第7話 富永さんの秘密
第7話を読みに来ていただきありがとうございます。
「たく、金がなくて困るくらいなら最初から勝負なんて挑むなよ」
英一が最下位となりショックを受け、真二の中に引きこもってしまった。
といってもまあ、俺が勝手に出てきただけなんだけど、とりあえずバイト先でも探しといてやるか。いくら俺でも勝負自体をなかったことには出来ないからそれくらいしか出来ないし。
「あ、おーい! 英一君」
放課後、これからのことについて考え事をしていると後ろから富永が駆け寄ってきた。
「ん? あー、富永さんどうしたの?」
「いやね、流石に一人で全額負担はかわいそうだから、私も出してあげてもいいかなーなんて」
彼女にそのつもりはないだろうが、なんか凄い上から目線で言われた気がする……。
「いや、ちゃんとバイトして貯めるから問題ないよ」
どちらにせよ、流石にそれは申し訳ないから断っておく。
「そう? でもそれって結構大変じゃない?」
まあ、大変なのは間違いないだろうけど、そこは英一にバイトを頑張ってもらうほかない。何より勝手にここで富永さんに協力を仰いだら英一に怒られる。
「負けたんだから仕方ないよ。それに文句は一切受け付けないというのもルールだったしね」
「へー、英一君て結構頼もしいところあるんだね」
いまいちこの子のことがわからない。いったい何の用事で近づいたんだろうか? どう考えても経費を負担してくれるってのは口実で他の用事があるはずだ。
そんなの断ることくらい彼女も理解しているはずだし。
「ねえ、富永さん?」
「ん? 何?」
考えていても仕方がないので、思い切って聞いてみよう。
「ほかに何か僕に用事があるんじゃない?」
「どうしてそう思うの?」
彼女は怪訝そうな表情を見せて答える。
あれ? 俺の考えすぎか?
「だって、そのことの為だけにわざわざ追いかけてきたってのはちょっと変だよ」
「そうかな? 私はただ英一君ともっと仲良くなりたいから追いかけてきただけだけど?」
そのとき真二は突然辺りをキョロキョロと見回す。
「どうしたの?」
突然辺りをキョロキョロしたからか不思議そうな様子で富永さんは尋ねた。
ふむ、周りには誰もいない。いい機会だし、そろそろしっかり話しておくか。
「それは、君自身が? それとももう一人の君がかい?」
一瞬、彼女の眉毛がピクリと動いたのを俺は見逃さなかった。
「何のことかな?」
「君、二重人格だろ? 明るい性格の今の君とその真逆な性格の君。二人の富永さんがいるよね?」
そう、彼女が一人になったときに何度か暗い性格の彼女に俺も英一も会っている。普通の人なら疑問に思うくらいかもしれないが俺たちにはすぐにわかるさ。何せ、俺らも二重人格なんだからな。
「へー、ばれてたんだ」
彼女は明らかな苦笑いを浮かべている。
恐らくばれてない、完璧に演じていると思っていたのに、見破られたから驚いているのだろう。
「まあね」
「ねえ、この話は日を改めてしよう。多分今から話すとかなり遅くなっちゃう」
まあそりゃそうだ、この話題が数分の立ち話で終わるわけがない。
「オーケーだ、じゃあ今度の日曜日にでも喫茶店で話さないかい? 恐らく君にも俺に話があるんだろ?」
「へー、もう隠す気ないんだ……」
彼女が聞こえるか聞こえないかくらいの小声でそう呟いた。
「ん? 何か言った?」
「何でもないわ。今週の日曜日ね? いいわよ、じゃあ詳しい場所とかはあとで連絡するわ」
第7話を読んでくださりありあとうございました。
ここまでは序章でここからいよいよ物語が動き始めますのでご期待ください。