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026 だーんじょんっ! だーんじょんっ!

 


 転移は成功。

 私の目測に謝りはなかった。

 地面にソフトタッチで着地出来た。


 地面に着地してすぐにロティルがリヒトから魔物の足をはがしにかかる。

 私もリヒトの腕から這い出し、身体強化を使ってロティルを手伝う。


 既にリヒトの意識はない。

 かろうじて生きている状態。

 早く早くっ、急いで鳥足をリヒトから剥がさなきゃ!


 ロティルと二人で何とか硬直激しい魔物の足の残骸をリヒトから剥がす事に成功。

 食い込んだ爪をリヒトから引っこ抜く際、ドバッと派手に血が出たけど、すぐに強力な治癒魔法を使って傷を塞いだ。

 それからリヒトの上半身を起こして壁にもたれ掛けさせた状態で増血効果のあるポーションを少しずつ飲ませた。

 ロティルが。


 血が流れ過ぎているので治癒には魔法とポーションを併用することにしたんだ。


 途中、リヒトが目を覚ましたので後は自力で飲んでもらった。

 飲み終わる頃には完全復活を遂げたリヒト。

 それを見た瞬間、私の涙腺はまた決壊したよね。


 グヒェッグヒェ、グキョキョキョ


 いや、私の泣き声じゃないよ?

 声を出して泣いてしまっていたら、魔物が出てきたんだ。

 大きな猿の魔物の出現に、涙は瞬時に引っ込んだ。

 私が魔物に構えの姿勢をとる頃にはさっきまで隣にいたリヒトによって魔物は倒されていた。


 そしてさらにその瞬間、ザサァァァ…っと黒い霧となって魔物が消え、その後にはころりと赤黒い魔石が落ちた。


「なっ!?」


「っ!?」


「??」


 リヒトとロティルが驚いている。

 私は倒された魔物が消えたことと、倒した本人がめっちゃ驚いている事に不思議に思う。


「お肉出ないの?」


 確か教科書では倒した魔物は、素材が使えるものは解体するって書いてあった。

 その中でも魔物のお肉は食べられる、新鮮であればあるほど大変美味って…。


 なのにお肉…


「ないの?」


 さっきまでわんわん泣いといて、急な魔物にビビって、脅威が去ると急に現金になる幼女はここです。


「お嬢様…」


 なんとおいたわしい…とでも言ってくれるのかなと思ったら、ロティルにギュッと抱きよせられた。


「必ず我らがお守りいたします」


「この命にかえても必ずや、お嬢様だけでも」


 え? どういうこと?

 何を言ってるの?

 そんな、ロティルもリヒトも真剣な顔して。

 どうしたの?


 心痛そうな顔でリヒトが説明をしてくれた。


「お嬢様、よくお聞きください。…ここは、未開の野良ダンジョンです。人が管理していないダンジョンで、今私が倒したのがC級に属する魔物、マッドハウリングエイプです。ダンジョンに入ってすぐで出会う魔物のレベルではありません」


 …だんじょん?


 って顔でリヒトの真剣な目に問いかける。

 でもまだリヒトは説明を続ける。

 きちんと聞きわけてほしいと言うように。

 その間ロティルは私を守るように抱きしめながら周囲を警戒している。


「そしてここは正規のダンジョンの入り口ではない可能性もあります。そして転移魔法でここに入ることが出来たと言うことは、ダンジョンによって引き寄せられた可能性が高いです。その特徴を繋ぎ合せると、ここはS級とランク付けされるダンジョンでしょう」


 ダンジョン!


 ここがあの、憧れのダンジョン!

 ついに私はダンジョンに来た!

 …不可抗力な上に危険を伴う来方だったけど。


 アレクシス先生の授業でもダンジョンは何回か出てきたし、本も何冊か読んだ。

 それで知った気になってたけど、リヒトの説明は読んだ本には書かれていなかった。

 私、勉強不足だ…。


 ダンジョンの甘い罠にでもひっかかった?

 でも転移魔法で入れたんだから同じように出ればいい。

 リヒトがそんな真剣に諭すように説明する必要が感じられない。


「お嬢様。ダンジョンは『転移魔法』で入る事は出来てもそれで脱出する事は出来ません。そしてこの上空に開いている穴から自力で出られたとしても私達では外の魔物の群れからお嬢様を守ることが出来ません。ですのでより安全な方法をとるのなら、ダンジョンの階層主を倒した時に出現する『転移陣』から脱出したいと考えております」


 言われて上を見上げると、さっきロティルに足を切り落とされた巨鳥の魔物がダンジョン入り口をこじ開け侵入しようと躍起になっている。そしてよく見ると切り落とされたはずの足が少しずつ生えてきているようにみえる。

 全然気のせいじゃないほどに。

 その背後に似たような魔物が数体いるのも見える。


 私が上を見ているのを見て、ロティルも一緒に上を見て絶望的な顔をしている。


 上が無理そうなのはわかった。

 転移が無理なら風魔法で上まで上昇してあの穴からダンジョンを出て転移…と考えたんだけど、あれじゃあ無理だろうなー。


 はあ…。

 私、なんでここに転移したんだろ。

 王都の屋敷の庭でも良かったのに、あの時は全然思い当たらなかった。

 目に見える範囲で逃げようと考えてしまっていた。


 転移慣れしてなかったのが原因か。

 やっちまったのはしょうがねえ。

 自分のケツは自分で拭くぜ!


 それにS級ダンジョンって言われて絶望的に考えちゃったけど、だったら自重とかしないで作りまくった魔道具試せるんじゃないかな?

 と思考を切り替える。


 するとどうでしょう。


「余裕で帰れる気しかしない」


「「え??」」


 うっかり口から言葉が漏れた。

 そんな私の言葉にリヒトとロティルが怪訝そうな声をあげる。


 二人とも、普段私とずっと一緒にいるんだから気付いても良いよね?


 私が今までどんな『凶悪な魔道具』をつくって来たか。

 まあ、そんなこと言ってるのはアレクシス先生だけなんだけどね。


 ロティルに離してもらい、リヒトと一緒に周囲の警戒を頼む。

 その間に私は【アイテムボックス】から、今ここで使えそうな魔道具をどんどん出す。


 横目でチラチラ見ていた二人が驚き、それからちょっと気が緩んで行くのがわかる。


 出した中で一番有効そうなのかこの…結界を発生させるペンダント。

 ペンダントの台座が魔道具で、ペンダントにはめ込まれている魔石をエネルギーにして周囲を覆う結界を出すことが出来る。

 連続して使用する場合は四時間。でも魔石を交換すればまた使えるようになるので時間を気に掛け魔石の心配さえなければずっと結界を出し続けられる、ちょっと燃費に問題がある魔道具だ。


 けど以前アレクシス先生からがっぽり魔石を手に入れているし、さっきも大きな猿を倒した時に魔石をゲットした。

 魔物を倒し続けられる限りは魔石の心配はなさそうだ。

 大きな魔石ならペンダントサイズにカットして加工して使えば何個分かのペンダント用の魔石になる。


 うん、大丈夫!


 それにこの魔道具、内側から外側へ攻撃も出来る。

 どのランクの魔物まで通用するかわからない。

 魔石の大きさによって強度を変更できるので、魔物の強さによってどんどん更新して行けばいいよ!


 その他にも攻撃に使えそうな魔道具や魔剣もいっぱい作っているからどんどん試そう!


 なんか……ワクワクしてきたね!


 って顔で二人を見たら、なんかげんなりした顔を返された。

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