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第54話 二日目の朝は悪態と共に

「ん……ふぁぁ〜」


 特に理由も無く、黎翔の目が覚めた。

 ベッドに寝転がったまま、欠伸と背伸びをする。目を開くと、部屋は日差しが入り込んで明るくなっていた。


(天体観測しながら、いつの間にか寝ちまったみたいだな。今何時だ?)


 時計を探して、キョロキョロと辺りを見渡す。

 その時になってようやく気づいた。


「あ、黎翔。おはよう、いい朝だね」


 窓の外を眺める、1人の少女の存在に。

 御織はこちらが起きたことに気づいたようで、振り向いてニコリと笑顔を見せた。


「あぁ、おはよう。随分と早起きなんだな」

「にはは、まぁね」


 ゆっくりベッドから降り、御織の隣へと歩み寄る。そして、一緒に外を眺める。

 窓の外を見ると、昨夜見た魔法の夜空は消え、無神経な太陽が昇り始めていた。朝焼けのような綺麗なものはなく、全面真っ青なだだっ広い空が広がっていた。


「昨夜はよく眠れた?」

「あぁ。疲れてたしぐっすりだった。それに、あの魔法のおかげで部屋も暗かったからな」

「そっか。えへへ、そりゃよかったよ」


 御織は嬉しそうに笑った。



 昨夜、二人で夜空を鑑賞しながら、夜空を出す魔法について少しだけ御織から聞いていた。


 どうやらあの魔法は相当とんでもないものらしく、多種多様な魔法が数万個単位で同時発動しているらしい。

 『魔導具』と呼ばれる特殊な機械に刻印された魔法は、使用者のマナを要することなくいつでも使用出来るらしい。御織曰く、


『寝る前に使えば部屋が勝手に暗くなって、朝になったら勝手に切れるシステムになってるの。だから、これで黎翔もちゃんと毎日眠れるよ!』


 とのことだった。

 御織の努力によって成された魔法技術の結晶。黎翔一人で使うには勿体ない代物だ。



 それだけ苦労を重ねて創り上げた魔法を褒められ、御織はとても嬉しそうにしていた。黎翔も、御織が喜んでいる姿を見て微笑ましく思う。


「話変わるけど……今何時?」

「んとねぇ、4時半過ぎ。黎翔も中々早起きだねぇ」

「まーな」


 黎翔は、少しだけ得意気にそう言った。


 猟師としての規則正しい生活習慣は、多少の環境の変化では揺るがない。転移前にそうしてきたように、朝4時半、寸分の狂いなく目が覚めたのだ。

 黎翔は、少しだけ今まで通り起きられるか不安だった。が……それは杞憂だった。父や祖父が長年続けてきた生活スタイルの最初の一歩は守り切れているようだな、と得意に思ったのだ。


「いやぁ、このベッドマジでいいな。うちの敷布団とはわけが違うぜ」

「あったり前だよ!いいやつ選んできたんだからさっ!」


 朝まで自身を包み込んでいたベッドを指差しながら、そう言う。

 そこでふと、気になったことがあった。


「ちなみに、お前どこで寝たんだ?隣にいた感覚なかったけど」


 そう聞くと、御織は表情一つ変えずにサラリと返答した。


「カーペットの上」

「すんませんでした」


 年下の少女に、自身の恩人に、黎翔のために苦労を重ねてくれている御織に、床で寝させるなどという愚行を働いていたことをその一言で理解し、即刻土下座謝罪する。


「えっ!?いや、そんな謝られることじゃ……」


 御織の側は謝られるとは思ってなかったようで!驚きと困惑を示した。


「でも!俺がベッドを使ってしまったせいで……」

「いやいや、ここ黎翔の部屋なんだから黎翔がベッドで寝るのは当然だよ。むしろ私こそ、勝手に部屋に居座っちゃってごめんね」

「いや、御織のせいじゃ……」

「いやいや、私のせいで……」

「いやいやいや………」


 互いが互いに謝罪し合う謎の状況が完成する。

 しばらくその流れが続いたのち、


「……じゃ、今回はお互い様ってことで、ね」

「まぁ、そう……か?」


 御織がそう言い出したことで、ようやく決着が着いた。


──────────────────


「おはようございま〜す!」

「おはよう、ございます……」


 バンッ!と大きな音を立てながら、御織が食堂の扉を開けて挨拶をする。それに続いて黎翔も適当に挨拶する。


(目立ちたくねぇ〜〜〜)


 という黎翔の願望など露知らず、


「本日も御織様が見参ですよ〜っと」


 デカイ声とデカイ態度でズカズカと朝食バイキングの列に並んでいく。黎翔は頭を抱えたくなる気分だった。


「あれ、昨日より人少なくね?」


 何の気なしに食堂を見渡すと、昨日より遥かに人がいなかった。席はほぼ空席で、座っている人ももう既に食べ始めていた。


「朝は全員揃う前に食べるからね〜。朝遅い人もいれば、実習でめちゃ早い人もいるし。ちなみに私達は平均ラインね」

「なるほど……大学生だから講義の時間もバラバラだもんな」


 昨日同様、更に次々と料理を載せながら話す。


 ちなみに、現在時刻は7時過ぎだ。あの後二人で色々と雑談をして時間を潰してから食堂に来ている。


(本当はもっとゆっくり話したいんだけどな……時間が過ぎるのは早いもんだな)


 としみじみと考えながら、バイキングを回った。


──────────────────


「「ご馳走様でした」」


 山のように盛られた料理を食べ終え、食堂を後にする。


「相変わらず美味かったな」

「ね〜。毎日ここに住みたい。それはそれとして黎翔は食べ過ぎだけどね」

「ソンナコトナイヨ」

「カタコトじゃん……」


 下らない雑談をしながら、階段までの道を歩く。


(………ん?)


 すると、正面から5人の集団が歩いて来ているのが見えた。

 逆光で真っ黒な姿しか見えないが、シルエット的に全員女性のようだ。長い髪が揺れているのが見える。

 5人の集団となると流石に道も狭そうだったため、黎翔と御織が左の壁側に寄って道を空ける。


 が、それでも御織の肩がそのうちの一人に当たってしまった。ドン、と鈍い音を立てると同時に御織の身体がふらつく。


「痛っ……」

「っと、大丈夫か?」

「……っ!!うん、大丈夫。ありがと」


 よろけた御織の身体を支え、声をかける。

 その瞬間、御織は少し驚いたような表情を見せた。が、すぐにいつも通りの様子に戻る。


「ごめんね、ぶつかっちゃって」


 黎翔の手元から離れて自分で立った後、相手に謝罪した。

 相手の方はスンと立っていた。特段身体を揺らすでもなく、謝罪するでもなく、直立で。


 壁を背にしたため、逆光を失った彼女たちの顔が見えた。その時───初めて相手が誰か分かった。


(っ!コイツら、昨日俺の事睨んできてた奴らだ……!!)


 昨日、食堂で自身に敵意を向けてきていた、5人グループ。目の前にいるのは、まさにその5人だった。


 ぶつかった女も、他の女も、御織のことを見下すような目で睨んでいた。謝罪する気など滅法無さそうだった。なんだったら、舌打ちでもしたそうに眉間に皺を寄せていた。

 その態度に強い苛立ちを覚えたため、黎翔も相手を睨みつける。


「……謝罪もできねぇのかよ、お前ら」

「……………………」


 強い口調で説教するように言うが、向こうはうんともすんとも言わない。ただ静かに、こちらを見下したままだ。

 更に言い募ろうと意気込んだ時、ぐいっと袖を引っ張られた。


「いいよ黎翔、よそ見してたアタシが悪いし。行こ」


 御織が諭すように優しくそう言う。


「だが……」

「アタシは大丈夫だからさ。予定に遅れちゃうかもしれないし、早く行こ」

「……まぁ、お前がそう言うなら……」


 納得しきれない黎翔だったが、結局は御織に押し切られ、諦めることにした。


「………………チッ」


 去り際、彼女たちに最大限の怒りを込めたギリギリ聞こえるラインの舌打ちを贈呈し、その場を後にした。




──────────────────

蒼井黎翔 ID: 137438691328

Lv.17

POW:1557+50 DEX:1232 DEF:1068

INT:0 MP:0 RES:0  Total:3858


職業:狩猟者ハンター 階級:特異

スキル:『狩人の心得』パッシブ

『狩猟者の勘』発動可能

『野性』パッシブ

『獣殺一閃』発動可能


ステータス補正:物理特化

──────────────────

読んで頂きありがとうございました。よろしければ、いいね・ブックマーク・感想などよろしくお願いします。飛び跳ねて喜びます。

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