四話、結果
「そこの背の高い者はこちらに。そこの者は、、」
男は参加者達を二つの集団に分け始めた。
「そこの栗毛の者は、こちらに」
緊張する鈴蘭が振り分けられたのは、遠巻きに見ていた者達と同じ集団だった。部屋の反対側には、娘に加勢していた者達がいる。どういう訳か、怒鳴った娘と怒鳴られた少女はどちらにも分けられなかった。
怒鳴られた少女が鈴蘭の方をじっと見て来る。どうやら、心配してくれているらしい。鈴蘭は感謝の意味も込めて、ニコリと笑ってみせた。
(私は正しいことをしたはず。大丈夫、、)
集団分けが終わり、参加者達も文官達も、男の次の言葉を待った。
「合格者は君達だ」
男が手で示したのは、鈴蘭達の集団だった。
一瞬の沈黙の後、歓声が上がった。
(やった!!でも、喜び過ぎは、あっちの集団に悪いよね、、)
そう思った鈴蘭は「ハイタッチ!」と言って、片手を挙げるだけに留めた。だが、怪訝な顔をされるばかりで反応してもらえない。
そういえば、半の国にハイタッチの文化はない。慌てて手を下ろした。
ふと、男が鈴蘭を凝視しているのに気付く。大きく見開かれた瞳は黄色で、透き通っていた。
(へぇ、珍しい色だな)
鈴蘭が感心したその時、、
「試験だなんて、知らされてませんでした!」
そう言い募ったのは、先程鈴蘭を指差した娘だった。あちらの集団全員が娘に賛同する。
それに対し、男は説明した。
「試験かどうかで、行動を変えない者を女官にしたいと、わた、、コホンッ」
咳払いの後、相手の目をスッと見据えて続けた。
「皇帝陛下は思われている」
言い募った娘の顔が、急に蒼白になった。
「黄色…!!」
そう口にすると、ペコリと頭を下げて部屋を飛び出した。それを聞いた者達の反応は二通りだった。
男の顔をじっと見てから、顔色を失う。または鈴蘭のように首を傾げる。あちらの集団は前者で、急に大人しくなった。
(半の国で最も尊い存在の考えを聞いて、畏れ多くなったのかな?)
あちらの集団が案内されて、来た道を戻って行き、いつの間にか男の姿も消えていた。
その後、合格者達は文官達の指示に従い、紙に名前を書く。文字を書けない者達は、文官達に代筆してもらった。
(女官試験が読み書きとかじゃなくて良かったな)
名前を代筆してもらった鈴蘭は思った。前世はそれなりに勉強していた鈴蘭だが、今世では教育を受けるためのお金なんて家にない。なので、半の国の文字を読むことも書くこともできない。
(帝は何を思って、試験方法を決めたのかな?)
「「あの、ごめんなさい」」
「?」
鈴蘭に声を掛けたのは、怒鳴った娘と怒鳴られた少女だった。
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