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カオス

アリとキリギリスと作者

作者: 寿々喜 節句

アリとキリギリスと作者のお話。

 太陽がさんさんと照り、じりじりと肌を焼き、汗がじわっと出て、冷たい飲み物が一段と美味しく感じる季節。


 そう、夏です。


 ローマ字で書くと“NATSU”ですが、キーボード入力のときは“S”が不要なので、気をつけましょう。


 英語では“サマー”と言います。理由とかは自分で調べてください。


 そんな夏にアリさんたちは、せっせと働いています。


 漢字で書くと“蟻”と書きますが、パッと見た感じ、漢字表記だと硬く見えるため、カタカナ表記にしています。


 これは童話なので、できるだけ柔らかく感じられるようにしたいなという意思を持っています。


 それにこの後出てくるキリギリスが漢字表記だとあまりにもわからないので、カタカナ表記にするのですが、それを合わせている、という面もあります。


 知っています? キリギリスの漢字。“螽斯”ですよ? 読めないって。



「作者うるせーな。こっちは忙しいんだよ」



 アリさんたちがパンのかけらを運びながら私に悪態をついています。



「みんなー。頑張るぞー」



 力を合わせて一生懸命パンのかけらを巣穴に運び入れています。


 アリさんはかなりの数いますから、人海戦術ですね。いえ、蟻海戦術ですね。


 この場合は四字熟語になるので“アリ”というカタカナ表記ではなく、“蟻”という漢字表記にしました。


 一応、カタカナ表記バージョンも記述してみますが、“アリ海戦術”だとやはり読みにくいですね。


 アリ海というオホーツク海やベーリング海といった海域のようにも見えてしまいますね。やはり漢字表記が妥当でしょう。



「やーいアリさんや、こんな暑いのに何してるんだ?」



 キリギリスさんがアリさんに声をかけます。



「いやいや、作者の声気にならないの? それを無視してこっちに話しかける?」



 アリさんは忙しさのあまり余裕がないようです。



「いいから質問に答えろよ」



 けんか腰のアリさんにキリギリスさんもカチンときます。



「は? うるせーな。冬支度だよ。冬支度。忙しいんだから話しかけんなよ」


「バカじゃねーの? 暑い中何してんの、まじで。熱中症アラート出てるから、今日」


「え、うそ? 今日アラート出てんの?」


「ニュース見ろよばか。死ぬぞ」


「まじか。悪い。ありがとう。一旦手止めるわ」



 アリさんは「休憩」と全体に通達すると、水分補給を始めました。



「まじサンキューな」


「気にすんな」


「ってか何してたの?」


「俺? バイオリン弾いてた」


「え? 弾けんの?」


「うん」


「すげーじゃん」


「いやいや、趣味な。趣味だから」


「でもすげーよ」



 確かにバイオリンを弾けるってすごいですよね。


 なかなか周りにいません。



「ほら、作者も言ってるよ」


「なんか照れるんだけど」



 そんなこんなで、夕方になり、日が落ち始めた頃には、アリさんとキリギリスさんは打ち解け、心の距離がぐっと縮まったのでした。



「じゃあちょっと再開するわ」


「おう、頑張れよ」


「お前も練習頑張れ」


「上手くなったら聴かせてやるよ」


「楽しみにしてる」



 アリさんとキリギリスさんはそれぞれ持ち場に戻るのでした。




  □◇■◆




 太陽の日照時間が減り、気温が下がり、吐く息が白くなる季節。


 そう、冬です。


 ローマ字表記の場合“FUYU”でも“HUYU”でもどちらでもいいらしいですが、ヘボン式の“FUYU”が一般的ではないでしょうか?


 ちなみに私はキーボード入力のときは“H”で入力しています。


 今日はクリスマスパーティです。


 プレゼント交換も終え、今度はキリギリスさんの演奏の時間です。


 曲はもちろん情熱大陸。


 脳内で葉加瀬太郎作曲の情熱大陸の曲を再生して、窪田等のナレーション風に次の文を読んでください。



『二〇二〇年、冬。我々情熱大陸スタッフは、アリさんたちの巣穴に入った。そこで見たのは、夏の間に用意していた備蓄だった。なぜ彼らはこんなにも用意周到なのか。なぜ彼らはこんなにも働くのか。本人たちに聞くと「毎年のことですから」と決して特別なことではないという。彼らに密着し、その秘密を覗いてみた』



 いかがでしたか? それっぽくなりましたか?


 これを書くために情熱大陸のユーチューブ動画数本に目を通しました。そしたらそっちのほうが気になっちゃって、これを書く手が止まってしまいたが、何とか戻ってこられました。



「おい、作者! 早く話進めろよ」



 酔っぱらったアリさんが私に悪絡みしてきます。


 それじゃあ、話を進めて……。


 楽しい楽しいクリスマスパーティーも終わりの時間となってしまいました。



「なんだよ。もう終わりかよ」



 アリさんが進めろと言ったのに、なんだか面倒な酔っぱらいです。



「今日は誘ってくれてありがとう」


「いやいや、まじで演奏よかったよ」


「ほんと? 練習してよかった」


「また聴かせてよ。ってか泊まっちゃえば? 冬寒いっしょ」


「寒いね」


「ほら、それに夏にめっちゃ練習してて冬支度中途半端なんじゃない? 俺見てたよ、練習してるとこ」


「え、まじで? え、恥ず……」


「いいじゃんいいじゃん。泊まっちゃえって」


「いいの? なんかごめんね。それじゃあお言葉に甘えて」


「その代わりもっと聴かせろよな」


「それくらいお安い御用だぜ」



 はい、よかったですね。


 アリさんの巣穴は温かいのでしょうか? キリギリスさんのお家はどこにあるのでしょうか?


 そういったことはよく知りません。


 ていうか、アリさんの巣穴にキリギリスさんが入れるのでしょうか?


 まあ童話なので、そこらへんは無視してください。


 そもそもの話をしてしまうと、まず二種間での会話は不能ですし、キリギリスがバイオリンっていうのもどうなのでしょうか。


 ただこういう常識を越えた、突拍子もない発想が童話の面白いところなので、そもそも論で考えるより、楽しみポイントとしてにこっとするのがちょうどいいのかもしれません。


 童話に作者が登場するというのことも、そういったことです。


 つまり、それでいいのです。


 そういうことなのです。





 おしまい。

え、どういうこと?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者が童話に入っていくスタイルは斬新すぎるww 面白かったです!笑
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