第43話 魔法拳銃VS人間砲台
注意:この話では、グロとまでは行きませんが、結構痛そうな場面がいくつかあります。
苦手な方はそっと閉じてあげてください。
「『魔力弾』!」
御織に拳銃を向けながら、現れた男は叫ぶ。
すると、右手で握られたその銃口が紫色の光を発した。
(あれは……まさか、魔法か!?)
危険を察知し、咄嗟に身構える。
が、男はそんな黎翔の事など眼中に無いかのように、全く視線を向けなかった。ただ、銃口と全く同じ方向だけを見ていた。
次の瞬間、男は引き金に掛けた人差し指を僅かに動かす。
来る───ドクンと心臓が跳ね、死が身に迫っていると直感的に感じる。
今、銃口が自分に向けられていないことは分かっている。それでも、黎翔の脳は、脊髄は、警告を止めなかった。理由は簡単。
(狙いは俺……!!)
分かっていたからだ。
「死ねェ!!」
不意に、男は叫ぶ。同時に……
頭も、胴も、足も、ピクリとも動かさず、真っ直ぐ御織の方に向けられたままで───
右手と銃口、そして強烈な殺意だけを、黎翔に向けた。
(来た……ッ!!)
それを察知するより早く、黎翔は再び回避行動に移っていた。
両手を伸ばし、姿勢を低くして、飛び前転の要領で前方に飛び込む。その感、視点は男に固定されている。
伸ばした両手が、新品のフローリングに付くその瞬間───
パシュッ、という空を切る音だけが聞こえる。あまりにも静かに、黎翔の命を奪う一撃は放たれた。
否───『奪う予定だった』一撃が、宙に放り出された。
放たれたのは、紫色の光の塊。『野性』で強化された黎翔の視界で辛うじて捉えることの出来たその姿は、不定形の光を纏った銃弾のようだった。
外側を揺らめく光の内側に、微かにではあるものの、黒光りする影が見えたことから、恐らく銃弾にマナが纏わりついているのだろうと推測できる。
放たれた銃弾は一条の光線を描き、真っ直ぐに黎翔の立っていた場所を貫く。その速度は、先程見た銃弾とは一線を画す速度だった。『野性』の視界でさえもその姿がほとんど見えなかったのだから。
しかし、それでも回避は成功していた。光は黎翔に掠ることもなく、その頭上を通過した。
視覚で捉えることすら出来ない必殺の一撃を回避出来たのは……
(ッぶねぇ、予想通りだ……!!)
黎翔の、的確な推測のおかげである。
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それは、男が引き金に指を掛けた瞬間だった。
(っ!?アイツ、やっぱり……!!)
突然、身体の底から震え上がるような恐怖を感じた。
一瞬戸惑ったものの、すぐにその理由を悟る。
(『狩猟者の勘』か……!!)
数秒前───正確には、男と御織が短いやり取りを交わしている最中、黎翔は万一に備えてスキルを発動していた。その恩恵が早速出ているのだと理解する。
『狩猟者の勘』───その効果の一つである、『勘の大幅な上昇』。これのお陰で、黎翔はもう一つのスキルである『野性』に頼らずとも、何となく攻撃予測が出来る。
そして今回、強化された勘は、恐怖という形で告げてきたのだ。男の標的は御織ではなく、自分なのだと。
(今ならまだ間に合う。避けねぇと……)
それを理解してすぐ、黎翔は高速で思考を回転させ始める。
(でも避け切れるか自信ねぇな。さっき避けたやつは普通の銃弾だったっぽいが……今回のはマナを使ってる、もしくは魔法が関係してるようだ。となると、速度も軌道も威力も全く未知数だし……)
父や祖父が猟銃を使用していたため、銃については比較的詳しい部類である黎翔だが、マナや魔法に関してはまだ何一つ理解していない。
それでも、普通の銃弾よりは確実に危険であることだけは分かる。だから、視覚で認知してからでは対応出来ないと予想していた。
(軌道変更は流石に無いだろ。そんなん来たら俺死ぬし、そうなら多分御織が止めてくれるはず)
隣に悠然と立っている御織は、『ボス』戦の時もそうだった。いくら黎翔を追い込もうと、『死なせはしない』と明言していたし、実際助けられている。
(だからそっちは警戒しなくていい。で、威力に関しては、いくら強かろうが避ければ意味無いから考える必要ナシ。問題は……速度、だな)
完全に回避前提で考えている───というか、回避以外に攻撃を防ぐ手立てが無い───ため、『銃弾が当たる』ことだけが黎翔にとって避けるべき事象だった。
そして、命中率を上げる最も確実な方法こそが、弾速の強化なのだ。
(仮に普通の銃より速い弾が飛んできたら、いくら『野性』で見切っても避けようがない。『野性』で強化されるのは、俺の肉体じゃなくて動体視力だけだから。つまり、俺のやるべき事は───)
男が引き金を引こうとしてから、ここまで思考を巡らせること、約0.5秒。
全パターンに備えて出した結論は、銃弾の発射を確認する前に回避行動を起こすことだったのだ。
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結果、こうして完璧な回避に繋がった。
(読みは完璧、頭狙われる予想もドンピシャ。ここまで綺麗に決まると気持ちいいな)
内心で安堵と達成感を感じつつ、その意識は、銃弾を放った男と、未だ宙を舞う自身の身体に向ける。
(今度は……こっちの番だ!)
意識を、回避から攻撃へと切り替える。
両手をしっかりフローリングに着地させ、そのまま肘と背中を曲げて前転の姿勢に移る。
その間、一瞬男を視界内に入れられないタイミングがあった。その瞬間だけが反撃を受ける可能性があったが……
特段、攻撃される気配は無かった。というのも、
「……?……ッ!?!?」
『魔力弾』を放った男は、一目見ただけで分かる程に動揺していた。
恐らく完全な不意打ちの一撃で、黎翔を殺すか無力化出来ると踏んでいたのだろう。その強力な一撃を回避されたことへの動揺か、あるいは眼前で行われた完璧な回避を認知することさえ出来なかったのか、驚き目を見開いたまま固まっていたのだ。
(こりゃ大丈夫そうだな)
一安心した黎翔は、そのまま無警戒で攻撃に移る。身体を丸めて回転し、8m程あった男との距離を一瞬で3m程まで詰める。
「はッ……!!」
壁近くから、男の立っていた部屋の入り口近くまで一気に跳躍してきた黎翔に驚きつつも、男は咄嗟に銃から手を離して右腕を振り上げた。今更反撃しようとしているらしい。
が、そんなものは余裕で間に合わない。
前転を終えて手を床から離し、しゃがんだ体勢になった黎翔は、両足に全力で力を込める。そして───
「喰らえ、人間砲台!!」
つま先で床を蹴りつつ、全力で膝を伸ばす。床が軋む程の蹴りによって一気に黎翔の身体は加速する。
しゃがんだ状態から立った姿勢になり、若干前傾姿勢のまま、その身体は猛スピードで真っ直ぐに空中に飛び出す。その姿は、文字通り砲弾さながらだ。そして……
そのまま頭から、男の顎に突っ込んだ。
ゴッ、ガチン!と鈍い音が鳴る。一つは黎翔の頭が男の顎に直撃した音。もう一つは、その衝撃で男の歯と歯が思いっきりぶつかった音。
「ごォッ」
直撃の瞬間、短い悲鳴を上げる。
激烈な痛みと衝撃を顎に受けた男は、白目を向いてふらつく。
そのまま、僅かな時間だけ宙を舞い……
「ぬぉぁっ」
思ったより勢いがついてしまった黎翔の身体に押され、バタリと頭から後ろに倒れた。
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蒼井黎翔 ID: 137438691328
Lv.17
POW:1557+50 DEX:1232 DEF:1068
INT:0 MP:0 RES:0 Total:3858
職業:狩猟者ハンター 階級:特異
スキル:『狩人の心得』パッシブ
『狩猟者の勘』アクティブ化 3587s
『野性』パッシブ
『獣殺一閃』発動可能
ステータス補正:物理特化
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