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市街地での鷹によるムクドリ等への追い払い効果に関する一考察

作者: よろ研

現在、市街地を中心に、ムクドリ等に対する鷹を使った追い払いが各地で行われています。確かに、ムクドリの群れに対して鷹を飛ばせば驚いて散り散りになって逃げるでしょう。ただ、本来の目的である糞害防止や騒音防止に対してどこまで効果はあるのでしょうか。そのあたりを考察してみました。



タカによるムクドリ等の追い払い


鷹を放つ「放鷹」によってムクドリやカラス等を追い払う行為は全国各地で行われています。イベント要素が強いこともあり、見物人も多く、また、放鷹を業務として実施している業者も数多く存在します。各ニュースサイトを見ても、毎年各地で鷹による追い払いが行われていることがわかり、多くのニュースでは「まいっタカ」「ムクドリ散る」とセンセーショナルに書き立てています。しかしながら、その後の効果判定について詳細に報告したものはほとんど見当たりません。



そもそも「追い払い」で解決する問題か?


ごく当たり前の話ですが、自然の林の中には猛禽類もムクドリもカラスもいます。鷹がいるから林からムクドリがいなくなる、ということはありません。単純に驚いて一時的に避難しているだけで、安全が確認されれば戻ってきます。


結局のところ、餌があるとかねぐらにいいとか、人が多くて天敵が寄り付かないから安全だとかの理由があってムクドリやカラスたちも市街地に移り住んでいるわけですから、その環境が良ければ戻ってくるのは当たり前の話ですので、前述の糞害や騒音を防止するのであれば、かなり頻繁に放鷹して、「住むのに適さない」と認識させなければなりません。また、世代が変われば環境の良い場所に確実に戻ってくるでしょうから、放鷹による追い払い事業は頻繁かつ長期的な対策になってしまうと考えられます。



放鷹以外の追い払い


放鷹は鷹がムクドリ等を捕食しているわけではなく、単に脅かしているだけですので、別に他の手法でもいいわけです。しかしながら、どれも決定打にかけるのが現状です。


例えばねぐらとする街路樹(多くは常緑樹)を強剪定してねぐらに適さなくする、ネットで覆う等がありますが、街路樹という景観目的のものをつぶしてしまいますので本末転倒です。

爆音や光で脅すといった方法もありますが、そもそもムクドリの騒音防止のために爆音で追い払うのは意味がなさそうです。また、ムクドリが戻ってくるのを防ぐため継続して実施する必要がありますので今度は爆音に悩まされそうです。

怪しげなグッズでは「超音波」や「磁力」などで鳥を追い払えるとしているものもありますが、そもそも鳥の可聴域(200~8000Hz)では超音波(20000Hz~)は聞こえませんし、鳥は基本的に磁力で方向を定めていませんので、ほぼ無意味です(可能性としては見慣れないものに警戒しているというのはありますが、慣れれば無効となります)。


まあ、相手も生き物ですので、「サービスのいい場所」には居つきますし、少々の妨害があってもそれを上回るメリットがあれば戻ってくるでしょう。



「追い払い」による周辺への被害


では、追い払われたムクドリたちはどこへ行くのでしょうか。これはすでにいくつかの事例があり、ねぐらとなる街路樹を強剪定してねぐらに適さないようにしたところ、近くの電線やビルの壁に集団で群がっているのが見つかっています。結局移動するだけです。


私の住む市でも市街地で追い払いをやった結果、私の居住地周辺(市街地からはかなり離れています)でムクドリを集団で見かけるようになりましたし(以前は精々2~3羽でした)、この地域ではキジバトしか見かけなかったのですが、多分とばっちりで追い出されたのかドバトを多数見かけるようになりました。挙句の果てには市街地でぬくぬくと暮らしていたドバト達だったのか、トンビに惨殺されたドバトの死骸をちょくちょく見かけました。あまり気持ちの良いものではないです。


結局、「追い払い」は市街地から周辺に押し出しているだけですので、鳥害を拡散している結果に過ぎないという結論です。

行政主体のはずですが、同じ税金を払っているのに市街地だけよくて周辺の被害は無視、ではちょっとなぁという感じです。


ちなみに私の住む市では、行政が「追い払い」をあきらめたのか市街地にムクドリが大挙して戻っていったようです。田舎でパワーアップして里帰りしたわけで、行政の事業っていったい何なんだろうと思ってしまいます。



「鳥害」に対し効果を上げている事例


東京都のカラスに対する事例ですが、平成13年度から始まった捕獲事業で、令和5年度まで(23年間)の累計捕獲数が約243500羽、生息数調査では平成13年度に36416羽だったものが8328羽まで減少し、都庁への苦情・相談件数も平成13年度に比べ92%減少したとされています。開始当初は、冬を越せないような弱い個体が捕獲されるだけで実数は減らないのではとの懸念もあったようですが、単純な捕獲事業でも継続的に長期間実施すれば効果が出ることを示した事例であると思われます。

しかしながら、あくまでも継続的に実施しているからであり、捕獲がなくなれば選択圧が下がって個体数は増加に転じるものと推察されます。



よく学者先生は鳥害対策の講演会の中で、「共存」というのを話されていますが、何をもって共存とするのか明確な答えは出ていないように思います。

市街地から追い払って周辺地域の農作物被害を無視することが共存なのか、ある程度の小コロニーに分裂させて維持することが共存なのか、最適解は未だ見つかっていません。

結局、自然界の生物はその環境のキャパ一杯まで増えてしまいますので、それをキャパ未満に抑えて維持しようとすれば何らかの選択圧をかけ続けないとならないということになりそうです。



結局、追い払いにせよ捕獲にせよ、継続して実施しないことには効果が得られないようです。

行政としては住民からの苦情が減ればそれでいいのかもしれませんが、最近の行政は見た目が派手な施策を実施し、マスコミに取り上げられるのを目標にしているような気がしてなりません。

で、お決まりの文言「この施策は一定の成果が得られた」として唐突に打ち切ってしまう、と。


個人的には、行政職員に「勤務評価制度」を導入した結果、見栄えのいい施策ばかり立案しているのではと思っています。行政の仕事って多分そうじゃないですよね。


行政職員対象の研修では「PDCAサイクルを回せ」「未来を見据えてどうこう」だの小難しい内容を講義されますが、ちゃんと研修内容は活かされているのでしょうか。「検証」「継続」って重要だと思います。やりっぱなしにせず、ウケが悪いからといって切ったりせず、効果を検証しつつきちんと実施してほしいものです。



そういえば、どこぞの党の選対委員長が環境大臣のころにもありましたね。レジ袋とか昆虫食とか。果たしてレジ袋施策で、目標であったプラスチック全体の削減は成ったのでしょうか。

そりゃレジ袋は減るでしょう。ただ、プラスチック全体としてはどうだったのか検証して、ダメな施策なら撤回する勇気も持ってほしいものです。



駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。







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