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3話 美少女の涙は見過ごせない

 1週間が経過した。


「せいやああぁっ!!!」


「ぎいいいぃっ!!」


 俺の『葉切』を受け、トレントが倒れ込む。


「ふう。今日も順調っと。それにしても、狩りが楽になったなぁ。さあ、魔石を回収っと。死体を放置せざるを得ないのはもったいないが、仕方ないよなあ」


 俺は今日の狩りを終え、冒険者ギルドへと戻る。


「ふざけてんじゃねえぞ! ああ!?」


「ひっ!? す、すいません……」


「謝って済む問題じゃねえだろうが! お前がどうしてもって言うから、俺たちのCランクパーティに入れてやったんだぞ! それを何だ!? 役に立たないどころか俺たちの邪魔ばかりしやがって!」


「本当に申し訳ありません……」


「もういい! 有り金全部置いて出ていけ!」


「そ、それは……勘弁してください……。明日生きるためのお金なんです……。これがないと、私は……」


「御大層な剣があるじゃねえか! 本来それは俺たちCランク冒険者でも手が出ないほどの高級品なんだぜ? Eランクのお前には釣り合ってねえ! それを売って金を作ればいいだろうが!」


「そ、それだけは……。私の命と同じぐらい大切なものなのです……。どうか、お許しください……」


 少女が泣きながら懇願する。


「ちっ、こうなりゃ力ずくで……!」


「そこまでにしてもらおうか」


「ああん!? なんだテメエは!?」


「通りすがりの冒険者だ。恫喝はよくないな。まずは冷静になろうぜ」


「うるせえ! 部外者は引っ込んでやがれ!」


「そうはいかない。美少女の涙は見過ごせないからな」


「ちっ! やろうってのか!?」


「落ち着け。聞いたところ、その娘があんたに迷惑を掛けたみたいだな。何があった?」


「こいつが魔獣にビビって陣形を崩しやがったんだよ。パーティメンバーに怪我人が出た。治療費と諸々で、金貨2枚は貰わねえと納得できん!」


「金貨2枚か……」


 成人男性が1~2か月生活できるぐらいの金額だな。

 パーティメンバーに怪我人が出たなら、その治療費と逸失利益でそれぐらいにはなるか。


「部外者のお前が払えるような額じゃねえだろ? そいつの剣を没収して売り払うから、邪魔してくれるな」


「ひいぃっ!! た、助けてぇ……」


「ふむ。これでいいか?」


「なっ!? き、金貨3枚だとぉっ!?」


「ああ。2枚分の損失が出たんだろ? 俺が立て替える。1枚はサービスさ」


 トレント狩りでかなり潤っているし、これぐらいは全く問題ない。


「お、おう。本当にいいのか?」


「問題ない。さ、この子が怖がっている。早く立ち去ってくれないか?」


「あ、ああ。じゃあな。嬢ちゃんも、怖がらせて悪かったな。怪我人の件はこれで水に流すから、そっちも忘れてくれ」


 男はそう言って去っていった。

 残されたのは、俺と少女の2人。


「じゃ、俺も行くから……」


「ま、待ってください! あなたは私の恩人です! ぜひお礼をさせてください!!」


 少女が目を輝かせながら、ぐいっと詰め寄ってきたのだった。

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