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第42話 新生活と不法侵入

「ここがキミの部屋でーす!」

「おぉ〜!!」


 御織に連れられやってきたのは、4階建ての学生寮の最上階にある一室。

 部屋の入口の、下駄箱のついた小さな土間の向こうにある、4畳半くらいのかなり広めのスペースが、黎翔を出迎えた。


 室内には既に机、椅子、木製タンス、ベッドの生活必需家具に加え、テレビとエアコンの娯楽用品も備わっていた。壁も天井も真っ白で、正面側の壁には窓とベランダが見えた。沈みかける太陽と青空が、とても綺麗に見える好立地のようだ。

 フローリングの床には真新しいフカフカのカーペットまで敷いてある。真っ白のそれは、一目見ただけで触りたくて仕方なくなる。


 部屋全体から、新居特有の、新しい家具の匂いが感じられた。新生活が始まる、そう予感させる空間だ。


「キレイな部屋でしょ?」

「あぁ、チョー綺麗だよ!」


 今まで自身の住んでいた、机と椅子、敷き布団しか無かった和室を思い出し、比較し、新たな生活空間の豪華さに気分が一気に最高潮になる。


(別にあの部屋が不満って訳でも無かったんだが……やっぱりお洒落な部屋の方が気分上がるなっ!)


 喜び目を輝かせ、子供のように興奮する。


「なぁ、色々部屋ん中見てもいいか?」

「モチロン!キミの部屋なんだもん!」

「いぇー!!」


 御織の許可を得て早々に、スリッパを脱いで揃えたのち、バタバタと部屋の中に入る。


「うぉ〜!カーペット触り心地良っ!テレビ画面デカッ!!ベッドもフカフカ〜!!」


 溢れ出る興奮と好奇心に駆られ、ウキウキで部屋中を見て、触れて、匂いを感じて……

 慌ただしく、五感で新居を堪能する。


「そんだけ喜んでもらえると、アタシも嬉しいよ〜!」


 傍から見ていた御織も、黎翔の楽しそうな様子を目にしてご満悦だった。腕を組み、満面の笑みで黎翔を見守っている。


「本当にありがとな、御織っ!!」

「気にすることはないよ〜!アタシ言ったでしょ?ちゃんとアナタを幸せにするって!アナタを守ってあげることは断られても、傍からサポートすることは断られてないもんね!!」


 『花被片騎士』達を蹴散らした後の会話を思い出しながら、御織はドヤ顔でそう言う。


「アナタがアタシを頼る気が無くても、アタシはアナタを助けるから。その分、黎翔もちゃんと頑張ってよね?」

「言われずとも、だ。お前の方こそ、俺に助けられる準備しとけよ?」

「お、言ったな?んじゃ、期待して待ってるよっ!!」


 互いに笑い合う。

 2人の満面の笑顔は、沈みかけの太陽に照らされ、キラキラと輝いて見えた。


「……幸せだな」


 その笑顔を見て、ぽつりと言葉が溢れ落ちる。

 御織は、それを落とさず拾い上げる。


「そーだね、黎翔は幸せ者だよ。なんせこのアタシと友達なんだもんっ!」


 ふふん、と胸を張ってドヤ顔で話す。

 そんな友人の姿と、『友達』というごくありふれた単語に対し、なぜか感慨に近い感動を感じた。黎翔は、その思いをそのまま言葉にする。


「その通りだな。俺と友達になってくれてありがとな、御織」

「へぁっ!?んお、おう!!」


 それを聞いた御織は、変な声と共に途端に赤面した。そして、動揺そのままに返事をする。


「なんだ?その変な声……」

「んや、別になんでも……ただ、その、不意打ちはよくないっていうか……」


 顔を背け、急にボソボソと言い訳をされる。


(子供みたいなやつだよな、ホント)


 その表情の変化の早さに若干の呆れを抱きつつも、まだ子供なんだと言う事実を実感でき、親心に近い感慨を抱く。


「な……なんだよぉ、その目!アタシの痴態でほのぼのしやがって!!」

「いやぁ?そういう訳じゃねーよぉ?」

「んぁー!もうっ、イジワル!!」

「はっはっはっはっは!!」


 今度はプンスコと怒り出した少女の姿に微笑みつつ、幸せな時間を堪能した。


──────────────────


「そういや今何時だ?」


 ふと気になり、尋ねる。


「ふんっ!イジワルな人に教える時間なんて無いもんね〜っ!」


 さっきの件を根に持っている御織は、べーっと舌を出しながら断る。


「あはは、悪かったって。お前が可愛くてつい、さ?」

「む……まぁ、可愛いのは否定しないけど?」


 不機嫌な表情から、どこか満更でもなさそうな表情に変化する。


「まぁ?こんな可愛くて賢いアタシに、ど〜〜〜しても聞きたいってんなら、教えてあげないこともないけど〜?」

「そうだな。ど〜しても聞きたいことだよ。可愛くて賢いお前にな」

「ふふん、よろしい」


 適当に褒めると、今度は更に嬉しそうな笑顔になった。


(単純なヤツだな。こんなことで機嫌直るとは)


 チョロ……と世界最強を懐柔した達成感と、それでいいのか?という若干の不安を感じる。

 が、それを態度に出すとまた怒られるのは目に見えているため、心の中に留めておくことにした。


「ん〜とね、今は〜」


 スカートのポケットから、スマホらしきものを取り出す。


「午後5時半くらいみたい。大学終わるのが5時だから、多分そろそろみんな帰ってくるね」

「みんな……っていうと、他の寮生か?」

「んむ、そゆこと〜。同じクラスの子もいるから、今のうちに仲良くしときなよ?」

「ん……」


 同じクラス……その言葉を聞き、少し複雑な気分になる。


(どんなヤツがいるのか……楽しみではあるけど、不安の方がデカイな)


 黎翔のクラスは、御織曰く国内有数の天才達の集まりらしい。

 そんな優等生達に遠く及ばぬであろう自身の立場が、少しだけ不安になった。


「ちなみに、この寮は上級クラスの子たちの大半が住んでるんだ。だから、先輩も結構いるハズ」

「ほーん、先輩ねぇ」

「そそ。黎翔は1年のクラスに入るから、単純計算すると寮生の4分の3は先輩になるね!」


 先輩という語を聞き、更に不安が募る。


(怖い人ばっかりじゃないといいなぁ……)


 黎翔は、大学とは無縁の生活だった故、偏見的な知識しか持ち合わせていない。そのため、何となくだが、大学はチャラチャラした酒飲み集団が多いというイメージを持っていた。


(んまぁ、優秀な人達の集まりらしいし……多分大丈夫だろ)


 と自分の中で言い聞かせながら、不安を取り除く。

 と、


「……む?」


 さっき入ってきた玄関辺りから、微かに音が聞こえた気がした。

 ガタン、という物音。恐らく入口のドアの音だろう。同時に、バタバタという複数人の足音も聞こえた。


「帰ってきたみたいだねぇ」

「みたいだな……」


 それを理解した途端、黎翔は若干緊張を感じる。


(あぁ、不安だ……)


 ソワソワと、落ち着く様子のない動揺を逃がすことが出来ず、手を動かす。


 パタパタと、複数の足音が近づくのを感じる度、その動揺は大きくなっていく。

 だが……


「……あれ?足音が消えた?」


 あるタイミングを境に、ふとその足音が消滅する。


(おかしいな、さっきまで近寄ってきてたのに……こんな急に消えることあるか?)


 どこかの部屋に入った様子も、何かに座ったりした様子もない。

 緊張のなかに漠然とした不安が───『嫌な予感』が芽生え、無意識に御織の方を見てしまう。


 御織は───


「あ〜……なるほど、彼がそうなのか。こりゃ面白くなりそうだな、にははっ☆」


 小さく何かをつぶやき、何かを企むようにニヤリと笑っていた。


(え、怖いんですけど。絶対何かあるじゃん)


 『嫌な予感』が少しずつ肥大化していく。

 それが、ある一定に辿り着くまで、5秒と掛からなかった。


(っ!?なんだ、なにか来る───!!)


 殺気に近い何かを感じた気がして、咄嗟に身構えながら玄関の方を向く。


 次の瞬間───黎翔の視界に黒い何かが映った。

 小さく丸い物体。光を反射し鈍く輝くそれは、黎翔の視界の中で何故か少しずつ大きくなっていく。


 それの正体が、銃弾であると気付くのに───ほとんど時間は要さなかった。


(っは!?)


 一瞬芽生えた、動揺と焦燥。それを無視して、黎翔の思考は高速で回転し……


「………!!」


 その場における最適解と思われる、回避行動へと速やかに移行した。


 『野性』のおかげで、黎翔は弾丸の正体にいち早く気付くことが出来た。その軌道も含めて、完璧に。


 銃弾が自身のこめかみ辺りに着弾すると悟った瞬間、すぐさま身をかがめる。


 直後、パリン!という音が後ろで鳴り響いた。弾丸が黎翔の頭上を通り過ぎ、窓ガラスを貫いたのだ。

 それにより、自身の回避が成功したことを理解する。同時に、


「御織!敵襲か!?」


 隣で突っ立っている御織に大声で質問する。


(敵は廊下にいる。玄関の構造上射線は限られるし、室内にいる限りある程度安全だろう)


 御織の回答を待つ間、的確に自身の状況を確認する。咄嗟の場面における切り替えの速さはピカイチだ。

 対して……御織は御織で、ある意味平静を保っていた。


 否、保ちすぎていた。


 腕を組み、欠片も動かない。相も変わらず笑顔を絶やさず、貼り付けている。


 割れた窓ガラスの向こうから吹き込む風がやかましくカーテンを揺らす中、寝てるのかと疑われる程に悠然と佇むその少女の愚行としか思えない姿は、かえって黎翔を安心させた。


(……コイツ、なんか知ってんな)


 いついかなる時も、御織がなんの対応も取らないのであれば、心配する必要はない。


 幾度となく御織に助けられた黎翔は、その事実を誰よりも知っていた。だから、黎翔も一度落ち着いて警戒を解く。


 それをチラリと一瞥したのち、御織はおもむろに口を開いた。


「結構なお出迎えで。無礼なのは相変わらずだね?」


 玄関の向こうを見遣り、呼びかけるようにそう言った。

 それに、返答する声があった。


「黙れやァ、不法侵入者がァ。ここは『蕾種大らいじゅだい』生以外の出入りは禁じられてんだよォ。ンなことも知らねェのか?OBさんよォ!!」


 低くガサついた、声変わり明けくらいの男の声だった。

 頗る口調が悪く、『怖い人』のテンプレートのようだった。思わず黎翔も身構えてしまう。


 その男は、ゆらりと影を揺らしながら、一歩一歩力強い歩調で、土間に侵入する。そして、土足のまま部屋に上がってきた。


 男は、一目で分かる不良だった。

 ワックスで固めた刺々しい金髪。両耳で鈍く輝く金色のピアス。両手中指に着けたゴツイ銀色の指輪。

 黒い軍服を着ているようだが、その着こなしはとても軍服とは思えない。

 上は前のボタンを完全に開け、中に着た赤いシャツを全面に見せている。

 ズボンには右側にチェーンが2本着いており、黒メインの軍服のアクセントとなっている。


 三白眼だからか、人相がとても悪い。真っ黒な瞳孔は重そうな瞼に遮られて光を反射出来ていなかった。

 眉間に皺を寄せ、恨めし気に歯ぎしりさせている。元から人相が悪いのみならず、機嫌も悪いようだ。

 ポケットには左手を突っ込み、右手には回転拳銃リボルバーを握っている。さっき撃ったからだろう、弾倉が一つ空いていた。


 その男はカチリという音を鳴らしながら親指で拳銃のハンマーを押し込み、御織に右腕を伸ばし……真っ直ぐに拳銃を向けた。

 そして、再び声を発す。


「今度こそぶち殺してやらァ、このクソ女がァ」


 重く、鈍い声だった。

 掠れかけたその声はやけに大きく響き、空気を揺らす。その声からピリピリとした殺気を感じ取り、黎翔は少し慄いてしまう。

 恨みと怒りに満ちたその言葉を聞いた、御織の反応は……


「にははっ、ウケる」


 あまりに、軽薄なものだった。




──────────────────

蒼井黎翔 ID: 137438691328

Lv.17

POW:1557+50 DEX:1232 DEF:1068

INT:0 MP:0 RES:0  Total:3858


職業:狩猟者ハンター 階級:特異

スキル:『狩人の心得』パッシブ

『狩猟者の勘』アクティブ化 3600s

『野性』パッシブ

『獣殺一閃』発動可能


ステータス補正:物理特化

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