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75 巣窟


ホワイトアウト


雪の乱反射や吹雪の中で視界が真っ白に染まり、平衡感覚や方向、距離感が狂う現象。


それが今、僕とリンに牙を剥いた。



吹雪の中へ飛び込んだ僕とリンはすぐに足を止めた。


「想定してたよりもまずいかも」


【闘気反応】で足元の雪を操作し、近くにかまくらのような丸みを帯びた壁を作り、吹雪をわずかに防ぎつつ周囲の気配を探る。


視界が不明瞭なのと雪が吹き付ける轟音で目と耳があまり機能しない。そのため、得られる情報が必然と少なくなり、戦闘での不安要素が発生した。


【気配察知】で近くのモンスターの数や場所はわかるが、吹雪でその姿を捉えることができない。


「師匠、囲まれました!右からきます!」


リンの言葉に反応して咄嗟にフェルリアを右へ振った。それと同時に確かに何かを切った手応えがした。


切っていたのは真っ白な狼のようなモンスターだった。偶然モンスターの首を切り裂いていて即死していた。


「リン!見えてるの!?」


「はい!【世界視の瞳】を発動すれば視界不良なんて起こり得ません!」


「じゃあ、リンは見える範囲の自分を狙ってくるモンスターの処理に集中して!死角は僕が守るから」


「わかりました!」


リンのハルパーが赤熱化しだす。高温のガスが発生して吹き付ける雪が溶けて水になり、またすぐに凍りつく。


氷が身体に付着して体温を奪い、動きが鈍くなる前にフェルリアが風魔法で弾く。


「火属性の魔法で吹雪をどうにかできない?」


『無理』


フェルリアからそう一言返ってきた。


『……火属性魔法でどうにかなるのは身体の動きが鈍くならない程度の体温管理くらいね』


フェルリアから補足が入った。


「じゃあお願い」


僕とリンを囲うように大きな火が複数現れる。それによって周りが少し温かくなった。


『この吹雪の中で火と風を維持し続けるのは思っていたよりも大変なのね』


そんなことをフェルリアは呟いた。


背後ではリンがいつもと変わらないキレのある動きでモンスターを処理していて、フェルリアは僕とリンが動きやすいように場を整えてくれている。


「僕も頑張らないとね」


紫炎を振って呪炎を僕のカバー範囲に設置する。呪炎は呪いの炎で簡単には消えない。自分の索敵があまり機能しなから、呪炎で代用する。


接近の過程で呪炎に触れたことで呪炎に絡みつかれたモンスターが次々と僕めがけて突っ込んでくる。


鬼火の如く、ゆらゆらと漂って怪しい光を放つ呪炎がモンスターの位置を教えてくれる。


鋭い爪を持つ白いイタチのモンスターをフェルリアで切り流して、発達した脚で蹴ってくる白兎を紫炎で串刺しにする。


「……そこは呪炎が無くてもわかる」


足元の雪を操作し、固めて隆起させれば接近してきていたもぐらのようなモンスターが複数体まとめて雪に閉じ込められていた。


フェルリアで素早く処理し、次のモンスターの対処に移る。


「リン、フェルリア、対処しながら動ける?」


「大丈夫です」


『大丈夫』


「なら、少しずつ前に進むよ。吹雪を抜ける」


「わかりました」


『わかったわ』


ずっとこの場で戦っていても本来の目的を達成できない。この吹雪を抜けて、ダンジョンの入り口が隠されているかもしれない吹雪を見つけないといけない。


「私が前に出ます!私の目で吹雪を最速で抜けれるように案内します」


「任せた」


リンの背中を見失わないようにぴったりと後ろについて走る。そしてリンから伝えられる大量のモンスターの接近の情報を頼りにフェルリアと迎撃する。


前から迫るモンスターはリンがハルパーで斬り開き、左右から迫るモンスターは僕が【闘気反応】で雪を操作して壁を作り接近を妨害すると、呪炎を大量にぶつけて一気に燃やし尽くした。


背後からのモンスターは攻撃が届くかもしれないとフェルリアが判断したものだけが魔法で吹き飛ばされていた。


「あと3秒で吹雪を抜けます!」


ホワイトアウトの白い闇の中で前方に白い光が差し込んだ。リンが切り開いた場所へ出る。


吹雪で遮られていた白い太陽の光を全身で浴びた。


「……ふぅ、吹雪を突破できましたね」


「そうだね。これはリンのおかげだよ。ありがとう」


「いえ!師匠も突破の時に左右からくるモンスターを全て防いでくれたので、無駄な動きを無くして進めました!抜けれたのには師匠の力があったからです!」


お互いにねぎらいの言葉をかける。少しだけ休憩してからまた真っ直ぐに進み始める。


吹雪が追いかけてくるから長時間は休めない。


「それにしてもモンスターの巣窟になってるだけあって、吹雪の中でモンスターが押し寄せてくる勢いはすごかったね」


「そうですね。危なかったです」


そんな話をしながら雪原を駆ける。吹雪が吹き鳴らす異常なほどの大きい轟音をその耳が捉えるまで。


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