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006 私のアトリエ

 


 私が錬金術の才能があることを知った両親は、屋敷と言う名のゴツイ城の地下に、私専用の調合室を作ってくれていた。


 4歳児に与えられるものでは無いはずなんだけどな。

 太っ腹な両親ってことでありがたく使わせて貰います!




 商店から届けられた素材を調合室に運んでもらい、早速シャンプー作りを開始。


 そして大体3時間程度でシャンプー、コンディショナー、保湿成分に加え消臭成分まで配合できたボディーソープ、ついでにボディークリームまで完成させた。

 香りも爽やかでやさしい感じにできた。

 納得がいくものを作れたと自負している。


 量はそれぞれ500ミリリットル程度。

 たぶんシャンプーだけ他のものより減りが早くてまたすぐ作る未来が見えなくもないけど。


 それぞれ手洗いで試してみたけどいい感じだった。

 夕方の湯あみの時これを使うようにロティルにお願いする。

 頑張って使い方も説明した。


 疲れたので後はお昼寝だよ。

 4歳児なもんで。



 ◇



 お昼寝から起きたので、早速お風呂をお願いした。

 ワクワク。


 結果、私は物凄い物を作ってしまったかもしれない。


 シャンプーもボディーソープも少ない分量でもとても泡立ちがよく、洗い上がりもさっぱりする上に、泡切れも良い。

 コンディショナーもやっぱり少量で絶大な滑らかさを髪に与えてくれた。

 ボディークリームものびが良いし、しっとりするのにさっぱりべた付かず、すぐに肌になじむ。

 どれもみな肌に優しい成分で出来ているので、肌荒れもないし、これは大成功と言うほかないよね!


 髪を乾かした後、自分の黒髪がツヤツヤ滑らか、まとまりの良いサラサラのストレートヘアになった。


 ロティルも私の怪しい薬液の数々にはじめはいぶかしんでいたけど、私を洗いあげるうちに実感したらしく、始終感心しながら自分でも試したそうだったので、勧めてみた。


「わ、わたくしはまだ仕事中ですのでっ、その……」


 顔をちょっと赤らめてもじもじしながら、使ってみたいけどメイド長にバレたら怒られるし、何より仕事中だし、と言うのを色々気にしているみたいだったので、私が我がままを言ってみることにした。


「じっけん。かんそうほしい。すぐ」


「そ、そう言うことでしたら! あの…出来ればもう何人か一緒でもよろしいでしょうか?」


 わかります。

 メイド長に怒られる道連れですね?


「うん」


 いいでしょう。



 ◇



 ロティルのすごいところはメイド長を引きこんだところだと思う。

 結果的に我が家の女子全員が試してみることになった。


 夕飯前の忙しい時にすみませんね。


 そして見事、全員が全員うるさらすべすべ髪と、しっとりもちもちぷるぷるの肌を手に入れた。

 アレルギー反応が出る人もいない感じだし、皆キャッキャ喜んでいる。

 よかった!




「ん? 今日は随分賑やかだな。それになんだか屋敷全体がほのかに花の香りがする」


 全身を洗っていい香りになったメイド達が仕事に戻り、屋敷の中を移動しているからその残り香的なアレですね。


 アレンジークが帰ってきた。

 アレンジークは私を見つけるとすぐに抱きあげ気付く。


「ファルか。例の錬金術か? 香水でも作ったのか。それにしても今日は随分髪がサラサラのツヤツヤだな」


「しゃんぷー。せっけんすい、はなのにおいにした」


「ほう。しゃんぷーとは石鹸水のことだったのか。その石鹸水にこの香りを付けた、と。ファルはすごいな! ファルが作ったもの、俺にも少し使わせてくれるか?」


「うん」


「どうやって使うんだ?」


 アレンジークが興味を示したので、丁寧に使い方を教えてやったぜ!


 ……その後でメイド長にもう一度使い方を教わるアレンジーク。

 私の説明では足りなかったようだ。




 夜もすっかり更け、私がベッドに入ってうとうとしかけている時間に帰って来たっぽいエリオット。


 帰ってきてすぐにアレンジークと少し話をして、早々に二人で寝室に入った。今日はいつもより優しく穏やかな声がボソボソと、そしてまったりしたかんじに聞こえたところで私は眠りに落ちた。

声は気にならないけどできるだけ気にしたくないから部屋、買えてもらおーかなぁ……と思う今日この頃だよ。、




 ◇



 シャンプーを作った次の日。

 アレンジークはいつもより早めに家を出て、エリオットはいつもより遅めの出勤なのか、私がゆっくりと朝食をとるのをニコニコと眺めている。


 ご機嫌だなー、おい。

 その理由は聞きたくもないですけど。


 でもまー両親が仲良くて、心身満たされて充実した日々を送ることはいいと思いますよ。

 両親がご機嫌だと私も不思議となんだか嬉しいし。


 朝食の後、ご機嫌なエリオットとともに庭で花を眺めながらまったりとお茶をした。それからエリオットは遅めの御出勤。

 元の世界で言うところの10時くらいだろうか。

 遅番と言うやつだ。


 今日は深夜過ぎに帰宅になるらしい。

 アレンジークは早番なのに今日は遅くなるって言ってたな。

 騎士団っていわゆるブラック環境なのかな?


 騎士って大変なんだね。



 ◇



 お昼の軽食を食べていた時、見慣れない鎧姿で息を切らせながら室内に入ってきたエリオット。

 エリオットもアレンジークも貴族服を着て出勤して帰宅するから、鎧姿なんて今まで見たことなかった。


 ほう。

 あれが近衛騎士の鎧か。

 なかなかカッコいいな。


「ファル、お願いがあるんだけどいいかな」


 私はこくりと頷く。


 なんだなんだ?

 親の頼みならなんだって聞くぜ?

 親子ってそう言うものなんだろ?


 剣と魔法の世界ならアレか?

 魔王討伐的なアレか?


 私の魔法が火を吹く時か?

 火力マシマシの大魔法ぶっ放すぜ!


「昨日のシャンプーとか言うの、譲ってくれない?」


 その言葉に私はものすごくガッカリする。

 ちょっとワクワクしてたのに、なんだよ。

 そんな平和的なお願いかよ!?

 ンなもんいくらでも持ってってよ!


 私のガッカリな表情に気付たエリオットは、たぶん誤解しつつもきちんと説明してくれた。


 私が作ったものを親であるエリオットが取り上げる形になったのを、私が嫌なんだけど嫌と言えない…みたいに思っているっぽい。


 エリオットによる説明はこうだった。

 近衛騎士で王の護衛をするエリオットが今朝出勤したらなんだかいいにおいするし、髪も肌艶も良いしで、それに気付いた王妃様に問い質された。

 それで王妃様が欲しいとなって、側室様方もそれに同意。そしてその娘の王女様方も便乗。

 断れない状況になり、残り少ないけどそれでもよろしいですか? と応えたところ、それでよろしいと言うことだったので、急いでここまで戻って来たらしい。


「ごめんね、勝手にあげると言ってしまって」


 騎士だし、王族にはノーとは言えないだろうねぇ。

 その社畜のごとき仕方なさ、理解してるからいいよいいよ。


「またつくる」


「そっか……。そう言ってもらえると助かるよ。ファル、本当にごめんね」


 心の底から申し訳なさそうに謝るエリオット。

 いいよいいよ。

 私の親になってくれたエリオットの役に立てるんだったらそれで。

 これが親孝行てやつ?




 シャンプー類を持って急いで城へ戻るエリオットを見送り、私は今日の分のシャンプーがないので早速地下のアトリエにこもり、また作った。

 今回は甘くフルーティーな香りにしたぜ!


 結果、次の日もエリオット経由で王族にシャンプー類を渡すことになってしまった。

 香りが違うことを指摘され、それも欲しいと言われたたエリオットは断り切れず、かといってまた私から取り上げてしまうことになるのがとても心苦しそうだった。


 別に良いんだぜ。それくらい。

 私を養ってくれてるんだからさ。


 それに私も少しは学習しましたよ?

 今回はなんと2リットルずつ作ったからね! 1リットルずつ王族に献上するくらいどうってことないよ!


 え? なんだって? もっと欲しい?

 他の貴族からも注文が来た?


 あ、うん。そうなのね。

 何とかするから大丈夫! 任せとけ!


 その後、私は樽でシャンプー類を作ることになった。

 錬金術や薬術、各種魔法を使って作ったので別に大したことではなかったけど、それでもエリオットとアレンジークは申し訳なさそうにしていたので、私はレシピを売ることにした。

 これで他の人が作ってくれるんだからそんなに気追うこと無いよ。



 ってことで私は数日後、いい条件でレシピを売って大金を手に入れることになった。


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