021 大市の戦利品
「「ねえさまおかえりなさい」」
「たくさんひとがいましたか?」
「たくさんおかいものできましたか?」
「うん」
あ、やべ。
双子より語彙が少ないわ私。
大市で買ったものは家まで配達してもらえるわけでもないし、ツケで買い物も出来ないので、現金一括払いで買った分だけ自分で持ち帰らなければならないのだけど、私は【アイテムボックス】があるから全然平気。
そもそも元の世界では【アイテムボックス】こそないけど、それが普通だったからね!
「部屋で出すけど、見る?」
散らかすなら自分の部屋だよねー。
と言うことで双子をお誘いすると、キラッキラした目で頷いて付いてくる。
期待されている。
やめてくれ。
冷静に考えたら双子の期待にこたえられそうなものを買ったかどうか怪しいものしか買ってない。
どこの世界に魔物の素材や乾いた植物や石ころ、砂、虹掛っているのにドドメ色の液体なんかに喜ぶ双子の幼児がいるんだよ。
…いや、まさかねぇ。
自室で双子が見守る中、市場での戦利品をぶちまける。
ロティルが一瞬びくっとした。
大丈夫だよ。全部自分で片付けますから!
そして案の定、双子は私の買い物の品々を見渡した後、悲しげな顔となった。
「まさか」じゃなくてある意味良かったのか悪かったのか。
この様子じゃ喜ばないだろうけど、二人にはきちんとおみやげがあるんだよ。
ソフトボールくらいの大きさのまんまるい石ころだけど、妙に魔力を放っている謎物体。触り心地もつやつやしっとり。
鉱石売りのリヤカーっぽい荷引き車の箱の中にあったやつだ。
3つあるからひとつは私が、もう二つは双子にあげる。
すると思いの外喜ばれた。
触り心地が面白いのと手に持つと不思議な魔力の波動を感じるので楽しいのだろう。
元世界で言うところの時計の秒針よりちょっと遅いくらい早さで魔力の波動を感じる。
それは持って見ないと感じない極々微弱なものだけど、なーんか楽しいし、落ち着く。
異世界、不思議な石もあるもんだ。
他は本当に趣味に使えそうな物ばかり。私にとってはお宝の山だけど、双子はとくに興味もクソもない。
すっかり石に夢中でキャッキャしている。
空中に投げてキャッチする時、魔力の波動が一瞬乱れてボヨヨヨーンってなるのが面白いらしい。
双子の様子を目の端に入れつつお宝の山を箱に入れて仕分けしていく。
魔道具用、ポーション用、食材用、不思議なのであとで研究する用…っと。
それからこれは大当たりの素材!
なんと大量の生スライム素材が手に入った!
いままでは乾燥させたスライムの素材しか手に入らなかったけど、生のは初めてだ!
今朝倒したばかりらしく、魔石は抜かれて原形を保ててはいないが、その不思議な触感はクセになりそう。
べたつくわけでもヌルつくわけでもない、ただ触っただけでは別に手につく事はない、でんぷんのりみたいな感触。
まだなにに使うわけでもないけど、異世界でスライムとかマジ異世界だよね!
双子も私がニヤニヤしながらつついてるスライムの生の死体?に気付いて、一緒につついてみて喜んでいる。
これも幼児的にはヒットしたようだ。最終的にはダイブして楽しんでいる。
体にも服にも影響はないけど、そのままずっとその上にいると、中に沈んで身動きできず、窒息死しかねないので一応二人のメイドや護衛に注意を促して置く。
スライムの素材はこのままにしておけば自然乾燥して干からびる。
そこで初めて店売りされるようだ。
このままだとカサばるし重いから。
干からびたスライムは他の素材と混ぜることで、シリコン見たいな素材になる。柔軟性もあり、丈夫で劣化しにくく壊れにくいけど加工が難しい。
それでもなんだかんだ需要はある。
靴底に使えば歩きやすいしすぐ馴染みやすい。混ぜる薬品次第では接着剤としても使える。耐火性に優れているので、防具類や布製品の表面に塗って使うこともあるみたいだ。他にもいくつか使い道があるみたいだけど、私が見知っているモノはそれくらいだね。
いやー、いいものたくさん手に入ったー。
けど、外の世界にはもっと他にもあるかもしれないんだよね。
私だから気付くものがあるかもしれない。
早く行ってみたいなー、ダンジョン。
そうじゃなくとも街の外には人間と見れば襲いかかってくる魔物が多いみたいだし、駆け出し冒険者として街の外に出るのも良いかもしれない。
この間の事があるからまたダメって言われるかもだけど。
まぁ、仕方ないよね。
引き取られた身でわがままは言えない。
それに心配して「ダメ」って言ってくれてるんだから、何度も同じお願いは言えないよ。
今の生活で充分何不自由することなく生活させてもらってるんだから、これ以上望むことはない!
よし、なんか親孝行っぽいもの作ろう。
日ごろの感謝を示すのだ!
引き取ってくれてありがとう!
親になってくれてありがとう!
ってね!
・・・・・・・・・・
「…ファル、これは何かな?」
「娘からプレゼントをもらえて嬉しい半分、娘のすることに不安半分と言ったところか」
両親苦笑いしながらも受け取ってくれている。
本音漏れてるのがアレンジークらしいけど。
「今日大市行って新しい素材と出会えた記念と日ごろの感謝を込めて作ったエリクサーだよ」
「「……………」」
何故が両親ともに唖然としている。
おかしいな。
この世界ではエリクサーは一般的ではないけど、大金出せば買えなくもない究極のポーションと呼ばれているものなんだけど。
アレクシス先生も「僕が本気出せば作れなくもないんだからね!」って言ってたし、変なものではないはずだ。
「調整してあるから不老不死とかならないから大丈夫。…原液もあるけど」
「「?!」」
今度はびくっとする両親。
不老不死ってそんなにビクつくワードだったかな?
でもそうならないって説明したし。
「リオもジークも騎士だから、怪我したら嫌。これは病気も怪我もすぐ治るから」
「ファル…」
「そうか。ありがとう、ファル」
理由を言ったら急に優しい表情になって、なんならちょっと瞳を潤ませる二人。
そしてアレンジークに「ありがとう」と言われながら抱っこされ、優しくぎゅーってされた。その状態でエリオットもアレンジークごと私を包んで優しくぎゅーっとする。
なんかわかんないけど、幸せな気がする。




