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Routes 3 -アデュラリア-  作者: ひまうさ
二章 身代わり(オーサー視点)
26/59

26#よくある陰謀

ちょっと別視点が混じりますー。

(???視点)


 夜闇に紛れるように王城の庭木の一つがさざめく。目の前には広いテラスの一室があるが、室内で明かりを灯していないため、窺い知ることは出来ない。ただその場所が宰相ベシニエ=デクロワゾーの執務室であるというのは、王城で働く誰もが知っている周知の事実である。


 黒い鳥のような者がひらりとそのテラスに降り立ち、膝を付き、頭を垂れて、臣下の礼を取る。


「女神は南へ、代わりは王子の手元へ落ちました」

 黒い鳥の告げる言葉に、室内からは鋭い舌打ちが帰ってきた。


「王子を消す好機を逃し、ここまで無事に帰したのか。女神の眷属候補のことといい、どこまでも使えぬな」

 ゆっくりと部屋から歩出でた者はこの国の十歳の子供と変わらぬ身長でありながら、深みのある老齢な声をしている。それに対して、黒い鳥は応えないまま、低頭を貫いて微動だにしない。


「それとも流石に女神の系譜に連なるとあっては手も出せぬか」

 庭木の先程からさざめいていた一本から、複数の低い歯軋りが響く。


「あのような」「女神などでは」「裏切り」

 ざわめく否定の声音に、老人は怯える様子もなく鼻を鳴らした。


「どちらにしろ、王子の手元にあっては使えぬ駒。だが、今の女神に従者と賢者が組しようと、天道はここだけよ」

 天道とは女神が女神と認められ、天へと開かれる扉であり、道である。


「扉さえ開かなければ、世界はこのまま我らの手に留まるのだ。幾星霜も世界を捨て置く女神などに、この世界は渡さぬ」

 そうだろう、と呼びかける老人の言葉に、また複数の同意が返される。


「我らは……失うわけにはいかぬ」

 一瞬室内の男が老体に似合わぬ気を発した。それは、おそらく殺気と呼ぶもので、周囲の木々で眠っていたらしい昼の鳥を驚かせ、飛び立たせゆく。続けて、コツ、と老人は静けさに杖を突く音を響かせる。


「この世に女神などいらぬ」

 冴え凍るしゃがれ声が命じる。


「女神に関わる者の全てを消し去れ。その程度のことは主等にでもできよう」

「御意」

 短い返答を残し、黒い鳥はまた飛び立った。闇夜に残る老人は月を見上げる。年月という皺に肌を彩るものの、その瞳はギラリと鋭く、野心に満ちている。男の名はベシニエ・デクロワゾー。この女神神殿を懐に収める国の第一大臣であり、ナルに縁深き者でもある。


「儂への恩を忘れて王子に組するつもりか、ナルサースク」

 低く呻くような老人の声は、憎しみに満ち満ちていた。


>>追記


初稿

(2009/02/17)

(2009/02/20)


改訂。

次の一話ぐらいでこちら側の話は終わりです。

早くディとかロリコン賢者とか書きたい(え

(2012/03/13)


短くなりますが、オーサー視点を次回に移動しました。

(2012/05/03)

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