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03【変身】


「……?」


 しばらく目を瞑っていたものの、来るはずであろう衝撃が全然来る気配がない事に違和感を覚える。


「え?」


 恐る恐る目を開ければ、どういう事だろうか。俺の周りを氷のようなものが囲んでいた。


「冷たっ」


 これ氷で間違いなさそうだ。氷で出来た壁のようなもので囲まれている……しかも凄い透明度だ。外がはっきりを見えるくらい透明なのだ。さっきのゾウの姿をしたアンノウンが見える。


 この氷の壁? を壊そうとしているのか、何度もこの壁に鼻を叩きつけているが俺の居る場所には振動すら来ない。音は少し聞こえるのだが。


「じゃなくて……なんだこれ!?」


 いや助かったのは助かったのだが、状況が理解できない。こんな事を出来そうなのは魔法少女くらいだろうが、透明の壁越しに外を見ても魔法少女らしき姿は見えない。


「え? え?」


 更に驚きが続く。

 それは、今度は俺自身の身体が青白く光っているからだ。氷が反射しているのかと思えばそれも違うし、仮に反射しても青白くなるものか怪しいところだ。


「そこのあなた!」

「へ?」


 困惑している所に、更に聞き覚えのない声が聞こえる。俺に声をかけているようだが……。


「……妖精? 精霊?」


 声のした方向を見ると、そこのは手のひらに乗るくらいのサイズの女の子? が見えたのである。ただの女の子ではなく、背中には透明な羽のようなものがある。それこそ、さっき俺が呟いた妖精とか精霊のようなものだ。


「うーん。どっちも合ってるけどあってないかなあ。ってそんな事より、今のうちに力を使って!」

「へ?」

「とにかく、その光に身を委ねて!」

「お、おう?」


 この氷の壁を作ったのはこの子なのだろうか? まあ、それは今は良い。取り敢えず、この状況……今は氷の壁のお陰でアンノウンに襲われずに済んでいるが、いつまで持つか怪しい。


 ここは言われるままに……と言っても良く分からないけど。


「……」


 光に身を委ねろと言われても。

 でもやれそうなことはやっておく。目を瞑り、深呼吸をして心を落ち着かせる。未だに光り続けている青白い光に意識を集中させる。するとどうだろうか……その後は何かが身体の中に入ってくる感覚に襲われるが、嫌なものではない。


 そんな状態の中、一つのキーワードが頭の中に思い浮かんでくる。


「――チェンジ”フリーズ・フルール”」


 そのキーワードを紡げば次に来たのは謎の浮遊感。空を飛んでいるようにも感じるし、水の中に潜って浮いているようにも感じられる。良く分からない空間に浮いていると言った感じだろうか。

 謎の浮遊感を感じている間は何故か自分の身体を自分の意思で動かせない。それは少し怖いと感じるが、大丈夫という謎の自信がある。 


 しばらく……体感で1分くらいだろうか? そのくらいの間、謎の浮遊感を感じていると気が付けば浮遊感は消え、自分の意思で身体を動かせるようになっていた。


「……」

「成功ね」


 妖精のような少女の口からそんな言葉が零れ、俺は目を開ける。


「って、何じゃこりゃあ!?」


 目を開けてまず見えたのが、自分の今着ている服だった。


「え? え?」

「まあ普通の反応よね。私も予想外だったけど」


 今起きていることに頭が追い付けない。

 服を着ている……それは別におかしくないのだが、そうじゃない。着ている服が問題である。一言で言ってしまうならひらひらのふりふりな真っ白なワンピースを着ているのだ。


 白一色の長袖のワンピース。袖はラッパ状と言えば良いのか……取り敢えず、先端部分の方が袖の面積が広い感じだ。そしてふんだんにあしらわれたフリル。

 ワンピースの胸元には水色の雪の結晶を模したような装飾品? が付いている。取れそうな感じがするけど、軽く引っ張ってみてもびくともしないので、簡単には取れないのかな? いや取れたら取れたでちょっとそれは嫌だが。


 あとなんか自分の今着ているワンピースの後ろ……全ては見れないが、何か天使の羽のようなものが生えているような……首を反対側に回して再び後ろを見る。

 ……二対四枚、で良いのかな? どうやら背中に羽があるみたいだ。しかも虫とか鳥とかの羽ではなく、神話とかで出てくるような白い天使の羽だ。


 ……これで頭にリングとかあったら笑っちゃうかもしれない。鏡がないので見れないんだけど。


 でだ。そんな真っ白なワンピースのスカートの丈は、膝にかかるくらいだ。

 足には白いニーハイを履いており、靴はと言えば、これまた真っ白で短めの襟付きブーツを履いている。それだけではなく、ブーツには天使の羽を模したような羽が付いている。

 そして左手に握っているのが、先端部分に雪の結晶みたいな装飾品の付いている、今の自分の身長の半分くらいの長さの杖のような物。そんな雪の結晶の装飾品の左右には、ブーツでも見たような天使の羽のようなものが伸びている。


 胸元の水色の雪の結晶みたいな装飾品以外は、全部は真っ白。それもう白一色であり、純白と言っても過言ではない。何となく、頭にも何かあるような感覚がするので恐らくアクセサリーみたいなものが髪に付いている可能性は高い。

 それがさっき言ったような天使のリングなのか何なのかは分からないが……でも仮にリングがあったとして、あれって浮いているし重さと感じるのかねえ?


 まあいい。


「……まじかよ。この髪も俺のなのか?」


 服にも驚いたが、それ以外にも今の自分の髪についても驚く。鏡がないので全部を見る事は出来ないが、髪色は今着ている服と同化しているような白銀のものに変わってしまっている。

 髪の長さも結構長くなっていると思う。肩にかかるくらいの長さはあるのかな? 後微妙に左右にも重量感があるので、ツインテールだかなんだかになっているかもしれない。


「……」


 いや。

 後ろ髪がある状態でしかも左右にあるって言うのはツインテールというよりかはツーサイドアップっていえば良いか? 若干放心状態で自分の髪を後ろまで触ってみる。


「あー、うん」


 うん。多分、ツインテールだかツーサイドアップだかになっている気がする。


「驚くのは無理ないけど、今はアンノウンが先でしょ。氷の壁ももう持たないわ」

「え? あ、ひびが入ってる……確かに持ちそうにないね」

「あと悪い知らせよ。もう一体、アンノウンがこっちに来ているわ」

「!」


 まじかよ。


「あーもう! 魔法少女はどうしたんだか……いや、今はそんな事言っている場合じゃないか」


 自分の元の声の面影のない高く可愛らしい声が響く。

 ……さっきちょっと確認したけど、相棒も居なくなってしまっていたので、間違いなく今の俺は性別自体が変わってしまっている。それ以外にも身長も低くなっていると思う。さっきから目線が低いし……。


 ただでさえ、身長はそこまで高くないのに低くなるとか悲しい。


「あとで説明するから今はアンノウンを」

「そうだな……今ここでなんやかんやしてても意味がないか」


 アンノウンはもう目の前に居るのだ。

 もう一体の方は知らないが、こっちに向かってきているらしいので俺は二体を相手するしかないのか。


 ……ああ分かってるさ。

 今俺に起きているこの現象……恐らく、いや間違いなく俺は”魔法少女”となっている。男のはずなのに何故か魔法少女になっている。


 アンノウンに対抗できる力を持つ少女たち。それが魔法少女。

 一応弱いアンノウンならば、自衛隊とかの兵器も効くみたいだけど、効果はいまいちみたいだ。効くと言っても精々レベル3が限界だ。レベル3は効くのは効くが、結構弱いみたいだ。なので実質、兵器が効くのはレベル2以下のアンノウンだろうか。



「私の合図で思いっきり空に飛んで」

「了解」


 それだけ言って俺は、その少女の合図を静かに待つのだった。





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