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第十章 硝子の城へ行こう!

【硝子の城へ行こう!  ヴェル】


 私、ヴェルは少し反省していた。

 私とミントは、私が昔、魔法で硝子の城に変えて観光地にしてしまった生家を見に行くことになったのだが、急に行くと決めたことで、調薬の仕事が一気に増え、ミントに大きな負担をかけてしまった。


 現在、馬車のでもミントは私の膝に頭を乗せてぐっすり眠っている。

 いつもはつやつやな肌も、疲れですこしくすんで、目の下にはくっきりと隈が刻まれていた。


「ごめんね、ミント。」

 小さく言いながら、優しくミントの頭を撫でる。

 ミントは元々、のんびりした村でのんびりと薬屋をしているどこかふわふわした青年だった。

 私に会ってから、バタバタの連続でのんびり薬屋さんライフを送れていない。

 よし!この旅が終わったら、今度こそのんびり薬屋さんライフを送ってもらうぞ!と誓うヴェルだった。


 馬車で丸1日かけて夜が明けた頃、やっと私たちは硝子の城に到着した。

 相変わらず硝子の城は大きく、朝日に煌めいていた。

 この輝く硝子の城は、魔法で作り上げた硝子である故に、強度も耐久性も十分で、作ってから100年近く経った今も、変わらない姿と美しさを保っている。


 しかし、硝子なので城の中で生活をすると外に丸見えになってしまう。

 だから、外から見えても問題ない観光地にしたという訳だ。

 庭園には『祝福の奇跡』と銘打った棺があり、棺に横になって目を閉じて、愛するものから口付けを受けると光が降り注ぎ目が覚めるという仕掛けにしてある。


 このように我ながら力作なのだが、屋敷を硝子に変えた時のノワールの怒りは凄まじく、代わりの屋敷を建てた後、しばらく魔法禁止を言い渡されていたほどだ。


 そんなこの硝子の城をミントは気に入ってくれるだろうか。


「着いたよ。おはようミント。」

「…おはよう、ヴェル。」

 眠そうに目を擦るミントの乱れた髪を撫でつけると、くすぐったそうにミントが笑う。

「くすぐったいよ、ヴェル。でもありがとう。」

 途中、宿がある街を通らないため、馬車の中で夜を明かしてしまったので、ミントは少し疲れてしまっているようだ。


 ミントは馬車から降りると、先ほどの『祝福の奇跡』の棺を見つけ、

「あー、ベッドがあるー!」と言ってふらふらと歩いていき、棺の中に入ると眠ってしまった。

 寝ぼけるにもほどがあると思いながら、私はミントのあとをついて行った。


 硝子の棺で眠るミントが美しく、そして気持ちよさそうなので、しばらく眠ってもらうことにした。これで少しは疲れが取れるといいんだけど…。


「ヴェル様、ミント様はなぜ棺で眠っていらっしゃるのですか?」

 御者を務めてくれていたノワールがやってきて、驚いたように言った。

「…ミントだからじゃないかな?」

 と、私苦笑いしながら言うと、

「そうでございますね。まさに『ミント様だから』でございますね。納得致しました。

 ヴェル様は、いかがなさいますか?お2人で眠るには棺は狭いかと思いますが…。」

「さすがに、無理だよね。私は綺麗なミントの寝顔を見ているだけで楽しいから大丈夫。」

「そうでございますか。

 では、私は一足先に城の中の様子を見て参ります。屋敷には先触れを出してありますので、いつ行かれてもお食事とお部屋の準備は整っております。」

 では、と言って、ノワールはコウモリの姿に変幻して硝子の城へと飛び去った。


 2時間くらい経っただろうか。

 近くの石に座ってミントの寝顔を見ていた私だが、そろそろ足が痛くなってきたので、ミントを起こすことにした。

「ミントー!おはよう。起きて?」

 声を掛けてみるも、ミントはぴくりとも動かない。

「ミント!ミントってば!起きて!!」

 肩を揺すってみてもミントは一向に起きる気配がない。

 さすがに不安になった私は、近くにある東屋を魔法で爆発させてみた。

 ガッシャーン!!

 硝子が飛び散り、かなり大きな音がした。

 しかし、ミントが目覚めることはなかった…。

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