第1話 物語の始まり
この度は「私の中に私はいる」を読みに来てくださりありがとうございます。多くの方が読み終わった後に良かった、感動したと言っていただけるような小説にしていきたいと考えておりますのでどうぞよろしくお願いいたします。
「ねえ、選んで?」
富永明里は真っ直ぐ僕を見つめて、そう言う。
『選ぶ』。たった二文字の簡単な言葉であり、誰でも簡単に行動できるはずのものなのに、僕、佐々岡英一は未だ言葉を返せずにいる。
今思えば、彼女と出会ったのはきっと偶然なんかじゃない。会うべきして会った『運命の相手』なのだ。
それでも僕は選ばなくちゃならない。たとえ、それがどんな結末になったとしても。
***
キーンコーンカーンコーンと近くで八時のチャイムが鳴る。このチャイムが鳴り終わると同時に桜吹雪が起こり、視界が遮られる。
「うわ、前が見えない……」
次第に前が見えるようになっていき、その時一人の女性が視野に入る。
きちんと着こなした制服に、風でなびいている艶やかな黒髪。そしてモデル顔負けのスタイル。そのような美しい彼女を見て僕は一目惚れしてしまった。
「綺麗な人だな~」
あいにく僕はナンパが出来るほどコミュ力のある人間ではないので、そのまま通り過ぎようとする。しかし通り過ぎようとした瞬間、何やら困っているような表情を浮かべていたので声をかけることにした。ナンパとかは僕には出来ないけど、困っている人がいたら出来るだけ助けてあげたいからだ。
「あの、どうかしましたか? お困りなら僕で良ければ手助けしますよ?」
「あ、ああああ、その、ごめんなさい!」
彼女はそう言い残すと、いきなり走って逃げてしまった。
僕ってそんなに怪しく見えるのかな……。
確かに第一印象は綺麗な人だ、こんな人と仲良くなれたらな、とは考えていた。けれど、あのとき彼女を助けようとしたのは心からの善意だった。にもかかわらず、すぐに拒絶されてしまったことから少しショックを受けた。
「・・・・・・」
「おいおい、そんなことで俺を出させるなよ」
俺は佐々岡真二、簡潔に話すと俺たちは解離性人格障害。親しみのある言葉で言えば二重人格ってやつだ。
さっきまで出ていたやつが佐々岡英一で、そいつのもう一人の人格がこの俺、佐々岡真二ってわけだ。
なぜ入れ替わったのかなども説明してやりたいところだが、そろそろ英一が戻ってくるから今回はやめておく。
「・・・・・・」
「あ、またやっちゃったのか……」
僕はいわゆる二重人格というやつらしい。訳あって僕の負の感情、例えば怒りや悲しみなどがコントロールできなくなった時、もう一人の人格の真二が出てきてくれて、僕の代わりに感情をコントロールしてくれるんだ。さっきはいきなり女の子に拒絶されて少しショックを受けちゃったから真二が出てきてしまったってわけだ。
「本当は自分でなんとか出来るといいのにな……」
僕はため息混じりにそう呟いた。
「まあ、こればかりは少しずつ頑張っていくしかないんだけどね」
ぶつぶつと言っている間に教室に着く。僕は今日から高校一年生で、これから新しい高校生活がスタートするのだ。
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