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41 職人たち

誤字報告ありがとうございました!

 

 私は今、馬車内で両親と三人の職人たちの話し合いに聞き耳をたてる。アレンジークの膝の上で。

 話し合いが気になりすぎてチラチラ見すぎな私を見かねてお膝の上にのせてくれた。


 最初はエリオットに人目があるなかで貴族としての教育に良くないとたしなめられたけど、長旅の移動中くらいいいじゃないかとアレンジークが言ってくれたのだ。


 子供を甘やかすアレンジークに何故かキュンときたらしいエリオットは渋々オッケーを出すふりをしてほんのり頬を染めていたのをアレンジークはもちろんのこと、私も見逃さなかったよ。

 エリオットのキュンツボがよくわからないよね。




 幸いなことに今回旅を一緒にする人たちの中にはこの黒目黒髪を恐れる人はいなかった。

 騎士団から来た人たちは前に私がお城に行った時で慣れてたのかも。


 他はもしかしたらきちんと認識されてないかも。

 黒に見える焦げ茶色だとでも思われてるかもね!

 何せうちの家族と使用人と元騎士団の人たちは以外ほとんどがヨボヨボのご老人でしたよ!

 あとは私と同年代くらいの子供だから黒目黒髪がどうのとかはわかってない疑惑。


 それならそれでいいんだけどね。だから私もあえてなにも言わない……。

 あ、もしかして人生の大先輩たるご老人たちの気遣い……!? でもないか。ご一緒するご老人のほとんどは白内障っぽいし。


 話が逸れたけど、この度の移住希望者……というか国から領地移動を言い渡された人たちは見事なまでに老人と子供ばかりだった。

 子供は日本で言うところの未就学児ばかり。

 老人もほとんどが杖なしじゃ歩けない人ばかり。……杖を持つ手も覚束ない感じの。


 それでもエリオットたちは受け入れざるを得ない。

 受け入れないと村人ゼロになっちゃうし、醜聞にも関わるからね。醜聞関係なく両親は普通に老人だろうが幼児だろうが領民になってもらえるのが嬉しいと思ってるようだ。


 でも寝坊して領民になる人たちがどんな人たちなのか知らなかった私は、起きてから休憩時、馬車の外に出て現状把握したとき、不安過ぎて頭を抱えそうになっちゃったよね。


 あとあの女性の一団。元王国騎士でこれからうちの私騎士(しきし)になる人たちかな。最低限の体裁を整える程度の革鎧を着けてる。みんなどこか思い詰めた感じしてる。漂う悲壮感。絶望まじりの人もいる。

 そしてたぶん王国騎士団にいた女性騎士全員じゃないかな? ……現在の王国騎士団の行く末が不安なんですけど。女性だから排除された感がありすぎる。

 でもうちにとっては貴重な人材。

 フッ、こうなったら王国騎士団より強い女性騎士に育て上げるぜ! うちの両親がな!



 などと妄想しつつ現状。

 馬車が足りなくて荷車に老人や子供を乗せ、なんとか雇えた数少ない冒険者に牽いてもらっていた。

 馬も足りないみたいだった。

 護衛として雇ったはずの冒険者だけど、王国騎士団にいた女性騎士が警戒にあたっているから大丈夫、ということなのかな? 警戒にあたっている女性騎士さんたちは一部を除いてものすごく不安そうにしてるけど。

 その一部のひとは黙々と任にあたっている。

 せめて装備はしっかりしたのを用意できたらよかったんだけど、それも出来ないくらい急な移動だったもんね。




 高位貴族の大移動としてかなりショボい感じになっている。それでも苦笑で済ませている両親のおおらかさ。

 立場に胡座をかかないというか、割り切り方が体育会系というか。

 ちょっと切なくなったよね。見た目上品な両親が結構脳筋だった事実に抵抗したくなったんだ。


 自作の馬車っぽいのを提供しましたよ。

 荷車よりは乗り心地はいいはずだし、少なくとも馬車には見える。アルミ製やチタン製だけど。インゴット作りにハマったときのやつ。それを死蔵させるのもアレだったんで、馬車の試作に使ったんだ。その試作した馬車を死蔵してた感じ。それを放出。ムダにならなくてよかった!


 微妙にどれもデザイン違うけど、馬車には見えるんだよ。大きい物だと中が六畳くらいの広さのものも。

 それを急いで中を整えた。これまた【アイテムボックス】内に入っていた試作のベンチやソファーを配置、固定すれば足腰の弱っているお年寄りは楽だろう。荷車には床に座っている状態だったからそれよりはマシになるよね?


 そしてそれを牽く馬。

 それは召喚に頼った。

 ドラゴンホースという馬。

 ドラゴンみたいに鱗で覆われていて、さわり心地はつるりとしている。背中にはドラゴンみたいに羽があるんだけど、見せ羽の一種なようで飛べない。

 あと召喚獣としては知能が足りないので会話はできないけど意思の疎通はできるからまあまあ。


 いろいろちょっと残念なドラゴンホースだけど、馬としては優秀なんだよ。馬より賢いし、馬の数倍馬力があるので自己防衛が可能。性格も温厚なのが多い。休憩も人と同じくらいで済むので普通の馬ほど手間はかからない。


 そんなドラゴンホースを数十体召喚。

 今後もお世話になりたいのでテイムできる個体は全部テイムした。そしたら結局全部テイムできてしまったよ?


 馬車に繋ぐ馬具は職人が調整してくれた。

 老人だけど、そのぶん熟練された技術をお持ちなのですぐ終わりすぐ取り付けることが出来た。

 ヨボヨボなのにすごい! とか失礼なこと思っちゃったよ。


「最初からはファルを頼ればよかったね」


「いや、まさが娘がこれほど物持ちが良かったとか、馬系を召喚出来るとか知らなかっただろう」


「確かに知らなかったけど、使用人たちからの詳細な報告を聞いてなかった俺達も悪いよ。娘たちをよく見てなかったこともだけど、子供だからと今回の事を詳しく話さなかった。忙しさにかまけてないがしろにしてしまった」


「そうだな。すまなかったな、ファル。だが助かった」


「んーん。私も詳しく聞かなかった」


 手配しているとは聞いた。いま使用人に集めさせていると聞かされて安心していた。

 まさかこれほどの妨害にあっていたとは思わなかった。

 王宮の担当者から手配された食糧も充分とは言えない量だった。

 ほとんどが老人や子供だからちょっと少ないくらいで充分だろうと言われたらしい。

 どう見ても移動半ばで尽きてしまう量。

 現地でしばらく暮らすんだから数倍は必要なのはわかっているはずなのに。

 だから使用人たちに食材を集めさせたんだけど、これも妨害なのか思ったほど集まらなかったみたいだった。


 その点は先頃の両親の実家を巡る旅で、私が途中から発揮した「珍しい食材の買い付けのついでに、現金化したい食材あったら買いますよ」という半ばヤケクソ爆買いで買った食材の量を両親は知っていたので「足りないぶん譲ってくれる?」と私に打診。

 もちろん了承しましたさ。


 意地になって買っててよかった! 店を取り上げられたから使い道が行方不明だったのよ。それがムダにならなくてよかった!



 ってことが休憩中にあったのよ。

 で、今ね。アレンジークのお膝の上で両親と職人たちの話し合いをワクワクしながら聞いている。


 場合によっては治水工事もしなきゃならない、港の整備をして防波堤も作んなきゃならない、けど魔物がどれほどいるか見当も付かない。せめて事前調査をしてから移動させてほしかったとしみじみとした愚痴もあった。


 そこであれ? って思った。

 老人たち、両親にあまり遠慮がない。

 エリオットもアレンジークも若いけど、それでも上位貴族だよ?

 都落ちな貴族だからって訳でもなさそうな気安さがある。


「なんだい、お嬢様。俺達が侯爵様相手に態度がでけえってか?」


 私が不思議そうに職人たちを見ていると、職人の1人が察した。

 え、すごい! 察した! 初対面の私を察した!


「ゴードン、うちの娘に絡むのやめろ。ファルも人をあまりジロジロ見るのは良くない」


 お、アレンジークが珍しく常識を注意した!

 こういうのはわりかしエリオットがするのに。


「うん。ごめんなさい」


「ははは、いーってことよ! それよりお嬢様は俺達の話を真剣に聞いてたな。楽しいか? 子供にゃつまんねー話だろ」


「楽しすぎる」


「んあ? ああ、そうかよ、あっはははは、そうか、楽しすぎるか! そりゃいい!」


 私と話した職人だけでなく、馬車内にいた他の二人の職人まで愉快気に笑いだした。

 私の発言のどこが老職人たちにクリーンヒットしたのかわからない。

 わからなくて両親をみた。

 どちらも苦笑いだ。


「開拓や開墾ってのは辛くてキツくて泥まみれの汚い作業の連続だ。その上これからいく場所は魔物の危険もある。知ってるだろ?」


 ゲラゲラ笑いが少し収まった職人が、それでもちょっとまだ笑いながら教えてくれるようだ。


「うん」


「はは、それを知ってて現状を楽しいとのたまい、本当に楽しそうなお嬢様はやっぱりこの二人の子だなと頼もしく思ったわけよ。二人より豪胆なもんだから可笑しくてよ、笑っちまったわけさ」


「しかしなあ、もどかしいぜ」


 さっきまで笑ってたのに急に1人の職人がしんみり。

 そのしんみりはすぐに伝播し、みんなしんみり。


 どしたの?!

 情緒の起伏についてけないよ?!


「俺達がもっと若かったらお嬢様と一緒に楽しめたんだがなあ。開拓とかイチから村や町を作っていくのは楽しいよな。ここに家を建てて、こっちに集会所作って、あっちは畑にして、とかよお。考えるだけで楽しいよなあ。それよりももっと若けりゃ侯爵様らと魔物討伐だってしたいよなあ」


 なにかを思い出し、黄昏るように馬車の外の流れる景色をみやる老人たち。


「ゴードンたちはもとは騎士団に所属していたんだよ。第一線を退いてからは稼業継いだり兄弟の手伝いとして職人になったんだ。けど子供や孫がその店を継いで一人前になってやることがなくなったから、と俺達に付いてきてくれたんだ」


 へー。

 そりゃすごい!


 それに強制的に領地移動させられた人だけじゃなかったんだ! あ、強制移動は私の妄想内のことだっけ?


「王宮から通達があってよ。魔境で果ててもかまわねえあぶれている職人募集ってな。配属先が侯爵様達だって知ってな。こんな老骨でもお役に立てればと思ったわけよ」


ほほう、なるほどなるほど。


「前に侯爵様方には世話んなったもんでよ」


 貴族とのやり取りでもめたときに両親がとりなしたらしい。それが何度もあったとか。貴族こわい。面倒。

 侯爵様方といってるけど、たぶんアレンジークだよね。

 エリオットは基本王族警護だし。

 アレンジークの方が平民と接する機会は多いだろう。


 はあ、と思い通りにならない我が身に老職人たちがしみじみとため息をつくので言っちゃうよね。


「若返りポーション、あるよ」


 と。

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