40 また馬車の旅
開拓はとにかくがんばるしかない。
与えれた領地とその隣領へと続く道も整備しなくちゃない。
魔物を倒しながら。
どこに村を作るかは自由。けど最低でも2つ、できれば4つ作って土地を安定させてほしい。
魔物を倒しながら。
ということがざっくり決まっているだけで、もらった領地は自由に開拓しちゃっていいみたい。
やったね!
「専門家は?」
やりたいことたくさんあるけど、ここはやっぱり専門家の意見は必要だよね!
ご指導してもらえたらサクサク仕事が進むってもんよ。
試行錯誤ももちろん好きだけど、それは趣味で充分満喫できるよ。
「専門家? ……ああ、職人か。老齢ではあるが各職人を何人か派遣してくれるといっていたね。あとは我々の持つ伝手をたよりに移住を前提についてきて貰うか、期間を決めて雇うか、かな」
「後者はあてにはならないだろうな。わざわざ危険な場所へ出稼ぎへは行きたいとは思わないだろう。給金が高いというわけでもないしな。人足はおろか商人の確保も出来ていない」
急に決まったことに圧倒的な人手不足か。
でも職人は最低限確保出来ている、と。
人足ってのは日雇いの肉体労働者かな?
商人いないと移動中や現地で必要なものを買えないか。
未開拓地で大勢移動するんだからちょっと危険でも商人来そうなものだけど、商人すら寄り付かない土地なのかな?
来てくれる予定の職人や移住希望者はみんな明日一緒に領地へと出発するんだって。
エリオットやアレンジークと一緒に目的地までいったほうが安全だもんね。みんな急いで支度もするか。
職人とは移動しながら話し合いをするというのだから忙しないよね。
ちなみに大所帯での移動となるので全員が全員途中の村や町の中に入れる訳ではない。
私たちは立場的に村や町の中で過ごさなくてはならないけど、入りきらなかったりお金がなくて宿に泊まれないものたちは外で野営することになる。その時の護衛として傭兵や冒険者も雇わなくてはならないんだけど、それも人数が揃えられない、と両親は頭を悩ませていた。
途中の立ち寄る町で都度雇うという話しも出ているけれど、それも難しいと判断せざるを得ない程度には過酷な領地なようだ。
地図を見せられたけど、なかなか素敵な立地だ。
「海がある。お魚」
地図で確認するところのこの国の北西。
荒野が広がり、その先に海がある。
山もあって、一応鉱山みたいなんだけど、魔物のことや補給を考えると採算が取れないから放置してるのかな?
森林はおろか草木すらもほとんどないから暑さ寒さをダイレクトに感じるだろう。
「ははは、ファルは魚料理が好きだったな。確かに海はあるけど、人の手が入ったことがないから荒れていたりどんな魔物がいるともわからないから危険な場所だね。陸地の魔物の討伐なら得意なんだけど。お魚はしばらくは難しいね」
え、目の前に海があるのにお魚食べられないの!?
……地図的にはちょっと離れているけど、でもしっかり領地に入ってる。
おう、こりゃ意地でも開拓してやろうじゃねえか!
「わたし、開拓に参加したい」
開拓開墾に使える魔法や召喚術、錬金術を出し惜しみなく使い倒そうと思うんだ。
という期待を込めた眼差しで両親を見る。
開拓とかワクワクだよね!
開墾とかロマンじゃん!
「そんなに希望の眼差しで見てもダメだよ。まだ現地調査も出来ていないのに今から許可は出来ないよ。子供なんだからきちんと安全な場所に居ること。わかった?」
そうだよね。いく場所は分かっていても、その土地が今どんな状態なのか分かる人がほとんどいない土地に行って、調査からの開拓なんだよね。無茶振りが過ぎるやつ。でも私からしたら楽しみで仕方ない。
街づくりゲームは好きなジャンルだった。
魔物がいるということは素材の宝庫だ。
危険ではあるけど、今回は細心の注意を払って行動するからきっと大丈夫!
具体的には最初から召喚術使っての危機管理。
また瞬獺にお願いしよう。私たちが乗る予定の馬車内の護衛ならフレンドリー極まりない瞬獺一択。見た目も私が召喚できるものの中では一番穏便でキュートだ。弟妹も怖がらないはず。
外側は索敵重視で風の精霊と地の精霊がいいかな。
戦力だけなら少数精鋭であるし。
でもやっぱり気になるのであえて聞いてみよう。
「転移で移動ダメ?」
「うん。わかってないかあ。ダメかな。拝領して大人数で移動している様を人に見られることが大事だからね。斥候として少数騎馬で様子見にいく程度はするよ。それまではみんな一緒。士気にも関わるからね」
むー。
手っ取り早くとはいかないか。
早く行ってみたいんだけど。ワクワクしてソワソワしちゃうよ。
家族との話し合いは私の空まわりでおわってしまった。でも私が楽しみにしていることに両親はちょっとだけホッとしたみたい。あと私が突っ走らないように注意しようと両親たちで頷きあっていた。
弟妹は話の途中からウトウトしてたからあまりわかってなかったかも。
とりあえずまた馬車での移動になることはわかったっぽかった。
・・・・・・・・・・
翌朝。
早朝だよ。眠いよ。
昨日は開拓の妄想がハイすぎてなかなか寝付けなかったのよ。
ロティルが起こしてくれて、まだボヘーっとしている私の身支度を整えてくれて……までは覚えてる。
いつの間にか二度寝してて、起きたら馬車の中だった。
不覚!
出遅れどころかワクドキの出発イベント逃した!
出発の挨拶とかしたよね!?
簡単にでも移民団の紹介とかあったよね!?
なにやってんの私!
脳内シミュレーションが何も活かされなかった。
本番寝てたとか! 寝てたとか!!
くぅぅっ!
「寝起き早々何悔しそうな顔してる? 怖い夢でも見たのか?」
能天気アレンジークめ!
こちとら親の出発のスピーチ聞き逃してんだよ!
普通悔しがるだろ!?
「出発のスピーチ、楽しみにしてた」
大事ないちばん最初の出発前のイベント!
みんなの不安を少しでもやわらげ鼓舞するアレ!
「あー、寝てたもんな。お前たちぐっすりと。でもそうか。そう思っててくれてたのか。よしよし」
グリグリと頭を撫でられる。
悔しさと恥ずかしさと寝起きもあって涙が滲む。
その様子をエリオットがクスクスと優雅に笑っている。
それもなんかちょっと恥ずかしかった。
恥ずかしさで反らした視線の先では弟妹が寝ていて、さっきまで自分も寝ていた事を思い出し、私もやっぱり子供なんだなと実感させられた。
後からロティルやリヒト、他の使用人に両親のスピーチがどんなだったかめっちゃ聞いた。
リアルタイムで聞けなかったことが悔やまれてならなかったくらい胸熱なスピーチだったっぽい。




