第八章 閑話休題 ノワールのひとりごと
【閑話休題 ノワール】
私の名前はノワールと申します。
我が主、ヴェル様の忠実な部下として常にお側におります悪魔でございます。
普段はコウモリの姿で、長年ヴェル様と旅をしておりました。
最近、我が主は人間のミント様とご結婚されました。
お2人とも初恋だったようで、上手くいくまで多少やきもきいたしましたが、無事収まるべき場所に収まったようでございます。
その後もヴェル様とミント様は大変仲睦まじく、私は少し離れた場所からお2人を護衛することにいたしました。
…いささか刺激が強すぎたもので。
諸事情により、お2人は新婚旅行に行かれることになりました。もちろん、私もお2人の邪魔にならない距離で護衛としてついて行きました。
様々なトラブルに見舞われた新婚旅行でございましたが、途中リックとロンという魔法使いが部下になり、ヴェルさまの命により、私が2人の教育係になりました。
「まだまだですよ!攻撃魔法連射あと50回!」
と私が指示いたしますと、
「えー!もう疲れたよー!もう500回もやったよう。」
「はぁ…はぁ…マジかよ。元師匠より厳しいって!」
と、ロンとリックが口々に文句を言っております。
こんなことでは、また何かのきっかけで銀の魔法使いが討伐にきたら、ただの足手纏いにしかなりません。
私は心を鬼にして2人を鍛えておりました。
その甲斐あってか数週間後には、見違えるように魔法が上達し、挫けぬ心も会得した様でございます。
私が鍛えていた間、いつも気絶するように眠る2人に、優しいミント様が滋養強壮の薬湯を飲ませていたようで、2人はミント様を「神!!」と呼んで慕うようになっておりました。
私のことは「悪魔!!!」と言っておりましたが、私は元々悪魔でございますよ。