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プロローグ
チチチ……。
子鳥のさえずりを聞いて、疎明裕二は重い瞼をゆっくりと開けた。
――そうか、今は朝なのか。
格子状に並べられたタイルの天井。病的に白い。
視線を左にやる。枯れ枝に数枚の葉がヒラヒラと揺れている。ヒュオォ……、なんて音がした。
その内に嵌められた白い窓には、少量の埃がかぶっていた。
コツ、コツという音が近づいてくる。それは不響和音となって、やがて病室のドアが開いた。
「やあ、ニート君。まだ起きてないかな? それともお目覚め?」
失礼な男の声だった。
こちらが起きていることに気付くと、あ、起きてんじゃん。おはおはー。なんて、軽い挨拶をしてきた。
「どーお、調子は。まだ痛むだろーけど」
焦げ茶色の瞳がやさしくこちらを覗く。
「前よりは……いい、です。」
「そ。んで? 名前の方は決まったの」
「……はい。決まりました」
「染井、由自にします。」