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私の中に私たちはいる  作者: µ(ミュー)
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第4話 放課後の引継ぎ

第4話を読みに来ていただきありがとうございます。ゆっくりしていってください。

 その後何事もなく放課後を迎える。


「なあ英一、ちょっと寄り道していこうぜ」


 中学の時から決まって放課後になると信也が遊びに誘ってくる。


「悪い、今日は用事があるんだ」

「そっか、じゃあまた明日な」


 明日は付き合えよと言わんばかりの表情を浮かべて信也は言う。


「おう」


 普通なら誘いを断ったりはしない。だけど一日中人格が入れ替わっているときはやることが結構あるから早く家に帰らないといけない。




「ただいま」

「お帰り。真二~、」


 今返事をしたのは俺たちの祖母だ。両親は幼い頃まだ佐々岡英一が一人の人格しかなかったとき、交通事故で亡くしている。

 そのことが原因となって英一と真二、二つの人格が誕生した。そして身内である祖母はその事情を知っている。普段は二重人格を隠すために俺は英一のふりをしているのだが、少しの話し方や素振りの違いで祖母には今出ているのがどちらなのかわかるらしい。


「どうだい? 英一は少し落ち着いたかい?」

「問題ないよ、本来一日中出ている必要もなかったけど念のために俺が出ていただけだし。今から引き継ぎしてくるよ」


 引継ぎとは言っているものの、そんな大げさなものではない。単に俺が出ている間の記憶が英一にはないから、その日あったことを細かくまとめて記録し、英一に戻った時にそれを読んでもらうだけだ。




「よし、記録も終わったしそろそろ戻るか」


「・・・・・・」


「ん? ああ、入れ替わっていたのか」


 気が付くと、真二から英一へと入れ替わっていた。真二になっているときの記憶が僕にはないから、戻った瞬間混乱することが度々ある。例えるなら長い眠りから目が覚めた感覚だ。


「えっと、今何日の何時なんだろう?」


 そう言いながらスマホで日付と時刻を確認する。


「え? 丸一日経ってるじゃん」

「長時間入れ替わっていると、その日あったことの連絡事項が多くて読むの大変なんだよな……」



 信也からサッカー部の見学を誘われたが断った、特に嫌な顔はされていない。

 帰る前に信也がいつも通り遊びに誘ってきたが行けなかった、明日は付き合ってやってほしい。

・・・・・・・・・・

 帰宅後祖母が真一は大丈夫かと聞かれた、これを読み終わった後で、少し顔を出してほしい。


「なるほど、今日一日どのようなことがあったのかは大体わかった」


 連絡ノートを閉じ、英一は勉強机へと向かった。




「終わったー!」


 今日の授業の内容全部目を通すのに結局三時間ほどかかってしまった……。

 いつも入れ替わる度、何があったかこまめにメモしてくれているし、授業があったらその内容を分かりやすくまとめてくれている。もうありがたさを超えて申し訳なくなってくる。

 何かお礼をしたいけど僕自身の意思で真二と入れ替わることはできないしな。

 以前、僕の意志で入れ替われないか試してみたことがある。けれど代わってほしいと心で願っても理由がなければ入れ替わることはできなかった。


「うーん、まあ僕自身がしっかりすることが一番のお礼になるのかな……」

「よし、余計な手間を煩わせないように明日からもがんばろっと」


 僕は気合を入れなおし、明日からまた頑張る決意をした。

 その後祖母と夕食をとった後、シャワーを浴びて少し早かったが何をするにも微妙な時間だったのでそのまま寝ることにした。



第4話を読んでいただきありがとうございました。

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