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010 きょうだい

 


 最近のマイブームはポーション作り。


 体力回復や、魔力回復、毒消しに効くもの、怪我に効くもの、病気に効くものなどなど。


 使用別に細かく分類された物をコツコツ作ってみたり、全部まとめて効果出るものが出来ないかなーとか色々試作してみたり。


 失敗作でも効果は低いけどそれなりの効果があるので、納得行かないものは全部アレンジークが引き取ってくれる。騎士団で使ってるみたいだから無駄にはなってない。


 でも成功したものは売ったりしている。


 私のお財布はホクホクさ。


 さぁ、今日はどんなポーション作ろうかと気合いを入れてみた時だった。


「ファル、兄弟欲しくない?」


「いた方が楽しいぞ。一緒に遊べるしケンカも出来る」


「ちょっと、アレン。女の子はそう言う兄弟は欲しがらないと思うよ」


 え?

 きょうだい?

 ちょっとまってよご両親。


 もしかして…できたの?

 私は気付かなかったけど愛人でもいるの!?

 それともこの世界、男同士でも子供出来ちゃうの!?


 私がびっくりして固まっていると


「ファルもこの家にだいぶ慣れてきたみたいだから、また子供を引き取るいい時期かなってな。それで、どうかな?」


 あ、そういう…。


「うん」


「そっか。じゃぁ、ファルがいた孤児院でファルと仲良しだったコとかいる?」


「いない」


 普通にボッチでしたがなにか?


「じゃ知ってるコとかは…?」


「いない」


 そう言えば顔見知りもとくにいなかったな。

 前世の記憶整理したり魔法で遊んでぶっ倒れたりしてほとんど周囲に目を向けていなかった。


 お世話してくれた職員すら覚えてねーや。


 そう考えると私って酷いやつだな。

 薄情者め!


 でも何故かこの二人は私を選んで子供にしてくれた。

 ありがたすぎる。

 ありがとう、エリオット。

 ありがとう、アレンジーク。


 私が両親を心の中でありがたがっている間も二人は私をどこか残念なコ的な視線を向ける。


「うん。ではファル。どんなコとなら仲良く出来そうだ?」


「おとなしい子」


「他には?」


「うるさくない子」


「うん。あとは?」


「リオとジークに優しい子」


「…ファル」


 両方から同時にギュッと抱きしめられた。


 おいおい。

 私を挟んでイチャつくでない。

 あっちでやってくれ!


 でもこうしてギュッとされるのは嫌いじゃないかも…。



 ・・・・・・・・・・



 数日して、


「今日からこの子たちはファルの弟と妹だよ」


 と言ってエリオットが男の子と女の子を連れて来た。

 二人とも物凄く似てる。

 双子ってやつだな!

 男の子と女の子なのに一卵性みたいでとてもよく似ている。


 大きくなればそれぞれ男女の特徴が出てきてわかりやすくなるだろうけど、幼いうちは服装でしか見分けがつかないかもな。


 でも、うん。悪くないよ。

 男女双子コーデとか創作意欲がわくじゃないか。


 二人とも髪フワフワだし、クセがある明るいアッシュブラウン。

 瞳の色はうす紫。

 顔も可愛らしい。


 双子は4歳。エリオットの母方の親戚から養子に迎え入れることにしたっぽい。


 私知ってるぜ。

 貴族で双子って黒髪程じゃないけど忌避されてるんだろ?


 ふふん。

 こっちでは黒髪ってことで散々孤児院の来客から陰口叩かれていたからな。

 そういう忌避系の情報も入ってくるってもんよ。


 でもそうなるとなんでエリオットとアレンジークは黒髪黒眼の私に続き、双子まで引き取ったんだろう?


 ま、いっか。


 双子は兄妹で、兄がシオル、妹がシアラと言うそうだ。


 うんうん。よろしくよろしく。我が弟、妹よ。



 ・・・・・・・・・・



 双子が来たことで、双子の身の回りの世話や護衛をする人員も増え、屋敷の中がいくぶん賑やかになった気がする。


 双子は今の所大変おとなしい。

 なんなら周囲にちょっとビクついている気もしなくもない。


 とくに私を怖がっている節がある。

 黒眼黒髪の威力はなかなかのものらしい。


 いいよいいよ。

 姉さんは君たちになるべく当たり障りないように接するから、そんなに怯えないでおくれ。


 ってことで、私はいつも通りに行動。

 双子を紹介された後は地下の調合室にこもってポーション作りよ。


 しかし、そろそろマンネリしてきたかもな。

 なんか新しいもの作ってみようかな。



 ・・・・・・・・・・



 双子が来て3日。

 まだ二人はおとなしい。

 二人はいつも手を繋いで、何処となくガードが固い。

 周囲の目を気にして、何かしてほしい時もびくびくするだけで結局何も言えないでいる。


 エリオットとアレンジークも困っているみたいだ。


「慣れないみたいだね」


「人目を気にしているようだ。どういう育てられ方したんだ」


「それは…我が親戚ながら呆れるね。折檻された痕もあったし、まともに食事も与えられてなかったみたいだ。それに毎日呪詛のように心ない言葉を掛けられていたみたいだね」


 新しく子供を引き取ろうと色々情報を集めていたら、自分の親戚に辿りついたとエリオットは言う。

 親戚と言ってもエリオットからすれば下級貴族だし、そこまで接点はないし、極々細い親戚としてのつながりがある程度のようだ。


「下級と言えど貴族家の生まれだろう?そこまでするのか。いや、貴族だからか…」


「ああ。もっと早くに気付くべきだった」


「生まれた事すら隠していたんだろう。仕方ないさ。でもよく生きていてくれたよ。それに、気付けて良かったじゃないか。これから我が家でこれまでの分を取り戻せるように、二人が幸せに暮らしていけるように愛しんで育てていけばいいんだ」


「ありがとう。新しく増えた家族含め、皆で幸せになろう」


 そう言って見つめ合ってどこかしっとりと微笑みあう両親。


 はいはい。

 シリアスからのあまあまですか。

 朝ですよ。

 朝食どきですよ。

 そろそろ空気入れ替えないと双子が起きてきますよー。



 それから数分して、双子が食堂に入ってきて皆で朝食。

 双子はナイフとフォークを使い慣れて無いので、悪戦苦闘しながら、メイドがサポートしながら食事する。


 ここに来るまで双子は手づかみで食事していたようだった。

 もしかしたら孤児院で暮らしていた私より酷い生活だったのかもしれない。


 それに気付いたエリオットが、自分の親戚のことながら、双子への仕打ちに大変ガッカリしていた。


 双子は何も出来ないし分からない自分達が、引き取られた先でたくさんの事を一気に教えられ、でもなかなか上手にできなくて、何度も何度も謝っていた。


 涙を浮かべながら必死に、今まで使ったこともないフォークを使いながらなんとか食事をする双子に両親は心を痛めていた。


 しばらくは双子に合わせて皆で朝と夕食はフォークとスプーンだけで食べられるもの、軽食は手づかみで食べられるものが用意されることになった。

 そのうち双子がカトラリーの使い方を覚えたら普通の食事に戻す。



 よし、この機に色々レシピを解放しよう。


 朝食後、出勤する両親を見送り、私は早速調理場へ向かう。


「これはこれはお嬢様。どのような御用で?」


「双子の為のレシピ」


 そう言って私は我が家の料理長へレシピを渡す。


「!? お嬢様の新作ですかい!? ヒョーっ! こりゃすごい! また奇抜な…! どんな味になるのかさっぱりわからねぇ」


 挨拶以外は粗野なしゃべりをする料理長。

 両親にはそれなりの対応をするみたいだけど、私に対してはこうやって砕けた感じに接してくれる。

 強面だが、子供好きらしい。


 あと、私のレシピの大ファンだと言ってくれている。

 別に私のレシピとかではないんだけど。

 元の世界での一般的な料理なんだけど。


 あ、醤油や味噌なんかは今、召喚術と錬金術と薬術を駆使してなんとか作れないか試みてるところなんだよね。

 これがうまく行けばレシピはもっと増えるはず!


「フォークで刺してそのまま食べられるようにひとくちサイズにしてね」


「承知しやした! って、ここで詳しく教えて下さらないんで?」


「うん。がんばって。わたしは忙しい」


 私の言葉に若干の胡散くさ気な視線を滲ませる料理長。

 私は気にせずさっさと調合室へ向かう。


 あ、スプーンで食べられるものと言えば、異世界の定番「プリン」とかも良いかもしれない。

 今から調合室で作ってみるか。



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