第3話 学校での日常
第3話を読みにきていただきありがとうございます。ゆっくり読んでいってください。
「あのやろー、めちゃくちゃ引きずりまわしやがって」
昨日あれから信也のやつにかなり連れまわされたので疲れ切った英一に代わって俺、真二が出てきている。
一日経ったから、もう戻っても問題はない。だけど念の為今日一日は俺があいつに代わって授業を受けたりしてやるつもりだ。
それからしばらく歩いていると、前方から富永が歩いてくるのが見えた。
「あれは富永さんだな。一応挨拶しておくか」
俺は基本、主人格をサポートする人格にすぎないから友達作りとかはやらない。だけど、戻った後に主人格の英一が嫌われない程度にはふるまいをしている。
「富永さんおはよう」
「ふぇ!? お、おはよう」
???
明らかに富永の様子がおかしい。
何をそんなに緊張しているんだろう?
「どうかした? そういえば昨日の朝話しかけた時もなんか挙動不審だったよね?」
厳密には昨日話しかけたのは俺ではなく英一の方だ。だが俺らが二重人格ということは誰にも言っておらず、普段は英一のふりをしているので今はそのていで話している。
「な、何でもないの。あの、私急いでいるから先に行くね」
「う、うん」
富永は早口でそう言い切ると同時に足早に去っていった。
「いったい何なんだ?」
うーん……。
外にいると落ち着かない性格なのだろうか。それとも……。
「おっといけない、あまり考え込んでしまうと遅刻してしまうな」
俺も少し早足で学校へと向かった。
教室に到着し、周りのクラスメイトと挨拶をかわす。
一瞬富永さんが視界に入ったが、特に変わった様子もなくいつも通りだ。
やはり外にいるときだけ落ち着かない様子になるのだろうか。
「なー、英一聞いてるのか?」
信也が不満そうにそう言っている。
「あ、ごめん。ちょっと考え事してて」
いけない、富永のことを気にしすぎて、他をおろそかにするのもあまりにも良くないな。特に俺が出ている間に、人間関係に亀裂が入ることにでもなったら、英一の人格に戻った後いろいろと面倒だし。
「まあいいけどよ、それより英一はどのクラブに入るかもう決めたのか?」
「クラブか、まだ考えていないな」
実際少しは考えている。しかし俺はあくまで佐々岡英一の副人格にすぎないから英一が入りたいクラブがあるならそこに入る。けれど本人はまだ決めていないようなので、ここで俺が勝手に決めたりするつもりはない。
「だったらさ、今日の放課後サッカー部の練習見に行ってみようぜ!」
信也はサッカーが好きなのは俺も知っている。しかしまた、英一はあまり好きでないことも同様に知っているからここは断っておこう。
「サッカーか、あまり興味ないんだよね」
「そっか、じゃあ仕方ねえな。他の奴誘ってみるか」
「悪い、見る分には普通に好きなんだけど」
「見るのと実際にやるのは全然違うからな、仕方ねえさ」
そう言い残し、また別のクラスメイトに声をかけに行ってしまった。
その途中で、信也が眉尻を下げたのが見えた。
恐らく英一と同じ部活に入りたかったのだろう。少し申し訳ないことをしてしまった。けれど、だからといって勝手に俺が決めるわけにもいかないので、そのまま彼を見送った。
第3話を読んでくださりありがとうございました。