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私の中に私たちはいる  作者: µ(ミュー)
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第2話 クラスメイト

私の中に私はいるの第2話を読みに来ていただきありがとうございます。今日から毎日18時頃に投稿していく予定なのでよろしくお願いします。

 教室に入ったらまず隣の席の人に話しかけようと決めていた。高校生活の最初で大事なのは第一に友達作り。ここでつまずくと三年間地獄と化すのでミスは許されない。

 隣に声をかけようと思ったその時、僕は一瞬目を疑った。そこには今朝の女の子が座っている。

 同じ学校の制服を着ていたからこの高校の生徒だということは分かっていた。けれど、まさか同じ学年で、しかも同じクラスだったとは。

 まずい、さっき声をかけて拒絶されたばかりだから声をかけにくい。しかもよりにもよって隣とは……。

 僕がうだうだと考えていると、意外にも彼女の方から声をかけてきた。


「何難しそうな顔してるの?」


 びっくりした。まさか今朝拒絶されたばかりなのに、彼女から声をかけてくるとは考えてもいなかった。


「えっ? いや、ちょっと考え事してただけで」


 急に話しかけられて驚いたせいで、ぎこちない返答をしてしまった。


「ははーん、さてはさっき私に拒絶されたから声をかけづらいとか考えてたんでしょ」

 

 彼女は悪戯っ子のような表情で笑いながらそう言う。

 そりゃためらうでしょと言い返してやりたかったが、口に出すのはやめておいた。


「そんなことなないよ」

「さては図星ね。まあ気にしなくていいよ、さっきは急に声をかけられてびっくりしただけだから」


 いくらいきなり声をかけられて驚いたからって逃げるか? 驚いたならその場で固まる方がありそうな気もするけど。


「あ、あたし富永彩香とみながあやか、君は?」

「佐々岡英一」

「英一君か、よろしくね!」


 彼女は今朝の反応が嘘かのように馴れ馴れしく話してくる。


「こちらこそよろしく」


 でも、どうやら嫌われていたわけではないようでホッとした。しかし、いくらいきなり声をかけて驚かせたとはいえ、その時の反応と今の対応が違いすぎて少し違和感を覚える。そのことを聞いてみようかと思ったけど、間の悪いことにチャイムが鳴り、先生が教室に入ってきたので結局聞きそびれてしまった。




 この日授業はなく、先生からの連絡などで午前中に学校は終わる。この後どうするかやら部活には何に入るかなど周りからちらほらそのような話題が聞こえてくる。

 さて、僕も何かの部活に入ろうかな……。


「スー……わっ!!」


 !? いきなり背後から大声で叫ばれて体がビクッとなってしまった。


「ははは、わりーわりー」

「ちょ、びっくりさせるなよ」

「ぼーっとしてるお前が悪いんだろ(笑)」


 そう言ってけらけら笑い転げている。

 こいつは荒川信也あらかわしんや、中学からの友達で唯一同じ高校に入学した友達でもある。


「もうやめなよー」


 僕の知らない女性が信也を注意している。


「いいんだよ、こいつは中学からの付き合いで初対面ってわけじゃねーし」

「ああ、そうなのね。あ、初めまして私は九条幸くじょうさち。こいつとは幼馴染やってまーす」


 信也に幼馴染がいたとは初耳だ。中学の時には見かけなかった気がするけど。


「僕は佐々岡英一、確か信也と同じ中学にはいなかったよね?」

「そうそう、こいつがバカすぎて一緒に受けた中学私だけ受かってこいつ落ちやがったのよ」

「誰がバカだ! あの時はちょっと調子が悪かっただけだ」

「へー、まあ私より頭悪いのは事実だけどね!」

「何だと、その受験以外は基本的に俺の方が成績良いだろうが!」

「は? 私の方が勝ってること多いし!」


 二人で何やら言い合いを始めてしまった。これは喧嘩するほど仲がいいっていうあれなんだろう。言い合いの中にもどこかお互いに思いやりというか仲の良さを感じる。

 しばらくこの言い合いは続きそうなので困ったなと思っていると富永さんと目が合った。


「何ジロジロ見ているのよ、いやらしいわね」

「いやらしいってちょっと目が合っただけだよ」

「ふふふ冗談よ、英一君て意外に面白いね」


 そう言って富永さんはニヤニヤしている。どこが面白いんだよと内心僕はムッとした。


「そうそうこいつってからかった後の反応がすげー面白いからやめられないんよ」


 どうやら二人の言い合いが終わったようで信也が割って入ってきた。


「これからこいつをどんどんからかってやろうぜ(笑)」

「それ面白そうかも!」

「ちょ、やめろって」


 このままだと僕がいじられキャラになってしまう……。


「まあ、冗談はさておきせっかく午前中で終わったんだから午後から四人でどっか遊びに行かね?」


 友達と遊ぶのが大好きな信也はどこかに遊びに行きたくてたまらないようだ。普通に授業がある日でも、放課後いろいろなところに遊びに行っていたくらいだし、今日みたいに、午前中で終わる日はなおのこと遊びに行きたくてうずうずしているに違いない。


「いいね、行きましょ。富永さんも来るよね?」


 嬉しそうに「ええ、行くわ」と賛同する富永さん。


「よしけってーい、じゃあどこ行くか決めようぜ」


 流石リーダーシップのある信也だ、こいつがいると物事がいつもスムーズに進む気がする。だけど。


「ちょっと待て、僕はまだ行くとは一言も」

「お前は強制に決まってるだろ? ここで拒否権があるのは俺の知り合いじゃない彩香ちゃんだけさ」

「あーもう、好きにしてくれ」


 相変わらず強引なやつだ。こいつといるとどっと疲れる。


「よーし、てことで改めて楽しい高校生活の始まりだー!」

「おー!」


 信也も他の二人もノリノリでこのグループにいるとますます疲れそうだ。けど、なんだかんだで僕もこのような空気は嫌いではない。高校生活なんて人生で一度きりだし、せっかくなら沢山の思い出作りがしたい。

 僕は結局、このまま遊びに行くのに付き合った。


第2話を読んでくださりありがとうございました。

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