卵、割りました。
もはや、勢いだけの設定のない作品です。
夏だから書きたくなってしまうのか。
もしドラゴンになったらをコンセプトに書いていきます。通称、「ドラつま」をよろしくおねがいします
……あれ、ここどこだ?
目の前の暗闇を目にして俺は疑問を浮かべた。
普段なら薄暗くも日の光が少し差し込む部屋で目が覚めるのだが、全く光が差し込まない状況に戸惑いを隠せない。
……なんか、身体が動かない。いや、壁?壁に囲まれてる?
一体、何故壁に囲まれてるのか検討もつかない。誘拐とか……いやないな。
俺はヤクザの息子だとか金持ちだとか、そんな特殊な環境で生活していないのだから。平々凡々な一般人を誘拐するはずがないのだから。この状況は誘拐ではないはずだ。
……取り敢えず、叩けばどこかにドアがあるはずだ。ドアを見つければ、出れるかもしれない。
俺は力いっぱい壁を叩く、するとどうだ。
ピシッともピキッとも聞こえる音と共に光が差し込んできた。
……コンクリートじゃない?木造って訳でもなさそうだが。
そんな疑問は次の瞬間に解消された。
壁が完全に取り払われて、俺の視界に新たな景色が映る。
まず、卵だ。なにこれ、卵のオブジェ?とでも言えるほどの大きな卵だ。凡そ、等身大だろう。
何だろうな、と緑の腕で頬の鱗をかく。
……あれ?おぉ、俺がいるのも卵みたいだな。いや、そうじゃない。落ち着こうか。
緑の腕、俺の腕。頬の鱗、俺の頬。うん、おかしい。人間の手じゃない。
「ギュアアアアア!?」
……うわ!?な、なんだよ獣の声!?
「ギュア?ギュギュ?」
……また、聞こえたぞ。耳元に何もいないのに。いや待てよ
「ギュ、ギュアギュア!」
……や、やっぱり俺が出してる!俺の声なのか!?どうなってんだよ!
俺は化け物になっており、卵のような物から身体を出していた。だが、落ち着いてみれば
……どう考えてもトカゲの腕だよな。いや、恐竜?卵から生まれた状況なのか?俺は人間から恐竜に憑依したのか?
ぐわんぐわんと、疑問が渦巻いて何も考えられない。どうして、なぜ、そんな言葉ばかりだ。しばらくして、俺は嫌なことを思い出した。
現実逃避として人間の記憶を思い出していて気付いたのだ。
……確か、爬虫類って生まれてすぐに他の卵食べるよな?もし、この卵が孵化したら……
食べられる。共食いする種類だった場合食べられるのだ。逃げよう、これは夢みたいだがリアルなのだ。もし、本当は現実でしたというオチなら、死ぬ。もし、夢なら儲けもの程度の感覚で行動するしかない。
だが、そんな決意も無駄になる。ビルの爆破解体のような轟音と共に強烈な横風が俺の頬を撫でる。
続いて雷のような音が聞こえた。
しかし、何よりも驚くべきことはそんな異常気象ではない。俺が見た光景だ、それこそが問題だ。
イケメンがいた。いや、誤解しないでくれ今までのは劇的な出会いの例えではなく事実である。そう、事実俺は天変地異が起きたと思った。しかし、イケメンを見て理解した。
イケメンの大きさは高層ビルほどだ。巨人、まさにイケメン巨人。それが、俺の方へと手を伸ばす。この様子から俺は片手で握れるほどの大きさになっていたということを実感した。
俺を連れてイケメン巨人が移動することで俺は二つの憶測を立てた。俺が見た光景から考えたのだ。巨大な木の壁が動き、天頂の見えない木々が見えるマンガの世界のような光景。巨人の世界に紛れ込んだのか、俺が小さくなってるのか。そのどちらかだろう。
屋敷のような巨大建造物を抜けると、俺は家族らしき巨人に囲まれた。何やら会話しているが空気が振動して音割れしている。というか煩いのだ、恐らく小さい俺には大音量に聞こえるが彼らの感覚では普通なのだろう。あぁ、なんだか小動物の苦労を感じるわ。チワワが震えるわけだわ、デカいの恐いよ。
しばらくすると、幼女の巨人が杖を持って叫びだした。いや、本人はなんか喋ってるんだけど俺には意味不明な言葉の羅列を叫んでるようにしか聞こえないのだ。
杖、ということは魔法でもあるのだろうか。ファンタジーだな、そんな呑気な感じで見ていた俺は意識が遠退いて行くのを感じた。
……えっ、なんかしたのか?目蓋が重い……眠い。
「ハッ、ここは……知らない部屋」
「気がついた!お母様、お母様!?」
ドタバタ、巨大な足音ともに何かが去っていった。恐らく、杖で何かしていた幼女巨人だろ。
ただおかしいのは、意味不明な言葉の羅列や俺のトカゲとしての声の意味が分かるということだ。
……意志疎通の魔法とかなのか?それなら、言葉が通じてもおかしくない。
恐らく原因は杖で何かしていた幼女巨人である。だから、この考えで帰結しても問題ない。
さて、本格的に異世界にいると考えた方が良いだろう。だって、髪が虹色の巨人がいたから染色とかのレベルじゃないし断定しても良いと思う。
ここで人間の頃の記憶について喋ったら実験動物になるだろうから隠さないとな。
まずは、情報集めだよな。
ドタバタ、巨大な足音が再び近付いてきて幼女巨人が母親巨人を連れてやってきた。
「お前、分かる?私マスター、こっち、お母様」
「マスター、お母様?」
「わぁ、理解してる!スゴい、お母様スゴいよ!」
「そうね、ドラゴンですもの知能が高いのね」
……ドラゴン?それって俺のことか?まぁ、トカゲじゃなくてドラゴンかなんて確かめる術とかないしな。鵜呑みでいいだろ。
「俺、何?」
「わぁ、喋った、喋ったよー」
「ねぇ、俺って何よ?」
「あぁ、ごめん。えっと……」
幼女の視線が母親に向けられる。
「貴方は使い魔っていう存在なの。パスが繋がったから意志疎通出来るでしょ。使い魔はマスターと意志疎通しながらお互いを助け合うのよ」
「ふーん」
「これからよろしくね、ヤンヤン」
「何かパンダみたいな名前だな」
「えっ?」
「えっ?」
「気に入らなかったのかしら……」
いや、どうでもいいよ。しかし、どうやら俺はドラゴンとして生きていくしかないようだ。使い魔とやらは、まぁ何となく俺のファンタジー知識で分かる。フクロウとかみたいに手紙でも運べばいいんだろう。
しかし不思議なこともあったもんだ。もしかしたら知らない間に死んで転生でもしたのかな。よくあるネタだし、ありそうだけど。
今はペットとして生きていこう。