下に広がる全てに、モンスターと天使が跪いて生まれた。

それは世界に漂っていた魂から再構成された生物たちだ。

生物を無から作り出す、まさに神の所業だ。


「行け」


ルージュが腕を振り下げながら、命令を下した。

それは海の向こうへと広がる。

海の向こう、そこからやってくる何かに向けてだ。


見ればそれは、鬼であったり朧気な巨大な猫だ。

他にも巨大な骨の塊、女の顔を持つ蜘蛛、舌や眼球の付いた家具。

妖怪の群れが、空を黒く染めるほどに集まっていた。


「冥王の世界……じゃない。混じっている、覇王の因子が入っている?」


ルージュの驚愕する声が響いた。

しかし、その口調や雰囲気に俺は違和感を覚えた。


「そうか、奴は……ならば、私と言う存在は証明された。生み出された者が創造主を超える、その最後の仕上げは私自身の消失か。だが、私は目的を果たした。後は観測された事象が帰結するまでのこと、生きる意味はもう無い」


スッと、異常な雰囲気が消えた。

同時にルージュが倒れる。

視界は暗転し、何かが変わる。


「あれ、私……」

『おい、ルージュ!』

「直接脳内に……ッ!?」


何だかキメ顔でルージュがネタに走る。

というか、変な知識で汚染されてやがる。

ルージュの視界が周囲を捉え、魂の繋がりから動揺している機敏を感じる。


「な、何じゃこりゃー!?起きたら妖怪大戦争、っていうか天使とモンスターと妖怪の三つ巴!どういうこっちゃー!?」

『お前のキャラがどういうこっちゃ……』

「っていうか、なんでヤンヤンが私の中にいるのよ!あぁ、アンタの魂に私が汚染されていく」


あっ、俺の影響なんですか。

思わずそんな感想を抱いてしまう。

しばらく騒いだルージュはうーとかあーとか言った後、自身の中からシャンバラを召喚した。

影を起点に、門のような物が開かれる。

ルージュの足元で巨大な円を形成する影、そこからゆっくりと浮上するシャンバラ。

まるで、ルージュが惑星の上に立っているかのようだ。


そして、その惑星のようなシャンバラの中にルージュが転移する。

転移した場所は、ベッドだ。


「もう訳分かんないから寝る!」


そう言って彼女は不貞寝し始めた。




ルージュが眠っている間、俺は肉体から離れてドラゴンの姿で行動していた。

寝ているルージュの身体から自分の手足が出て来るのを見ていると、何て言うかSAN値が削られてピンチになってしまいそうだった。


シャンバラは新しい世界の方向へ上昇しながら向かっていた。

大気圏、そう呼ばれる場所で俺は世界の全容を見る。


「なん……だと……」


俺達のいた大陸から離れた海上、そこにはアメリカ大陸があった。

それだけではない、オーストラリア、日本、ヨーロッパ、南極。

大陸間を船や飛行機が行き交っている。

俺が前世で見たことある世界が広がっていた。


「いや、違う?」


だが、加えて見慣れない大陸や小さな島々が点在している。

少なくとも世界地図に載ってないと分かる大陸があるのはおかしかった。

何で沖縄と本土がくっついてんだよ、北海道も青森と合体してないか?

良く見れば、大陸間に細い道のような物がある。

それは、巨大な橋だ。

巨大な橋が大陸同士をつないでいるのだ。


「やっぱり俺の知ってる世界じゃない!」


俺が驚いていると、シャンバラが未確認飛行物体を捉えた。

レーダに反応があった場所に注視すれば、そこには機械が映っていた。

宇宙空間のような場所に漂うそれ、俺は知っている。

アレは、観測衛星だ。

どうやら、今度の世界は俺の前世に限りなく近いパラレルワールドのような場所のようだった。


宇宙を見ていて、俺は気付いたことがあった。

他の世界であり、巨大な光の塊である存在が一つしかなかったのだ。

前見た時は三つはあったのに、いつのまにかひとつである。

俺達が繋げた世界が一つならば、二つ残っていないといけないのにどういうことか。

勢い余って二つ分の世界を貫通したとでも言うのか。

おのれルージュ、と謎が深まるばかりだ。




部屋に引き籠っていたルージュが随分と遅い起床をして、気怠さそうに俺のいるモニタールームに来た。


「……おはよ」

「随分と遅かったじゃないか」


ガウンを羽織った状態で、ルージュが何かを抱きしめながら現れた。

っていうか、シャンバラ君だった。


「あれ、ゲームの画面が写ってる」

「そうそう、俺の作るように言った格ゲーの画面……に見えるじゃん?」

「えっ?」

「今度の世界なんだぜ」

「なにそれこわい」


そう口にしていながら、平然とした状態でルージュはテーブルと椅子を片手間に召喚する。

そこに一糸乱れぬ連携で食事を運んでくるメイド達、命令する前から動くなんてまさにプロである。


「うぅ、先輩……」

「どうした、シャンバラ君」


ルージュに抱っこされた状態で、肩の方に頭を乗せたショタが話し掛けて来た。

顔は何て言うか、ふにゃんとしていてグロッキーだ。


「もいんもいんのむきゅんむきゅんでした」

「そっか……」


何言ってるか全くわからないけど、頭大丈夫か?

何かを伝えたいのだけは分かった。




モニターを見ながら、ルージュが注目したのは日本だった。


「アレが……」

「そうです、日本に間違いないですよルージュ様!」

「概念すら両断する戦闘民族SAMURAIがいる国ですの!」

「遺伝子レベルで恐怖を植え付けるアサシン!NINJAはどこにいるんですか!」

「ちょ、ちょっと見たいわよね。アレとか、戦略級秘密兵器DOGEZAとか」

「探せ!観測機を派遣して何としても探し出せ!我らが女王はDOGEZAを所望ぞ!」


眷族とルージュ達が日本を見ながら騒ぎ立てる。

そう言えば、俺が教えたネタ知識が浸透してるんだった。

しかし、ルージュはヨシユキの記憶があるはずなんだけどどういうことだ。

アイツ、日本人じゃなかったのか?

その後、どう日本という国にコンタクトを取るか緊急会議が始まった。


「観測結果から、国土は強固な結界で覆われています」

「SAMURAIらしき者が交戦中、アレは妖怪と呼ばれるモンスターです」

「ルージュ様、NINJA!NINJAいますよ!」

「お、お前達落ち着きなさい。侍や忍者ぐらいで驚き過ぎよ……えっ、あんな感じなの?」


そわそわしながら、眷族達を落ち着かせようとするルージュを見て俺はお前が落ち着けよと思った。

しかし、どうやら本格的に異世界の日本みたいだ。

アメリカではカウボーイがビル群の中で狼男と戦っていたりするし、日本では学生が刀を片手に鬼とかと斬り合ってる。


「なんか、バトル物のラノベみたいな世界だな。いや、その可能性もあるのか」

「取り敢えず、何名か派遣して情報を集めるのよ!」

「ルージュ様、現地人を捕獲して調べると言うのはどうでしょうか!」

「良いわね、でも日本はダメよ!あそこは白夜大陸みたいにそこら辺に神様がいるから、狙われたら全面戦争よ!」

「そんな、そんなにいるんですか!」

「入念にチェックしなさい、アパートに住んで下界を監視している神もいるから間違えないように!」


ルージュの的確な指示が飛ぶ。

こうして俺達の新世界への介入計画が進んでいくのだった。

途中、勘違いした外国人みたいな感じになってたけど俺ら異世界人だし気にしたら負けだと思う。

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